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僕は人形は嫌いなんです
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「今日は少し遅れるよ」
「ゆっくり来い、どうせ暇だ」
「本日は…お一人で」
「後で来る」
「左様で、何を召し上がります?」
「飲み物と軽く、あいつが来てから食事にする」
そういっていつものテーブルに行き、本を一冊読み始める。
綴りからすると、ドイツ語のものらしい。
「メメミヤさん、今日も1日お疲れ様」
「メッ」
あなたも元気ね。
「体が資本の生活してますと、疲れないというのは一番の武器だよ」
「メッ」
私はあなたのそういうところ、とてもいいと思うわ!
メメミヤさんからの好感度がまた一つ上がっている。
「いらっしゃいませ」
顔を見た瞬間。
「お連れ様はいつもの席でお待ちかねですよ」
「ありがとうね」
その声が聞こえると、栞を挟まずに厚い本をテーブルの上に置いた。
「どこまで読んだか、栞を使わずに覚えているのは相変わらずだね」
「そんなもん読んでればわかるだろう?」
「それが何人できるって話だよね」
「わからん」
上着をお願いして。
「ご飯は?」
「まだだ」
「じゃあ、一緒に」
「そうだな」
「この時間でもお腹減らないの?私は来る途中にお腹鳴ったわよ」
「そういうときは何かつまんでろ」
「そうなんだけども、店のすぐ側だしなって」
「また転移したらどうする?」
「…そうだね」
「約束だぞ」
「わかった」
「で、何を食べるんだ?」
「そうだね…」
なんて注文をしたあとに。
「今日も参ったね」
「参らない日はないんじゃないか」
「まあ、そうなんだけどもね」
『僕は人形は嫌いなんです』
「気難しい人だったからさ、大変だった」
「ワケありか」
「特にNGはないって伝えると、危険度は少ないが、そういう感じの話は多いね、まあ、これも勉強かなっては思ってる」
本当にダメな奴だと、メメミヤさんが怒りをぶつけてくると思われるので、そこは配慮はあります。
「その人は、人形に愛されているって言えばいいのかな、いや、あれは正確には人形ではないんだけども」
「どっちなんだ?」
「好きな人を失って、代わりに人形、ええっと好きな人ではないじゃん、だから距離を置いても、その人形に愛されている人って言えばいいのかな」
「相手は死んだとか?」
「そうは聞いてないなら、もしかしたらただの失恋かもしれない、でもさ、それでそっくりとは言わないけども…」
見た目がまず人間には間違えることはない。
「面影が見えるように作る、作ってもらったというのは、それはなかなかに重い感情だね」
「愛するということはそういうことだぞ」
「それは…また強烈な」
「恋する、愛して見なければわからないが、そうなる場合もあるんだ」
「うわ…大変だね、それは…」
「なんだ?お前はそうじゃないのか?」
「ねぇな~」
「なんだそりゃ」
「そういう意味ではそういうのが壊れているのかもしれない」
生きよう、死ぬかもしれない、そんな繰り返しがあったから。
「でも全くわからないというわけでもないよ」
「なんだと?」
「あるだろう?そういうの、小学生ぐらいに好きな子がいたら、ドキドキする、そういう奴だ」
「あいにくだが、その時期は初期化四因子の方が楽しめた」
「それはなかなか将来有望な小学生だね、で、その子は大人になった今はどのように社会貢献しているのですか?」
「世に絶望してセミリタイアしている、毎晩夕食を二人で食べるぐらいが楽しみだ」
「それは…本当に、何かこう活かせないものかな?」
「なんだよ」
「せっかく素晴らしい力があるのならばって奴かな」
「嫉妬や怒りが浮かばないのが本当にお前らしいな」
「何かな、そういう話をするとそんな感情を他者がわいちゃうから、話をするのをやめたのかな」
「そうだな」
「本人は悩み知らず、苦労知らずというわけでもないんだが、それとも贅沢な悩みだと思ったのかな」
「そうだろうな、あの顔は、嫌みはそうだろう」
「残念だね、自分の感覚以外を理解しないというか、もう少し自分ではないものの喜怒哀楽に詳しくなるべきだ」
「俺は興味はない」
「それもどうなんだろう、まあ、貴方らしいけどもね」
「俺は俺だしな、好かれたい奴に好かれていれば幸せだろう」
「世の中そうもいかないよ、まあ、いい関係を作っていても、裏切られることはあるけどもね」
「そんな場合はどうするんだ?」
「悲しいね」
「それで済むのか?」
「いや、済まないけどもさ、そう言うしかないじゃないか」
「お前は人がいいな」
「そう言われたくて生きているワケじゃないけども」
「知ってる」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「ふっふっ、こんなやり取りがありがたく思える日が来るとね」
「それだけ日常から離れているんだ、自覚しているのか」
「そうなんだけどもね…意外と普通の日常というのは奇跡的なバランスで成り立っているものなんだなと、転移しなくてもそういうものらしいということがわかってくるよ」
「見て見ぬ振りをしているから気づかないとか?」
「いや、狭い世界を生きているからこそ、気づけないみたいな、うちの学校だと成績で判断されるじゃん、ああいう感じ」
「正確には点数か才能だな」
「あぁ」
思い当たる節がある。
「今ならばお前らの方が希少だろう、一国ならぬ一つの世界の外交や貿易を担えるわけだから」
「あんまり実感はないけどもね、いきなり飛ばされて、10年生き延びたら誰にでも出来るんじゃないか」
「考えるのが面倒くさくなったな」
「まあね、実はそういうのは聞かれたからね」
「へぇ」
「まあ、そう言いたくなるような相手、苦労とか努力とかしたくないんだろうなって思える人だったから、美味しい話を聞きたかったとかそんなんじゃないか」
「そういうことは多いのか?」
「ほら、転移先が殺伐としてこったに帰ってくると、世間知らずじゃん」
「あぁ、そこを狙うのか」
「らしいね、女性の帰還者は少ないのか、名乗ってないのかはわからないけども、男性だと思って、ほら、勇者君の方と間違っていたみたい」
「ああなるほど」
勇者は同学年で一緒に転移被害にあい、帰還までパーティー組んでました。
「どうもそっちの方から、ほら勇者君って…いなくなった事で、保険が降りてるから、そのお金関係のトラブルから、…たぶん家族かな、情報がそういうのに流れているんじゃないかってことで」
ただKCJがあまり本腰入れてないのは、現在勇者は転移先の世界に移住しているので、さすがにこっちから追手は無理であると判断しているため。
「ただそういうやつはわからんぞ」
「お金の匂いって、わかるのかな?」
「わかるんだろうよ」
「なるほど気を付けておくし、本腰は入れてなくても、KCJは最低限の調査と、動きがあればすぐに対処できる怖さがあるからな」
「そこまでか」
「だって、KCJだぜ。ケットシーの尾を踏めばどうなるかって話」
「ケットシーは虎なのか?」
「虎より厄介じゃないかな、組織力が…」
「あぁなるほど」
「それに人間とは違う考えで、我々職員を配置するから、人とは上手くやる、助けるが、縄張りが一番大事なので、荒らしたら許さないよねって話。それ考えると、どこで異世界転移者をうちの子にしたいと思いますって決めたかはわからないけど、それをずっと守ってるんだよね」
この子と同じような、悲しい目をした子がいたら連れてきなさい。
「もちろん、上手く行かないこともあるだろうけど、他にアテがないから、KCJでやっていくしかないしなはあると思う。戦闘許可証という資格もそういう側面はあるんじゃないかな」
帰還者できるぐらいなので、戦える力があるものも多い、組織に所属できない場合でも、そこ技能を腐らせずに、生きていけるように。
「割合からすると?」
「こっちの世界で、戦闘技術を教えたりする、道場とかああいう人たちも多いけども、帰還者で戦闘能力あるならば、とりあえず許可証は取るんじゃないかな、あれは何が一番すごいって身分証明書としてさ、認められているところなんだよな」
あぁ、KCJの、それはスゴいですね。
「KCJより、身分証明書、民間資格としての方が有名なんじゃないかなって」
それがさらにKCJって何ですか?あぁ、あの資格試験の…って言われている。
「まさかケットシーの組合だとは思わないよね」
ただこれはKCJも誤算だったらしい。
日本人は資格試験大好きすぎるだったそうな。
「だから参考書関係の収益もすごいって話」
これまでに出てきた人で、その関係者は傘目(かさめ)だろう。
「毎週試験を受けに来て、合格発表後すぐに速報って有料で販売すると、これから試験を受ける人はもちろんだけども、合格している人も買うんだよね」
「お前は買ったりするのか?」
「無料のやつだけ見たよ」
試験は毎月変わるので、先月のものは無料公開されることが多い。
「一週目に行われるのは、もう合格している人が、腕試しや、その試験内容の速報を出すために雇われている人が多いんじゃない?それを見て、二週目は難易度調整するんだって、だから難易度が落ち着く三週目が一番受験する人が多い」
「残りは?」
「それは聞いてなかったが、たぶん更新ギリギリの人なんじゃないかな」
「で結局お前は二週目受けたのか、それで合格しているから、そこはさすがというか」
「あぁ、あれはラッキーだったね、一週目が難易度上げすぎました、支部によっては合格者いないってことで、ガッツリ下げてきた」
そういうことはするなの、するなよっていってるのに、なんでするんだよ!!
