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この店…時が止まってないか?という困惑と心配。
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いつものようにお店の仕込み、準備中である。
そんな中、大将がなんか幸せそうな顔をしているのは、冷蔵庫に入れられたほうれん草一ケース分があるからで。
(何を作ろうかな)
頭の中はさっきからそんな調子、それが楽しくて楽しくてしょうがないのである。
開店。
すぐにお客さんがやってくる。
「いらっ…課長?」
「仕事でこっちに来たから」
この人は奥さんの元上司、社用でさっきまで訪れていたのは古の常連客さんの会社。
「それでご注文は?どうしますか?」
「日替わり定食で」
上着を脱ぎながら注文する。
「はーい」
「しかし、この店大丈夫なの?」
イヤミに聞こえるのだが。
「前に来たときと、値段変わってないように見える」
この店…時が止まってないか?の困惑と心配。
「食べる方は嬉しいけどもさ」
「そこは頑張ってますから」
「この世に君の頑張りを真似できる人はいないと思う」
「うちの奥さんの真似はできる人はいるんですか?」
現旦那と元上司からそんなことを言われる程度には、この奥さんは仕事ができるようだ。
「この店、うちの会社の側にもほしくなるよ。この間数少ない選択肢が閉店した」
奥さんが元いた会社、課長が今も在籍する会社のそばは、いつも同じメニューを食べる分には困らないようなお店がずらっと並んでたが、そうなると人間たまには違うものをとか、季節感をとか、ないものを満たしたくなるものである。
「コンビニが安いと思う日が来るとは思わなかった」
便利なのだが、品切れも多いので、余裕がないときは昼は使えない感じ。
「定食お待たせしました」
「こういうの毎日食べれるのは本当に幸せだよ」
「っていってましたよ」
「さよか」
課長が帰ってからしばらくしてから、古の常連が顔をだしました。
「持ち帰り用のコーヒーと、お菓子の方はロールケーキを作らせてもらいました」
「ありがとうね」
「いえいえ」
「これから若いのと打ち合わせあるんだわ」
前からコーヒーだけは打ち合わせや会議があると注文していたが、そこに菓子類も追加で注文してきたのは理由、きっかけがあった。
たまたまその時はご好意という形で、お菓子、フィナンシェ、バター系の焼き菓子がついていた。
「あっ、それも自由に食べてね」
「はい」
そこで小腹を満たすためか、パクっと食べたら。
「うめぇ!」
「あの時のカッ!と目を見開いた顔が忘れられない」
「そんなにお腹が空いてたんですかね?」
「いーや、そいつはどっちかっていうと食に興味がないんだよね、だからこそ意外で」
今もそう。そこがきっかけでどっかに昼は食事でも行くのかなと思いきや、行かない。自分からは行かないが、与えられたら食べるタイプ。
「うちのお店に来てくれたことあるんですかね?」
「ない、なんか恥ずかしいからっていってた」
実はそこもあるし、この古の常連客がいつも行くような店だから、邪魔はしたくはないらしい。
「でも、うちの会社に来る取引先はこの辺でご飯食べてから帰ったりするから、羨ましいとはいうけどもね」
この辺が安くて美味しいお店が多いのは、時は元号が変わる前の前の頃。
地主の息子さんの一人が料理人になることにした。
調子ではないから手に職をつけなきゃね!
そういってホテルなんかで修行して、故郷に戻ってお店を開店させた。
その頃、開発が進み、近くに朝も昼も夜も働く場所が出来上がる。
飲食店もそれらの職場の人たちがメインのお客さんになっていく。
大将の店の大家さんがその地主の家系の料理人さんで、高齢で営業時間短縮するから、代わりにそれまで営業していた時間を任せられる店を営業できるならば、安く貸し出すよと告知すると、全国から色んなところで修行した若手料理人がやってくる。
もちろん大将もその一人である。
今は地主さんも代替わりしたが、旨いものを食べれるならば遠方からお客さんも来るから、この辺も活気づくということで応援してくれた。
「旨いものを出すには、旨いものを作れるだけじゃダメなんだなって」
腕には自信があっても痛感するらしい。
「その辺はどうなのよ?」
常連は奥さんを見る。
「でも美味しいものを作れる人がいないと成り立たないんですよね、いくらほうれん草が安くても、家庭で食べきるには、保管するには限度があって、それなら料理人の腕があってこそ、活きるのではないかと思います」
「後でキッシュ焼くから、一緒に食べよ」
大将は恋する乙女のような瞳を奥さんに向けた。
「そういうのは家でやってちょうだい」
何気なく止めているが、ここまでちゃんと言えるの古の常連客だからこそできる技である。
「それでほうれん草安かったの?」
話題の変え方も自然、痺れるね!
