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永遠を望んでも…人は永遠から遠いもの
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「奥さまは猫を飼っていらっしゃったのですか?」
「私が本当に小さい頃はいたことはあったと話には聞いているけども、そのぐらい?」
「ではこのような猫たちに心当たりは…」
メイドさんが猫を書いてくれるが、猫の話をしてなかったら、それは猫だとわからない形。しかし、模様から…
「あっ」
「やはり存じているのですね」
「飼ってたわけではないけども、仲の良い…猫の母娘じゃないかな」
「そうなんですか?この子達は奥様が大好きのようで、たまに屋敷で見かけるのですよ」
「えっ?」
実家にいた頃、ずいぶん前なので、おそらくその母娘猫は虹の橋というのを渡っているのだが…
「ということがありました」
「本当にその子達は君のことが大好きなんじゃない?僕とどっちが君のことが好きかな?僕の方がたぶん勝つと思うね」
なんて領主がいったところ。
カランカラン
何かが落ちて。
「失礼しました」
三男執事が一言をつげた。
「こういうとき何て言えばいいのかわかりませんわ」
「悪いことではないとは思うよ、愛されているというか」
「でも私には見えませんからね」
「君が遠い先に寿命を迎えたとしてさ、その子達には会いに行くんだろう?」
「会いたいことは会いたいですけどもね…う~ん」
「どうしたの?」
「今みたいにイタズラばっかりするとなると、会いに行ったら大変なことになるんじゃないですかね」
全力ダッシュで飛び付かれます。
「そこまでになると、獲物か何かだと勘違いされてるんじゃないかな」
「そういう時は爪を出しているのかで見ればいいよ、その時に君を怪我させたり、痛い思いをさせたら嫌いになればいいよ」
「その好き嫌いの分け方はおもしろいですね」
「そう?」
「そうですよ」
そこに何かの鳴き声が外からする。
「猫が猫を呼んだのかもしれない」
ニャーではなく、恋の季節特有の鳴きかたをしていた。
「そんな時期はわかるんですけど、外は寒いですよね」
「所々凍っているんじゃないかな、でもこの辺の猫って強いんだよ、寒さも恋の障害にはならないっていうのかな、そこは俺も見習わなきゃね」
「今日はなんかグイグイきますね」
「いけるときにいかなきゃ、勝負をしてないも同じだよ」
「考えもなしに挑んで失敗する可能性もあるのでは?」
「そうなんだけどもさ」
「私は旦那様の…幸せを望みますよ」
この…の部分は、領主の名前である。
「そこで俺の幸せを願っちゃうんだ」
「願いますでしょうに」
「そうかもしれないけどもさ、そういうのを自分のために使わないの?」
「こういうのは占いと同じなんですよ、自分のために使いますと、上手くいかない」
「それは…」
「私の人生はあまり良いものではなかったけども、旦那様にお会いできて光栄ですよ。だからこそなんでしょうね、あなた様が幸せでありますようにと願ってしまうのです」
「俺と幸せになる気はないの?」
「そこまでは望みすぎですよ」
「君はさ、そういうところがあるよね」
「なんですか、もう」
「そうやって俺の心をくすぐるんだから」
「何をいっているんですか?意外と旦那様も恋多き生き方をしているのではありませんか?」
そこで奥さまは聞こえてきた旦那様の話をする。
「えっ?あっ?」
「あれはその…積極的でしたね、お相手が…」
「うん、そうなのよ。何がそうさせたかはわからないけども」
「もうそういうことになるならば、さっさと相手を決めていたらよろしかったのに」
「そういうのをさ、だいたいや、何となくで決めるもんじゃないよ…」
「その割には政略結婚を受けたのがわからないんですよね」
「自棄になって受けたわけじゃないから」
「左様で」
「それだけは確かだよ。ただ本当に、書類だけの夫婦である可能性もあったからな」
「私はそれでも良かったですよ」
「それは俺が困るんだよ」
