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第二十三話
しおりを挟む「はぁ…昨日は疲れたなぁ…」
貴族のパーティーに参加したその翌日。
俺はニーナと共に街に出ていた。
ニーナが街で買い物をしたいというのでその付き添いだ。
世間知らずなニーナが前みたいに騙されて連れ去られそうになるとも限らないから、護衛が必要なのだ。
「どちらがアルト様の好みでしょうか…?」
今現在、ニーナは何やらぶつぶつ呟きながら服の素材となる布を選んでいる。
俺はそんな彼女を少し離れた場所から見守りながら、ため息をついていた。
昨日は本当に疲れた。
ナイトバトルの後…本当にたくさんの貴族令嬢たちと踊らされた。
結局満足に食事も取れず、ダンス中は無礼がないように終始神経を使わないといけなかったために、解放された時には立っているのもやっとの状態だった。
それから一夜明けて今日。
昼からニーナが街で買い物をしたいというので付き合っている。
なんでも昨日のパーティーで少し危機感を感じたために、新しいドレスを作りたいとのことだった。
エミリアにドレスをバカにされたことを気にしているのだろうか。
昨日のニーナはものすごく綺麗だと思ったが。
「くぁああ…」
「ん…?ひょっとして、アルトか…?」
欠伸を噛み殺していると、俺の名を呼ぶ声が。
見れば懐かしい顔がそこにあった。
「おお!!アイリスか!」
「アルト!!探したぞ…!」
そこにいたのは、ギルド『青銅の鎧』のメンバー、アイリスだった。
俺と並んでギルドのトップ2と呼ばれていたこともあったっけ。
ギルドを抜けてから会ってなかったから、いやに懐かしく感じるな。
俺たちは互いにガッチリと握手を交わす。
「久しぶりだな、アイリス」
「あぁ…ようやく会えた…!お前を追って私はギルドを…うぅん!うううんっ!!」
「ん?急にどうした?」
何かを言いそうになり、慌てて言葉を濁した感じのアイリス。
俺が首を傾げるなか、アイリスが誤魔化すように早口で言った。
「全くお前は…私に何も言わずに勝手にギルドを抜けるなんて…少し傷ついたぞ…」
「すまんアイリス。俺もいきなりクビだなんて言われてカッカきちまってな、誰にも挨拶せずに飛び出してきちまった」
「いや…攻めるような言い方になってすまない。悪いのはお前じゃないことはわかっているんだ…それで、今は何をしているんだ?」
「ああ俺なら…」
アルトリア家で騎士をしている。
そう言おうとした最中、ニーナがこちらへとやってきた。
「アルト様…そちらの方は…?」
「ああ、ニーナすまない。紹介するよ。こっちはアイリス。俺の元同胞だ」
「ということは冒険者時代の…?」
「同じギルドメンバーだったんだ」
「そ、そうなのですね…」
ニーナがジロジロとアイリスを見る。
なぜかあまり好意的な感じがしない。
一方でアイリスの方も少し異様は空気を出しながら、俺にニーナのことを尋ねてくる。
「アルト…こ、こちらの方は…?まさか前のかの」
「ニーナだ。今の俺のご主人様ってことになるな」
「ご、ご主人様…?はっ…そ、そういうプレイで…?」
「ん?プレイ?何言ってんだ?」
アイリスがワナワナと震え出した。
こいつは一体何を勘違いしているというのだろう。
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