「そうなんですよね、さすがに物価がここまで上がってきちゃってるから、いつも使うお野菜とか、調味料なんかが安くなったら、だいたいこのぐらいの値段ならば教えてねって伝えてるんですよね」
それでほうれん草が来たが。
(さすが関わるプロジェクトではメンバーに大勝ちを体験させてくれると言われてた有能さは、まだ健在なのね)
ただし、この辺は光だけではない、闇もある。それが彼女の力だと気づかないと、関わった人の顛末は大抵悪い方向に行く。
自分ってもしかして凄いんじゃないの?と思ってしまった、そんな人間は取り返しのつかない失敗をするものである。
そんな中、大将がなんか幸せそうな顔をしているのは、冷蔵庫に入れられたほうれん草一ケース分があるからで。
(何を作ろうかな)
頭の中はさっきからそんな調子、それが楽しくて楽しくてしょうがないのである。
開店。
すぐにお客さんがやってくる。
「いらっ…課長?」
「仕事でこっちに来たから」
この人は奥さんの元上司、社用でさっきまで訪れていたのは古の常連客さんの会社。
「それでご注文は?どうしますか?」
「日替わり定食で」
上着を脱ぎながら注文する。
「はーい」
「しかし、この店大丈夫なの?」
イヤミに聞こえるのだが。
「前に来たときと、値段変わってないように見える」
この店…時が止まってないか?の困惑と心配。
「食べる方は嬉しいけどもさ」
「そこは頑張ってますから」
「この世に君の頑張りを真似できる人はいないと思う」
「うちの奥さんの真似はできる人はいるんですか?」
現旦那と元上司からそんなことを言われる程度には、この奥さんは仕事ができるようだ。
「この店、うちの会社の側にもほしくなるよ。この間数少ない選択肢が閉店した」
奥さんが元いた会社、課長が今も在籍する会社のそばは、いつも同じメニューを食べる分には困らないようなお店がずらっと並んでたが、そうなると人間たまには違うものをとか、季節感をとか、ないものを満たしたくなるものである。
「コンビニが安いと思う日が来るとは思わなかった」
便利なのだが、品切れも多いので、余裕がないときは昼は使えない感じ。
「定食お待たせしました」
「こういうの毎日食べれるのは本当に幸せだよ」
「っていってましたよ」
「さよか」
課長が帰ってからしばらくしてから、古の常連が顔をだしました。
「持ち帰り用のコーヒーと、お菓子の方はロールケーキを作らせてもらいました」
「ありがとうね」
「いえいえ」
「これから若いのと打ち合わせあるんだわ」
前からコーヒーだけは打ち合わせや会議があると注文していたが、そこに菓子類も追加で注文してきたのは理由、きっかけがあった。
たまたまその時はご好意という形で、お菓子、フィナンシェ、バター系の焼き菓子がついていた。
「あっ、それも自由に食べてね」
「はい」
そこで小腹を満たすためか、パクっと食べたら。
「うめぇ!」
「あの時のカッ!と目を見開いた顔が忘れられない」
「そんなにお腹が空いてたんですかね?」
「いーや、そいつはどっちかっていうと食に興味がないんだよね、だからこそ意外で」
今もそう。そこがきっかけでどっかに昼は食事でも行くのかなと思いきや、行かない。自分からは行かないが、与えられたら食べるタイプ。
「うちのお店に来てくれたことあるんですかね?」
「ない、なんか恥ずかしいからっていってた」
実はそこもあるし、この古の常連客がいつも行くような店だから、邪魔はしたくはないらしい。
「でも、うちの会社に来る取引先はこの辺でご飯食べてから帰ったりするから、羨ましいとはいうけどもね」
この辺が安くて美味しいお店が多いのは、時は元号が変わる前の前の頃。
地主の息子さんの一人が料理人になることにした。
調子ではないから手に職をつけなきゃね!
そういってホテルなんかで修行して、故郷に戻ってお店を開店させた。
その頃、開発が進み、近くに朝も昼も夜も働く場所が出来上がる。
飲食店もそれらの職場の人たちがメインのお客さんになっていく。
大将の店の大家さんがその地主の家系の料理人さんで、高齢で営業時間短縮するから、代わりにそれまで営業していた時間を任せられる店を営業できるならば、安く貸し出すよと告知すると、全国から色んなところで修行した若手料理人がやってくる。
もちろん大将もその一人である。
今は地主さんも代替わりしたが、旨いものを食べれるならば遠方からお客さんも来るから、この辺も活気づくということで応援してくれた。
「旨いものを出すには、旨いものを作れるだけじゃダメなんだなって」
腕には自信があっても痛感するらしい。
「その辺はどうなのよ?」
常連は奥さんを見る。
「でも美味しいものを作れる人がいないと成り立たないんですよね、いくらほうれん草が安くても、家庭で食べきるには、保管するには限度があって、それなら料理人の腕があってこそ、活きるのではないかと思います」
「後でキッシュ焼くから、一緒に食べよ」
大将は恋する乙女のような瞳を奥さんに向けた。
「そういうのは家でやってちょうだい」
何気なく止めているが、ここまでちゃんと言えるの古の常連客だからこそできる技である。
「それでほうれん草安かったの?」
話題の変え方も自然、痺れるね!
「そうなんですよね、さすがに物価がここまで上がってきちゃってるから、いつも使うお野菜とか、調味料なんかが安くなったら、だいたいこのぐらいの値段ならば教えてねって伝えてるんですよね」
それでほうれん草が来たが。
(さすが関わるプロジェクトではメンバーに大勝ちを体験させてくれると言われてた有能さは、まだ健在なのね)
ただし、この辺は光だけではない、闇もある。それが彼女の力だと気づかないと、関わった人の顛末は大抵悪い方向に行く。
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