「そうですか?」
「そうだよ。…確かにさ、ほぼ初対面だったりするわけじゃん、これから夫婦をやっていきますって言われたら…戸惑うよね」
「でもそれが役割ですから」
「君はその辺になると、視野が狭くなる。あれかな?ご家族に女性はそうであるようにって言われたの?」
「うちは女性陣もそこそこに酷いので、自分のとんでも理論を繰り広げますから、そういうのはあんまり」
闇が深い。
「ただ理想的な家族とか、夫婦とかわからないところは私にはありますが、どうもそれは現実的ではない、綺麗事に聞こえるみたいで、その話にご立腹されるということはありましたね」
「君にとって理想的なそれって、何さ、あれかな身長が高くて、体もがっしりとしてて、イケメンで、将来性もあって、そういう男の方が良いとか」
「それはないんですよね。あるがままで素敵ではないですかね、たまには背伸びすることもあるかもしれませんが、そこは気付いてあげたいかな」
「そんなことされたら、男はメロメロだよ」
「えっ?それでメロメロになるもんなんですか?」
「なりますよ、そりゃあ、何なの君は女神なの?俺の元にやってきたエンジェルなの?」
「旦那様…そういうのでコロっといっちゃダメ」
「クゥン」
「今みたいなこと、旦那様も弱いんですか?」
「弱い、本当に弱い、こんな子が僕を見てくれているの?じゃあ、僕はすごく頑張っちゃうからってなるよ」
「なっちゃいますか」
「あれ?呆れてる」
「そこまで人と会話をしたこともありませんからね、ましてや恋の話など」
「してみたかった?」
「本の世界ではそういう女友達と恋の話はするみたいですけどもね、実家にいたころは婦人会にいましたが、私以外既婚者ですから、恋の話は出来ないでしょ?」
「そういう浮気や不倫の話とかもシェアされそう」
「ありますよ、もうあいつを捕まえて吊し上げろ!とかね」
「うわ…怖い」
政略結婚の場合、家とか立場などが一番大事なので、それを忘れた恋愛なぞしようものならば大変なことになる。
「そういうのばっかり見て、恋に期待しなくなるものなの?」
「逆ですかね」
「逆?」
「そういう状態でも、その…羨ましい二人の話とかはありますから」
婦人会の人間は近隣、遠方から嫁いできた人たちが多いので、こういう話題が好きだと仲良くなりやすい。
「恋というより愛の話かな、まあ、私にはあまり縁がないものだと思ってますよ」
「俺じゃダメなの」
ズイッと近づいてくる。
「本当に今日はぐいぐいきますね」
「そうね、まあ、冬だからかな」
冬、やることはないから、家の中で夫婦ならばイチャイチャする時期である。
そのため秋から冬から十月十日生まれの子達が、この地域には多くなるという。
「冬の数少ないいいところだ」
「独身時代は何をしておりましたの?」
「積んでた本を読んでたな、学生時代以来にまとまった時間が取れるとは思わなかったよ」
だから雪が積もり、あちこちに移動するのも大変になると、もうしょうがねえなと暖かいところにこもって冬を凌ぐのであった。
「そういえば暖炉の火も絶やさないですもんね」
「そっ、正確には暖炉の中で、別の暖房器具を使うんだけどもね」
暖炉を使うと煙突、煙が出てしまう。その煙が寒いと、上にのぼらず下に流れてくるので、ずっと昔に住宅での暖炉の使用は規制された。
「それまでは気管支の病気と思われる症状が、この時期とても多かったんだってさ、これも薄紫の魔女さんからの話だね」
薄紫の魔女は、この領地にいた薬草をメインとした伝統医療を扱うご職業の老婦人。
今は過ごしやすい地域にいる。
「雪かきしなくていいのが最高すぎるってさ」
「雪かきは、難しいですもんね」
奥さまのレッツチャレンジ雪かき!
「来たばかりの頃の僕より上手いと思う」
「もう少しでコツが掴めそうなんですよね」
「武術を嗜んでいる人みたいな台詞だ」
「生まれて初めて、あの大きな氷を割らせていただかましたが、何かを壊すと言うのはストレス解消になるんじゃないかと」
「僕は奥さんにストレスを知らないうちに溜め込ませてしまっていた!」
ショック!
「いえ、旦那様由来のストレスではないですよ、どちらかと言うと己の未熟さがストレスといいますかね」
もっと出来る人ならば旦那様を支えれていたのに…
「君の代わりはいないよ」
「そうですか?もっとできる人の方が旦那様がやりたいことはできると思いますよ」
「そこに君がいないならば意味はない」
「もう少し欲を出しましょうよ」
「そうかもしれないけどもさ、君とこうして話をしている時間がなかったらと考えるだけで嫌だな」
「積んでいた本を読み直すいい機会ではないですか?」
「本は読むだろうけどもさ、君が僕の名前を呼んでくれるとそれだけで嬉しくなっている気持ちも気付いてよ」
「…さん」
領主の名前を耳元で囁く。
「君は俺でいいの?」
「私ではダメなのでしたら…」
すぐに領主から離れようとする。
「待って、そういうことじゃない。そんなところがうっかりさんだぞ!」
「そういうところは私はあると思いますが…」
よーし、正解引いたぞ。
「俺は君から好意を向けられると嬉しくって、サンバを踊りたくなるわけ」
「機関に合格したおりにも踊ったというあの伝説のサンバですか」
「姉さんから聞いたの?」
「はい」
受験の合否が判明するその日、心配する両親を心配してお姉さんも来てくれた。
そんな姉が見たものは、自室でカーニバルを開催しようとしている弟であった。
「一人だからテンション上がっちゃってさ」
でも自室にやってきた姉と目が合い祭りは終了となる。
(面白い御人だわ)
「あれ?もしかして呆れてる?まあ、そうだよね、なんかこう今日は祭りだね!っていう日が僕にはあるってことなのさ」
「誕生日とかもそうなるんですか?」
「ああ、君の誕生日は春の終わりだから、そうだね、その時は祭りでいいんじゃないかな」
うちの奥さんがこの世に生まれたことを祝いまくるフェスタ。
「君はあんまり生まれてきたことに対して、躊躇いがあるような気がする」
「そこは躊躇いしかありませんよ」
「やっぱり」
「自信なんて持てそうもない、でも、誰かのためになるのならばそういうのも気にならなくなるんですよね」
「それは素晴らしい、美徳だね」
「そうですかね」
「そうだよ…だから君は上手くいっているのかもしれないね、落ち込んでばかりではないというか」
「落ち込むことや悩むというのは贅沢なことなんですよ、余裕がなければそんなことは出来ない」
「耳が痛い話だね。でも困ったな、そういう話になってくると、さっきまで漂っていたいい感じの雰囲気が消え失せてしまう」
「旦那様はそういうのをお求めで?」
「求めちゃうよ、今日みたいな寒い日も君と一緒にいれば気にならないと思うんだよね」
外から猫が相手を求める声をあげた。
「あっちの恋も是非とも成就してもらいたいものだね」
すると何かが落ちていく音。
「ダメだったみたいですね」
「大丈夫かな」
その後にガサガサ音が遠ざかる、無事のようだ。
良かったなんて領主が思ってると、奥さまは抱きついてきた。
「続きはどうしますか?」
「それは…」
そりゃあもちろん。
外は雪があるような寒い時は、着替えやら何やらも暖かいところでしなければ、寒い。いや、そんな気持ちはもうないか、辛い。
屋敷の中は廊下でさえも暖かくなるようにしてある。
「先代のご領収さまがお医者様に注意されてから、このような感じですかね」
いわゆるヒートショックという、気温差が体にダメージを与えるというやつ。
「領主さまも先代様もこちらの出身じゃありませんからね、そこは気を付けませんと」
そういうわけで、屋敷の中はひたすら暖かく、外に出るときはきちんと冬のものを身につけてもらっている。
「旦那様、タオルです」
「ありがとう」
濡れた髪を覆うようにタオルを被せてから拭き取る。
「朝が来てしまったのが残念だよ、もうちょっと俺としてはイチャイチャしたかったっていうか、新婚の時だけ夜が10時間ぐらい増えるとかないものかな」
「夜は睡眠をしっかりとるためにあるんですよ」
「それはそうだけどもさ」
「そこは逃げませんから」
「おっ、言ってくれるね」
「だから無理はしないでくださいよ」
「不思議だよね、言葉で止まることができるようになるとは…」
「なんですか?それ」
