浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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愚かな夢

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「執事長に取って、領主は合格といえますか?」
「なんだ急に」
「いえ、付き添っているのですが、たまにあの御方がわからなくなる」
「表面上の見える部分だけが全てではないし、そうであってほしくない」
「まあ、それはそうですがね」
この二人は親子です。
「ただどこか、秘めたるものはあるとは思うが…」
「それは奥様関連でしょうか?」
「いいや、嗜好の問題だよ。まあ、こればっかは、男だから、ほどほどであれば…はある」
「美女と美食に弱いって、よく領主になれましたね」
「ちょうどいい年齢の人間がいなかったはあるだろう、領主殿の卒業の年は波乱があったそうだ」
主席が本来歩むコースが、病気のために歩けなくなったので、えっ?支援してたんですけども…ちょっと待ってよ、あっ、返済してくれるのはうれしいんですが、それでも人員獲得に繋がらないと…みたいな感じ。
「病気は仕方がないですよね」
「ただそれを引いても、とんでもなく優秀らしくて、それこそ歴史が変わったと言えるとさえ言われたぞ」
今は故郷に帰ってます。
「まっ、奥様も旦那様の美女美食好きはいつか必ず何かを招く、もちろん悪い方にとは思っているからこそ、かなり熱心に食事をまず直したからな」
「お姉さまからのお怒りにも怯えているようですが」
「だって自分が悪いんだもん、言い返せないし」
そうはいうかもしれないけど、旬の美味しいものがとれましたよ。領主様、是非召し上がってくださいねって言われたら、断れないよね。
「その断れないよね!って言い返した瞬間、まあ…そのすごかったですね」
最後に言い残すことはそれでいいわね? 
それと義妹さん、こいつとはもう婚姻関係は終わらせた方がいいと思うのよ。
それはちょっと…
何?言い訳する気?
言い訳ではありませんが…
領主という立場は、自分の幸福や欲望を出していては務まるものではない。
はい!
返事はいいが、何もわかってはいないでしょ?

「怒らせるととても怖いので気をつけてくださいって兄からの手紙に書いてあった通りだった」
領主姉と執事長の長男は同じ人にとお仕えしているよ。
「奥様は怒るが怖くはないからな、あのぐらいで抑止力になるなら…まあ、悪くはないのではないかとは思うが…」
さて、どうなるのか。


「姉に離婚に関しての嘆願書を私からも出すからね、と言われてしまった領主です」
「もっと別の男にしたらいいわよ、忠義の厚い細マッチョなんてどう?と言われ領主妻です」
「くっ、冗談に冗談を返してきたよ」
「まだ冗談になるうちならばと、ここからはふざけませんが」
「そんなに怒るとは…」
「私たちは節制を、規律を求められていますからね」
「それは…そうだけどもさ」
「そこが己を守るためにあるというのはご存じですよね」
「そうですね…」
「というか旦那様が美食にはまった理由は?」
「世の中にはこんな美味しいものがあるんだ!嬉しい!」
「ああ、これはなかなか治りませんね、よくここで止まれましたね」
「それは君の用意してくれたレシピが美味しいんだよね、材料聞いても、同じように作れなくて…なんでだろうか?」
「ああ、あれはすぐに食べるからこそあの美味しさなんで、時間が経過すると香りが飛ぶんですよ」
「えっ?そこまで計算しているの?」
「香りは大事でしょ?後は切り方で、浸透圧が変わったりするし、ただ私だと毎回ぶれなく作るのは無理だから、料理人のみなさんはやっぱりすごいかな」
その他にも出汁を時間かけて用意したり、トマトはトマトでもいつもと品種が違うものとか。
「くっ、知識の段階で勝てないというのか」
「勝つも何も、旦那様もそれはそれで博学でしょうが」
「それは…そうなんだけども…」
「それにそこまで詳しかったら、それはそれで凹む」
あっ、これは美味しいよね。食べる直前に潰しさないと香りはあっという間に消えちゃうんだよ~
「でも旦那様の欲望はそのうち私では支えれなくなるでしょうね」
「えっ?」
「旦那様の御心は計り知れないものがある」
「そう?」
「そうですよ、自覚はありせんか?」
「自覚?」
