50 / 64
サンドラ国王女と、王太子殿下。
しおりを挟む
「アル?」
目の前を歩く白金色が、不意に振り返る。
「何でしょう?サンドラ王女殿下」
返しは正しい筈だが、目の前の女性は柳眉を寄せた。
「あなたまで、そんな風に呼ぶ必要ないのよ?」
その言葉にどんな意味があるのか、アルファーフには読めない。
読めないから、曖昧に微笑む。
アルファーフは、ノータリニア王国の王太子である。
目の前の女性がノータリニア王妃ではなくサンドラ国の王女を名乗る以上、他に言いようもないのだが、どう呼べと言うのだろうか。
「ところで」
ひとまず聞かなかったことにして、話を切り替える。
「どちらに向かわれているのですか?」
見たところ、エレスティノア離宮とは違う方向に向かっている。
エレスティノア離宮は王妃の輿入れに併せて造られた離宮で、そのまま王妃の居城でもあるからそちらに向かうことは理解出来るが、どう見てもこれは••••••
「この先には、牢間しかないですよ」
恐らく、ガーカス伯爵令嬢の捕らえられている場所。
それがもう、視界の隅に入るくらいの近くに迫っていた。
「もちろん知っているわ」
王妃は、その目に宿す緑を輝かせて破顔した。
「アルの恋人がいるのでしょう?」
どういうつもりか、とアルファーフの表情が固まる。
それを覗き込みながら、優しい手つきでその頬を撫で、王妃は言った。
「さっきはごめんなさいね?わたくし、アルを彼女に会わせてあげなくてはと思ってがんばったのよ?」
ね?嬉しいでしょう?
と、微笑む姿は恐らく優しい。
それでもアルファーフには、恐ろしく見えた。
目の前を歩く白金色が、不意に振り返る。
「何でしょう?サンドラ王女殿下」
返しは正しい筈だが、目の前の女性は柳眉を寄せた。
「あなたまで、そんな風に呼ぶ必要ないのよ?」
その言葉にどんな意味があるのか、アルファーフには読めない。
読めないから、曖昧に微笑む。
アルファーフは、ノータリニア王国の王太子である。
目の前の女性がノータリニア王妃ではなくサンドラ国の王女を名乗る以上、他に言いようもないのだが、どう呼べと言うのだろうか。
「ところで」
ひとまず聞かなかったことにして、話を切り替える。
「どちらに向かわれているのですか?」
見たところ、エレスティノア離宮とは違う方向に向かっている。
エレスティノア離宮は王妃の輿入れに併せて造られた離宮で、そのまま王妃の居城でもあるからそちらに向かうことは理解出来るが、どう見てもこれは••••••
「この先には、牢間しかないですよ」
恐らく、ガーカス伯爵令嬢の捕らえられている場所。
それがもう、視界の隅に入るくらいの近くに迫っていた。
「もちろん知っているわ」
王妃は、その目に宿す緑を輝かせて破顔した。
「アルの恋人がいるのでしょう?」
どういうつもりか、とアルファーフの表情が固まる。
それを覗き込みながら、優しい手つきでその頬を撫で、王妃は言った。
「さっきはごめんなさいね?わたくし、アルを彼女に会わせてあげなくてはと思ってがんばったのよ?」
ね?嬉しいでしょう?
と、微笑む姿は恐らく優しい。
それでもアルファーフには、恐ろしく見えた。
0
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
待ち遠しかった卒業パーティー
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アンネットは、暴力を振るう父、母亡き後に父の後妻になった継母からの虐め、嘘をついてアンネットの婚約者である第四王子シューベルを誘惑した異母姉を卒業パーティーを利用して断罪する予定だった。
しかし、その前にアンネットはシューベルから婚約破棄を言い渡された。
それによってシューベルも一緒にパーティーで断罪されるというお話です。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?
真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。
嘘つきな私が貴方に贈らなかった言葉
海林檎
恋愛
※1月4日12時完結
全てが嘘でした。
貴方に嫌われる為に悪役をうって出ました。
婚約破棄できるように。
人ってやろうと思えば残酷になれるのですね。
貴方と仲のいいあの子にわざと肩をぶつけたり、教科書を隠したり、面と向かって文句を言ったり。
貴方とあの子の仲を取り持ったり····
私に出来る事は貴方に新しい伴侶を作る事だけでした。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる