953 / 1,093
二色童子
しおりを挟む
「黒舌さんどこに行くんですか?」
声をかけると、黒舌さんはビクッとなった。
「…ラミア喫茶」
「ラミア…喫茶…」
上半身が人間で、その下は蛇の…なんて思っていたが。
「なんでそのラミア喫茶に」
「年賀のあいさつが来てたんだよ」
今年は蛇年でございます。
12年に一度の我々の年、力を入れて、営業をしたいと思ってます。
「そこに招待券もついててね」
お嬢様にも是非当店にお越しになってもらいたいので、招待券を同封させていただきました。
「こういう丁寧な挨拶をもらったんで、返事をしないわけにはいかないのよ」
商店街で地元のお土産を用意した上で行くらしいが。
「本当にご挨拶なんですね」
「…一緒に行くかい?」
「いいんですか?」
「こういう形の方が先方さんも顔を覚えてくれるだろうし」
Tさんにも良い出会いがあるかもしれないなということで。
公共機関を使い、最寄りの駅までいきました。
「歩いているのが男性が多くて、店員さんが女性多いところなんだな」
「来たことはないんですか?」
「昔はあるよ、再開発も進んだみたいだから、面影はないな」
この辺かな?と思うと、招待状がカサカサカサと音を立てた。
「案内してくれるそうだよ」
「でもなんだ今日、急になんですか?」
「これから四月まで地方から遊びにくる、ほら、卒業旅行とかがあるから」
「混んじゃうんですね」
「そうみたいよ、だからまだ今ならばすぐ会えるのかな」
ビルの三階。
「これはこれは、ようこそお越しになりました、お嬢様」
ズラリと美女のラミア達が揃っている。
「なかなかの迫力だね」
「いえいえ、我々はこちらの土地では新参といってもいいですから、土地を守るお役を勤めているお嬢様に敬意を払うのは当然。お嬢様、こちらのお坊っちゃまは?」
「あぁ、うちの土地の人間でね」
「Tです、よろしくお願いします」
「まさか、あのマンションの」
「えっ?あっ?そうなんですけども、有名なんですかね」
ラミア達もびびってる。
「ええそりゃあ、惨劇の被害者になろうところを助けられて、今ではあのマンションに一番長く住んでいる人ですからね」
「こっちではあのマンションのあいつはどう伝わってるの?」
「あぁ、実はこちらの街で出禁の騒ぎがあったんですけども」
「問題起こすやつだったのかい?」
「いえ、他のお客からの嫌がらせですね」
「うわ…そういう事情があったのか」
「それならうちに来てくれても良かったと思いますよ、今では残念ながら遅いですけども」
「…やっぱり狙いに来てると」
「たぶん、何人か人を犠牲にしたら、我々の戦うのが苦手とか、こうして商売を営んでいる辺りにやって来るのではないかと見てますね」
「まだ犠牲者は出てないからね」
「ただうずくまっているという感じですかね」
「でもまあ、マンションの他の住人からするとさ、いきなり水道がでなくなるとか、家電の寿命がとんでもなく早いとか、嫌でしょ」
「えっ?そんなことが起きているですか?」
「Tさんはご存知ないんですか?マンションにお住まいになられてますよね?」
「今はほぼ空き家ですよ、生活としてはこちらの黒舌さんの住処にお世話になっているので」
「…まあ、そうでしたの」
「お嬢様もお坊っちゃまも当店の名物ティータイムも楽しんでいかれませんか?」
「そうですよ、そうですよ、お嬢様もお坊っちゃまもお越しになられると知ったので、シェフが力を入れましたの」
他のラミアたちにつれられて、テーブル席でお茶をするようになった。
注文すると、他のお客さんも次々にやってくるが、ほぼ男性客のようだった。
「僕ね、帰省で疲れちゃったから、アットさんに癒してもらいたいな。はい、これお土産ね」
それを見てTさんは。
「ここはこういう感じの店なんですかね」
「己の欲望を解放し、素直になる店なんじゃないかな」
「なるほど奥が深い」
「Tさんとしてはどうなの?」
「どうって?」
「ああいう感じで、女の子と知り合うのは」
「いいんじゃないですかね…でもクラっと来ちゃっても、この思いが一方通行なのは辛いかな」
「ここはそんな感じでは…」
「すいません、おトイレ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
