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ぴヌ
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困るときはないだろうか。
(いきなり時間ができてしまった)
そういう時。
トラブルを体力でどうにかするというようなやり方で凌いだ。
「久しぶりに疲れたな」
などと越木(こしぎ)は言ってたが、みんなそれだけで済むのはここにはあんたぐらいだよ。という状態になったので、休暇という形になった。
そんなに時間が経過してない状態で、秋澄(あきすみ)もこうなので、越木と長らく組んでいるだけはあるんだなと思ってしまう。
注、この二人は体力があるとユメトキボウからも認定されている人類です。
普通はそこまで動くと、逆にどっか傷めます。
フローリングを掃除して、まだ時間があったので、自炊にしようかなんて気分になった。
(出汁はあるしな)
麦茶のように出汁は常に常備している。
これがあると、帰ってきてから面倒くさいなって思いながら、作るご飯もわりと楽である。
ご飯に具材のせて、温めた出汁をかければ美味しい奴の出来上がり。
(もう少し時間あったら、キムチも漬け込んでおくかな)
などと今後の調理計画を考えていたのだが、買い物に行った結果、煮物を肉じゃがを作ることにした。
お肉が半額だったんです…
ちょっといい肉が、いつもより安かったんですには勝てなかったのだ。
野菜の準備、均一に火が通るような形に切り揃えて、肉も使う量を出しておく。
火にかけたら、音が聞こえてくるまで、その音を目安に火を止めてと…
そこで振り向いたら、シャドウスワローが座っていた。
ピッ
わざわざここにいますよ!いや、これは来ちゃった!のピッもくれた。
「ご飯はできるまで時間がかかるわよ」
余熱で仕上げようとしていたためである。
「その間、私と遊ぶ?」
ピッ
秋澄が近くに座ると、シャドウスワローは膝の上に乗ってくる。
ピッ
「甘えん坊ね」
指でくすぐると、子供のような顔を見せる。本来上位存在というのはこういう表情はしない、それこそ人間の前では心を許したりはしないのだが、家族が人間だったりするとこういうこともあるし。
「巣立ったりはしないんですか?」
伽羅磁(きゃらじ)に何気なく聞いてみた。
「巣立つ?」
「シャドウスワローくんが」
「親しみ込めて、『ぴヌ』って呼んでもいいのに」
「それは…おおそれ多いですよ」
「あっ、もしかして本名だと思ってる?」
上位存在が伽羅磁の元にいる、そのことを知っている程度には親しい人間との食事の席でのことだ。
「ぴヌは愛称だからその名前は呼んでくれても構わないよ」
「はぁ、そうなんですか、でもそのあまり見られない名前ですね」
「そうだよね、名前をつけなきゃならないとき凄く悩んだよ」
ピッ
「そういう鳴き方をするものだから、ピーちゃんとか、ピッピッとか、最初はその方向で考えていたんだけども」
他にもピーちゃんやピッピッがいたこともあり。
「それで話して、かぶらない名前の方がいいんじゃないかなってことがあって、そこからはいい名前の出し合いになった」
そこで最終的にはか『ぴぬ』という音がいいんじゃないかなということになり。
「『ピぬ』か『ぴヌ』のどっちしようかなってことで、『ぴヌ』になったの、よろしくね」
「はぁ」
「さっき巣立ちとかの話をしてたけどもさ、上位存在って人間より遥かに長く生きる訳なんだけども、人と共に、生まれたとかの家族が亡くなった時に巣立ちするって考えがあるわけよ」
場合によっては死後も会うことが出来ないので、共に生きているときが大事になる。
「シャドウスワローはどうなんですか?」
「俺は死後も会いたいけども、なかなかに難しいんじゃないかな、それこそ旅鳥というか、停滞させないように飛び交うような種族だからね」