試験を作らなきゃいけないってわかってたのに、ギリギリになっちゃって、もうこれでいいかなってやっちゃった!
作る方も専任だと似通ってしまうので、こういうランダム試験問題製作者にしているのだが、その事で事故もたまには起きてます。
むしろこの辺でKCJ側としては、さすがにこれは合格者いないだろう…が出たりすると、特別優秀なという形を取るともあります。
「それはたぶん、取らせてくださいってやつだろうな」
「そう思う、お菓子持って謝罪いってたし」
特別優秀者になると、ケットシーのゴメンね饅頭を渡されるという話があるが、それは本当である。
「むしろ、名前を売りたい人はそれ貰うと写真撮りまくったり、プロフ、プロフィールになんか書くらしいよ」
KCJ戦闘許可証持ち(現在五年目)
ケットシーゴメンね饅頭を貰ったことがある。
「それって意味はあるのか?」
「あるんじゃないの?あっ、でもメメミヤさんは反応してなかったかな」
強者を知りたければサメを見ろ。
判定は!…いつも通りですね。
「メメミヤさんが、あっ、これは本気出さなきゃって顔をする時は、私も逃げることを先に考えるよ」
「それは逃がしてくれるのか」
「くれないかもしれないけども、退路が見えていると、下がりながら、次はどうするかって考えられるんだよ」
そこら辺の思考がメメミヤさんのお気に入りの点でもある。
「踏んだ瞬間、逃げ道全部塞がれて、追い込まれるとかいうパターンってそうあるもんじゃないよ、そこまで行くと、勝敗、勝つこと、討ち取ることが目的ではなく、相対することが楽しいわけだし、そういう楽しみを感じてもらえるほどの強さはないからな」
「そういう奴は日頃から違う空気纏ってるだろ」
「そうそう、そう思うよ。剣呑さが出ている人はまだこっちの世界に馴染んでいると思う、そういうことをする人、それって人なのかな?まあ、そういう嗜好を持ってる人はこの世は楽しくないと思うよ」
ただ少数派だがこの世界にもいるので。
「サンタさん見っけ」
この時期の、クリスマスのために一年で一番体を仕上げてきてるサンタとサメにわざわざ挑むというやつらはいる。
「達かよ」
「達だね」
これから小児科病棟にお手紙を届けるお仕事の前に、何の用だね?
そりゃあもう楽しみのため。
「ただこの辺もサンタは勝負を受けるんだよ」
「サンタは良い子の味方だからか?」
「いや、そういう奴等もわかってるんだわ、どうしたら自分の勝負を受けてくれるか」
勝っても負けても寄付はするよ。
「チャリティーか」
「これは向こうもサンタ精神をわかってるよね、最初っからそうしたわけではないみたいだけどもさ」
サンタはそれならば勝負を、手を抜かず、楽しませてくれる。
「挑んで来る人たちって、あんまりお金に興味がないから、サンタ自身もお金払うから戦ってくれるとかだと動かないけども、先天性の治療、その手術費用ためとか、院内学級の充実のためとか言われるとね」
「欲求をかみ合わせたのか」
「サンタの人たちは、確かに強いよ。ただこう、強さに意味はあるのか?って考えたときに人助けに答えを見いだしたって感じの人が多いのかなって。異世界転移被害者奪還活動なんてさ、私でもできないよ、そこまで芯がないとさ、心なんてすぐ折れるよ」
ありがとうを聞いたときに、ようやく自分の生き方が見えた気がしたんです。
長年サンタとして生きて、引退するときにそんな言葉を残したものはいる、その言葉を知ってるかはわからないが、サンタ達のなり方を聞く限りの印象だけで、そこまで感じれるのはやはり考察が優れているといっていい。
「ゆっくり来い、どうせ暇だ」
「本日は…お一人で」
「後で来る」
「左様で、何を召し上がります?」
「飲み物と軽く、あいつが来てから食事にする」
そういっていつものテーブルに行き、本を一冊読み始める。
綴りからすると、ドイツ語のものらしい。
「メメミヤさん、今日も1日お疲れ様」
「メッ」
あなたも元気ね。
「体が資本の生活してますと、疲れないというのは一番の武器だよ」
「メッ」
私はあなたのそういうところ、とてもいいと思うわ!
