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第二十二話
しおりを挟む冒険者ギルドで薬草の換金を済ませた俺は、王城へと戻った。
俺がいなくなったことで少しは騒ぎになっているかと思ったが、王城内はいたって平穏そのものだった。
そりゃそうか。
俺なんて本来1人でここにくるはずだった勇者に引っ付いてきたモブでしかないもんな。
王城の人間たちからしたら、俺がいようがいなくなろうが、どうでもいいということか。
「まぁ、無関心は逆に助かるんだがな」
けれど、今の俺にはそれがありがたい。
拘束がないということは、それだけ動きやすくなるということだからだ。
「あっ…グレン…!どこにいってたの!?」
「お、アンナ。よう」
自分の部屋に戻ってくると、扉の前にアンナが座り込んでいた。
俺の姿を認めると、急いで駆け寄ってくる。
「グレン…!!」
「うおっ!?」
抱きついてくるアンナ。
柔らかな感触が押し当てられて、俺はドギマギしてしまう。
「どこにいってたの…?心配したんだから…攫われたのかと思って」
「…いやいや、ちょっと王都を散策してただけだ。大袈裟だな」
「城の人に言っても…放っておけって…」
「だろうな。ここの人間にとって勇者以外はお荷物だろうし」
「何してたの…?」
「え、えっとそれは…」
アンナが潤んだ瞳で見上げてくる。
イベントを回収してました、なんて正直にいうわけにいかない俺は、適当に誤魔化す。
「王都のあちこちを歩き回ってただけだ。色々珍しくてな」
「…そっか。何もトラブルには巻き込まれなかった?」
「と、特に何も」
「…ならいいけど」
アンナが俺から離れる。
俺はほっとため息をついた。
「今度からは…城を出るときは何時に帰るとか、そういうの私に報告すること。いい?」
「え…」
「いい!?」
「は、はい…」
有無を言わさぬアンナの雰囲気に、俺は頷くしかなかった。
「よろしい」
アンナはにっこりと笑う。
「あ、アレルは…」
俺は冷や汗をかきながら、アレルについて尋ねた。
おそらく俺が城の外にいる間、戦闘訓練を受けていたんだろうが…
「あ、アレルは…」
アンナの表情が曇る。
「ん?どうかしたのか?」
「じ、実はね…今日の訓練…全然うまくいかなくて…」
「お、おう…?」
「アレルは…拗ねて部屋に引きこもっちゃった」
「え…?」
「私が言っても開けてくれないの…自信を無くしたみたいで…どうしよう?」
困り顔でそんなことを尋ねてくるアンナ。
「ええと…」
勇者が引きこもった?
なんだそれは。
ゲームシナリオでは、勇者は王都での訓練中はひたすら真面目に打ち込んで、頭角を表し、瞬く間に一目置かれる存在になっていたはずなのだが。
勇者アレルが引きこもる、なんてそんな展開『世界の終わりの物語』には一度も出てこないぞ…?
一体どうなってるんだ?
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