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金継ぎ夫と灰かぶり妻
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「初めまして」
そう丁寧に挨拶をする彼女は僕の奥さんになる人で、本来は僕の奥さんになる予定ではなかったはずだった。
「こちらこそ、初めまして」
丁寧な挨拶には、丁寧な挨拶をしなくては、そんな堅苦しい感じだったと思う。
ついでにいうと、彼女の元々の相手は僕もしっていて…というか、大分狭い世界だから、ほぼみんな知り合いというやつだ。
「遠いところから、疲れたのではありませんか」
「はい、少しばかり、でも疲れたとも言ってはいられませんから」
強い人だなと思う。
知らない土地に来て、こう笑顔でいい返す強さは、僕にはないから。
「それではご案内します、気に入ってくれるといいのですが」
「旦那様が用意してくれたんですもの、気に入らないはずがありませんわ」
「そういってくれるのは嬉しいのですが」
書類上には名前は並んではいるものの、僕たちには距離があった。
それを少しでも埋めていければいいのではないなと…そんなことを思った。
いや、思っていいんだろうか、確かに、その上手くやることを望んではいるのだが、それでも彼女の気持ちを蔑ろにする気はなくて、色々ある、あった身の上だからこそ、リラックスしてくれたらいいな。
そこを冷たい風が吹いて、彼女のかぶっているフードを膨らませ、髪が艶やかなせいか、そのまま滑り、この時彼女の顔を初めてしっかりと見た。
「?」
「どうしましたか?」
「ずいぶんとお写真より若い、いえ…女性にそういったらダメなのですが…」
「ああ、あれですか、わざとですが」
「わざと?」
「ええ、元々嫁ぐとか考えてませんでしたし、婿をもらうなんてもですね、だから嫌われていたかったのです」
「そんなことをしてたんですか?」
「はい、しておりました。まっ、でもまさか、それでも縁組のお話が来るとは思いませんでしたので」
「…僕は同じぐらいの年齢の方だと思っていたのですが」
「それはすいません、でしたら今からでも」
「いえ、せっかく来ていただいたのと、少しばかりあなたには同情します」
「騎士道ですかね」
「騎士ではありませんが、そういう精神は持ち合わせています」
「…」
「どうしました?」
「いえ…」
「出来ればその距離も埋めてしまいたいところです」
「あなたは…その…その辺の殿方では推し測れないお方なのかもしれませんね」
「そうですかね?」
「そうです、はい、失礼ですけども」
「ふっふっふっ」
「どうしましたか?」
「いや~面白い人だなって、こういうタイプはあまり僕の周囲にはおりませんので」
「あなたは私が意思をはっきり出しても、不快には思わないのですね」
「思わないですね。だってそうでしょ?それがあなたの魅力でもあるんだから」
「本当に旦那様は変わってます」
「自分ではそうは思いませんけども」
「自覚がないんですか?」
「あんまり…かな」
「ちゃんと領地守れてますか」
「そこは一応は」
「心配になる」
「ごめんなさい」
「そこはしっかりとやってくださいよ」
「やっては、やってはいるんですよ」
「もう!」
最初から忙しいことになってしまう。
正式な妻となってからじゃないと、重要な書類には目を通すことはできないので、ほぼ最初の二ヶ月はその把握にかけられた。
さすがの彼女も疲労を重ね。
「ああ、やっと終わった」
そう叫んだりもしていた。
「お疲れ様でした」
「さすがに愛想笑いは今はできませんよ」
「そこは求めていませんよ、そのまま寝てもいいですが、ちょっとお腹に入れてから、よろしければ私と少し話していただけませんか?」
「敬語でなくてもそれぐらいは…」
「いえいえ、親しき仲にもなんとやらですよ。さぁ、どうぞ、お嬢さん」
「これはこれはどうもありがとう、…お茶もどうしたんですか?」
「あなたの好みをようやく聞き出せましたから、取り寄せました」
「お金がかかりますわよ」
「君の笑顔の値段を考えたら、比べ物にならないでしょ」
「なんで、今までお相手が決まらなかったんですか?」
「はっはっはっ」
「なんとなく意中の人がおられたのはわかります」
「その話はしましょうか?」
「それはダメですよ、その人のことが大好きだったのでしょ?それなら私には話さないで、大切な思い出なんですから」
こんな感じで思い出には決して彼女は入ってこようとしない。
「まるで君の思い出には僕が触れてはいけないみたいな」
「私の話はあまり面白くないですよ、領内荒れまくって、楽しい話はない」
「それでも恋を、愛を知っているから、熱烈な物語はあったんだろうなって」
「そりゃあ…ねぇ」
「羨ましくもある」
「まあ、盛り上がっていたのは私だけっていうオチはつきます」
「…それは辛い」
「そこまで求めていたわけではないが、辛苦が目の前にあれば、共に乗りきろうという人は少ないというか、いなかったんですよ。これからも現れることはないでしょうね」
「僕もそうなると思いますか?」
「私があなたに苦労させると思います?」
「そんな男前な台詞初めていわれました、女性だったらキュンとしちゃいますね」
「男に生まれていれば良かった」
「それは僕が困るのでやめてください」
「えっ?」
「あなたは素晴らしい女性ですから、疲れを労うためにお茶をと、最初は思いましたが、あなたと話すのがだんだん楽しくなってしまった」
「話し相手ならば、サロンで見つかるのでは?」
「まあ、そうでしょうね、そういう場ですからね」
「私はああいうところは顔をだしませんが」
「でしょうね、今まで見かけたことがない」
「あそこはやはりその…余裕がある人たちの集まりなので」
「でも今はあそこも寂しくなってしまった」
「そりゃあ、そうでしょうよ。あちこち大変になっているのだから、自分だけのんびりは許される立場にはない」
「備えてないから、大慌てって感じですね」
「困ってから慌てるのは、覚悟が足りません」
「それはそう思います。むしろあなたはそういうときこそバネにするというか」
「しますね、躍進の秘密はそことも言えます」
「さすがにちょっと驚きましたけども、なんだ増やせているんですか?」
「あら、伸びるときに伸ばすは、基本ですわよ」
ニッコリ。
「説明はもらったんですよ、許可もしました、でも上手く行くとは思ってなかった」
「大丈夫です、実家でもそうでしたから」
「いやいやいやいや」
「まあ、実家ではいつもまぐれ当りだと思っていたみたいですから、私でもできるから、自分でもいけるって思って…」
「損害すごい出ているみたいですよ」
「義理も守れず、私利私欲に走るのならば、やはり失格ですから」
「それは…そうなんですがね」
「あら?旦那様、そんな私を恐ろしいとは思わないの?」
「言い忘れてましたが」
「はい」
「君に助けを求めるかはわかりませんが、まだ余力があったので、灰にしておきました」
「えっ?」
「まあ、君のことを視界に入れてなかったから、何が起きたのかわからないままだったから、ちょうどいいかなって思って」