「一度手痛い失敗すれば目が覚めるかもしれませんが」
「なんかそういうのは嫌なんだよね」
「では諦めるかというと」
「無理…なるほど、これが僕の中にある、何かか」
「誘惑に負けてしまいみたいなやつかな、美味しいものをお腹一杯食べまくりたいとか、美しいかたと…みたいな」
「君といると、ブレーキではないけども、満たされるものはあるんだけどもね、そっか僕も変わる時期が来てるのかもしれない」
「美女に囲まれるとか」
「逆に君がイケメンに囲まれていたら、僕は膝から崩れると思う」
「えっ?そうなんですか?」
「そこで楽しそうにしてたら、もうね、えっ?俺にはそんな顔を見せてくれないじゃん…って、いやいや、夫婦の絆はあるとは思いますよ、あるとは思うけどもさ」
「自分の幸せなよりも領内のことを考えることができないと、ダメであるっていうものが我慢できない瞬間は誰にでもあるかな、ただまあ、そこをどうするかなんで」
逆に我慢してしまう人間もダメとされる、娯楽とか文化を無駄と考えて、予算を切ってくるから。
「お金のかからない、心身ともに健康を保てる娯楽のアイディアは、いくらあってもいいというやつですから」
「そういうのか」
「病気になってもできるようなぐらいが望ましい、健康な時に楽しめるものしかないと、それを失ったときに困ってしまうので」
「誰もがみんな堅苦しい本を楽しめるわけではないからな」
「風刺されちゃいますね」
「魚が住むには何がいるってやつだ」
「ナトリウム、カリウム…」
「それにあたる材料を見つけなきゃダメってことね」
「そういうことではありますが」
「先は長いな」
机に上半身を預ける。
「ここまで大変だとは…わかっていたけどもさ、君と話をしてみると、僕は最初からとらえ方という部分で間違っていたんじゃないかと思ってるよ」
「何を失っていいか、ここは譲れないポイントは何か」
「それを考えると、本当に遊んでいる暇はなかった、いや、遊んでいるつもりはないよ、つもりはないけども、もっと準備をしてから走り出せば良かった」
「最初から事前にみんなわかるわけではありませんよ、わかってから修正を小刻みに入れれる方がいいんです」
「それはわかってるんだけどもさ、うん、なんか自信はなくしちゃう」
「お仕事の方は大分先に進めて落ち込む時間はまだたくさんありますから」
「落ち込む時間ね」
そこで急に起き上がり、椅子からも立ち、妻の元にやってくる。
「隣に座っても?」
長椅子の彼女に聞くと。
「構いませんよ」
「僕は可愛い人とか美人に目を奪われてしまうところがある」
「あ~それは私もですかね、うわ~細い、白いって」
「たぶんそういう女性の目線とは別だよ」
「ええ、まあ、男性ですからね」
「そこは隠してもね、失礼のないようにはするけどさ」
「問題にいつかなりそうですね」
「くっ」
「悪い子はどこかな」
「あっあっあっ」
「ここで嬉しそうにしないでくださいよ」
「いや、嬉しいでしょうよ。でもちっとも本気じゃないし」
本気の時はここにボディタッチというか、フェザータッチが来ます。
「あれはいいものです」
思い出しても素晴らしいものだと自信をもって言えるのです。
「大丈夫かしら」
「ちょっとダメかな」
「ダメかなって…」
「ダメなものはダメっていうよ、どうもこの頃勝手が違うというか、体力があるせいもある、なんかこう万能感の復活って感じかな、どんどんおっさんになる自分は、もうこんなものなのかなって思ってましたが、まだいけるみたいです。そうなると、こう欲が出てくるから」
「あぁ、そういうのでしたか、それならば食事を直したのは…」
「君のせいじゃないよ、そこは僕が全面的に悪い」
「そうですか」
「そうだよ、僕は愚かだな、せっかく調子をよくしようと頑張ってくれていて、調子が上向いたら、今までのことを忘れて、愚かな夢を見ようとした」
「愚かな夢ですか」
「愚かでしょ、客観的に見たらさ、そうやって元に戻った体力で遊びに行こうとして、遊び呆ける。そんなことを始めそうになっていた、ここはさ、もうさ、止まらなきゃダメなんだよ、あの時自分の力では限界だったのだから、朝起きれない疲れがとれない俺を基準にして生きていかなきゃダメなのさ」
「そこまでしなくてもいいんじゃないですかね、疲れ取れなくて朝起きれないって、もうそれは何もできない状態になってるのではないですか?って話だし」
「それはそうなんだけどもさ、明らかに朝もおはようハニー!って感じで起きてるんだもん」
毎日が楽しい!