メメミヤさんからの好感度がまた一つ上がっている。
「いらっしゃいませ」
顔を見た瞬間。
「お連れ様はいつもの席でお待ちかねですよ」
「ありがとうね」
その声が聞こえると、栞を挟まずに厚い本をテーブルの上に置いた。
「どこまで読んだか、栞を使わずに覚えているのは相変わらずだね」
「そんなもん読んでればわかるだろう?」
「それが何人できるって話だよね」
「わからん」
上着をお願いして。
「ご飯は?」
「まだだ」
「じゃあ、一緒に」
「そうだな」
「この時間でもお腹減らないの?私は来る途中にお腹鳴ったわよ」
「そういうときは何かつまんでろ」
「そうなんだけども、店のすぐ側だしなって」
「また転移したらどうする?」
「…そうだね」
「約束だぞ」
「わかった」
「で、何を食べるんだ?」
「そうだね…」
なんて注文をしたあとに。
「今日も参ったね」
「参らない日はないんじゃないか」
「まあ、そうなんだけどもね」
『僕は人形は嫌いなんです』
「気難しい人だったからさ、大変だった」
「ワケありか」
「特にNGはないって伝えると、危険度は少ないが、そういう感じの話は多いね、まあ、これも勉強かなっては思ってる」
本当にダメな奴だと、メメミヤさんが怒りをぶつけてくると思われるので、そこは配慮はあります。
「その人は、人形に愛されているって言えばいいのかな、いや、あれは正確には人形ではないんだけども」
「どっちなんだ?」
「好きな人を失って、代わりに人形、ええっと好きな人ではないじゃん、だから距離を置いても、その人形に愛されている人って言えばいいのかな」
「相手は死んだとか?」
「そうは聞いてないなら、もしかしたらただの失恋かもしれない、でもさ、それでそっくりとは言わないけども…」
見た目がまず人間には間違えることはない。
「面影が見えるように作る、作ってもらったというのは、それはなかなかに重い感情だね」
「愛するということはそういうことだぞ」
「それは…また強烈な」
「恋する、愛して見なければわからないが、そうなる場合もあるんだ」
「うわ…大変だね、それは…」
「なんだ?お前はそうじゃないのか?」
「ねぇな~」
「なんだそりゃ」
「そういう意味ではそういうのが壊れているのかもしれない」
生きよう、死ぬかもしれない、そんな繰り返しがあったから。
「でも全くわからないというわけでもないよ」
「なんだと?」
「あるだろう?そういうの、小学生ぐらいに好きな子がいたら、ドキドキする、そういう奴だ」
「あいにくだが、その時期は初期化四因子の方が楽しめた」
「それはなかなか将来有望な小学生だね、で、その子は大人になった今はどのように社会貢献しているのですか?」
「世に絶望してセミリタイアしている、毎晩夕食を二人で食べるぐらいが楽しみだ」
「それは…本当に、何かこう活かせないものかな?」
「なんだよ」
「せっかく素晴らしい力があるのならばって奴かな」
「嫉妬や怒りが浮かばないのが本当にお前らしいな」
「何かな、そういう話をするとそんな感情を他者がわいちゃうから、話をするのをやめたのかな」
「そうだな」
「本人は悩み知らず、苦労知らずというわけでもないんだが、それとも贅沢な悩みだと思ったのかな」
「そうだろうな、あの顔は、嫌みはそうだろう」
「残念だね、自分の感覚以外を理解しないというか、もう少し自分ではないものの喜怒哀楽に詳しくなるべきだ」
「俺は興味はない」
「それもどうなんだろう、まあ、貴方らしいけどもね」
「俺は俺だしな、好かれたい奴に好かれていれば幸せだろう」
「世の中そうもいかないよ、まあ、いい関係を作っていても、裏切られることはあるけどもね」
「そんな場合はどうするんだ?」
「悲しいね」
「それで済むのか?」
「いや、済まないけどもさ、そう言うしかないじゃないか」
「お前は人がいいな」
「そう言われたくて生きているワケじゃないけども」
「知ってる」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「ふっふっ、こんなやり取りがありがたく思える日が来るとね」
「それだけ日常から離れているんだ、自覚しているのか」
「そうなんだけどもね…意外と普通の日常というのは奇跡的なバランスで成り立っているものなんだなと、転移しなくてもそういうものらしいということがわかってくるよ」
「見て見ぬ振りをしているから気づかないとか?」