「それはちょっと寂しいですね」
「でもずっと忘れないで覚えてくれるのはいいなっても思ってる。そこでいてくれないと寂しいと感じてほしいなんて、悪いお父さんではあるね」
「伽羅磁さんって、普段は気づかないでさけども、時折執着見せますよね」
「そうだね」
「隠さないんですか?」
「隠しても無理というか、TPOは考えるけどもさ、自然とそれは出てしまうというか」
「でも秋澄さんが同性と仲良くしているのはいいんですね」
「いや、あれは癒えるから」
秋澄しゃーん!といってた水着のKCJ職員は、この人も見たことあるから。
「癒えるって何ですか」
「え?癒えるじゃん」
何いってるの?というニュアンス。
「寂しいって気持ちを抱えているときに、あの職員さんも秋澄に会ったんじゃないの?彼女は面倒見もいいからさ」
「それはそうですけどもね」
「ただまあ、あの距離感で男が来たら、本当に嫌だなっては思ってる」
にこやかに、でも不機嫌さも内包し。これを見ていたら、この話はこれ以上は不味いとさっさと話題を変えた。
「肉じゃがを食べるのかな?って思ったら、芋だけ食べられた」
ピッ
「他のも具材も美味しいのにな」
ぴヌに人参を食べるかな?と勧めるが食べない。
食べないのかと秋澄が食べると、ぴヌは興味を持った。
結局、秋澄が食べると、これは食べれるとわかって食べるといった形で、肉じゃがを食べてくれた。
「秋澄~」
「なんですか?」
「うちの子が帰ったら、お腹がぽっこり大満足な顔をして、ベットで寝ているんだけども、そっち行った?」
「ああ、来てましたよ。肉じゃがを食べて帰ったんですよ」
「秋澄の肉じゃがか…美味しそうね」
「レシピもそこまで難しくないから、今度作ってみてください」
ううん、そういうことじゃないの。
「そのうち俺の肉じゃがも食べてね」
「えっ?伽羅磁さんって自炊するんですか?」
「するよ、意外?」
「意外ですね」
「なんでさ、俺は家庭的な男だよ」
どっちかっていうと仮定的な男かなと思ったが、口には出さなかった。
(いきなり時間ができてしまった)
そういう時。
トラブルを体力でどうにかするというようなやり方で凌いだ。
「久しぶりに疲れたな」
などと越木(こしぎ)は言ってたが、みんなそれだけで済むのはここにはあんたぐらいだよ。という状態になったので、休暇という形になった。
そんなに時間が経過してない状態で、秋澄(あきすみ)もこうなので、越木と長らく組んでいるだけはあるんだなと思ってしまう。
注、この二人は体力があるとユメトキボウからも認定されている人類です。
普通はそこまで動くと、逆にどっか傷めます。
フローリングを掃除して、まだ時間があったので、自炊にしようかなんて気分になった。
(出汁はあるしな)
麦茶のように出汁は常に常備している。
これがあると、帰ってきてから面倒くさいなって思いながら、作るご飯もわりと楽である。
ご飯に具材のせて、温めた出汁をかければ美味しい奴の出来上がり。
(もう少し時間あったら、キムチも漬け込んでおくかな)
などと今後の調理計画を考えていたのだが、買い物に行った結果、煮物を肉じゃがを作ることにした。
お肉が半額だったんです…
ちょっといい肉が、いつもより安かったんですには勝てなかったのだ。
野菜の準備、均一に火が通るような形に切り揃えて、肉も使う量を出しておく。
火にかけたら、音が聞こえてくるまで、その音を目安に火を止めてと…
そこで振り向いたら、シャドウスワローが座っていた。
ピッ
わざわざここにいますよ!いや、これは来ちゃった!のピッもくれた。
「ご飯はできるまで時間がかかるわよ」
余熱で仕上げようとしていたためである。
「その間、私と遊ぶ?」
ピッ
秋澄が近くに座ると、シャドウスワローは膝の上に乗ってくる。
ピッ
「甘えん坊ね」