するとその一人の時間を楽しめるようにと、ラミアのお姉さんが失礼しますと、お茶のおかわりを持ってきてくれた。
「ずいぶんと仲がよろしいんですね」
「Tさんは出来れば人と上手くやってほしいんだけどもね、そうでなければ身持ちが固いラミアのお嬢さんなんかはどうかなって」
「えっ?それは…」
「結構いいとは思うよ、その…そういうのが趣味でもある人間なんて」
「それは確かに惹かれますけどもね」
その時、黒舌の髪を止めるピンが落ちた。
「私が拾います」
お嬢様の手を煩わせることはありません。
「鏡を貸してもらえないかしら?」
「もちろんですとも、よろしければどうぞこちらへ」
と従業員側のパウダールームを使わせてもらった。
「せっかくですから、髪も軽くセットさせていただきます」
そういって簡単ではあるがゆるくウェーブをつけられた、そこから出ると、ちょうどその時お客さんがこんにちはしてきて。
「君は…新しい子かな?」
側にいたラミアは不味いという顔をした。
「お坊っちゃまは相変わらずでございますね」
黒舌さんは高圧的に出た。
「もう少し気品高くおありなさいませ」
「はい!」
自然と返事をしてしまった。
このお姉さんはラミアではないが、俺にはわかる、そういった種族の方だ、普段の俺には縁がない高貴なお方…
「ありがとうございます、ありがとうございます、お正月から大変ありがとうございます」
「お嬢様、ここは我々にお任せください」
(お坊っちゃまにも裏口で待たせておきますので)
崇拝者が出そうになったので、その場から離れることになった。
「トイレから戻って待っていたら、席にはいなかったので」
ラミアのお姉さんがそっと、髪を直しておりますので少々お待たせいたします。とメッセージを伝えに来た。
そして待って、パウダールームから現れたら、あれである。
「もうちょっと見てたかったのはありますよ」
「ごめんね、ゆっくりお茶したかったでしょ」
「いえいえ、黒舌さんの魅力にああなるのはしょうがないことですから」
ラミア喫茶のお客さんはよく訓練されてます。
「ただ目の前であんなこと言われると、ムカッとはしてくるんで」
「私もビックリだよ、そんなに新入りさんに見えるのかな?格好も全然違うのに」
「それは…お客さんが男性ばかりだから、女性=みたいなところがあるとは思いますよ」
「なるほど、自分では気を付けているつもりだったけども甘かったわ」
「それはラミアさんたちもそう思っているでしょ、まさかお客さんに声をかけるとはって」
「そういえばそうね、でもお茶とか美味しいけども、次の来店はなさそうだね」
おそらくさっき声をかけてきたのは常連客なので、黒舌さんがいると商売の邪魔をしてしまうことになる、それを恐れているようだ。
「あぁ、それでもTさんなら歓迎されるんじゃないの?」
「僕はあなたとこたつにいるのが好きなんですよね」
黒舌さんの寝床は、一軒家のような部屋の作りをしてる。Tさんはこちらを居間と客室、トイレやお風呂などを使っているという感じ。
建築会社が用意したというよりは…
「ふ~ん、人間はこういうところに住んでいるんだ」
黒舌さんがそういってコピーしたらしい。
「コピーってできるんですか?」
「できたね」
元々住宅展示場、買い手がつかずに取り壊されたもの。
「これオプションついたやつですね」
「オプション?」
「家というのは、標準仕様から始まって、オプションで足していくような買い方をしているんですよ、この家は…」
あの会社の、いろんなものをモリモリとつけたもので、買ってたとしたらすんごいお金がかかるだろう。
「なんかこの元になった住宅展示場は本当は安くてもいいから、売り渡したかったんだけども」
なんか変な…いや、これ、事件が起きちゃうから。
「高確率で空き巣とかくるんじゃないかなって話だった」
「立地も良かったんだろうな」
「だろうね、それに比べるとここは空き巣しようがないな」
ただダニのやつはいつの間にか入り込んでる。
「場所的にはここはどこになるんですか?」
「世界の隙間って感じかね、世界と世界を支える壁は、スポンジみたいになっているところがあって、その隙間にいるよ。そういう理由で広さとかはこちらで調整できないんだ」
下手に広くしようとすると、隣が異世界の場合があります。
「一応はこっちで生まれたから、異世界に行ってもしょうがないよ。たぶん向こうにはこたつはないし」
「それじゃあ、こっちの方がいいですね」
ビリっ
その時Tさんでもわかるぐらい空気が震えた。
「ちょっとお仕事かもしれない、行ってくるよ」
「僕もお供します」
そういって裏口ではなく、玄関、商店街方面から外に出た。
するとそこは古びたビルの廊下で。
「商店街の組合がここにはあるんだ、組合長がこのビルを持ってる」
「あ~」
あの人か。
そんなビルの中なので、黒舌さんも竜蛇の姿で移動する。
「組合長、どうしたんだい?」
「あっ、神さん?えっ?」
むしろ組合長のほうがビックリしたようだ。
「空気の震えがあったのがこっちにまで届いたよ」
後でTさんが会釈をした。
「あぁ、それですか、神さんを煩わせるわけには…いえ、話だけでも聞いてもらいますか?」
「ええ、喜んで」
「まだみんなは休みなので」
組合長自らがお茶を入れてくれた。
「これはどうもありがとう」
「実はですね、とても困ったのがうちの商店街の関係者にはいるんですよ」
よくある店には生まれたが、ちゃんとしてない人間というやつだ。
「真面目にやらないのならば店をたためばいいのに、それだと生活が困るとかいう、ろくでもない人間なのですが…」
「それだけでは済まなかったと」
「そうです、どうも悪い何かになりかけている、そういう感じでしたね、神さんは空気が震えたいってますが…」
「Tさん、組合長はね、人間なんだけどもね、怒声に力があるんだよ」
「?」
「私はあまり怒らないのですが、私が怒るとその時に、叱る対象に何かがいる場合、それを一時的に祓うというか、散らせるんですよ」
ただこれも使い方が難しく、良いものもいなくなるという。
「さっきの震えはそれかな、何かがいなくなった、退散した、ビビったというかさ」
「私はただそれ以外は見えないわからないから、いなくなったときに初めて、いたのかってわかるんですよ」
故に組合長なのである。
「それでいなくなったときに、どのぐらいいなくなったのかっていうのが、わかるんですけども、神さんまで届いたってことは」
「おそらく、かなり転化しようとしているんじゃないかな」
「やはりそうですか」
「じゃないと、人の体が耐えられないんだ」
「なるほど」
「バカなことをしているとは思いましたが、そこまでだとは」
『だからいただきに参りました』
その声にソファーの三人は驚いた。
窓の前に男児が二人立つが、和装であるし、声がどうも子供にしては何か違和感があった。
『私は紅色童子』
『私は白色童子と申します』
そうそれぞれその色の衣装を身に付けている。
「それはどうもご丁寧に」
組合長は挨拶を返すのだが、黒舌さんは固まっている。
(黒舌さん)
「あっ、これは申し訳ない。以前お姿は見かけることはございませんでしたが、おられましたよね、二色童子の方々」
「二色童子…」
そういうと組合長が固まった。
「二色童子というのは?」
Tさんが聞くと、緊張が解け。
「ちょっとここから離れた地域の神さんなんだけども」
「格式がおありになるのです」
『お嬢さんにそう言われると何かむず痒い気がします』
『あの時はありがとう』
「いえいえ、私が頭を垂れるのは当然でございます」
『それでお話というのは、彼のものの話』
「あいつは一体何を、とんでもないことをしたのですか?」
『我々がほしいのは、彼のものの身柄』
『刑罰を与えたい』
「それはお好きなように、もはや我々の言葉では止められませんから」
『承知』
『では100の打ちすえで』
「そういうのは甘いのですか?厳しいのですか
」
「一回の100じゃないんだ」
「えっ?」
『毎日!』
「えっ?」
「しかも夜には薬を塗られて、朝には治るが、その薬も痛いという」
『寝るのも苦しい痛み』
『彼のものはどれほどまでに持つのか』
【ではさようなら】
そういって二色童子は去っていく。
「黒舌さん、組合長、僕は初めてですよ、相対したら、鳥肌がたったの」
ほら、これ。
「それは私も同じだよ、あの調子ならば、他にもきっと何かあるよ」
しかし二色童子の預かりになった今となっては、調べる意味もない。
