浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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とっても面白いプレゼントをどうもありがとう

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意識を失う前に、浮かんだことと言えば…

あぁ、やはり私には無理なのだ。
やり遂げれなくてごめんなさい。

で、あった。


「おはようございます」
「…」
「すいません」
「何が起きたかわかってるの?」
「なんかいきなり体調が悪くなって」
「うん、そのまま自分の足で立てなくなって、だよ…」
「申し訳ありませんでした」
「理由はなんだか、わかるかな?」
「何か病気とか?」
「一気に緊張が解けたことによって、そうなったんだって」
「えっ?」
「いつも緊張してたみたいよ。ごめんね、気づかなくて」
「いえ、こちらこそ」
「変な話だけどもさ」
「はい」
「君は、実家にいたとき、誰かと話をしてた?」
「いえ…家族とは話すような間柄ではもうありませんでしたからね」
「そういうのが積もり積もってってやつだよ、ずいぶんと溜め込んでいたんじゃないかな」
それで知らない間に溜め込んでいたストレス緊張が、ここ最近自分の旦那さんや、屋敷に勤めてくれる人たちと良好な関係によってときほぐれ。
「それがたぶん一気に回復しようとしたら、そのまま意識をっていうね、ただその説明をもらうまで、僕は心穏やかではなかったよ」
「すいません、すいません、もうそういうのも感じないようにします」
「そういうことじゃないんだよ。あぁ、ごめん、僕も上手く言えないんだ。ただね、もう苦しいことはお仕舞いにしようよって話で」
「はぁ…」
「楽しいことを考えて生きてほしい」
「楽しいことですか」
「うん、失敗するとかそういうのはあまり好きではないというけども、失敗というのは成功のお母さんともいうじゃないか」
「そうなんですけどもね」
「それとも何も生まれない方がいいかな?」
「それはあまりにも寂しい」
「君はそういう人なんだよ。とても優しいから、怒るよりも悲しいとかが先に来てしまう」
「まあ、それでなめられていたのかもしれませんが」
「そういう奴はいるからな」
「いますね」
「うん、いる。そういうのは本当に困るんだよな~」
「お時間いただければ、何とかしてみせますよ」
「へぇ~それはお手並み…いや、待って、そういう期待はしちゃうけども、僕は君が一番大事だし、無理はさせたくはない」
「そう…ですか」
「それともそのぐらいは出来なくちゃダメだとかいうの?」
「それは…」
「そんなことを君にいってきた奴は万能なの?」
「いいえ」
「ああ、それならばただ現実を見てないだけだよ、ただ怒鳴ってスッキリしたいとか、そんなことのためだけに、君を利用しているんだ」
「その方は…うちの家族もでしたが、何か嫌なことはあったのでしょうか?」
「はっはっ」
「なんですか?」
「いや~恐れ入ったよ。なんで自分を傷つけた人間の心配をしているのさ」
「弱ってるときほど、優しくされたくないですかね」
「それはそうなんだけども、これで君が無垢であるのならば世間知らずのお嬢さんなのだけども、これで現実的な解決方法を探るところがまた…そこに至るまでの道筋は説明を受けなければ、僕じゃ全く読めないんだよな」
「でも説明すればわかるのならば、なんでその選択肢を選んだのかも、わかるはずです」
「人は時として非合理的な選択をするものだよ、失敗するとわかっていても、その恋に浮かれて愚かなことをしてしまうというのは…あるでしょ」
「ありますね。例えば…」
「この結婚を例えにはしないでね」
「えっ…」
「それは不適格だよ。そこを例えにしてしまえば、恋があることになるし、いや…ありますけど、愚かな失敗にはしたくないんだよ」
「でも…」
「そこは結果を見せましょうよ。この結婚は間違いないものであった、そこが僕たちが目指すべきものでは?」
「それはそうですが…」
「結果を出すと、評価は変わるなんて、君も経験しているんじゃないの~そうじゃなかったらさ、努力をしようとかのモチベーションが保てないんじゃないのかなって思うわけですよ」
「でも得られるものはずっと少ないですよ」
「そうであってもね…君が以前に失敗し、それでも諦めないでまとめてくれたものによって、助けられている方としては、君が頑張ってくれたおかげでしかないわけよ」
「そうでしたか」
「あれ?もっと誉めた方がいい?僕の女神様、あなたの微笑みをたくさんみたいな」
「急に冗談飛ばしますよね」
「飛ばすね、そこは飛ばそう、こんな人生だ、ちょっとでもおもしろく、おかしくやった方がいいだろう?」
「そうですけどもね」
「いや、そうだ、そうに違いない。そうじゃなかったら、あの勉強はなんだったのか」
「機関ではどういうお勉強をしてたんですか?」
「それこそ基礎から応用まで、覚えれる奴にはどんどんやらせるのさ」
「それって遊ぶ時間はあるんですか?」
「ないようなものだ。まっ、俺は適当にやってたから」
(適当にやってて成績上位者って取れるんだ)
「遊ぶ時間は大事だ」
「それはそうですね」
「君はどういうものが好きだったの?」
「好きですか…昔はもうちょっと色んなものを当たり前のように楽しんでいたかな」
「きっと可愛らしい女の子だったんだろうね」
「それはどうでしょうかね。まあ、でも、その後、大変苦労させていただきました」
「そうか…その話も早いうちに受け止めておきたいんだよね」
「また変わっているところが全面に出てきましたね」
「そう?」
「そうですよ、そういう苦労話を聞いてどうするんですか?」
「君はため込む方だからね」
「もう何も感じないことにしますよ」
「そうじゃなくてさ、なんでそっちに行くの。何も感じなくなってしまえばそれで解決するの?」
「そこが大事じゃないんですか?」
「大事なわけはない…そんな姿を見たら、心がある人は、何かおかしいと思うはずだよ」
「それならもっと早くに気づいてくだされば良かったのに」
無表情でそういった。
「すごいな、君はそういう顔も出来るのか」
「誉めるところ間違ってると思いますよ」
すぐにいつもの、夫がよく知る顔に戻った。
「いや、なんか不思議な気分になる。一応これでも領主なんで、色んな人を見てきたつもりだ」
「あいさつ回りもそうですけども、領主というお仕事ならば、人の力を借りれるというのはとても強いことですよ」
「そうだね、それは本当に実感する。前にも言ったが、君はそこを変えてしまったからな」
「まだまだですよ」
「僕には繋ぎ止めるだけが精一杯だった、この状況を変えるにはって考えても、いや、そこは現実逃避だった気がする」
「旦那様でも現実逃避するんですね」
「お酒飲む時は、そうだよ」
「うわ…」
「いや、その…ごめん」
「そこでお酒に行くと、体壊しますよ」
「そう思います。君がお酒飲んだときこれを!って食べさせてから、もう若いときみたいにスッキリしてます。むしろその点だけは若返ったんじゃないかなって思うぐらいです」
「たぶんお酒飲んでないなら、そのぐらいの体力は持っていたんじゃないですかね。これでそういうのが効果がなくて、薬にするしかないのならば医師の出番ですから」
「領主患いか」
「江戸患いの傾向もありますからね」
「えっ?これって脚気とかになるの?」
「ええっと確か、お酒飲んでいると思考能力に影響が出る、そうでないなら、脚気とか循環器に出てくるんじゃないかな」
「怖い、怖い」
「飲まない方がいいんですが、そうも言ってられないなら、上手く付き合う方がいいですかね」
「逆に上手く付き合う方法を見つけた人はすごい気がする」
「どれだけお酒が好きなのかって話ですよね」
「たまたまこれを一緒に食べている人は不調に見回れることはないというのか、それとも別に実験して探したのか」
「実験して探したら、犠牲が大きすぎるとは思いますね。その過程を考えるのも楽しいですが、お酒飲んだら体が辛くならないようにこれを食べるって考えた方がいいかな」
「悪酔いゼロの世界へ!」
「悪酔いしてたんですか」
それなのに何故飲むのかという顔をされました。
「すいません、お酒が僕を呼んでました」
「それってお酒が手離せない人の台詞じゃないですか」
「孤独のお友だちが酒なのよね」
「そんなお友だちとは絶交しなさい」
「最近は会ってない」
「それならヨシ、はい、そのまま連絡先消して、ブロックして」
「孤独ってブロックしても忍び寄るよ」
「確かにそうですが、そういう時は趣味に走りましょうよ」
「今は君と話すことが趣味なの」
椅子に子供っぽく座る。
「楽しいんだよ、僕の奥さんは、知らないことをわかりやすい言葉に直した上で話してくれるしさ」
「話をするときに、相手の知らないことを並べてどうするんですかね」
「そういう人ってでもいるよ」
「いますね…ああいうのは…世の中には色んな言葉がある、生まれ育ってない言葉など、説明をされなければわからないのに、間違った言葉を教えて、嘲笑するとかもあるんですよ」
「何それ」
「あるんですよ、それで…揉めるってね」
「それは揉めるよね」
「もうそこがわからないんだなって人が多くてね」
「それはダメでしょ」
「ダメなんですよ」
「何かあったの?」
「それを知った人は注意するじゃないですか、そこをバカなことをした人は笑うのだ」
「あのさ…それって」
「そんなことやったら、人間関係の構築なんて出来るわけないでしょ」
「無理だね」
「そういうことですよ。そういうことをする地域はね、どんどん悪くなるばかりなんですよね」
「君はよく生き延びたものだね」
「なんか生き延びちゃた」
「なんか、じゃないでしょうよ。なんかじゃ、僕としては生きてくれていて嬉しいし、生きることには迷わないでほしい」
「そこって迷わないとかあるんですか」
「あるよ。むしろ迷ってどうするの?」
「えっ…そうだな。ちょっとこれって難しい話ですね。でもね」
「何?」
「意識を病気ではなく、緊張から解放されて失った時、私はあなたに謝ってました」
「出来ればそういうのは無しにしてもらいたいものだね」
「すいません、でもね。その時は、私はなんか覚悟してたわけですよ。それが緊張から解放されたなんてことなんて知らないから」
「何を?」
「これで最後になるかもしれないか」
「それはやめてほしい、縁起でもないじゃん」
「そうなんですが、ああいうときに、あなたのことを考えることができて良かったなってら今は思うんですよ」
「どういうこと」
「他には何も思い付かなかったから、私の人生ってなんだったのだらうかって、たぶんあなたのことが考えれないならば、そう感じてしまってたと思うんですよ」
「君の人生には意味があるんだよ」
「あるんですかね」
「あるさ」
「そうなんだ」
「そうだよ、それとも君は自信がないとか?」
「ありませんね。私の仕事ぐらい誰でも務まるんじゃないんですかね」
「仕事量はまずセーブね」
「あれですか?そういう方針を打ち出すことによって、ワークバランスを」
「体壊しちゃうでしょ!」
「業務の改善は寝床で考えてもいいでしょうか?」
「しっかり休みなよ、なんでそこを許可欲しがるのさ」
「おやつにバナナ的な」
「ああ、ルール的にどうなのかって…なんでそんなときでも仕事のことを考えるのかな」
「こういうときほど、頭が唸るんですよ」
「なんで?」
「余計なことしてないからでしょうか」
「えっ?君ってまだ本気じゃないの?」
「聞いて話すより、考えるだけに集中した方が良くないですか?」
「それなら尚更、回復、俺の酒のお供じゃないけどもさ、君の思考のお供はいるんじゃないかな」
テーブルの果物の皮を領主は剥き始めた。
「お腹減ってないかもしれないけども、ちょっとは口に入れて」
「甘い香りがしますね」
「収穫祭でも用意するつもりだったんだけど、君はお休みだからね」
「はい」
「よろしい、はい、これ食べて」
サク
「じゃあ、僕も…あっ、美味しいね。実は僕もここで初めて食べるんだ。新しい品種でね。名前は君のことを考えてつけた」
「へぇ、そうなんですか」
「そうだよ。バラには自分の愛した人の名前をつけることはあるけども」
「バラ科にはあんまり聞きませんね」
「そういうことだ」
「でも私にちなんだ名前をつけるには理由が弱いかな、何かきっかけが別にあるのではないか?と邪推してしまいますね~」
「…」
「おや、やっぱりあるんですか?」
「まだこの果物には名前がない状態なわけさ」

領主は何かイタズラでもしたかのように、挙動不審になっていく。
「名前がない場合はなんて呼ばれているんですか?」
「数字だよ、数字で呼ばれているんだけど、それが君の誕生日と同じだったから」
育てやすい、病害虫に結構強い、味も美味しい、これからの奨励品種の候補でもあったが、そんな理由で命名権を買いました。
試験栽培している人間からすると、まさか予算が手には入るとはということで、小躍りしたという。
「記念日とか大事にするタイプなんですか?」
「むしろ毎日が記念日なところがあるよね!」
「あなたは…長生きしますよ。ちょっとしたことで色んな楽しみを見つけてるんだから」
「君は勘違いしてる」
「何がですか?」
「こういうのを見つけたら、これを見つけたの、一緒に見てほしいタイプなんで、一人だとね、楽しめないんだよね」
「一人は結構楽しいんですよ」
「それもわかるけども、誰かと共にあるということは、心があたたかくなるよね」
「誰かと、家族といるのに、一人を感じてしまった私からすると、それは遠い話もですから」
「んもう!」
「大変、ここに牛がいる」
「たまに君と話していると、言葉が敗北しちゃうんだよな」
「それは嫌ですね、一度不幸に見舞われたら打つ手なしになっちゃう」
「本当だよ、そんなことが起きたとしても、僕らそのうち勝たなきゃいけないんだからさ」
「あなたなら出来ますよ」
「違うの、そうじゃないの、そこは一緒にやってよね」
「何言ってるんですか、あなたは私と違って好きなところに行けるじゃないか」
「そしたらまず真っ先に君のところに帰ってくるよ」
「あっ、そういうのはいいんで」
「辛辣対応に俺はまず勝たなければいけない」
「もう勝ってますから、そもそも勝ち負けではないでしょ」
「それはそうだけども、君がいつか、抱えているものから…思い出とか綺麗にとらえないで、完全消去してくれたらいいなって思ってるよ」
「そんな日が来ると思います?」
「来るんじゃないの、人間ってそんなに強いものじゃないから、時の流れは残酷というやつだ」
「そのうち全部塵になって春の風に飛んでいくのかしら」
「飛んでいった方がいいの?」
「ちょっと嫌だな、だって何とかするために努力してたのに、最後は塵かになるじゃないですか」
「そういう場合は新しくさ、何か見つかればいいよ。それが君の生き方を変えていく」
「ちょっと怖いな」
「大丈夫、俺もいる」
「あなたのことは信じている、それはそうなんだけども、色んなことを思い出せなくなるのかって思うとね」
「君の消えない思い出に俺はなりたいな」
「もうなってるでしょ、意識を失う前にああなんだから」
「そっか…」
「ええ、そうですよ」

後日のことである。
「旦那様」
「ん?なんだい?」
「これは果物のお返しです」
そういって一本のボトルを持ってきた。
お酒かなって思っていたら、開けたボトルからは酒の匂いはせずに、グラスに注がれた時にそれはわかる。
「水?ありがとう」
意味もわからず飲んだ後に。
「それで意味は?」
「こちらは鉱水です」
「ふぅん、栄養は豊富そうだね」
ワインのようにラベルがあったので、それを読むと。
「ああ、なるほど、この水は僕の生まれたときの雨がゆっくりと染み込んで、そうやってミネラルたっぷりになったってわけか。とっても面白いプレゼントをどうもありがとう」
グラスを片手で少し上げてお礼を述べる。
「あなた様の人生がこの鉱水のように、時を味方をつけますように」
「あぁ、それはなんていい人生だ」
お酒が好きなぐらいだから、贈る時もこんな感じで意味を添えて、楽しんできたのだが、逆にこういういただくということは少なかった。
「これからもよろしく」
「短い間になるとは思いますけどもね」
「またそんなことをいう」
彼女はそんなことを息がかかる距離で言われても、説得力は皆無だ。

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