「旦那様?」
「あれはそのうちこちらにも手を伸ばしますからね」
「いやいやいやいや」
「なんですか?」
「何をしているのですか?旦那様?」
「愛する妻の敵は僕の敵ですが?」
この時、自分の旦那である彼のあだ名、「金継ぎ」の意味を知ったような気がした。
「これは独り言です」
「どうぞ」
「私の心はひび割れていたんですね…」
「そうですか」
「今、何か…あたたかいものが、私のヒビを埋めてくれたような気がしました」
「それは良かったですね」
「ありがとうございます」
「いえいえ…それはあなたの夫ならば」
「それだけでは普通はここまではしませんわ」
「そうですかね?」
「そうですよ、一歩間違えれば恨まれて、人生が転落するかもしれないのに、なんでそんなことを…」
「たぶん僕はあなたのことを気に入っているからでしょうね。この領地は預かっているわけですから、命令によっては直ちに返上しなかればなりません」
「はい」
「だから窮屈な自由の中で生きることになり、それは僕の家族もそう強いることになる、でもだからといってただ我慢するのは嫌じゃありませんか?」
「それはそうですが」
「あなたの信頼をね、僕は欲しいんですよ」
「こんな面倒なことをしなくても、それならば立場上そういう相手でも良かったのでは?」
「それって婚姻を結ぶ意味あります?」
「…あのぅ、たぶんそういう結婚の方が多いですよ」
「僕は嫌だな、それって相手は心を開いてくれることがないじゃないですか」
「そうですけども…」
「自分は好きだとしても、相手はそうだとは限らないし、本心を打ち明けてくれることは決してないんだろうなというのがわかるのはちょっと…」
「あなたのような方こそ、本当にお好きになった方と結ばれてほしいものですね」
「あっ、もう結ばれているから大丈夫ですよ」
「私はあなたのことが思った以上に好きなので」
「好きになるポイントってありましたっけ?」
「好きの塊ですが」
「えっ?」
「あれ?なんか僕はおかしいことをいってますか?」
「ええ、その私は誰かから好かれるような生き方はしてませんから」
「あなたは魅力的ですよ。話しているととても楽しいし、時折その…素を見せてくれるようになってから、特にね」
「素ですか?」
「はい、その気を許してくれるようになって、そこがね、僕の何かをくすぐってくれます。あれって可愛くありません?子供のようにはしゃいで、ああいうとき僕はとても楽しくなったしまって、年甲斐もないというか…あなたのような娘さんならば、釣り合いがあった男性の方が良かったのかもしれませんがね」
「…」
「あれ?どうしましたか?」
「あなたという人は…」
「?」
「ここでいうのはなんですが、政略だからこそ、私はなにも言われてませんけども、あなたはモテるから、本当にモテる…というか、その気になれば政略結婚もしなくても良かったと思いますが」
「えっ?僕はあなたがいいですよ」
「もう…あなたが言いかもしれませんが、あのような恋する乙女たちがいるのならば、私はこの話断ってた思いますよ」
「どうしてですか」
「その気にどこでさせたのかはわかりませんが、させたのならば、その…ある程度は責任を、それか、そこまで気があるようにしないとか」
「…」
「どうしました…」
「そ…そこまで考えが回りませんでした、すいません」
「無自覚ですか?もうそれならば、私は次の検地が終わり次第、離縁でもしますから」
「いや、それはしないでくださいよ、むしろ…絶対にダメです」
「あなたはそうは言いますがね、何か確固たる理由がなければ、あなたの妻の立ち位置は危ういと私は見ましたよ。嫉妬ではないですがね…何て言うの、恋する乙女達はあなたの味方なのですから、正妻がいない方がちょうどいいのかなって」
「そうしたら僕は一人だ」
「いや、それはしょうがないでしょ。あなたが一人で全部やるとしたら、何もかも足りなくなるわけだから。そういう形で周囲が動くぐらいでないと、こればかりはあなたの今までが出てしまってる」
「どうすればあなたとラブラブ生活を続けれますか?」
「諦めた方がいいですね」
「そこをなんとなく」
「では…例えばですけども、どこまで失えます?」
「いっそのこと、知らない土地にでも行きますか?」
「その選択はあなたでは生きてはいけませんよ、捨てるのが下手でしょ?きっと捨てたものをずっと懐かしんでしまう、在りし日の思い出を楽しめる人はそれはやめた方がいい」
「君は強いな~」
「私はそのような生き方は出来ませんから」
ああ、金がなくてくっそ寒いわねとか経験したタイプ。
「いや、うちも結構最初は厳しかったよ」
「知ってます、むしろなんであれで何年もやってるのか意味がわかりません。あなたの就任…望まれてって聞いてたのに、少なくとも望まれた人への条件ではありませんね」
「それは…色々あったんだよ」
「私ならばあなたを苦労させるつまりはありませんよ、まっ、妻の立場にいる間限定ではありますが」
「そういうことをしなくても、そばにいてくれたら、僕は頑張るよ」
「努力だけで結果が出せると思わないください、あなたは才能があるからたまたま出てはいるが、それでも時間はかかってしまってる、これではいけない」
「君の話は耳が痛く、拝聴し、対策を練る必要がある」
「あなたは他の人たちの力を借りることが上手いのだから、有能な人材を起用する、それでなんとかなりますよ。私みたいに、お金がないからなんでもやらないといけないタイプではありません」
「それでも君にしかできないことはある」
「そこは…ほら、私の売りですから、譲るわけにはいきません」
「もしも利害関係できちゃっても、一歩も引かないんだろうなっていうのはわかるし、そうなったら、どんなものを見せてくれるのか楽しみでもあるんだよな。たぶんこちらの考えを越えてくるし」
「それは旦那様もでしょ?こちらが用意したものたぶんいくつか潰してくるでしょうから」
「本当に味方で良かったよ」
「私はちょっとだけ本気の旦那様とも戦って見たかったかな」
「へぇ~」
「なんですか?」
「それってもちろん今みたいな立場じゃない、君はご令嬢ということでいいわけ?」
「そうなりますね」
「勝っても負けても僕のお嫁さんになってるなら本気だす」
「なんですか?その条件は…」
意味がわからないという顔をすると。
「自分の本性を見せる怖さってあるじゃないか、好きな人にこそ、理解はしてもらいたいが…怖いみたいなさ」
「まあ、それはありますけどもね」
「どうしても手腕を発揮しなければならないときに、本性は出るじゃない、人をどう扱い、見ているかとか」
「そうですね」
「君はかなり人を大事にすると思う、ちょっとこれにはビックリする」
「旦那様、人にはね。未来というものがあるんですよ、だから…それを奪ってはいけない」
「知ってる。その観点が誰よりもすごい、僕も考えてはないわけではないが、長期的な視野においては、準備の段階から、読めないんだよな、ちょっとあれは悔しいぐらい、やられたって感じ」
「準備をしっかりすると、リソースが足りなくても補えますから、何事もそこを大事にするが大事」
