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不思議なこともあるもんだね
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「伯父さん!」
領主の姿を見ると、甥っ子は手を振った。
「元気にしてたか?また大きくなったんじゃないか!」
他にも兄弟はいるが、フットワークが軽い彼だけはこちらに顔を出しに来る。
「それで早速なんですが…」
そういって信書を差し出した。
差出人の名前を見て、凍りついた後に受け取り、中を見てはまた凍りつく。
「内容は母からも聞いてますので、近いうちに一度こちらに来ると」
「姉さんが来ちゃう」
そんな伯父の姿を見て、甥っ子は御愁傷様ですの顔をした。
「あら、もう来られてたのね」
「ええっと、初めまして、おば様でよろしいでしょうか?」
「伯母ですから、もちろん!」
そこで挨拶を交わした後に、あれ?うちの旦那様がなんか変な顔をしているぞ。
「どうしたんですか?」
「うちの母が近いうちに伯父に話があると」
「説教される」
「説教?何か悪いことでも」
「健康診断の話を祖母から聞いて、大変ご立腹になってまして、おば様、うちの地元の話をご存じでしょうか?あまり食事や生活に気を使わない人間が多くて、医療費が嵩んでしまいましてね、うちの両親はそれを何とかしようとしている派なもので、ストイックに生活しているんですよ」
そんな夫妻の妻弟が嬉しくって、健康診断の数値改善しました!って喜びを伝え、お前ちょっと待て、今まで危なかったんかい!ということでお怒りだそうです。
「うわ~」
「おじさん、申し訳ないですが、この件はおとなしく正座でお説教をされた方がいいかと思います」
「うん」
「後ですね、おば様には母は大変感謝をしております、これからもお願いすると」
「そうですか?でももう私がいなくても旦那様はきちんと体は守れると思いますよ」
「人はね、愛がなければ生きてはいけないんだよ」
そんなことを言い出したので、甥は、えっ?どういうこと?という顔をした。
「愛情をもって君が接してくれたからこそ、この改善は可能になったのであって」
「どういうことですか?」
「あなたのおじさまとは、私はそこまで長い付き合いではないのだけども、この方はこういう人なんですか?」
「いいえ、こんな姿を見たことはないですが…」
恋愛じゃなくて、政略って聞いてたし、どういうこと?
「僕は愛を見つけてしまったんです!」
「旦那様、愛についてここで熱く語っても、外は寒いですから、どうぞ仲にお入りください」
三男執事がそういうと。
「お兄さんのお手紙も渡されています」
「兄からですか?」
三男執事の長男は、領主姉夫妻が住んでいる地域にいるというか、部署は聞いてないが、仕えている人は同じである。
「それでは確かにお預かりいたします」
この関係は偶然ではなく、むしろ逆でこことの関係があったこともあり、この夫妻の妻の弟は、大変優秀だし、領主になりうる資格と経験を持ち合わせているし。こちらにいる血縁者も信用おける人たち、何かあったとき動けるというので話がトントン拍子に進んだのだ。
「それで私が先に信書を持ってきたのは、どうやっておじさんが数値を改善したのか、その工夫で取り入れるものがあればまとめてほしいという依頼もあるんだよ」
ということは書類、数値もきちんと読めるのだろう。
「旦那様、関係の書類は用意させておりますが、どうなさいますか?」
「隠すことはないから、実際に見てみるといいんじゃないかな?」
「えっ?いいんですか?それはありがたいですね」
ということで、伯父夫妻と甥の世間話をする予定が、甥による伯父の健康改善、その報告書の吟味になってしまった。
「せっかく来てくれたのに、ちょっとそこは残念だけども」
「仕方がありませんよ」
お茶を一杯飲んだ後は、先程から三男執事を前にして、書類に目を通し、メモをつける。わからないところは執事に質問して、そこでも腑に落ちない場合は、実際に改善させた、伯母に話が飛んでくる。
「旦那様は美味しいものが好きですから、美味しくないものに切り替えるが実質不可能なんですよ」
「それもまた」
「だって美味しいって素晴らしいよね」
「自然薯ってずいぶんと高級なものをお食べに」
「ああ、それね、うちの実家方面だと値段があまりつかないから、購入価格は高級食材価格ではないのよ」
そういって購入した領収書も準備してもらい。
「あ~本当だ。でもこれって、うちの近所だと高級帯の食事どころじゃないと食べることもできませんよ」
「じゃあ、持ってく?後でご飯食べるときにもかけて食べるといいよ」
そこで甥はおじを見る。
「彼女はこういう人だよ」
「なるほど、しかし、このおやつも今までの半分とありますが、半分で我慢できるんですか?」
「出来たね、『旦那様、私と半分こしましょう』って言われたら、うん、そうだね、そうしようか…って、好きな子と、一つのものを分けあうって幸せなことだよね」
ん?んん~ん?ん???
「ごめんなさい、でも私もこれで守ってくれるなら、いいかなって思ってしまいました」
「おば上は、心が広い人なんですね」
「そうだね、俺のストライクゾーンぐらい広いよ」
「おじ上…」
甥はおじさんは、物静かで理知的な人だと今までずっと思っていて、うちの家族とは全く違うな、尊敬するなって思ってました。
「…僕も人だよ」
「それは痛いほどわかりましたが、正直今まで見ていたおじさんはどこにいってしまったのか、迷子センターに頼みに行くところですよ」
「たぶんそれなら彼女のところさ、腰に抱きついて離れやしないよ」
「どれだけ好きなんです?」
「そりゃあ、誰よりも好きだよ。結婚して良かったと思うぐらいにさ」
「結婚の書類を作成するときに初めてお会いしたと聞いてますが?」
「う~ん、挨拶は交わしたことはあるけども、それだけで、どこの誰かがはっきりしたのがこっちに来てからだ」
「それでもそこまで好きに、惚れれるものなんですか?」
「惚れたね、まあ、誰もがそうであるわけではないけども、政略結婚も悪くないねって思っちゃったよね」
「おじさん…」
「まあ、君はこういう話が出ても乗らないように、好きな子と付き合って結婚するのが一番いいから」
「おじさんはなんで政略結婚に賛成だったんですか?」
「このまま一人なのかな…って」
独身男性な悲哀が出ていた。
「領主になると、恋愛はできたとしても、変な結婚はできないからね。それこそ、領主やめるか、結婚を諦めるかって感じだから、第三の道が必要だった」
そう!それが政略結婚!
「おば様はこの話は?」
「知らないわね。私は元々適齢期を過ぎてたから、たぶん結婚はないのだろうと思ってたし、ええぅと私よりも結婚を、いい男ならば再婚したいと騒いでいる人が家族にいましたからね」
さすがにそれは自分の母だとは言えない。
「実家のために働くものと思ってましたから」
この家に年頃の娘はいるというのに、ちっとも名前が上がらないのはどうしてたのか?と問われた。
そこでしどろもどろになった家族はそのまま返答をしなかった、そうしたらきちんとどういうことか調べることになって、年頃の娘はいるし、その娘が家族が問題を起こすと頭を下げたりしていることがわかった。
そんな家族から引き剥がして、幸せになるのではないかの一石二鳥が、良縁というわけである。
「それで旦那様の前に、決まりかけていたお話がありまして、私は落ち着くのかなっておもっていたのですが」
えっ、破談?