声をかけると、黒舌さんはビクッとなった。
「…ラミア喫茶」
「ラミア…喫茶…」
上半身が人間で、その下は蛇の…なんて思っていたが。
「なんでそのラミア喫茶に」
「年賀のあいさつが来てたんだよ」
今年は蛇年でございます。
12年に一度の我々の年、力を入れて、営業をしたいと思ってます。
「そこに招待券もついててね」
お嬢様にも是非当店にお越しになってもらいたいので、招待券を同封させていただきました。
「こういう丁寧な挨拶をもらったんで、返事をしないわけにはいかないのよ」
商店街で地元のお土産を用意した上で行くらしいが。
「本当にご挨拶なんですね」
「…一緒に行くかい?」
「いいんですか?」
「こういう形の方が先方さんも顔を覚えてくれるだろうし」
Tさんにも良い出会いがあるかもしれないなということで。
公共機関を使い、最寄りの駅までいきました。
「歩いているのが男性が多くて、店員さんが女性多いところなんだな」
「来たことはないんですか?」
「昔はあるよ、再開発も進んだみたいだから、面影はないな」
この辺かな?と思うと、招待状がカサカサカサと音を立てた。
「案内してくれるそうだよ」
「でもなんだ今日、急になんですか?」
「これから四月まで地方から遊びにくる、ほら、卒業旅行とかがあるから」
「混んじゃうんですね」
「そうみたいよ、だからまだ今ならばすぐ会えるのかな」
ビルの三階。
「これはこれは、ようこそお越しになりました、お嬢様」
ズラリと美女のラミア達が揃っている。
「なかなかの迫力だね」
「いえいえ、我々はこちらの土地では新参といってもいいですから、土地を守るお役を勤めているお嬢様に敬意を払うのは当然。お嬢様、こちらのお坊っちゃまは?」
「あぁ、うちの土地の人間でね」
「Tです、よろしくお願いします」
「まさか、あのマンションの」
「えっ?あっ?そうなんですけども、有名なんですかね」
ラミア達もびびってる。
「ええそりゃあ、惨劇の被害者になろうところを助けられて、今ではあのマンションに一番長く住んでいる人ですからね」
「こっちではあのマンションのあいつはどう伝わってるの?」
「あぁ、実はこちらの街で出禁の騒ぎがあったんですけども」
「問題起こすやつだったのかい?」
「いえ、他のお客からの嫌がらせですね」
「うわ…そういう事情があったのか」
「それならうちに来てくれても良かったと思いますよ、今では残念ながら遅いですけども」
「…やっぱり狙いに来てると」
「たぶん、何人か人を犠牲にしたら、我々の戦うのが苦手とか、こうして商売を営んでいる辺りにやって来るのではないかと見てますね」
「まだ犠牲者は出てないからね」
「ただうずくまっているという感じですかね」
「でもまあ、マンションの他の住人からするとさ、いきなり水道がでなくなるとか、家電の寿命がとんでもなく早いとか、嫌でしょ」
「えっ?そんなことが起きているですか?」
「Tさんはご存知ないんですか?マンションにお住まいになられてますよね?」
「今はほぼ空き家ですよ、生活としてはこちらの黒舌さんの住処にお世話になっているので」
「…まあ、そうでしたの」
「お嬢様もお坊っちゃまも当店の名物ティータイムも楽しんでいかれませんか?」
「そうですよ、そうですよ、お嬢様もお坊っちゃまもお越しになられると知ったので、シェフが力を入れましたの」
他のラミアたちにつれられて、テーブル席でお茶をするようになった。
注文すると、他のお客さんも次々にやってくるが、ほぼ男性客のようだった。
「僕ね、帰省で疲れちゃったから、アットさんに癒してもらいたいな。はい、これお土産ね」
それを見てTさんは。
「ここはこういう感じの店なんですかね」
「己の欲望を解放し、素直になる店なんじゃないかな」
「なるほど奥が深い」
「Tさんとしてはどうなの?」
「どうって?」
「ああいう感じで、女の子と知り合うのは」
「いいんじゃないですかね…でもクラっと来ちゃっても、この思いが一方通行なのは辛いかな」
「ここはそんな感じでは…」
「すいません、おトイレ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
するとその一人の時間を楽しめるようにと、ラミアのお姉さんが失礼しますと、お茶のおかわりを持ってきてくれた。