「ああいうのが君をもっと知りたくなるんだよな、考えても、考えてもわからない、そこがとても良くて」
そのわからなさは、社交においても無類というか、凄みを発揮する。
「これは、これは…」
「お久しぶりでございます」
それは古き家柄の皆様にご挨拶することになった。
なったというか。
「僕にお話が?」
「せっかくだからお話をしてみたらどうですかね?」
彼女の方が物怖じしない。
「それはそうなんだけども、緊張するというか」
「そこまで…事前の段取りは、こちらでも交わしておきますから」
そういって書面などで、人となりや注意事項をあちらの家からいただくことができた。
「無難な会話はできるかと思います」
「それはありがたいけどもさ」
普通はここまでやらない…何か僕の知らない「しきたり」とかがあったりしたら、やはり大変である。
目を通すと、ホッとする、先に知っておいて良かったと。
「僕で一代目だから、正直こういうのはよくわからないところがある」
「そんなの言ったら、私だってね…」
「でも君は知っている、それはなんで?」
「うちの家族でやらかしたのがおりまして…」
「あぁ」
「先方からクレームが来てね、全部ね、問い合わせたんですよ。今回のこの場合は何が大事なのかって、全部責任被るのでっていったら、教えてもらったのでなんとかなったことがあってね、あそこから全部前もって、ただですね~」
「どうしたの?」
「こういう注意を取り寄せたとしても、守ってくれる人が少ないということがわかったので」
「それはわかる」
「旦那様はそれがわかる方でありがたいですよ」
なんて言っていた。
この時、僕は執務用の靴、サンダルを彼女から用意してもらったのだが、大変快適であった。
「どうしてまた…」
「いえ…履き心地のほどは?」
「めっちゃくちゃ軽い」
「そうですか、その膝はお大事に、壊してからでは遅いので」
「壊した人がいたの?」
「はい、知り合いの奥さまが、元気な方でありましたのに、先日お見かけしたとき、歩き方が…」
「それで僕にも気を付けろと」
「そのサンダルは、耐久性はあまりよろしくないですが、あなたの膝の代わりにすり減ってくれるので、それを考えればお安いと思います」
「君はそういうのも詳しい気がする」
「ただ旦那様が気に入るかはわかりませんでしたので、もしもこれがダメならば、好きな形でオーダーかなとも」
「そこまで考えていたのか」
「歩けなくなったら、一大事ですから…」
僕は前より歩き回ることになったのだが、そのせいで体力もついた。
そしてその話が古き家柄の皆様と盛り上がるとは思わなかった。
「以前見かけたときは、あまり運動をしているイメージがなかったのですが、何か始めたのですが?」
ご当主は単独でお越しになるわけではなく、こちらを気を使ってか、僕と同じぐらいの一族で、何度か話したことがある子息も共におられた。
「いえ、靴、サンダルを変えました、でなければダンス一つでどうしようか困る僕が、こんなにも…これがいいんですよ、翼が生えたような」
実際にシンボルは羽根兜のサンダルである。
「あまり知られてはいない品物ですね」
「そういえばそうですね」
「よろしければお試しになられますか?」
そう言い出した妻に。
「えっ?」
「えっ?」
二人して困惑をした。
「サイズを教えていただければすぐにお出し出来ますよ、たぶん足を合わせた瞬間にいかに優れているかはおわかりになるし、こういうときは言葉よりも早いかと」
そういって彼女は準備を始める。
「ふっふっ」
「どうしましたか?」
「いえ、大変仕事ができるかととは聞いているというか、知ってたんですよ」
「えっ?なんでですか?」
「だって私のスピーチの引用をしたことがあるので」
「はっ?」
「その引用の許可願をいただいたことがあり、それで確認したことがあるのですが、まあ、見事に上手くやりとげたといった感じですかね、ただもっと拍手は出るかと思ったが…狙いまではその時はわからなかった」
「…うわ、彼女らしい」
「やはりそうですか、ご亭主であるあなたも…おもしろい人だな」
「後でその話も聞いておきます」
「思った以上に、いえあなたもだが、逸話にはあるし、これからも増えることでしょうね」
サンダルを用意してきた彼女は、奥さまにはそういうことはさせれませんと一緒にやって来たうちの家のものが、そのまま試しに履いてもらったのだが。
「どうしました?」
変な顔をされた。
「いや、これは…」
そこに…
「ご当主のお越しになりましたので」
言葉を中断し、僕は、私と一人称を変えた上で
しばし直接の言葉のやり取りをした。
「…そういえば先ほど、何か騒いでおりませんでしたか?」
「ああ、それは…」
「いや~何、大変おもしろいものがありましてね、マイアの子が落としていったのか、それともこれからここにいる彼が、ゴルゴーン退治でも行くために借りたのかと…」
「彼ならば様々な試練を潜り抜けるように言われても、おかしくはないからな」
「えっ?」
初耳ですが?
「君は、奥方もそうではあるが、その枠として見られることが多いと思う、私がこういうことをいうのはなんだがね」
つまりあれだ、そういう問題があるところに送り込まれたとしても、大きい家が関わらないので、責任処分するのは楽だから任命されている。
「後ろ楯がないと、そんなものですよ」
妻は気づいていたようだ。
「確かに厄介ごとは多いかなと」
「普通はそれぐらいのボヤキではすみませんよ」
「あなた…よく見てください、あなたと同じぐらいの立場からスタートした人たちで、生き残ってる方々を」
「あっ」
「本当に気づいてなかった」
「そういえばいないな…って」
「はっはっはっ」
ご当主が大笑いした。そしてその場にいる人間はみんなビク!とした。
「どうなされましたか?」
「それはおもしろいからだ」
笑いの理由も、お伺いをたてるといった感じである。
「おもしろいからとは?」
「おもしろいだろう、才覚溢れるものとの交流は有意義なものだしな」
「それは…確かにそうですが…」
「しっくりも来た」
「しっくりですか…」
「長年、何故にあそこまで出来が悪いものが生き残れたのかとね、ここにいる彼がその負を引き受けた上でケロッとしているのだから、そりゃあ彼の名前は表には出にくいだろうし、あれらも権力を維持できるだろうさ」
「ああ、そういうことでしたか」
子息の方は思い当たる節があるようだが、僕には全くだな。
チラッ
彼女の方は、えっ?誰のこと?という顔をしている。
ここからは他愛ない話が時間まで続いた。
後日サンダルはご当主やら一族の方々も使いたいと言われ。
「ああ、それでしたらと」
こちらが代金を出して贈り物としてお渡しということになった。
高く見えるかもしれないが、贈り物としてはかなり安く上がってる。
「膝はまだお金では買えませんからね」
向こうは行事類もうちとは比べ物にはならないだろうし、立っているだけで、きついときもあるだろう。
連夜続くシーズンでは体力が試される、僕は結婚したらいかなくていいとホッとしている部分はある。
「まあ、既製品はさすがにですから、オーダーでお願いすることになりますが」
「だろうね」
でも邸宅では既製品履き回してて、もう普通には戻れないですねと感想をいただき。
「うちがこの靴を導入したことはご内密に」
と止められた。
「それはどういうこと?」
「たぶん我慢比べするんじゃないかな」
「我慢比べ?」
行事は暑いとき、寒いとき、辛いときに、それを顔に出したり、耐えれなかったときに、そこをチャンスだといって嫌みを言い出してくることがあるので。
「それやるんじゃないかと」
「えっ?それは…」
「あそこのお家だから、まあ、その考えられる相手というのは…」
なんとなく把握。
「ああいうのであちらの子息は出来が、不出来はと比べられるものですから」
将来性が社交界に出回る。
「そういうのも知っている君の家とは…」
「うちは地方のよくある…」
「そこまで知っててよくあるは、あんまり通らないよ」
「いや、私自身も我慢比べは仕掛けられたことはありますからね」
「それでか」
「最初は何が起きたかわからなかったですよ、まあ、私の場合は、そのね、目鼻だちが大変によろしい娘さんが、気にくわないとね…」
「それでどうなったの?」
「さぁ」
「さぁって何さ」
「あそこはそんなことしている場ではなかったので」
「ああ、そういう空気の読めないことをしてしまったのか」
「向こうはこちらが気にくわないって言ってたけどもね、うち…奉仕活動とかも積極的にやってたというか、やらされていたからな…」
婦人会の手伝いがあった。
「それで回っていたところがあった部分が、そういうのを引き受けてくれるところと揉めて、撤退されたらね…」
「揉めるね」
「揉めますでしょ、そこまで見えてない子だったというか」
「同じ年ぐらいでしょ?」
「同じ年でしたが」
「それは十分大人びた子供だよ、君はさ」
「でもさ、方針かもしれないけども、一代から始まった家というのは、大小あれど無愛想では勤まらないというか、外面はいいものですよ」
「スタートラインにすら、その子は立ってなかったと」
「そう思いますよ」
「う~ん、これは話にもならないという奴か」
「まあ、私はああいうのは窮屈なので好きではないですから、裁縫仕込まれると婦人会とか大変なんですよ、刺繍チクチクとかやるんですがね」
手縫いが伝統らしいが。
「あれ、趣味ではない、行事に合わせて準備をするになると、途端に苦行になるから」
一ヶ月で薔薇を完成させろで、彼女の学友はできるか!と投げたという。
「一輪形になればいい方だったよ」
「君は何を出したの?」
「そりゃあもう、短時間で形になるものを選んで」
「君らしい~」
「その選び方したら、うちの母に伝統がぁ~とか言われた、言われた、ただ後に母の作を見せてもらったのだが、その伝統もきちんと受け継いでたわけではないから、私に攻撃したいポイントを探していたのねと」
「君から母親とか、家族の話をするとはね…」
「誰かさんが、私を少し変えたんですよね、今まではそうしたいものでもなかったのに」
「そうなのか…でもその誰かさんには嫉妬しちゃう、僕が君を変えたかったのに」
「本気でいってます」
ニコニコ
「そうですか~」
彼女はやはり察しがいいな。
「やっぱり検地が終わるときに離婚を考えているわけ」
「その検地のお知らせ来ましたよ」
「えっ?嘘、もう!」
「例年通り実施予定なので」
「俺は離婚しないよ」
「どうしますかね」
「どうって、どう?」
「お互いを傷つけずに離婚するにはどうすればいいかと」
「た間に君は真剣にそういうことを考えるね」
「そりゃあ、私はあなたと結婚するのはあなたを輝かせるためだもの」
「僕が君と結婚するのは癒されるためだから」
「はっ?」
「えっ?知らなかったの?」
「はい」
「そうなんだ、でもお互いそんな理由ならば、そりゃあ話が合わないはずだよね」
「出世は望んでおられないのですか?」
「これ以上はね…揉めるでしょ、もう今でさえ、あまり良い顔はされないし、でも君がいると、そういう俺の限界も変わってくるから…どうしようかなはある」
「欲はあったんですね、むしろないのかと思ってましたよ」
「どういうこと」
「出世欲はないが腕はあるから、選ばれているのかと思ってました」
「いや、そこは男だよ」
「そうなると、話は変わりますね。それこそ急に危険人物になる」
「やっぱり最初はそういうのあるでしょ、ただまあ、前面に出すのは危ないかなって」
「老獪だな」
「我慢比べではないけどもさ、そういうのからわかりやすく攻撃されていくのを見ると。何も考えてなさそうだって見られるぐらいがちょうどいいのかなって」
「こんな中身を知ってたら、警戒しかしませんよ」
「大丈夫、そこは上手くやるから、というか、君には見せれるんだけどもさ」
「どうしてです?」
「そのぐらいは愛してあるんだよ」
「愛ね…」
「信じれない?」
「言葉では無理でしょ」
「まあ、愛しているって言葉では信じてもらえなくて、夫婦として、いや夫として、う~ん夫…君の前では夫というか、彼氏とか男としていて、ようやく腑に落ちてもらったからね」
「あれはその…」
「君のお祝いごとを共に過ごすことがそんなに不思議なことなの」
「まずお祝いされるとは思わなかった」
「ん~もう!君には何が似合うのか、すんごい考えたんだよ」
花も合わせて咲かせてもらった。
「切り花でも良かったのに」
「そこは…ね…、一緒に歩いたときに、ちょうど見頃の花たちが飾ってるのがいいんじゃない」
「無茶しますね」
「君のためならば、それぐらいはしないとね」
僕は今年結婚をしたが、政略結婚をした妻から年明けに離婚の話が出ていた。
「離婚しても、来年の君の誕生日はお祝いをしますから」
「それはその時の奥様が確実に嫌な顔をするやつですよね」
「僕としてはしばらく結婚はいいんだけどもね」
「無理でしょ、すぐに誰かを紹介されますよ」
「そしたら君はどこに行くの?」
「さぁ、どこかで何かしてますよ」
「もう会えないの?」
「違いますよ、もう会わないの」
「やだな」
「立場を考えてくださいよ」
「それはそれ」
その時の僕は彼女がいうには、彼女を傷つけたものを灰にした時の顔をしていたという。
「あの女のドレスは穴があいてた、きっと灰が飛んで開いたに違いない」
そんな声を少し遠くからあの時は聞いた。
本当に何も知らないというのは、少し羨ましいとすら思える。
これが一体どういうことなのか、これからのことが全く見えてはいない。
「大丈夫、怪我はしてない、君に火の粉がかかってたらと思うと」
「私は大丈夫です」
「でもよく見せて」
そういって私の頬に触れて、目を合わせた。
「君の目を見ていると、疲れを忘れそうになる」
「それは疲れてないわけじゃないんですからね」
「知ってる…愛してるよ」
「ここでそれ言います?」
「いや~僕が動いたら、さすがにわかるかなって思ったんだけども、ここまでわからないとは思わなかったよ」
「本当ですよ」
「君を苦しめたものは灰になった、これから生まれることもない」
「呆気ないものですね」
「そうだね、でも僕が妻にしてやれることなんてそのぐらいしかないし」
これが?
「本当は起きないのが一番いいんだ」
「それは…そうでしょ」
「後ろは見ないで、これから家に帰ろうか」
後ろはまだ音をたててる、パチパチなのか、ジジジなのか。
そしてたぶん後ろを見ないでという言葉にも意味があるのだろう。
「わかりました」
その言葉に妻であるから従った。
そうだ、愛しているからではない、愛ならこの握ってくれた手の暖かさを忘れられなくなってしまう。
だからこれは愛ではないし、最初の取り決め通りに検地の後は離婚の話、そして身を引こう。
これが私ができる精一杯の恩返し。
そうすればこの人は私という足手まといがいなくなるわけだから。
でもせめて、この帰り道だけは少しだけ長く続きますように、忘れられない道中になりますように、そんなことを願い、私は歩いた。
そう丁寧に挨拶をする彼女は僕の奥さんになる人で、本来は僕の奥さんになる予定ではなかったはずだった。
「こちらこそ、初めまして」
丁寧な挨拶には、丁寧な挨拶をしなくては、そんな堅苦しい感じだったと思う。
ついでにいうと、彼女の元々の相手は僕もしっていて…というか、大分狭い世界だから、ほぼみんな知り合いというやつだ。
「遠いところから、疲れたのではありませんか」
「はい、少しばかり、でも疲れたとも言ってはいられませんから」
強い人だなと思う。
知らない土地に来て、こう笑顔でいい返す強さは、僕にはないから。
「それではご案内します、気に入ってくれるといいのですが」
「旦那様が用意してくれたんですもの、気に入らないはずがありませんわ」
「そういってくれるのは嬉しいのですが」
書類上には名前は並んではいるものの、僕たちには距離があった。
それを少しでも埋めていければいいのではないなと…そんなことを思った。
いや、思っていいんだろうか、確かに、その上手くやることを望んではいるのだが、それでも彼女の気持ちを蔑ろにする気はなくて、色々ある、あった身の上だからこそ、リラックスしてくれたらいいな。
そこを冷たい風が吹いて、彼女のかぶっているフードを膨らませ、髪が艶やかなせいか、そのまま滑り、この時彼女の顔を初めてしっかりと見た。
「?」
「どうしましたか?」
「ずいぶんとお写真より若い、いえ…女性にそういったらダメなのですが…」
「ああ、あれですか、わざとですが」
「わざと?」
「ええ、元々嫁ぐとか考えてませんでしたし、婿をもらうなんてもですね、だから嫌われていたかったのです」
「そんなことをしてたんですか?」
「はい、しておりました。まっ、でもまさか、それでも縁組のお話が来るとは思いませんでしたので」
「…僕は同じぐらいの年齢の方だと思っていたのですが」
「それはすいません、でしたら今からでも」
「いえ、せっかく来ていただいたのと、少しばかりあなたには同情します」
「騎士道ですかね」
「騎士ではありませんが、そういう精神は持ち合わせています」
「…」
「どうしました?」
「いえ…」
「出来ればその距離も埋めてしまいたいところです」
「あなたは…その…その辺の殿方では推し測れないお方なのかもしれませんね」
「そうですかね?」
「そうです、はい、失礼ですけども」
「ふっふっふっ」
「どうしましたか?」
「いや~面白い人だなって、こういうタイプはあまり僕の周囲にはおりませんので」
「あなたは私が意思をはっきり出しても、不快には思わないのですね」
「思わないですね。だってそうでしょ?それがあなたの魅力でもあるんだから」
「本当に旦那様は変わってます」
「自分ではそうは思いませんけども」
「自覚がないんですか?」
「あんまり…かな」
「ちゃんと領地守れてますか」
「そこは一応は」
「心配になる」
「ごめんなさい」
「そこはしっかりとやってくださいよ」
「やっては、やってはいるんですよ」
「もう!」
最初から忙しいことになってしまう。
正式な妻となってからじゃないと、重要な書類には目を通すことはできないので、ほぼ最初の二ヶ月はその把握にかけられた。
さすがの彼女も疲労を重ね。
「ああ、やっと終わった」
そう叫んだりもしていた。
「お疲れ様でした」
「さすがに愛想笑いは今はできませんよ」
「そこは求めていませんよ、そのまま寝てもいいですが、ちょっとお腹に入れてから、よろしければ私と少し話していただけませんか?」
「敬語でなくてもそれぐらいは…」
「いえいえ、親しき仲にもなんとやらですよ。さぁ、どうぞ、お嬢さん」
「これはこれはどうもありがとう、…お茶もどうしたんですか?」
「あなたの好みをようやく聞き出せましたから、取り寄せました」
「お金がかかりますわよ」
「君の笑顔の値段を考えたら、比べ物にならないでしょ」
「なんで、今までお相手が決まらなかったんですか?」
「はっはっはっ」
「なんとなく意中の人がおられたのはわかります」
「その話はしましょうか?」
「それはダメですよ、その人のことが大好きだったのでしょ?それなら私には話さないで、大切な思い出なんですから」
こんな感じで思い出には決して彼女は入ってこようとしない。
「まるで君の思い出には僕が触れてはいけないみたいな」
「私の話はあまり面白くないですよ、領内荒れまくって、楽しい話はない」
「それでも恋を、愛を知っているから、熱烈な物語はあったんだろうなって」
「そりゃあ…ねぇ」
「羨ましくもある」
「まあ、盛り上がっていたのは私だけっていうオチはつきます」
「…それは辛い」
「そこまで求めていたわけではないが、辛苦が目の前にあれば、共に乗りきろうという人は少ないというか、いなかったんですよ。これからも現れることはないでしょうね」
「僕もそうなると思いますか?」
「私があなたに苦労させると思います?」
「そんな男前な台詞初めていわれました、女性だったらキュンとしちゃいますね」
「男に生まれていれば良かった」
「それは僕が困るのでやめてください」
「えっ?」
「あなたは素晴らしい女性ですから、疲れを労うためにお茶をと、最初は思いましたが、あなたと話すのがだんだん楽しくなってしまった」
「話し相手ならば、サロンで見つかるのでは?」
「まあ、そうでしょうね、そういう場ですからね」
「私はああいうところは顔をだしませんが」
「でしょうね、今まで見かけたことがない」
「あそこはやはりその…余裕がある人たちの集まりなので」
「でも今はあそこも寂しくなってしまった」
「そりゃあ、そうでしょうよ。あちこち大変になっているのだから、自分だけのんびりは許される立場にはない」
「備えてないから、大慌てって感じですね」
「困ってから慌てるのは、覚悟が足りません」
「それはそう思います。むしろあなたはそういうときこそバネにするというか」
「しますね、躍進の秘密はそことも言えます」
「さすがにちょっと驚きましたけども、なんだ増やせているんですか?」
「あら、伸びるときに伸ばすは、基本ですわよ」
ニッコリ。
「説明はもらったんですよ、許可もしました、でも上手く行くとは思ってなかった」
「大丈夫です、実家でもそうでしたから」
「いやいやいやいや」
「まあ、実家ではいつもまぐれ当りだと思っていたみたいですから、私でもできるから、自分でもいけるって思って…」
「損害すごい出ているみたいですよ」
「義理も守れず、私利私欲に走るのならば、やはり失格ですから」
「それは…そうなんですがね」
「あら?旦那様、そんな私を恐ろしいとは思わないの?」
「言い忘れてましたが」
「はい」
「君に助けを求めるかはわかりませんが、まだ余力があったので、灰にしておきました」
「えっ?」
「まあ、君のことを視界に入れてなかったから、何が起きたのかわからないままだったから、ちょうどいいかなって思って」
「旦那様?」
「あれはそのうちこちらにも手を伸ばしますからね」
「いやいやいやいや」
「なんですか?」
「何をしているのですか?旦那様?」
「愛する妻の敵は僕の敵ですが?」
この時、自分の旦那である彼のあだ名、「金継ぎ」の意味を知ったような気がした。
「これは独り言です」
「どうぞ」
「私の心はひび割れていたんですね…」
「そうですか」
「今、何か…あたたかいものが、私のヒビを埋めてくれたような気がしました」
「それは良かったですね」
「ありがとうございます」
「いえいえ…それはあなたの夫ならば」
「それだけでは普通はここまではしませんわ」
「そうですかね?」
「そうですよ、一歩間違えれば恨まれて、人生が転落するかもしれないのに、なんでそんなことを…」
「たぶん僕はあなたのことを気に入っているからでしょうね。この領地は預かっているわけですから、命令によっては直ちに返上しなかればなりません」
「はい」
「だから窮屈な自由の中で生きることになり、それは僕の家族もそう強いることになる、でもだからといってただ我慢するのは嫌じゃありませんか?」
「それはそうですが」
「あなたの信頼をね、僕は欲しいんですよ」
「こんな面倒なことをしなくても、それならば立場上そういう相手でも良かったのでは?」
「それって婚姻を結ぶ意味あります?」
「…あのぅ、たぶんそういう結婚の方が多いですよ」
「僕は嫌だな、それって相手は心を開いてくれることがないじゃないですか」
「そうですけども…」
「自分は好きだとしても、相手はそうだとは限らないし、本心を打ち明けてくれることは決してないんだろうなというのがわかるのはちょっと…」
「あなたのような方こそ、本当にお好きになった方と結ばれてほしいものですね」
「あっ、もう結ばれているから大丈夫ですよ」
「私はあなたのことが思った以上に好きなので」
「好きになるポイントってありましたっけ?」
「好きの塊ですが」
「えっ?」
「あれ?なんか僕はおかしいことをいってますか?」
「ええ、その私は誰かから好かれるような生き方はしてませんから」
「あなたは魅力的ですよ。話しているととても楽しいし、時折その…素を見せてくれるようになってから、特にね」
「素ですか?」
「はい、その気を許してくれるようになって、そこがね、僕の何かをくすぐってくれます。あれって可愛くありません?子供のようにはしゃいで、ああいうとき僕はとても楽しくなったしまって、年甲斐もないというか…あなたのような娘さんならば、釣り合いがあった男性の方が良かったのかもしれませんがね」
「…」
「あれ?どうしましたか?」
「あなたという人は…」
「?」
「ここでいうのはなんですが、政略だからこそ、私はなにも言われてませんけども、あなたはモテるから、本当にモテる…というか、その気になれば政略結婚もしなくても良かったと思いますが」
「えっ?僕はあなたがいいですよ」
「もう…あなたが言いかもしれませんが、あのような恋する乙女たちがいるのならば、私はこの話断ってた思いますよ」
「どうしてですか」
「その気にどこでさせたのかはわかりませんが、させたのならば、その…ある程度は責任を、それか、そこまで気があるようにしないとか」
「…」
「どうしました…」
「そ…そこまで考えが回りませんでした、すいません」
「無自覚ですか?もうそれならば、私は次の検地が終わり次第、離縁でもしますから」
「いや、それはしないでくださいよ、むしろ…絶対にダメです」
「あなたはそうは言いますがね、何か確固たる理由がなければ、あなたの妻の立ち位置は危ういと私は見ましたよ。嫉妬ではないですがね…何て言うの、恋する乙女達はあなたの味方なのですから、正妻がいない方がちょうどいいのかなって」
「そうしたら僕は一人だ」
「いや、それはしょうがないでしょ。あなたが一人で全部やるとしたら、何もかも足りなくなるわけだから。そういう形で周囲が動くぐらいでないと、こればかりはあなたの今までが出てしまってる」
「どうすればあなたとラブラブ生活を続けれますか?」
「諦めた方がいいですね」
「そこをなんとなく」
「では…例えばですけども、どこまで失えます?」
「いっそのこと、知らない土地にでも行きますか?」
「その選択はあなたでは生きてはいけませんよ、捨てるのが下手でしょ?きっと捨てたものをずっと懐かしんでしまう、在りし日の思い出を楽しめる人はそれはやめた方がいい」
「君は強いな~」
「私はそのような生き方は出来ませんから」
ああ、金がなくてくっそ寒いわねとか経験したタイプ。
「いや、うちも結構最初は厳しかったよ」
「知ってます、むしろなんであれで何年もやってるのか意味がわかりません。あなたの就任…望まれてって聞いてたのに、少なくとも望まれた人への条件ではありませんね」
「それは…色々あったんだよ」
「私ならばあなたを苦労させるつまりはありませんよ、まっ、妻の立場にいる間限定ではありますが」
「そういうことをしなくても、そばにいてくれたら、僕は頑張るよ」
「努力だけで結果が出せると思わないください、あなたは才能があるからたまたま出てはいるが、それでも時間はかかってしまってる、これではいけない」
「君の話は耳が痛く、拝聴し、対策を練る必要がある」
「あなたは他の人たちの力を借りることが上手いのだから、有能な人材を起用する、それでなんとかなりますよ。私みたいに、お金がないからなんでもやらないといけないタイプではありません」
「それでも君にしかできないことはある」
「そこは…ほら、私の売りですから、譲るわけにはいきません」
「もしも利害関係できちゃっても、一歩も引かないんだろうなっていうのはわかるし、そうなったら、どんなものを見せてくれるのか楽しみでもあるんだよな。たぶんこちらの考えを越えてくるし」
「それは旦那様もでしょ?こちらが用意したものたぶんいくつか潰してくるでしょうから」
「本当に味方で良かったよ」
「私はちょっとだけ本気の旦那様とも戦って見たかったかな」
「へぇ~」
「なんですか?」
「それってもちろん今みたいな立場じゃない、君はご令嬢ということでいいわけ?」
「そうなりますね」
「勝っても負けても僕のお嫁さんになってるなら本気だす」
「なんですか?その条件は…」
意味がわからないという顔をすると。
「自分の本性を見せる怖さってあるじゃないか、好きな人にこそ、理解はしてもらいたいが…怖いみたいなさ」
「まあ、それはありますけどもね」
「どうしても手腕を発揮しなければならないときに、本性は出るじゃない、人をどう扱い、見ているかとか」
「そうですね」
「君はかなり人を大事にすると思う、ちょっとこれにはビックリする」
「旦那様、人にはね。未来というものがあるんですよ、だから…それを奪ってはいけない」
「知ってる。その観点が誰よりもすごい、僕も考えてはないわけではないが、長期的な視野においては、準備の段階から、読めないんだよな、ちょっとあれは悔しいぐらい、やられたって感じ」
「準備をしっかりすると、リソースが足りなくても補えますから、何事もそこを大事にするが大事」
「ああいうのが君をもっと知りたくなるんだよな、考えても、考えてもわからない、そこがとても良くて」
そのわからなさは、社交においても無類というか、凄みを発揮する。
「これは、これは…」
「お久しぶりでございます」
それは古き家柄の皆様にご挨拶することになった。
なったというか。
「僕にお話が?」
「せっかくだからお話をしてみたらどうですかね?」
彼女の方が物怖じしない。
「それはそうなんだけども、緊張するというか」
「そこまで…事前の段取りは、こちらでも交わしておきますから」
そういって書面などで、人となりや注意事項をあちらの家からいただくことができた。
「無難な会話はできるかと思います」
「それはありがたいけどもさ」
普通はここまでやらない…何か僕の知らない「しきたり」とかがあったりしたら、やはり大変である。
目を通すと、ホッとする、先に知っておいて良かったと。
「僕で一代目だから、正直こういうのはよくわからないところがある」
「そんなの言ったら、私だってね…」
「でも君は知っている、それはなんで?」
「うちの家族でやらかしたのがおりまして…」
「あぁ」
「先方からクレームが来てね、全部ね、問い合わせたんですよ。今回のこの場合は何が大事なのかって、全部責任被るのでっていったら、教えてもらったのでなんとかなったことがあってね、あそこから全部前もって、ただですね~」
「どうしたの?」
「こういう注意を取り寄せたとしても、守ってくれる人が少ないということがわかったので」
「それはわかる」
「旦那様はそれがわかる方でありがたいですよ」
なんて言っていた。
この時、僕は執務用の靴、サンダルを彼女から用意してもらったのだが、大変快適であった。
「どうしてまた…」
「いえ…履き心地のほどは?」
「めっちゃくちゃ軽い」
「そうですか、その膝はお大事に、壊してからでは遅いので」
「壊した人がいたの?」
「はい、知り合いの奥さまが、元気な方でありましたのに、先日お見かけしたとき、歩き方が…」
「それで僕にも気を付けろと」
「そのサンダルは、耐久性はあまりよろしくないですが、あなたの膝の代わりにすり減ってくれるので、それを考えればお安いと思います」
「君はそういうのも詳しい気がする」
「ただ旦那様が気に入るかはわかりませんでしたので、もしもこれがダメならば、好きな形でオーダーかなとも」
「そこまで考えていたのか」
「歩けなくなったら、一大事ですから…」
僕は前より歩き回ることになったのだが、そのせいで体力もついた。
そしてその話が古き家柄の皆様と盛り上がるとは思わなかった。
「以前見かけたときは、あまり運動をしているイメージがなかったのですが、何か始めたのですが?」
ご当主は単独でお越しになるわけではなく、こちらを気を使ってか、僕と同じぐらいの一族で、何度か話したことがある子息も共におられた。
「いえ、靴、サンダルを変えました、でなければダンス一つでどうしようか困る僕が、こんなにも…これがいいんですよ、翼が生えたような」
実際にシンボルは羽根兜のサンダルである。
「あまり知られてはいない品物ですね」
「そういえばそうですね」
「よろしければお試しになられますか?」
そう言い出した妻に。
「えっ?」
「えっ?」
二人して困惑をした。
「サイズを教えていただければすぐにお出し出来ますよ、たぶん足を合わせた瞬間にいかに優れているかはおわかりになるし、こういうときは言葉よりも早いかと」
そういって彼女は準備を始める。
「ふっふっ」
「どうしましたか?」
「いえ、大変仕事ができるかととは聞いているというか、知ってたんですよ」
「えっ?なんでですか?」
「だって私のスピーチの引用をしたことがあるので」
「はっ?」
「その引用の許可願をいただいたことがあり、それで確認したことがあるのですが、まあ、見事に上手くやりとげたといった感じですかね、ただもっと拍手は出るかと思ったが…狙いまではその時はわからなかった」
「…うわ、彼女らしい」
「やはりそうですか、ご亭主であるあなたも…おもしろい人だな」
「後でその話も聞いておきます」
「思った以上に、いえあなたもだが、逸話にはあるし、これからも増えることでしょうね」
サンダルを用意してきた彼女は、奥さまにはそういうことはさせれませんと一緒にやって来たうちの家のものが、そのまま試しに履いてもらったのだが。
「どうしました?」
変な顔をされた。
「いや、これは…」
そこに…
「ご当主のお越しになりましたので」
言葉を中断し、僕は、私と一人称を変えた上で
しばし直接の言葉のやり取りをした。
「…そういえば先ほど、何か騒いでおりませんでしたか?」
「ああ、それは…」
「いや~何、大変おもしろいものがありましてね、マイアの子が落としていったのか、それともこれからここにいる彼が、ゴルゴーン退治でも行くために借りたのかと…」
「彼ならば様々な試練を潜り抜けるように言われても、おかしくはないからな」
「えっ?」
初耳ですが?
「君は、奥方もそうではあるが、その枠として見られることが多いと思う、私がこういうことをいうのはなんだがね」
つまりあれだ、そういう問題があるところに送り込まれたとしても、大きい家が関わらないので、責任処分するのは楽だから任命されている。
「後ろ楯がないと、そんなものですよ」
妻は気づいていたようだ。
「確かに厄介ごとは多いかなと」
「普通はそれぐらいのボヤキではすみませんよ」
「あなた…よく見てください、あなたと同じぐらいの立場からスタートした人たちで、生き残ってる方々を」
「あっ」
「本当に気づいてなかった」
「そういえばいないな…って」
「はっはっはっ」
ご当主が大笑いした。そしてその場にいる人間はみんなビク!とした。
「どうなされましたか?」
「それはおもしろいからだ」
笑いの理由も、お伺いをたてるといった感じである。
「おもしろいからとは?」
「おもしろいだろう、才覚溢れるものとの交流は有意義なものだしな」
「それは…確かにそうですが…」
「しっくりも来た」
「しっくりですか…」
「長年、何故にあそこまで出来が悪いものが生き残れたのかとね、ここにいる彼がその負を引き受けた上でケロッとしているのだから、そりゃあ彼の名前は表には出にくいだろうし、あれらも権力を維持できるだろうさ」
「ああ、そういうことでしたか」
子息の方は思い当たる節があるようだが、僕には全くだな。
チラッ
彼女の方は、えっ?誰のこと?という顔をしている。
ここからは他愛ない話が時間まで続いた。
後日サンダルはご当主やら一族の方々も使いたいと言われ。
「ああ、それでしたらと」
こちらが代金を出して贈り物としてお渡しということになった。
高く見えるかもしれないが、贈り物としてはかなり安く上がってる。
「膝はまだお金では買えませんからね」
向こうは行事類もうちとは比べ物にはならないだろうし、立っているだけで、きついときもあるだろう。
連夜続くシーズンでは体力が試される、僕は結婚したらいかなくていいとホッとしている部分はある。
「まあ、既製品はさすがにですから、オーダーでお願いすることになりますが」
「だろうね」
でも邸宅では既製品履き回してて、もう普通には戻れないですねと感想をいただき。
「うちがこの靴を導入したことはご内密に」
と止められた。
「それはどういうこと?」
「たぶん我慢比べするんじゃないかな」
「我慢比べ?」
行事は暑いとき、寒いとき、辛いときに、それを顔に出したり、耐えれなかったときに、そこをチャンスだといって嫌みを言い出してくることがあるので。
「それやるんじゃないかと」
「えっ?それは…」
「あそこのお家だから、まあ、その考えられる相手というのは…」
なんとなく把握。
「ああいうのであちらの子息は出来が、不出来はと比べられるものですから」
将来性が社交界に出回る。
「そういうのも知っている君の家とは…」
「うちは地方のよくある…」
「そこまで知っててよくあるは、あんまり通らないよ」
「いや、私自身も我慢比べは仕掛けられたことはありますからね」
「それでか」
「最初は何が起きたかわからなかったですよ、まあ、私の場合は、そのね、目鼻だちが大変によろしい娘さんが、気にくわないとね…」
「それでどうなったの?」
「さぁ」
「さぁって何さ」
「あそこはそんなことしている場ではなかったので」
「ああ、そういう空気の読めないことをしてしまったのか」
「向こうはこちらが気にくわないって言ってたけどもね、うち…奉仕活動とかも積極的にやってたというか、やらされていたからな…」
婦人会の手伝いがあった。
「それで回っていたところがあった部分が、そういうのを引き受けてくれるところと揉めて、撤退されたらね…」
「揉めるね」
「揉めますでしょ、そこまで見えてない子だったというか」
「同じ年ぐらいでしょ?」
「同じ年でしたが」
「それは十分大人びた子供だよ、君はさ」
「でもさ、方針かもしれないけども、一代から始まった家というのは、大小あれど無愛想では勤まらないというか、外面はいいものですよ」
「スタートラインにすら、その子は立ってなかったと」
「そう思いますよ」
「う~ん、これは話にもならないという奴か」
「まあ、私はああいうのは窮屈なので好きではないですから、裁縫仕込まれると婦人会とか大変なんですよ、刺繍チクチクとかやるんですがね」
手縫いが伝統らしいが。
「あれ、趣味ではない、行事に合わせて準備をするになると、途端に苦行になるから」
一ヶ月で薔薇を完成させろで、彼女の学友はできるか!と投げたという。
「一輪形になればいい方だったよ」
「君は何を出したの?」
「そりゃあもう、短時間で形になるものを選んで」
「君らしい~」
「その選び方したら、うちの母に伝統がぁ~とか言われた、言われた、ただ後に母の作を見せてもらったのだが、その伝統もきちんと受け継いでたわけではないから、私に攻撃したいポイントを探していたのねと」
「君から母親とか、家族の話をするとはね…」
「誰かさんが、私を少し変えたんですよね、今まではそうしたいものでもなかったのに」
「そうなのか…でもその誰かさんには嫉妬しちゃう、僕が君を変えたかったのに」
「本気でいってます」
ニコニコ
「そうですか~」
彼女はやはり察しがいいな。
「やっぱり検地が終わるときに離婚を考えているわけ」
「その検地のお知らせ来ましたよ」
「えっ?嘘、もう!」
「例年通り実施予定なので」
「俺は離婚しないよ」
「どうしますかね」
「どうって、どう?」
「お互いを傷つけずに離婚するにはどうすればいいかと」
「た間に君は真剣にそういうことを考えるね」
「そりゃあ、私はあなたと結婚するのはあなたを輝かせるためだもの」
「僕が君と結婚するのは癒されるためだから」
「はっ?」
「えっ?知らなかったの?」
「はい」
「そうなんだ、でもお互いそんな理由ならば、そりゃあ話が合わないはずだよね」
「出世は望んでおられないのですか?」
「これ以上はね…揉めるでしょ、もう今でさえ、あまり良い顔はされないし、でも君がいると、そういう俺の限界も変わってくるから…どうしようかなはある」
「欲はあったんですね、むしろないのかと思ってましたよ」
「どういうこと」
「出世欲はないが腕はあるから、選ばれているのかと思ってました」
「いや、そこは男だよ」
「そうなると、話は変わりますね。それこそ急に危険人物になる」
「やっぱり最初はそういうのあるでしょ、ただまあ、前面に出すのは危ないかなって」
「老獪だな」
「我慢比べではないけどもさ、そういうのからわかりやすく攻撃されていくのを見ると。何も考えてなさそうだって見られるぐらいがちょうどいいのかなって」
「こんな中身を知ってたら、警戒しかしませんよ」
「大丈夫、そこは上手くやるから、というか、君には見せれるんだけどもさ」
「どうしてです?」
「そのぐらいは愛してあるんだよ」
「愛ね…」
「信じれない?」
「言葉では無理でしょ」
「まあ、愛しているって言葉では信じてもらえなくて、夫婦として、いや夫として、う~ん夫…君の前では夫というか、彼氏とか男としていて、ようやく腑に落ちてもらったからね」
「あれはその…」
「君のお祝いごとを共に過ごすことがそんなに不思議なことなの」
「まずお祝いされるとは思わなかった」
「ん~もう!君には何が似合うのか、すんごい考えたんだよ」
花も合わせて咲かせてもらった。
「切り花でも良かったのに」
「そこは…ね…、一緒に歩いたときに、ちょうど見頃の花たちが飾ってるのがいいんじゃない」
「無茶しますね」
「君のためならば、それぐらいはしないとね」
僕は今年結婚をしたが、政略結婚をした妻から年明けに離婚の話が出ていた。
「離婚しても、来年の君の誕生日はお祝いをしますから」
「それはその時の奥様が確実に嫌な顔をするやつですよね」
「僕としてはしばらく結婚はいいんだけどもね」
「無理でしょ、すぐに誰かを紹介されますよ」
「そしたら君はどこに行くの?」
「さぁ、どこかで何かしてますよ」
「もう会えないの?」
「違いますよ、もう会わないの」
「やだな」
「立場を考えてくださいよ」
「それはそれ」
その時の僕は彼女がいうには、彼女を傷つけたものを灰にした時の顔をしていたという。
「あの女のドレスは穴があいてた、きっと灰が飛んで開いたに違いない」
そんな声を少し遠くからあの時は聞いた。
本当に何も知らないというのは、少し羨ましいとすら思える。
これが一体どういうことなのか、これからのことが全く見えてはいない。
「大丈夫、怪我はしてない、君に火の粉がかかってたらと思うと」
「私は大丈夫です」
「でもよく見せて」
そういって私の頬に触れて、目を合わせた。
「君の目を見ていると、疲れを忘れそうになる」
「それは疲れてないわけじゃないんですからね」
「知ってる…愛してるよ」
「ここでそれ言います?」
「いや~僕が動いたら、さすがにわかるかなって思ったんだけども、ここまでわからないとは思わなかったよ」
「本当ですよ」
「君を苦しめたものは灰になった、これから生まれることもない」
「呆気ないものですね」
「そうだね、でも僕が妻にしてやれることなんてそのぐらいしかないし」
これが?
「本当は起きないのが一番いいんだ」
「それは…そうでしょ」
「後ろは見ないで、これから家に帰ろうか」
後ろはまだ音をたててる、パチパチなのか、ジジジなのか。
そしてたぶん後ろを見ないでという言葉にも意味があるのだろう。
「わかりました」
その言葉に妻であるから従った。
そうだ、愛しているからではない、愛ならこの握ってくれた手の暖かさを忘れられなくなってしまう。
だからこれは愛ではないし、最初の取り決め通りに検地の後は離婚の話、そして身を引こう。
これが私ができる精一杯の恩返し。
そうすればこの人は私という足手まといがいなくなるわけだから。
でもせめて、この帰り道だけは少しだけ長く続きますように、忘れられない道中になりますように、そんなことを願い、私は歩いた。
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