「しかも仕事のペースは前のままにしているから、毎日の仕事は終わらせれる、今まで時間がなくてできないことをじっくりと考えれるんだよ」
「そのじっくりの時間があったとしても…残念ながら教育などは足りないと言ってもいいですからね」
「そうなんだよね、期待してるだけでは、狙った成果は出せないしさ、こちらが直接的にはいえないけども、意図を理解して動いてくれる人はやっぱり何か違うよね、そのうち名前を残す人になるのはそういう人たちだ」
「旦那様は名前を残したいですか?」
「そりゃあ、多くなくてもいいけども、こう…やっぱりあるでしょ、俺が来る前はこうだったのが、今はこう、素晴らしいね、さすがは領主様ってね」
「でも旦那様は要点だけ抜き出すのって苦手だからな」
「…そうなの?」
「ええ、なんかこう、意図している要点がわからなくて、全文覚えちゃうタイプっていうのかな、それでなんとかできちゃうのもすごいんですが、それは私にはできませんよ」
「慣れだよね」
「慣れでできる人も少ないでしょうよ」
「君は本当に面白いな、こういう話にもついてこれるんだもん、そういう頭の中の寂しさを埋めてくれるのははじめての感覚だ」
「文通相手でも探したらいいんじゃないですか?」
「こちらはパンセ・リヴィエル、おっさんでありながら恋する乙女のような気持ちになっている、女性に贈ると喜ばれるものを知らないかい?とか聞いてみようかな」
「それは…給付金対象の学生さんも困るんじゃないですかね」
「わからないよ、なかなかのジョークで返してくれることもあるんじゃないか?ただまあ、自分の身内なんかをじゃあ、どうですか?って勧められたら困るけども」
「こういうところなんですよね、旦那様の、本気で起きたらすんごい困るのに、気になる」
「そこは性だね」
「もうしょうがない人だな、でもそれを消すためのダメージ、ショックさって、人生を転落するほどだから、実際にそうなってもらっても困るんですけどもね~」
「それも薄々はある、あるが、こう…」
「旦那様が鼻の下を伸ばす女性をつれてこなければ」
「すごい昔の、他の国なんかでは、そういうのを選ぶのも正妻の仕事であったみたいなのはあるけどもさ」
ただこれは、旦那がなくなった場合はそのまま追い出されるという悲劇はよくあった。
「君が来るまで、僕は身近に誰かがいるということはそうそうになかった」
「だから良さそうに見えるものに憧れるんです

「そうだね、男ならば一度でもとかいうタイプのやつだ、憧れたものを得れる人は本当に少なく、実際に得ているような人たちというのはスタートラインから違うものだよ」
お金持ちとかだけではなく。
「話を聞いたら、こりゃあ天才って言われるよねって、納得しちゃう感じ、ああなんで同世代に比べられる上がいるのかなって、どう考えても横にも並べないんだよ、そうなると…楽しいことがほしくなる、癒されたくなる、味わいたくなるっていう、こう流されるコンボだね」
「何か旦那様も新しい趣味を見つけられたらいいんじゃないですかね」
「毎日の君との会話、これははずせないよ」
「私の話は口うるさくないですかね」
「ないよ、それを言われるとしたら、僕が悪いんだ」
「あなたの場合は全部一人でやりすぎる、実は思考も柔軟性もそうあるわけでない、見識が狭い」
「狭いよ、油断すると人にわからないような話とかしちゃうもの、自分の世界に入ってしまうから、聞いている人は置いていかれているし、つまらないと思う。でも、僕はその話をしたいし、わかってもらいたいんだけどもね」
大事なことを話しているつもりだ。
でも、相手からすると何それ?というもので、酷く傷つくし、眺めに瞼を閉じてから、話題を変えることにする。
「君との会話はそういうのがない、わからないこととどう挨拶すればいいのか、つきあえばいいのかわかってるお嬢さんだ」
そしてこの辺が偏屈と呼ばれるような男からすると、たまらないらしい。
「人妻だって知っていても、政略結婚だから自分にもチャンスがあるのではないかとか、考えているんだろうなって、素振りはたまにされるから」
明らかにそういう時の男たちは、こちらを見ている。
ただそれを見て、自分もその目がわかると思ってしまうのだ。
こんな風に楽しい関係を人、女性と築けることができるということ。
いつか、その重さを知らないで、誘惑に負けてしまう日が来るのだろうか?
