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第九十話

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「随分減ったな」

それから一週間後。

帝国魔術学院卒業実技試験の会場にて。

周囲を見渡し、生徒の数を確認した俺は思わずそう呟いた。

筆記試験の時よりも随分と生徒の数が減っている。

筆記試験でかなり脱落したようだ。

体感、半分ぐらいの生徒が筆記試験を突破したようだ。

「ですわね…」

「こ、こんなに減るんだね…」

ヴィクトリアとシスティも脱落した生徒の多さに驚いている。

今でもないが俺たち三人は筆記試験を突破して今日ここにいる。

合格通知が、筆記試験の三日後に届いたのだ。

結果はヴィクトリアとシスティがほぼ満点。

俺も合格ラインを大きく上回る形で筆記試験を突破していた。

「頑張ろうぜ。三人で卒業しよう」

これであとは、実技試験を突破すれば晴れてこの学校を卒業することになる。

事前情報によれば、今日の実技試験の試験官はなんと帝国魔道士団の魔法使いらしい。

試験の内容はというと、生徒は試験官と一定時間魔法戦を行い、その実力を見定めてもらうというものだ。

「ここまできたら…あとは全力を尽くすのみですわ…」

「う、うん…!!そうだよね!!今までたくさん頑張ってきたし……きっと出来るよ!!」

ヴィクトリアとシスティは自分達を鼓舞するようにそういうが、その表情は緊張でややかたい。

「リラックスして行けよ。二人なら絶対に合格できるだろうから」

二人の実力は、他の生徒と比べて群を抜いている。

実力をしっかりと発揮できれば試験に落ちることは
まずないはずだ。

俺は少しでも二人の力を抜こうと、そんな言葉をかけたのだった。



「うん…全然ダメだね。話にならない」

「ぐ…く、くそぉ…」

卒業実技試験に挑んだ男子生徒が、膝をつかされ悔しげなうめき声をあげる。

そんな男子生徒を見下ろすのは、試験官である帝国魔道士団所属の魔法使い。

最初の自己紹介で判明した名前はディン。

火属性を操る魔法使いのようだ。

「つ、強すぎだろ…」

「な、何も出来ていなかったぞ…」

「これが帝国最高峰の魔法使いの実力か…」

戦いの一部始終を周りで見ていた生徒たちが、思わず息を呑む。

卒業実技試験は、全ての受験資格を持つ生徒の点呼が終わってすぐに始められた。

その工程は、あらかじめ与えられた番号順に並び、一人ずつ皆の前で試験官と魔法戦を行うというものだった。

試験が始まって一時間。

すでにこれまでに三十人以上の生徒が実技試験に挑んだのだが、全員が全員、試験官であるディンに軽くあしらわれていた。

初めてみる帝国魔道士団の実力に、生徒たちは驚愕し、中には自信を喪失したものもいるようだ。

二、三人が、戦う前から列を抜けて試験会場を去っていった。

監督者たちはその生徒を特に止めなかった。

彼らもきっと脱落者という判定になるのだろう。

「実力差がありすぎるぞ…」

「こんなの無理ゲーだ…」

周囲の生徒の絶望的な声が俺の耳に聞こえてきた。

心配になった俺は、俺よりも前に並んでいるシスティとヴィクトリアの表情を窺う。

「…不味いな」

二人とも、帝国魔道士団であるディンの実力を間近で見てかなり表情を固くしている。

確かにディンの実力は、卒業生たちと比べれば格上には違いないが、しかしシスティやヴィクトリアとそこまで差があるとは俺には思えなかった。

ディンはあくまで試験官で、試験内容はディンを倒し上回ることではないのだし、緊張することはない。

二人は落ち着いてディンと他の生徒の戦いを冷静に分析し、これまで培ってきた実力を発揮すればいい。

そう伝えたかったが、残念ながら出来そうもない。

「君もだめだ。筋が悪い」

「くっ…」

そんなことを考えているうちにまた一人、生徒が羽虫のように倒された。

俺は赤子のようにあしらわれる生徒たちを横目に、システィとヴィクトリアのことで気を揉むのだった。
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