「あの時はもうね」
今でも破談相手の家族とは仲はよかったりもする。
「私はもう幸せになれないんだろうなってぐらい落ち込んでいたわね。旦那様とは、さっきも出たけども、その破談になる前の、ちょうど一人であちこちに挨拶にしている時に、挨拶した中におられたわねぐらいの知り合いだっだわね」
「話聞いてて、あの時そういえば…な感じだった、こちらからもサイン入りの挨拶状は出していたかな?って、何しろ領主の話が決まるかな?って時だったから、忙しすぎたので記憶が曖昧なんだよ」
「私もまさか、自分と縁がある人がこの人だと、当時は全く考えてなかったから」
『不思議なもんだね』
面白いことに、二人から同時にこの言葉が出たのであった。
ちょっとトイレにと、領主は席を離れる。
そんな領主が遠ざかることを考えた後に、甥は伯母に質問をする。
「伯母様は、お幸せですか?」
何を急に~という顔をした後に。
「日々を追われないという意味では幸せね」
「そうですか…凄く聞きづらいのですが、ご実家は大変だったとか」
「ええ、まあ、そうね、ちょっと普通の人は理解しにくい、特に家族問題がない家の方ほど、たぶん理解は無理かな、むしろ嫌悪感を持つんじゃないかしら」
「持たれましたか」
これは三男執事の合いの手である。
「持たれましたよ」
意味深な笑みを浮かべた。
「私にとっては日常は、普通の人にとっては当たり前ではないと思ったら、そりゃあ頑張るしかないんですよ」
「あぁ、そういえば私の兄からの手紙ですが、美味しいものをありがとうございますと」
「そう?良かったわ」
「えっ?」
甥っこは知らないようだ。
「こちらの執事のお兄さんに、問い合わせたのよ。義姉さまは何がお好きかと」
「あれ?まさか季節の特産物がうちの食卓に出たのは…」
「それはうちからのものかもしれないわね」
「奥さまは根回しは、それこそこの辺は旦那様より上なんですよね」
「結婚を機会に、実家関係のやりとり見直しましたから」
「どういうことです?」
「うちの実家、何故か両親があちこちとの付き合いが気にくわないと数年前に言い出して、それまで付き合っていた人たちと交流が無くなったんですよ」
「ええ、そんなことしたら」
「私もそんなことをしていると露知らず」
聞かされてから、ええ、あの人たちは何しちゃってるの?と。
ここで三男執事は、お茶のおかわりの準備のために一旦下がり、控えるのはメイドたちになった。
「本当にあれはなかったわ…」
それで今まで贈り物を用意していたところから、今年の注文はまだありませんがの手紙が来たら、無視を決め込んでるのを見たら。
「これは…一からやるしかないって」
「そこまで行くと、実質実家の建て直しじゃないですかね」
「そう思うわ、でもその話はたぶんあまり外に出てないわよ。うちの親代わりのみなさんが私の保証はしてくれるからってことで通したし、だからかもね、旦那様は良い人なんだけども、長く傍にはいない方がいいかもね~って思っちゃうの」
そこにトイレから戻ってきた領主が姿を見せたのだが、三男執事は口元に指を当てる。すると領主は静かに、音を立てないように歩く。
(この御方、そういうことは出来るんだよな…)
伯母と甥の話はまだちょっと続いた。
「では、もしも離婚したらどうなさるつもりですか?」
「婚姻話が出てくる前から、多少の準備はしているし、今も勉強だけはしているのよ」
「その事はおじは?」
「たぶん知ってるわ、趣味で学んでいるにしては実用的すぎるし」
「落ちちゃったけども、タンクスに、それこそ旦那様の同級生の方が率いるタンクには応募したこともあるよ」
各種問題を解決するシンクタンク、それは一ヶ所、一集団ではないから、その業種という意味でタンクス。
「それは初めて聞いた」
領主が話に入り出す。
「採用されているならばまだしも、落ちてますからね」
「落ちてるって言われても、応募にも推薦人がいるよね」
それはどうしたの?
「何とか見つけた感じですね。本来考えていた人が他の人も頼むつもりだったようで、向こうの方が近い関係でしたから、そちらに」
「後で詳しく教えてね」
空気がひりつく感じを甥は察した。
(こういうところが母に似てるんだよな)
怖いことは怖いんだが、怖さの種類が違う姉弟。
「すいません、書類も見終えたので、そろそろ」
「あぁ、わかった。じゃあ、お仕事の話はおしまい、ここからは楽しい話だ、いいかな?」
「それでしたら大賛成です」
そういって賑やかにワイワイ話をしながら、食事を楽しんでから、甥っ子は帰っていった。
「さて、推薦の話を聞きたいな」
「あ~はいはい、それはですね」
彼女か、私か、どっちかを選んでいただきたい。
「いきなりそんなことを言われました、まあ、向こうは派閥で長らく有望、実際にできる方なので、そう言われたら、引き下がるしかないかなって」
「それで素直に引き下がったのか」
「そうです、そうです、ただ、嫌がらせをするとか、そういう感じではないですね」
すぐに平身低頭、身をひいたという感じなのだが。
「逆にそれでその周囲の方々が気を使ってくださいましたね」
珍しいね、あそこまで言うなんて、ごめんね。
「そことは交流は?」
「まだありますね。基本的に私は自分から切るとしたら、よっぽどですから」
「なるほど」
「奥様、失礼します、タイムリーですがその件の方からのお手紙ですよ」
「噂をしたから?」
「さすがにそれは…それとも奥さまはそういう能力でもあるのでしょうか?」
「ない方が良いと思うよ」
さて、どれどれ。
「なんだって?」
「あの時、推薦状の際には誠に失礼したと」
「今さら?」
「う~んでもこれは、あの人は、その時も、申し訳ない気持ちはあったと思うんだよ」
「どういうこと?」
「私の立場的に、推薦状をもらわない方が良かったとかね。これはあくまで結果論だけども、実際にその後で、破談はしたけどもあった縁談と、今の、あなたとの婚姻関係から考えると、あそこで推薦状を無理にもらうと、後で尾を引いていたかもしれないから」
「あ~」
「実際に推薦状をいただけるかという話になったときに、向こうは多少は乗り気だったからね。さすがに自分の派閥からも同じポストのための推薦状をお願いされたら、そっちにしないと、なんのために尽くしてきたのだになるし」
「…」
「あっ、やっぱりそう見る方が自然ですかね」
「だろうね、まず君に今になって書状をくれた意味とか考えるとね、そしてその相手はタンクスに所属していないから、君は知らないうちに唾をつけられているところだったかもね」
「後ろ楯弱いと、見込みありそうなのに、恩をうってはあるからな」
「そうそう、その程度だからこそ、このぐらいで、たぶん推薦状を出そうとしていた人間も、これがそこまで大きい出来事だとは思ってはいないだろうが、こちらから考えると、君に唾がついてないというのは大事だよ」
「運が良かったんですね」
「それで?この書状にはなんと?」
「この方が姫と慕う方がおられるのですが、私はその方を知らないうちに、親切にしていたようで、そのお礼ですかね」
「?」
「本当にそうなんですよ」
まずは一読、次に思案して読むが、まんまであった。
「ね?」
「本当だ」
「私はいつもの調子で接していただけなので、特にお礼を言われなくても、そういう意味でもやはり悪い人ではないのですよ。ただちょっと変わってるところがあるというだけで…」
「世の中ね、そういう見方ができる人っていうのはかなり少ないんだけどもね」
あれ?それって俺も含まれているんじゃないかなと領主は気づきながらも、そういった。
領主の姿を見ると、甥っ子は手を振った。
「元気にしてたか?また大きくなったんじゃないか!」
他にも兄弟はいるが、フットワークが軽い彼だけはこちらに顔を出しに来る。
「それで早速なんですが…」
そういって信書を差し出した。
差出人の名前を見て、凍りついた後に受け取り、中を見てはまた凍りつく。
「内容は母からも聞いてますので、近いうちに一度こちらに来ると」
「姉さんが来ちゃう」
そんな伯父の姿を見て、甥っ子は御愁傷様ですの顔をした。
「あら、もう来られてたのね」
「ええっと、初めまして、おば様でよろしいでしょうか?」
「伯母ですから、もちろん!」
そこで挨拶を交わした後に、あれ?うちの旦那様がなんか変な顔をしているぞ。
「どうしたんですか?」
「うちの母が近いうちに伯父に話があると」
「説教される」
「説教?何か悪いことでも」
「健康診断の話を祖母から聞いて、大変ご立腹になってまして、おば様、うちの地元の話をご存じでしょうか?あまり食事や生活に気を使わない人間が多くて、医療費が嵩んでしまいましてね、うちの両親はそれを何とかしようとしている派なもので、ストイックに生活しているんですよ」
そんな夫妻の妻弟が嬉しくって、健康診断の数値改善しました!って喜びを伝え、お前ちょっと待て、今まで危なかったんかい!ということでお怒りだそうです。
「うわ~」
「おじさん、申し訳ないですが、この件はおとなしく正座でお説教をされた方がいいかと思います」
「うん」
「後ですね、おば様には母は大変感謝をしております、これからもお願いすると」
「そうですか?でももう私がいなくても旦那様はきちんと体は守れると思いますよ」
「人はね、愛がなければ生きてはいけないんだよ」
そんなことを言い出したので、甥は、えっ?どういうこと?という顔をした。
「愛情をもって君が接してくれたからこそ、この改善は可能になったのであって」
「どういうことですか?」
「あなたのおじさまとは、私はそこまで長い付き合いではないのだけども、この方はこういう人なんですか?」
「いいえ、こんな姿を見たことはないですが…」
恋愛じゃなくて、政略って聞いてたし、どういうこと?