この子でもいけたのだから、あの子でもいけると、ウキウキしてしまうのだろうか?
可哀想な立場の娘を嫁に迎い入れた、人のいい領主という評判、自分ではそうは思ってたなかったが、そんな噂も出ていたりもするらしい。
頭がいいだけじゃなくて、義理や人情もある人が領主になってくれるんだもんな!
今日も頭の中で回りだす、答えは出なくて…
「大丈夫ですか?」
「考えすぎちゃったよ」
「悪い方にいきましたか」
「いったよ、僕が何かをすると全部うまく行かないんじゃないかって思ってさ、寸前まで昔は直してたりしたよ」
「怒鳴られたりしてたんですか?」
「いいや、そうじゃない、格好つけなもんだからさ、そんなことをしてた」
「好きな子でもいんですか?」
「いや、モテたかったよ。格好悪いよね、方法を間違えてるんだもん」
「方法ね…」
「間違えているでしょ、遠回りする時間も気力もないのに、いつもそういうのを選んじゃう」
「でもね、旦那様のそういうところ、私は嫌いじゃないんですよね。あっ、私も時間ですね、面会の準備をしなくては…」
そういって立ち上がる奥様。
「待ってよ」
「何か?」
「いや、ごめん、呼び止めてしまったよ」
「いい子にしててください」
「僕、留守番、上手にできるよ」
「狼が来ても、ドアは開けちゃダメですよ」
「そこはしっかり隠れたいよね」
「隠れれますか?」
「避難訓練はしなくっちゃ」
「顔を見たら、抱きつかれそう」
「抱きつきたいよ、癒し、癒しが俺には足りねえんだよ」
「悪い子ですね」
「悪い子だよ」
「時間は作ります、あなたと話す時間を」
このいい方が実に男前なのである。
「だからそれまでお待ちいただけますか?」
返事がすぐに来なかったのでシュンとされるが。
「ああ、ごめん、もちろんだよ、なんかこう、女の子みたいになっちゃってた。君のこういうところは、本当に上手い、上手いって言ったらダメなんだけどもさ」
しかも無自覚。
「俺と君が男女逆だったとしたも成立しそうというか、年下の子犬系男子が、こういうことをいってきたらね。どんなに遅くても起きて待ってますからって言っちゃうよね」
「あなたが眠そうな目をして待っていてくれるのは嬉しいですが、そんなことはさせませんから、早く帰ってきます」
「…ほら、こういうところなんだよな」
夫である領主にしかもちろんこんなことは言わないのだが、これが、この言葉遣いと誠実さが乙女心というのをくすぐるのだ。
「自分が憧れはするけども、モテるような人間、振る舞いはしてないから、そりゃあモテるはずはないよなって思う。だから僕は愛してくれる、大事にしてくれる人を大事にしたいと思ってるんだけどもね」
すり抜けていってしまう。
彼女もそのうち、こんなつまらない僕のことを飽きてしまって、他の男の元に向かうのだろうか。
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