浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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完成された技を感じる

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「……」
彼女は燕の名前を呼んだ。
ピッ
「ん?あれ?」
秋澄(あきすみ)は燕の体つきを見て、何か違和感を感じた。
「成長期?」
足や爪が前よりもゴツくなっていると思われる。ちょっとつづ成長はしていたのかもしれないが、飛び乗ってきたりするときも、重いなどと感じなかったので、気づくのが今だった。

「もしもし伽羅磁(きゃらじ)さん、今はお時間ありますでしょうか?」
「もちろんだよ、秋澄!むしろ、秋シュミ!」
「なんですか?秋シュミ!って」
「可愛くない?」
「はいはい」
「んっ、もう、それで用件は?」
「燕ちゃん、成長期ですか?」
「なんか鍛えているみたいよ」
「鍛える?」
「あれ?知らない?なんかKCJに行ってるみたいだから、知ってると思ってた」
上位存在同士はその縄張り関係のため、互いを知っていたりします。じゃないと、すぐバトルが開始するため。
「ある時、喧嘩でもしたのかなって思ってたら、違うみたいで」
泥をつけて帰ってきました。
「他の支部の職員さんの蛙君ってわかるかな?」
それこそ蛙の方のララとロロ。
「あの子達って、自分の家族が危険に巻き込まれて、助かったあとで、ケットシーやサメにぶつかり稽古っていうの、そこで鍛えられてかなりムキムキになったんだけどもさ、どうもそういう感じで、うちの子も行ってたらしくて、それで足も筋肉ついているし、爪も鋭くなってきたし、最近じゃ、俺の仕事も手伝ってくれたりするんだよ。で、特に上手いのは吸血鬼退治ね、だから秋澄のことがきっかけで強くなろうと思ったんじゃないかなって」
まず伽羅磁のところのシャドウスワローは、吸血鬼が近くにいるとまずわかるようになった。
「顔からして、アッ!みたいな顔してから、ロックオンしちゃうからな」
様子を見に行って、礼儀知らずの吸血鬼、ニューバンだなって思うと、敵意をむき出しにするし、向こうも、なんだこの鳥?焼き鳥にしてやるぞ!と喧嘩が始まる。
「無差別に襲ってませんよね」
「それはない、そいつら空き家狙いで、前科もあった」
「ああ、それは…」
「話を続けるね。吸血鬼ってその服着てるじゃん」
裸ではないね。
「だから、うちの子は横をすり抜けて、爪で、相手の衣服を引っ掻けるんだよ」
転ばせる、いや、地面に叩きつける。
「そこをトドメをさします」
「完成された技を感じる」
「だよね、かなり練習したんだろうなって、狩りについては俺が基本は教えてみたんだけども、やっぱりこういうときは仲間がいると切磋琢磨するのかな」
ニャーニャー
サーサー
メーメー
ケロッケロ
おおっとこれは、燕の後ろには色んなのがいるやつだ。
「ところで、伽羅磁さん、伽羅磁さんは今は何をしているんですか?」
「ボタン無くしちゃったからね、それをつけ直してた」
「ボタン?」
あれ?もしかして。
「これですかね?」
写真を伽羅磁に送ってくると。
「あっ、それだよ、それ、どこにあったの?」
「この間お食事したときに」
「そっか」
「燕ちゃんに持たせますよ」
「ああいうよ、予備のボタンつけたしさ、よかったら、秋澄が持っててよ」
「私がですか?」
「取れたの、第二ボタンだからね」
「その~学生じゃあるまいし」
「あれ?秋澄って卒業式に好きな男の子に第二ボタンをください!とか言ったことないの?」
「ありませんよ」
「ダメだよ、青春のイベントはこなさないと、だから俺が代わりにあげるよ。元は男性から渡すものだしね」
「そうなんですか」
「今では作ることが出来なくなった素晴らしいボタンだから」
「ああ、そういえばあまり見かけなくなった素材かな」
「俺はこういうのが好きなんだよ」
それはどっちの意味だろう。
「だからボタンは大事にしてね」
「伽羅磁さんこそ、学生時代に女性と仲良くしてたんじゃないんですか?」
「いや~それは…」
「そのまま仲良くやってたらよろしかったのに」
「色々あるんだよ、色々」
「えっ?そうなんですか?」
「綺麗な思い出だけでは生きていけないし」
「あ~」
伽羅磁はこっちの世界に来る前は一般社会経験者でもある。
「でも愛があるのならば、大変でも支えるとかあるんじゃないんですか?」
「あったら、良かったんだけどもさ。誰もがみんな秋澄みたいにはいかないんだよな…」
「そんな私が支えるタイプみたいな言い方しないでくださいよ」
「支えるタイプじゃん、むしろ、それで…」
伽羅磁は知っている。彼女は特定の層の男性にはモテるということを。
(酒の席で、なんで俺じゃダメなんですかって言われて、ごめんねって言ってた話を聞くとさ)
「君には見捨てられないようにしたい」
「なんです?急に」
「男には色々あるんだよ」
「そうなんだ」
ピッ
今はシャドウスワローという鎹、二人のみの秘密も共有しているから、この関係性は続いている。
(そうでなかったら、君は俺を見てくれないんだろうな)
それは凄く嫌だなと思いながらも、その気持ちを出さずに。
「今度はいつ会える?」
「なんです?寂しがり屋かなんかですか?」
「そうなんだよ、子羊ぐらい寂しがり屋なんだよ」
冗談を飛ばすのである。
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