「いや、狭い世界を生きているからこそ、気づけないみたいな、うちの学校だと成績で判断されるじゃん、ああいう感じ」
「正確には点数か才能だな」
「あぁ」
思い当たる節がある。
「今ならばお前らの方が希少だろう、一国ならぬ一つの世界の外交や貿易を担えるわけだから」
「あんまり実感はないけどもね、いきなり飛ばされて、10年生き延びたら誰にでも出来るんじゃないか」
「考えるのが面倒くさくなったな」
「まあね、実はそういうのは聞かれたからね」
「へぇ」
「まあ、そう言いたくなるような相手、苦労とか努力とかしたくないんだろうなって思える人だったから、美味しい話を聞きたかったとかそんなんじゃないか」
「そういうことは多いのか?」
「ほら、転移先が殺伐としてこったに帰ってくると、世間知らずじゃん」
「あぁ、そこを狙うのか」
「らしいね、女性の帰還者は少ないのか、名乗ってないのかはわからないけども、男性だと思って、ほら、勇者君の方と間違っていたみたい」
「ああなるほど」
勇者は同学年で一緒に転移被害にあい、帰還までパーティー組んでました。
「どうもそっちの方から、ほら勇者君って…いなくなった事で、保険が降りてるから、そのお金関係のトラブルから、…たぶん家族かな、情報がそういうのに流れているんじゃないかってことで」
ただKCJがあまり本腰入れてないのは、現在勇者は転移先の世界に移住しているので、さすがにこっちから追手は無理であると判断しているため。
「ただそういうやつはわからんぞ」
「お金の匂いって、わかるのかな?」
「わかるんだろうよ」
「なるほど気を付けておくし、本腰は入れてなくても、KCJは最低限の調査と、動きがあればすぐに対処できる怖さがあるからな」
「そこまでか」
「だって、KCJだぜ。ケットシーの尾を踏めばどうなるかって話」
「ケットシーは虎なのか?」
「虎より厄介じゃないかな、組織力が…」
「あぁなるほど」
「それに人間とは違う考えで、我々職員を配置するから、人とは上手くやる、助けるが、縄張りが一番大事なので、荒らしたら許さないよねって話。それ考えると、どこで異世界転移者をうちの子にしたいと思いますって決めたかはわからないけど、それをずっと守ってるんだよね」
この子と同じような、悲しい目をした子がいたら連れてきなさい。
「もちろん、上手く行かないこともあるだろうけど、他にアテがないから、KCJでやっていくしかないしなはあると思う。戦闘許可証という資格もそういう側面はあるんじゃないかな」
帰還者できるぐらいなので、戦える力があるものも多い、組織に所属できない場合でも、そこ技能を腐らせずに、生きていけるように。
「割合からすると?」
「こっちの世界で、戦闘技術を教えたりする、道場とかああいう人たちも多いけども、帰還者で戦闘能力あるならば、とりあえず許可証は取るんじゃないかな、あれは何が一番すごいって身分証明書としてさ、認められているところなんだよな」
あぁ、KCJの、それはスゴいですね。
「KCJより、身分証明書、民間資格としての方が有名なんじゃないかなって」
それがさらにKCJって何ですか?あぁ、あの資格試験の…って言われている。
「まさかケットシーの組合だとは思わないよね」
ただこれはKCJも誤算だったらしい。
日本人は資格試験大好きすぎるだったそうな。
「だから参考書関係の収益もすごいって話」
これまでに出てきた人で、その関係者は傘目(かさめ)だろう。
「毎週試験を受けに来て、合格発表後すぐに速報って有料で販売すると、これから試験を受ける人はもちろんだけども、合格している人も買うんだよね」
「お前は買ったりするのか?」
「無料のやつだけ見たよ」
試験は毎月変わるので、先月のものは無料公開されることが多い。
「一週目に行われるのは、もう合格している人が、腕試しや、その試験内容の速報を出すために雇われている人が多いんじゃない?それを見て、二週目は難易度調整するんだって、だから難易度が落ち着く三週目が一番受験する人が多い」
「残りは?」
「それは聞いてなかったが、たぶん更新ギリギリの人なんじゃないかな」
「で結局お前は二週目受けたのか、それで合格しているから、そこはさすがというか」
「あぁ、あれはラッキーだったね、一週目が難易度上げすぎました、支部によっては合格者いないってことで、ガッツリ下げてきた」
そういうことはするなの、するなよっていってるのに、なんでするんだよ!!
