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サンドラ国王女と、王太子殿下。

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「アル?」
目の前を歩く白金色が、不意に振り返る。
「何でしょう?サンドラ王女殿下」
返しは正しい筈だが、目の前の女性は柳眉を寄せた。

「あなたまで、そんな風に呼ぶ必要ないのよ?」

その言葉にどんな意味があるのか、アルファーフには読めない。
読めないから、曖昧に微笑む。
アルファーフは、ノータリニア王国の王太子である。
目の前の女性がノータリニア王妃ではなくサンドラ国の王女を名乗る以上、他に言いようもないのだが、どう呼べと言うのだろうか。

「ところで」

ひとまず聞かなかったことにして、話を切り替える。

「どちらに向かわれているのですか?」
見たところ、エレスティノア離宮とは違う方向に向かっている。
エレスティノア離宮は王妃の輿入れに併せて造られた離宮で、そのまま王妃の居城でもあるからそちらに向かうことは理解出来るが、どう見てもこれは••••••

「この先には、牢間しかないですよ」

恐らく、ガーカス伯爵令嬢の捕らえられている場所。
それがもう、視界の隅に入るくらいの近くに迫っていた。

「もちろん知っているわ」

王妃は、その目に宿す緑を輝かせて破顔した。

「アルの恋人がいるのでしょう?」

どういうつもりか、とアルファーフの表情が固まる。
それを覗き込みながら、優しい手つきでその頬を撫で、王妃は言った。

「さっきはごめんなさいね?わたくし、アルを彼女に会わせてあげなくてはと思ってがんばったのよ?」

ね?嬉しいでしょう?

と、微笑む姿は恐らく優しい。
それでもアルファーフには、恐ろしく見えた。
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