「ずいぶんと仲がよろしいんですね」
「Tさんは出来れば人と上手くやってほしいんだけどもね、そうでなければ身持ちが固いラミアのお嬢さんなんかはどうかなって」
「えっ?それは…」
「結構いいとは思うよ、その…そういうのが趣味でもある人間なんて」
「それは確かに惹かれますけどもね」
その時、黒舌の髪を止めるピンが落ちた。
「私が拾います」
お嬢様の手を煩わせることはありません。
「鏡を貸してもらえないかしら?」
「もちろんですとも、よろしければどうぞこちらへ」
と従業員側のパウダールームを使わせてもらった。
「せっかくですから、髪も軽くセットさせていただきます」
そういって簡単ではあるがゆるくウェーブをつけられた、そこから出ると、ちょうどその時お客さんがこんにちはしてきて。
「君は…新しい子かな?」
側にいたラミアは不味いという顔をした。
「お坊っちゃまは相変わらずでございますね」
黒舌さんは高圧的に出た。
「もう少し気品高くおありなさいませ」
「はい!」
自然と返事をしてしまった。
このお姉さんはラミアではないが、俺にはわかる、そういった種族の方だ、普段の俺には縁がない高貴なお方…
「ありがとうございます、ありがとうございます、お正月から大変ありがとうございます」
「お嬢様、ここは我々にお任せください」
(お坊っちゃまにも裏口で待たせておきますので)
崇拝者が出そうになったので、その場から離れることになった。
「トイレから戻って待っていたら、席にはいなかったので」
ラミアのお姉さんがそっと、髪を直しておりますので少々お待たせいたします。とメッセージを伝えに来た。
そして待って、パウダールームから現れたら、あれである。
「もうちょっと見てたかったのはありますよ」
「ごめんね、ゆっくりお茶したかったでしょ」
「いえいえ、黒舌さんの魅力にああなるのはしょうがないことですから」
ラミア喫茶のお客さんはよく訓練されてます。
「ただ目の前であんなこと言われると、ムカッとはしてくるんで」
「私もビックリだよ、そんなに新入りさんに見えるのかな?格好も全然違うのに」
「それは…お客さんが男性ばかりだから、女性=みたいなところがあるとは思いますよ」
「なるほど、自分では気を付けているつもりだったけども甘かったわ」
「それはラミアさんたちもそう思っているでしょ、まさかお客さんに声をかけるとはって」
「そういえばそうね、でもお茶とか美味しいけども、次の来店はなさそうだね」
おそらくさっき声をかけてきたのは常連客なので、黒舌さんがいると商売の邪魔をしてしまうことになる、それを恐れているようだ。
「あぁ、それでもTさんなら歓迎されるんじゃないの?」
「僕はあなたとこたつにいるのが好きなんですよね」
黒舌さんの寝床は、一軒家のような部屋の作りをしてる。Tさんはこちらを居間と客室、トイレやお風呂などを使っているという感じ。
建築会社が用意したというよりは…
「ふ~ん、人間はこういうところに住んでいるんだ」
黒舌さんがそういってコピーしたらしい。
「コピーってできるんですか?」
「できたね」
元々住宅展示場、買い手がつかずに取り壊されたもの。
「これオプションついたやつですね」
「オプション?」
「家というのは、標準仕様から始まって、オプションで足していくような買い方をしているんですよ、この家は…」
あの会社の、いろんなものをモリモリとつけたもので、買ってたとしたらすんごいお金がかかるだろう。
「なんかこの元になった住宅展示場は本当は安くてもいいから、売り渡したかったんだけども」
なんか変な…いや、これ、事件が起きちゃうから。
「高確率で空き巣とかくるんじゃないかなって話だった」
「立地も良かったんだろうな」
「だろうね、それに比べるとここは空き巣しようがないな」
ただダニのやつはいつの間にか入り込んでる。
「場所的にはここはどこになるんですか?」
「世界の隙間って感じかね、世界と世界を支える壁は、スポンジみたいになっているところがあって、その隙間にいるよ。そういう理由で広さとかはこちらで調整できないんだ」
下手に広くしようとすると、隣が異世界の場合があります。