試験を作らなきゃいけないってわかってたのに、ギリギリになっちゃって、もうこれでいいかなってやっちゃった!
作る方も専任だと似通ってしまうので、こういうランダム試験問題製作者にしているのだが、その事で事故もたまには起きてます。
むしろこの辺でKCJ側としては、さすがにこれは合格者いないだろう…が出たりすると、特別優秀なという形を取るともあります。
「それはたぶん、取らせてくださいってやつだろうな」
「そう思う、お菓子持って謝罪いってたし」
特別優秀者になると、ケットシーのゴメンね饅頭を渡されるという話があるが、それは本当である。
「むしろ、名前を売りたい人はそれ貰うと写真撮りまくったり、プロフ、プロフィールになんか書くらしいよ」
KCJ戦闘許可証持ち(現在五年目)
ケットシーゴメンね饅頭を貰ったことがある。
「それって意味はあるのか?」
「あるんじゃないの?あっ、でもメメミヤさんは反応してなかったかな」
強者を知りたければサメを見ろ。
判定は!…いつも通りですね。
「メメミヤさんが、あっ、これは本気出さなきゃって顔をする時は、私も逃げることを先に考えるよ」
「それは逃がしてくれるのか」
「くれないかもしれないけども、退路が見えていると、下がりながら、次はどうするかって考えられるんだよ」
そこら辺の思考がメメミヤさんのお気に入りの点でもある。
「踏んだ瞬間、逃げ道全部塞がれて、追い込まれるとかいうパターンってそうあるもんじゃないよ、そこまで行くと、勝敗、勝つこと、討ち取ることが目的ではなく、相対することが楽しいわけだし、そういう楽しみを感じてもらえるほどの強さはないからな」
「そういう奴は日頃から違う空気纏ってるだろ」
「そうそう、そう思うよ。剣呑さが出ている人はまだこっちの世界に馴染んでいると思う、そういうことをする人、それって人なのかな?まあ、そういう嗜好を持ってる人はこの世は楽しくないと思うよ」
ただ少数派だがこの世界にもいるので。
「サンタさん見っけ」
この時期の、クリスマスのために一年で一番体を仕上げてきてるサンタとサメにわざわざ挑むというやつらはいる。
「達かよ」
「達だね」
これから小児科病棟にお手紙を届けるお仕事の前に、何の用だね?
そりゃあもう楽しみのため。
「ただこの辺もサンタは勝負を受けるんだよ」
「サンタは良い子の味方だからか?」
「いや、そういう奴等もわかってるんだわ、どうしたら自分の勝負を受けてくれるか」
勝っても負けても寄付はするよ。
「チャリティーか」
「これは向こうもサンタ精神をわかってるよね、最初っからそうしたわけではないみたいだけどもさ」
サンタはそれならば勝負を、手を抜かず、楽しませてくれる。
「挑んで来る人たちって、あんまりお金に興味がないから、サンタ自身もお金払うから戦ってくれるとかだと動かないけども、先天性の治療、その手術費用ためとか、院内学級の充実のためとか言われるとね」
「欲求をかみ合わせたのか」
「サンタの人たちは、確かに強いよ。ただこう、強さに意味はあるのか?って考えたときに人助けに答えを見いだしたって感じの人が多いのかなって。異世界転移被害者奪還活動なんてさ、私でもできないよ、そこまで芯がないとさ、心なんてすぐ折れるよ」
ありがとうを聞いたときに、ようやく自分の生き方が見えた気がしたんです。
長年サンタとして生きて、引退するときにそんな言葉を残したものはいる、その言葉を知ってるかはわからないが、サンタ達のなり方を聞く限りの印象だけで、そこまで感じれるのはやはり考察が優れているといっていい。
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