指でくすぐると、子供のような顔を見せる。本来上位存在というのはこういう表情はしない、それこそ人間の前では心を許したりはしないのだが、家族が人間だったりするとこういうこともあるし。
「巣立ったりはしないんですか?」
伽羅磁(きゃらじ)に何気なく聞いてみた。
「巣立つ?」
「シャドウスワローくんが」
「親しみ込めて、『ぴヌ』って呼んでもいいのに」
「それは…おおそれ多いですよ」
「あっ、もしかして本名だと思ってる?」
上位存在が伽羅磁の元にいる、そのことを知っている程度には親しい人間との食事の席でのことだ。
「ぴヌは愛称だからその名前は呼んでくれても構わないよ」
「はぁ、そうなんですか、でもそのあまり見られない名前ですね」
「そうだよね、名前をつけなきゃならないとき凄く悩んだよ」
ピッ
「そういう鳴き方をするものだから、ピーちゃんとか、ピッピッとか、最初はその方向で考えていたんだけども」
他にもピーちゃんやピッピッがいたこともあり。
「それで話して、かぶらない名前の方がいいんじゃないかなってことがあって、そこからはいい名前の出し合いになった」
そこで最終的にはか『ぴぬ』という音がいいんじゃないかなということになり。
「『ピぬ』か『ぴヌ』のどっちしようかなってことで、『ぴヌ』になったの、よろしくね」
「はぁ」
「さっき巣立ちとかの話をしてたけどもさ、上位存在って人間より遥かに長く生きる訳なんだけども、人と共に、生まれたとかの家族が亡くなった時に巣立ちするって考えがあるわけよ」
場合によっては死後も会うことが出来ないので、共に生きているときが大事になる。
「シャドウスワローはどうなんですか?」
「俺は死後も会いたいけども、なかなかに難しいんじゃないかな、それこそ旅鳥というか、停滞させないように飛び交うような種族だからね」
「それはちょっと寂しいですね」
「でもずっと忘れないで覚えてくれるのはいいなっても思ってる。そこでいてくれないと寂しいと感じてほしいなんて、悪いお父さんではあるね」
「伽羅磁さんって、普段は気づかないでさけども、時折執着見せますよね」
「そうだね」
「隠さないんですか?」
「隠しても無理というか、TPOは考えるけどもさ、自然とそれは出てしまうというか」
「でも秋澄さんが同性と仲良くしているのはいいんですね」
「いや、あれは癒えるから」
秋澄しゃーん!といってた水着のKCJ職員は、この人も見たことあるから。
「癒えるって何ですか」
「え?癒えるじゃん」
何いってるの?というニュアンス。
「寂しいって気持ちを抱えているときに、あの職員さんも秋澄に会ったんじゃないの?彼女は面倒見もいいからさ」
「それはそうですけどもね」
「ただまあ、あの距離感で男が来たら、本当に嫌だなっては思ってる」
にこやかに、でも不機嫌さも内包し。これを見ていたら、この話はこれ以上は不味いとさっさと話題を変えた。
「肉じゃがを食べるのかな?って思ったら、芋だけ食べられた」
ピッ
「他のも具材も美味しいのにな」
ぴヌに人参を食べるかな?と勧めるが食べない。
食べないのかと秋澄が食べると、ぴヌは興味を持った。
結局、秋澄が食べると、これは食べれるとわかって食べるといった形で、肉じゃがを食べてくれた。
「秋澄~」
「なんですか?」
「うちの子が帰ったら、お腹がぽっこり大満足な顔をして、ベットで寝ているんだけども、そっち行った?」
「ああ、来てましたよ。肉じゃがを食べて帰ったんですよ」
「秋澄の肉じゃがか…美味しそうね」
「レシピもそこまで難しくないから、今度作ってみてください」
ううん、そういうことじゃないの。
「そのうち俺の肉じゃがも食べてね」
「えっ?伽羅磁さんって自炊するんですか?」
「するよ、意外?」
「意外ですね」
「なんでさ、俺は家庭的な男だよ」
どっちかっていうと仮定的な男かなと思ったが、口には出さなかった。
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