「一応はこっちで生まれたから、異世界に行ってもしょうがないよ。たぶん向こうにはこたつはないし」
「それじゃあ、こっちの方がいいですね」
ビリっ
その時Tさんでもわかるぐらい空気が震えた。
「ちょっとお仕事かもしれない、行ってくるよ」
「僕もお供します」
そういって裏口ではなく、玄関、商店街方面から外に出た。
するとそこは古びたビルの廊下で。
「商店街の組合がここにはあるんだ、組合長がこのビルを持ってる」
「あ~」
あの人か。
そんなビルの中なので、黒舌さんも竜蛇の姿で移動する。
「組合長、どうしたんだい?」
「あっ、神さん?えっ?」
むしろ組合長のほうがビックリしたようだ。
「空気の震えがあったのがこっちにまで届いたよ」
後でTさんが会釈をした。
「あぁ、それですか、神さんを煩わせるわけには…いえ、話だけでも聞いてもらいますか?」
「ええ、喜んで」
「まだみんなは休みなので」
組合長自らがお茶を入れてくれた。
「これはどうもありがとう」
「実はですね、とても困ったのがうちの商店街の関係者にはいるんですよ」
よくある店には生まれたが、ちゃんとしてない人間というやつだ。
「真面目にやらないのならば店をたためばいいのに、それだと生活が困るとかいう、ろくでもない人間なのですが…」
「それだけでは済まなかったと」
「そうです、どうも悪い何かになりかけている、そういう感じでしたね、神さんは空気が震えたいってますが…」
「Tさん、組合長はね、人間なんだけどもね、怒声に力があるんだよ」
「?」
「私はあまり怒らないのですが、私が怒るとその時に、叱る対象に何かがいる場合、それを一時的に祓うというか、散らせるんですよ」
ただこれも使い方が難しく、良いものもいなくなるという。
「さっきの震えはそれかな、何かがいなくなった、退散した、ビビったというかさ」
「私はただそれ以外は見えないわからないから、いなくなったときに初めて、いたのかってわかるんですよ」
故に組合長なのである。
「それでいなくなったときに、どのぐらいいなくなったのかっていうのが、わかるんですけども、神さんまで届いたってことは」
「おそらく、かなり転化しようとしているんじゃないかな」
「やはりそうですか」
「じゃないと、人の体が耐えられないんだ」
「なるほど」
「バカなことをしているとは思いましたが、そこまでだとは」
『だからいただきに参りました』
その声にソファーの三人は驚いた。
窓の前に男児が二人立つが、和装であるし、声がどうも子供にしては何か違和感があった。
『私は紅色童子』
『私は白色童子と申します』
そうそれぞれその色の衣装を身に付けている。
「それはどうもご丁寧に」
組合長は挨拶を返すのだが、黒舌さんは固まっている。
(黒舌さん)
「あっ、これは申し訳ない。以前お姿は見かけることはございませんでしたが、おられましたよね、二色童子の方々」
「二色童子…」
そういうと組合長が固まった。
「二色童子というのは?」
Tさんが聞くと、緊張が解け。
「ちょっとここから離れた地域の神さんなんだけども」
「格式がおありになるのです」
『お嬢さんにそう言われると何かむず痒い気がします』
『あの時はありがとう』
「いえいえ、私が頭を垂れるのは当然でございます」
『それでお話というのは、彼のものの話』
「あいつは一体何を、とんでもないことをしたのですか?」
『我々がほしいのは、彼のものの身柄』
『刑罰を与えたい』
「それはお好きなように、もはや我々の言葉では止められませんから」
『承知』
『では100の打ちすえで』
「そういうのは甘いのですか?厳しいのですか
」
「一回の100じゃないんだ」
「えっ?」
『毎日!』
「えっ?」
「しかも夜には薬を塗られて、朝には治るが、その薬も痛いという」
『寝るのも苦しい痛み』
『彼のものはどれほどまでに持つのか』
【ではさようなら】
そういって二色童子は去っていく。
「黒舌さん、組合長、僕は初めてですよ、相対したら、鳥肌がたったの」
ほら、これ。
「それは私も同じだよ、あの調子ならば、他にもきっと何かあるよ」
しかし二色童子の預かりになった今となっては、調べる意味もない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる