浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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先程の話は楽しみにしておりますよ

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「困ったものですね」
「おや…どうしましたか?」
「あぁ、お疲れ様です、いえ、実は…」
人間関係のトラブルが起きたようです。
「元々あまり人付き合いが上手くなかったからこそ、なのかもしれませんが、本人が改善出来ないのならば言い渡すことになるでしょう」
「でも彼の気持ちはわからなくもない」
「というと」
「執着というのはね、幸せなことなんですよ、その人のことしか考えれなくなるので」
微笑みながら言うので、ゾッとするし。
この人ってこういう人だったのかと、意外な一面を見た気がした。
「しかしですね」
「ええ、わかってます、あなたの立場もね、それを指導し、改善するために遠くからお越しになっているわけですから、私でいいならば色々とおっしゃってくれると、動きやすいですから」
「汚れ仕事になるかもしれませんよ」
「そのために俺はいますから」
「あなたにはそんなことはさせれませんよ」
「ではご自分がなさると、それこそ…俺は嫌だな、あなたの綺麗な顔が泥で汚れるのはちょっと見たくはない」
「綺麗ですか?」
「凛々しいではありませんか?特に礼服を来たときにこそ、決まる顔だ」
「はぁ、そうなのですか?」
「ご自分が他の人にどう見られているか、まるで関心がない、それはそれで無防備なところがあってとても良いのですか、あまり誰かにそれを見せるのはちょっと俺の心がざわついてしまいますな」
「まるで私の父親のような言い方だ」
「それは酷い、そんなに年も離れてはいないのに」
「あなたの方が現場を知り尽くしているので、達観しているというか、悟っているというか」
「悟りはいいものです、諦めや妥協で苦しまなくてもいいが、ちょっとばかり人生に色がなくなるのです」
「まあ、そうでしょうね、欲を捨てるということですから」
「ところで」
「はい?」
「朝湯でも召し上がってきたのですか?」
「ああ、ご厚意で、いささか早くに目が覚めてしまって、さてどうしようかと思っていたら、よろしければと」
「それならば私も早く起きれば良かった」
「他の人もいなくて、ゆっくりと湯につかれるのはいいものですよ」
「どうです?今度は私も誘ってくれませんか?」
「はぁ~」
そこにだ。
「朝食のご準備が出来ましたので」
と呼びにやって来る。
「すいません、では私はこれで」
「先程の話は楽しみにしておりますよ」

話としては、その男をまず味方につけるといいとは聞いていた。
温和な奴だし、話はできるやつだと。
でも聞いていた話と、実際に話してみると、こうイメージが違うのである。
(まあ、報告と違うことなんてはたくさんあるだろうな)
そう思いながら、用意された朝食をまずは食べることにした。
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