「散々注意してやっとできるか、出来ないかなところが俺にはあって」
「それはダメじゃないですか」
「わかってるよ、でも、そんなことがあった俺が、君の言葉では止まれることができるから、やっぱりこれは愛の奇跡とかそういうやつじゃないかな」
「旦那様は気難しい人だから、きっと好みの美人さんみたら、そっちに走り出すんじゃないですかね」
「俺って信用されてないな」
領主の心の天秤は、奥さまに非常に重く傾いているが、それは今の話だ、先は誰にもわからない
永遠を望んでも…人は永遠から遠いもの。
手を離してしまえば、彼女を妻にしたい男は正式な手続きを申し立て、どこかに連れ去ってしまうことだろう。
「私が本当に小さい頃はいたことはあったと話には聞いているけども、そのぐらい?」
「ではこのような猫たちに心当たりは…」
メイドさんが猫を書いてくれるが、猫の話をしてなかったら、それは猫だとわからない形。しかし、模様から…
「あっ」
「やはり存じているのですね」
「飼ってたわけではないけども、仲の良い…猫の母娘じゃないかな」
「そうなんですか?この子達は奥様が大好きのようで、たまに屋敷で見かけるのですよ」
「えっ?」
実家にいた頃、ずいぶん前なので、おそらくその母娘猫は虹の橋というのを渡っているのだが…
「ということがありました」
「本当にその子達は君のことが大好きなんじゃない?僕とどっちが君のことが好きかな?僕の方がたぶん勝つと思うね」
なんて領主がいったところ。
カランカラン
何かが落ちて。
「失礼しました」
三男執事が一言をつげた。
「こういうとき何て言えばいいのかわかりませんわ」
「悪いことではないとは思うよ、愛されているというか」
「でも私には見えませんからね」
「君が遠い先に寿命を迎えたとしてさ、その子達には会いに行くんだろう?」
「会いたいことは会いたいですけどもね…う~ん」
「どうしたの?」
「今みたいにイタズラばっかりするとなると、会いに行ったら大変なことになるんじゃないですかね」
全力ダッシュで飛び付かれます。
「そこまでになると、獲物か何かだと勘違いされてるんじゃないかな」
「そういう時は爪を出しているのかで見ればいいよ、その時に君を怪我させたり、痛い思いをさせたら嫌いになればいいよ」
「その好き嫌いの分け方はおもしろいですね」
「そう?」
「そうですよ」
そこに何かの鳴き声が外からする。
「猫が猫を呼んだのかもしれない」
ニャーではなく、恋の季節特有の鳴きかたをしていた。
「そんな時期はわかるんですけど、外は寒いですよね」
「所々凍っているんじゃないかな、でもこの辺の猫って強いんだよ、寒さも恋の障害にはならないっていうのかな、そこは俺も見習わなきゃね」
「今日はなんかグイグイきますね」
「いけるときにいかなきゃ、勝負をしてないも同じだよ」
「考えもなしに挑んで失敗する可能性もあるのでは?」
「そうなんだけどもさ」
「私は旦那様の…幸せを望みますよ」
この…の部分は、領主の名前である。
「そこで俺の幸せを願っちゃうんだ」
「願いますでしょうに」
「そうかもしれないけどもさ、そういうのを自分のために使わないの?」
「こういうのは占いと同じなんですよ、自分のために使いますと、上手くいかない」
「それは…」
「私の人生はあまり良いものではなかったけども、旦那様にお会いできて光栄ですよ。だからこそなんでしょうね、あなた様が幸せでありますようにと願ってしまうのです」
「俺と幸せになる気はないの?」
「そこまでは望みすぎですよ」
「君はさ、そういうところがあるよね」
「なんですか、もう」
「そうやって俺の心をくすぐるんだから」
「何をいっているんですか?意外と旦那様も恋多き生き方をしているのではありませんか?」
そこで奥さまは聞こえてきた旦那様の話をする。
「えっ?あっ?」
「あれはその…積極的でしたね、お相手が…」
「うん、そうなのよ。何がそうさせたかはわからないけども」
「もうそういうことになるならば、さっさと相手を決めていたらよろしかったのに」
「そういうのをさ、だいたいや、何となくで決めるもんじゃないよ…」
「その割には政略結婚を受けたのがわからないんですよね」
「自棄になって受けたわけじゃないから」
「左様で」
「それだけは確かだよ。ただ本当に、書類だけの夫婦である可能性もあったからな」
「私はそれでも良かったですよ」
「それは俺が困るんだよ」
「そうですか?」
「そうだよ。…確かにさ、ほぼ初対面だったりするわけじゃん、これから夫婦をやっていきますって言われたら…戸惑うよね」
「でもそれが役割ですから」
「君はその辺になると、視野が狭くなる。あれかな?ご家族に女性はそうであるようにって言われたの?」
「うちは女性陣もそこそこに酷いので、自分のとんでも理論を繰り広げますから、そういうのはあんまり」
闇が深い。
「ただ理想的な家族とか、夫婦とかわからないところは私にはありますが、どうもそれは現実的ではない、綺麗事に聞こえるみたいで、その話にご立腹されるということはありましたね」
「君にとって理想的なそれって、何さ、あれかな身長が高くて、体もがっしりとしてて、イケメンで、将来性もあって、そういう男の方が良いとか」
「それはないんですよね。あるがままで素敵ではないですかね、たまには背伸びすることもあるかもしれませんが、そこは気付いてあげたいかな」
「そんなことされたら、男はメロメロだよ」
「えっ?それでメロメロになるもんなんですか?」
「なりますよ、そりゃあ、何なの君は女神なの?俺の元にやってきたエンジェルなの?」
「旦那様…そういうのでコロっといっちゃダメ」
「クゥン」
「今みたいなこと、旦那様も弱いんですか?」
「弱い、本当に弱い、こんな子が僕を見てくれているの?じゃあ、僕はすごく頑張っちゃうからってなるよ」
「なっちゃいますか」
「あれ?呆れてる」
「そこまで人と会話をしたこともありませんからね、ましてや恋の話など」
「してみたかった?」
「本の世界ではそういう女友達と恋の話はするみたいですけどもね、実家にいたころは婦人会にいましたが、私以外既婚者ですから、恋の話は出来ないでしょ?」
「そういう浮気や不倫の話とかもシェアされそう」
「ありますよ、もうあいつを捕まえて吊し上げろ!とかね」
「うわ…怖い」
政略結婚の場合、家とか立場などが一番大事なので、それを忘れた恋愛なぞしようものならば大変なことになる。
「そういうのばっかり見て、恋に期待しなくなるものなの?」
「逆ですかね」
「逆?」
「そういう状態でも、その…羨ましい二人の話とかはありますから」
婦人会の人間は近隣、遠方から嫁いできた人たちが多いので、こういう話題が好きだと仲良くなりやすい。
「恋というより愛の話かな、まあ、私にはあまり縁がないものだと思ってますよ」
「俺じゃダメなの」
ズイッと近づいてくる。
「本当に今日はぐいぐいきますね」
「そうね、まあ、冬だからかな」
冬、やることはないから、家の中で夫婦ならばイチャイチャする時期である。
そのため秋から冬から十月十日生まれの子達が、この地域には多くなるという。
「冬の数少ないいいところだ」
「独身時代は何をしておりましたの?」
「積んでた本を読んでたな、学生時代以来にまとまった時間が取れるとは思わなかったよ」
だから雪が積もり、あちこちに移動するのも大変になると、もうしょうがねえなと暖かいところにこもって冬を凌ぐのであった。
「そういえば暖炉の火も絶やさないですもんね」
「そっ、正確には暖炉の中で、別の暖房器具を使うんだけどもね」
暖炉を使うと煙突、煙が出てしまう。その煙が寒いと、上にのぼらず下に流れてくるので、ずっと昔に住宅での暖炉の使用は規制された。
「それまでは気管支の病気と思われる症状が、この時期とても多かったんだってさ、これも薄紫の魔女さんからの話だね」
薄紫の魔女は、この領地にいた薬草をメインとした伝統医療を扱うご職業の老婦人。
今は過ごしやすい地域にいる。
「雪かきしなくていいのが最高すぎるってさ」
「雪かきは、難しいですもんね」
奥さまのレッツチャレンジ雪かき!
「来たばかりの頃の僕より上手いと思う」
「もう少しでコツが掴めそうなんですよね」
「武術を嗜んでいる人みたいな台詞だ」
「生まれて初めて、あの大きな氷を割らせていただかましたが、何かを壊すと言うのはストレス解消になるんじゃないかと」
「僕は奥さんにストレスを知らないうちに溜め込ませてしまっていた!」
ショック!
「いえ、旦那様由来のストレスではないですよ、どちらかと言うと己の未熟さがストレスといいますかね」
もっと出来る人ならば旦那様を支えれていたのに…
「君の代わりはいないよ」
「そうですか?もっとできる人の方が旦那様がやりたいことはできると思いますよ」
「そこに君がいないならば意味はない」
「もう少し欲を出しましょうよ」
「そうかもしれないけどもさ、君とこうして話をしている時間がなかったらと考えるだけで嫌だな」
「積んでいた本を読み直すいい機会ではないですか?」
「本は読むだろうけどもさ、君が僕の名前を呼んでくれるとそれだけで嬉しくなっている気持ちも気付いてよ」
「…さん」
領主の名前を耳元で囁く。
「君は俺でいいの?」
「私ではダメなのでしたら…」
すぐに領主から離れようとする。
「待って、そういうことじゃない。そんなところがうっかりさんだぞ!」
「そういうところは私はあると思いますが…」
よーし、正解引いたぞ。
「俺は君から好意を向けられると嬉しくって、サンバを踊りたくなるわけ」
「機関に合格したおりにも踊ったというあの伝説のサンバですか」
「姉さんから聞いたの?」
「はい」
受験の合否が判明するその日、心配する両親を心配してお姉さんも来てくれた。
そんな姉が見たものは、自室でカーニバルを開催しようとしている弟であった。
「一人だからテンション上がっちゃってさ」
でも自室にやってきた姉と目が合い祭りは終了となる。
(面白い御人だわ)
「あれ?もしかして呆れてる?まあ、そうだよね、なんかこう今日は祭りだね!っていう日が僕にはあるってことなのさ」
「誕生日とかもそうなるんですか?」
「ああ、君の誕生日は春の終わりだから、そうだね、その時は祭りでいいんじゃないかな」
うちの奥さんがこの世に生まれたことを祝いまくるフェスタ。
「君はあんまり生まれてきたことに対して、躊躇いがあるような気がする」
「そこは躊躇いしかありませんよ」
「やっぱり」
「自信なんて持てそうもない、でも、誰かのためになるのならばそういうのも気にならなくなるんですよね」
「それは素晴らしい、美徳だね」
「そうですかね」
「そうだよ…だから君は上手くいっているのかもしれないね、落ち込んでばかりではないというか」
「落ち込むことや悩むというのは贅沢なことなんですよ、余裕がなければそんなことは出来ない」
「耳が痛い話だね。でも困ったな、そういう話になってくると、さっきまで漂っていたいい感じの雰囲気が消え失せてしまう」
「旦那様はそういうのをお求めで?」
「求めちゃうよ、今日みたいな寒い日も君と一緒にいれば気にならないと思うんだよね」
外から猫が相手を求める声をあげた。
「あっちの恋も是非とも成就してもらいたいものだね」
すると何かが落ちていく音。
「ダメだったみたいですね」
「大丈夫かな」
その後にガサガサ音が遠ざかる、無事のようだ。
良かったなんて領主が思ってると、奥さまは抱きついてきた。
「続きはどうしますか?」
「それは…」
そりゃあもちろん。
外は雪があるような寒い時は、着替えやら何やらも暖かいところでしなければ、寒い。いや、そんな気持ちはもうないか、辛い。
屋敷の中は廊下でさえも暖かくなるようにしてある。
「先代のご領収さまがお医者様に注意されてから、このような感じですかね」
いわゆるヒートショックという、気温差が体にダメージを与えるというやつ。
「領主さまも先代様もこちらの出身じゃありませんからね、そこは気を付けませんと」
そういうわけで、屋敷の中はひたすら暖かく、外に出るときはきちんと冬のものを身につけてもらっている。
「旦那様、タオルです」
「ありがとう」
濡れた髪を覆うようにタオルを被せてから拭き取る。
「朝が来てしまったのが残念だよ、もうちょっと俺としてはイチャイチャしたかったっていうか、新婚の時だけ夜が10時間ぐらい増えるとかないものかな」
「夜は睡眠をしっかりとるためにあるんですよ」
「それはそうだけどもさ」
「そこは逃げませんから」
「おっ、言ってくれるね」
「だから無理はしないでくださいよ」
「不思議だよね、言葉で止まることができるようになるとは…」
「なんですか?それ」
「散々注意してやっとできるか、出来ないかなところが俺にはあって」
「それはダメじゃないですか」
「わかってるよ、でも、そんなことがあった俺が、君の言葉では止まれることができるから、やっぱりこれは愛の奇跡とかそういうやつじゃないかな」
「旦那様は気難しい人だから、きっと好みの美人さんみたら、そっちに走り出すんじゃないですかね」
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