「僕は愛を見つけてしまったんです!」
「旦那様、愛についてここで熱く語っても、外は寒いですから、どうぞ仲にお入りください」
三男執事がそういうと。
「お兄さんのお手紙も渡されています」
「兄からですか?」
三男執事の長男は、領主姉夫妻が住んでいる地域にいるというか、部署は聞いてないが、仕えている人は同じである。
「それでは確かにお預かりいたします」
この関係は偶然ではなく、むしろ逆でこことの関係があったこともあり、この夫妻の妻の弟は、大変優秀だし、領主になりうる資格と経験を持ち合わせているし。こちらにいる血縁者も信用おける人たち、何かあったとき動けるというので話がトントン拍子に進んだのだ。
「それで私が先に信書を持ってきたのは、どうやっておじさんが数値を改善したのか、その工夫で取り入れるものがあればまとめてほしいという依頼もあるんだよ」
ということは書類、数値もきちんと読めるのだろう。
「旦那様、関係の書類は用意させておりますが、どうなさいますか?」
「隠すことはないから、実際に見てみるといいんじゃないかな?」
「えっ?いいんですか?それはありがたいですね」
ということで、伯父夫妻と甥の世間話をする予定が、甥による伯父の健康改善、その報告書の吟味になってしまった。
「せっかく来てくれたのに、ちょっとそこは残念だけども」
「仕方がありませんよ」
お茶を一杯飲んだ後は、先程から三男執事を前にして、書類に目を通し、メモをつける。わからないところは執事に質問して、そこでも腑に落ちない場合は、実際に改善させた、伯母に話が飛んでくる。
「旦那様は美味しいものが好きですから、美味しくないものに切り替えるが実質不可能なんですよ」
「それもまた」
「だって美味しいって素晴らしいよね」
「自然薯ってずいぶんと高級なものをお食べに」
「ああ、それね、うちの実家方面だと値段があまりつかないから、購入価格は高級食材価格ではないのよ」
そういって購入した領収書も準備してもらい。
「あ~本当だ。でもこれって、うちの近所だと高級帯の食事どころじゃないと食べることもできませんよ」
「じゃあ、持ってく?後でご飯食べるときにもかけて食べるといいよ」
そこで甥はおじを見る。
「彼女はこういう人だよ」
「なるほど、しかし、このおやつも今までの半分とありますが、半分で我慢できるんですか?」
「出来たね、『旦那様、私と半分こしましょう』って言われたら、うん、そうだね、そうしようか…って、好きな子と、一つのものを分けあうって幸せなことだよね」
ん?んん~ん?ん???
「ごめんなさい、でも私もこれで守ってくれるなら、いいかなって思ってしまいました」
「おば上は、心が広い人なんですね」
「そうだね、俺のストライクゾーンぐらい広いよ」
「おじ上…」
甥はおじさんは、物静かで理知的な人だと今までずっと思っていて、うちの家族とは全く違うな、尊敬するなって思ってました。
「…僕も人だよ」
「それは痛いほどわかりましたが、正直今まで見ていたおじさんはどこにいってしまったのか、迷子センターに頼みに行くところですよ」
「たぶんそれなら彼女のところさ、腰に抱きついて離れやしないよ」
「どれだけ好きなんです?」
「そりゃあ、誰よりも好きだよ。結婚して良かったと思うぐらいにさ」
「結婚の書類を作成するときに初めてお会いしたと聞いてますが?」
「う~ん、挨拶は交わしたことはあるけども、それだけで、どこの誰かがはっきりしたのがこっちに来てからだ」
「それでもそこまで好きに、惚れれるものなんですか?」
「惚れたね、まあ、誰もがそうであるわけではないけども、政略結婚も悪くないねって思っちゃったよね」
「おじさん…」
「まあ、君はこういう話が出ても乗らないように、好きな子と付き合って結婚するのが一番いいから」
「おじさんはなんで政略結婚に賛成だったんですか?」
「このまま一人なのかな…って」
独身男性な悲哀が出ていた。
「領主になると、恋愛はできたとしても、変な結婚はできないからね。それこそ、領主やめるか、結婚を諦めるかって感じだから、第三の道が必要だった」
そう!それが政略結婚!
「おば様はこの話は?」
「知らないわね。私は元々適齢期を過ぎてたから、たぶん結婚はないのだろうと思ってたし、ええぅと私よりも結婚を、いい男ならば再婚したいと騒いでいる人が家族にいましたからね」
さすがにそれは自分の母だとは言えない。
「実家のために働くものと思ってましたから」
この家に年頃の娘はいるというのに、ちっとも名前が上がらないのはどうしてたのか?と問われた。
そこでしどろもどろになった家族はそのまま返答をしなかった、そうしたらきちんとどういうことか調べることになって、年頃の娘はいるし、その娘が家族が問題を起こすと頭を下げたりしていることがわかった。
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「それで旦那様の前に、決まりかけていたお話がありまして、私は落ち着くのかなっておもっていたのですが」
えっ、破談?
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「話聞いてて、あの時そういえば…な感じだった、こちらからもサイン入りの挨拶状は出していたかな?って、何しろ領主の話が決まるかな?って時だったから、忙しすぎたので記憶が曖昧なんだよ」
「私もまさか、自分と縁がある人がこの人だと、当時は全く考えてなかったから」
『不思議なもんだね』
面白いことに、二人から同時にこの言葉が出たのであった。
ちょっとトイレにと、領主は席を離れる。
そんな領主が遠ざかることを考えた後に、甥は伯母に質問をする。
「伯母様は、お幸せですか?」
何を急に~という顔をした後に。
「日々を追われないという意味では幸せね」
「そうですか…凄く聞きづらいのですが、ご実家は大変だったとか」
「ええ、まあ、そうね、ちょっと普通の人は理解しにくい、特に家族問題がない家の方ほど、たぶん理解は無理かな、むしろ嫌悪感を持つんじゃないかしら」
「持たれましたか」
これは三男執事の合いの手である。
「持たれましたよ」
意味深な笑みを浮かべた。
「私にとっては日常は、普通の人にとっては当たり前ではないと思ったら、そりゃあ頑張るしかないんですよ」
「あぁ、そういえば私の兄からの手紙ですが、美味しいものをありがとうございますと」
「そう?良かったわ」
「えっ?」
甥っこは知らないようだ。
「こちらの執事のお兄さんに、問い合わせたのよ。義姉さまは何がお好きかと」
「あれ?まさか季節の特産物がうちの食卓に出たのは…」
「それはうちからのものかもしれないわね」
「奥さまは根回しは、それこそこの辺は旦那様より上なんですよね」
「結婚を機会に、実家関係のやりとり見直しましたから」
「どういうことです?」
「うちの実家、何故か両親があちこちとの付き合いが気にくわないと数年前に言い出して、それまで付き合っていた人たちと交流が無くなったんですよ」
「ええ、そんなことしたら」
「私もそんなことをしていると露知らず」
聞かされてから、ええ、あの人たちは何しちゃってるの?と。
ここで三男執事は、お茶のおかわりの準備のために一旦下がり、控えるのはメイドたちになった。
「本当にあれはなかったわ…」
それで今まで贈り物を用意していたところから、今年の注文はまだありませんがの手紙が来たら、無視を決め込んでるのを見たら。
「これは…一からやるしかないって」
「そこまで行くと、実質実家の建て直しじゃないですかね」
「そう思うわ、でもその話はたぶんあまり外に出てないわよ。うちの親代わりのみなさんが私の保証はしてくれるからってことで通したし、だからかもね、旦那様は良い人なんだけども、長く傍にはいない方がいいかもね~って思っちゃうの」
そこにトイレから戻ってきた領主が姿を見せたのだが、三男執事は口元に指を当てる。すると領主は静かに、音を立てないように歩く。
(この御方、そういうことは出来るんだよな…)
伯母と甥の話はまだちょっと続いた。
「では、もしも離婚したらどうなさるつもりですか?」
「婚姻話が出てくる前から、多少の準備はしているし、今も勉強だけはしているのよ」
「その事はおじは?」
「たぶん知ってるわ、趣味で学んでいるにしては実用的すぎるし」
「落ちちゃったけども、タンクスに、それこそ旦那様の同級生の方が率いるタンクには応募したこともあるよ」
各種問題を解決するシンクタンク、それは一ヶ所、一集団ではないから、その業種という意味でタンクス。
「それは初めて聞いた」
領主が話に入り出す。
「採用されているならばまだしも、落ちてますからね」
「落ちてるって言われても、応募にも推薦人がいるよね」
それはどうしたの?
「何とか見つけた感じですね。本来考えていた人が他の人も頼むつもりだったようで、向こうの方が近い関係でしたから、そちらに」
「後で詳しく教えてね」
空気がひりつく感じを甥は察した。
(こういうところが母に似てるんだよな)
怖いことは怖いんだが、怖さの種類が違う姉弟。
「すいません、書類も見終えたので、そろそろ」
「あぁ、わかった。じゃあ、お仕事の話はおしまい、ここからは楽しい話だ、いいかな?」
「それでしたら大賛成です」
そういって賑やかにワイワイ話をしながら、食事を楽しんでから、甥っ子は帰っていった。
「さて、推薦の話を聞きたいな」
「あ~はいはい、それはですね」
彼女か、私か、どっちかを選んでいただきたい。
「いきなりそんなことを言われました、まあ、向こうは派閥で長らく有望、実際にできる方なので、そう言われたら、引き下がるしかないかなって」
「それで素直に引き下がったのか」
「そうです、そうです、ただ、嫌がらせをするとか、そういう感じではないですね」
すぐに平身低頭、身をひいたという感じなのだが。
「逆にそれでその周囲の方々が気を使ってくださいましたね」
珍しいね、あそこまで言うなんて、ごめんね。
「そことは交流は?」
「まだありますね。基本的に私は自分から切るとしたら、よっぽどですから」
「なるほど」
「奥様、失礼します、タイムリーですがその件の方からのお手紙ですよ」
「噂をしたから?」
「さすがにそれは…それとも奥さまはそういう能力でもあるのでしょうか?」
「ない方が良いと思うよ」
さて、どれどれ。
「なんだって?」
「あの時、推薦状の際には誠に失礼したと」
「今さら?」
「う~んでもこれは、あの人は、その時も、申し訳ない気持ちはあったと思うんだよ」
「どういうこと?」
「私の立場的に、推薦状をもらわない方が良かったとかね。これはあくまで結果論だけども、実際にその後で、破談はしたけどもあった縁談と、今の、あなたとの婚姻関係から考えると、あそこで推薦状を無理にもらうと、後で尾を引いていたかもしれないから」
「あ~」
「実際に推薦状をいただけるかという話になったときに、向こうは多少は乗り気だったからね。さすがに自分の派閥からも同じポストのための推薦状をお願いされたら、そっちにしないと、なんのために尽くしてきたのだになるし」
「…」
「あっ、やっぱりそう見る方が自然ですかね」
「だろうね、まず君に今になって書状をくれた意味とか考えるとね、そしてその相手はタンクスに所属していないから、君は知らないうちに唾をつけられているところだったかもね」
「後ろ楯弱いと、見込みありそうなのに、恩をうってはあるからな」
「そうそう、その程度だからこそ、このぐらいで、たぶん推薦状を出そうとしていた人間も、これがそこまで大きい出来事だとは思ってはいないだろうが、こちらから考えると、君に唾がついてないというのは大事だよ」
「運が良かったんですね」
「それで?この書状にはなんと?」
「この方が姫と慕う方がおられるのですが、私はその方を知らないうちに、親切にしていたようで、そのお礼ですかね」
「?」
「本当にそうなんですよ」
まずは一読、次に思案して読むが、まんまであった。
「ね?」
「本当だ」
「私はいつもの調子で接していただけなので、特にお礼を言われなくても、そういう意味でもやはり悪い人ではないのですよ。ただちょっと変わってるところがあるというだけで…」
「世の中ね、そういう見方ができる人っていうのはかなり少ないんだけどもね」
あれ?それって俺も含まれているんじゃないかなと領主は気づきながらも、そういった。
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