浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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好きな子限定だからじゃない?

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伽羅磁(きゃらじ)という人とは多少縁があった。
「多少?いや、そんなもんじゃないね」
「なんです?心の声でも聞こえましたか?」
「君の心を手に入れたいからさ、声もなんか聞こえちゃうんだ」
「相変わらず変な人だな」
「秋澄(あきすみ)にそういわれるのは嬉しいよ」
でさ。
「で、いつ、僕ん所に来てくれるわけ?腰なんとか君には悪いけどもさ」
「KCJをやめる気はありませんよ」
「そうか…じゃあ、待ってる」
「待っててもその日はたぶん来ないでしょうね」
「そんなことないと思ってるよ、脈はあるんじゃないかってね」
「他の人にお声をかけたら、あなたを活かすような才能と組んだ方がいい」
「それでも僕は君と組んで、共同作業といきたいところだね」
そこにフサァと現れるのはシャドウスワローである。
「相変わらずあなたは綺麗ね」
撫でると、目を細める。
「この間、君が大根を食べさせたから、大根が好きになっちゃったんだよ」
会食の際に、シャドウスワローが煮物の大根を食べようとしたら、サイズが大きいので、食べやすい大きさにしてから、食べてもらった。
「今日は大根はないの?そんな顔をするんだよ」
「お作りになるか、ご用意されたらいいのではないですか?」
「まあ、そうなんだけどもね」
「料理は確かできますよね」
「今度味を見てみる?」
「思いっきり押して来ますね」
「そりゃあ、ね、チャンスだと思えばそうしたいので」
「呆れた」
「そんな顔も好きだよ」
「で、どうしました?何かそちらであったんですか?」
「この間組合を襲撃された、ぶちのめしたけどもね、吸血鬼化してるのと、ニューバンだったよ」
「最近じゃそこまで珍しくないお話ですよ」
炭酸水を一口。
「そうなんだけどもね、君が怪我した、させたのがあいつらだったなって思い出したのと、さすがにあんなことをあってすぐしゃ、よく知っている人たち以外とは会いたくなくてね」
「もっといいのは、家に引きこもってることですよ」
「そうしたら君に会えないじゃん」
「なんで私なんですか?」
「あれ?自覚ない?君は話しているととても楽しいんだよ、素敵な女性だと思ってるよ」
にっこり。
「あなたに素敵と言われてもね」
「え~何?使い古されてる?誰かにもいってると思ってる?それは心外だよね」
クイっと伽羅磁はお酒をいただく。
「男の人はわかりませんから」
「男嫌いならばまだわかるんだけども、君はなんとか木くんには信頼おいているからさ、ちょっとそれがね」
「信頼できる、命を任せる相手がいなきゃ組めないし、前線にも出れませんよ」
「え~じゃあ、僕とは?」
「あなたとですか?さっさと片付けて物事を終わらせてしまうのに、私だと能力のバランスで悪くないですかね」
「そんなことないと思うよ」
「ありますよ、現実を見てくださいよ」
「そればっかりじゃあ、世の中変わらないよ」
「あなは本当に変えちゃうタイプだから怖いんだよな」
「そうだね」
なんで生きているんですか?を地でやるような男でもある。
「君といれば、もっと楽しくなりそうだ」
「何をなさる気ですか?」
「僕が我が強いっていうのは知ってるでしょ?」
「だからといって組合をまとめあげる…わけでもないんだよな」
「ないね、だからこそ、厄介なのかもしれない」
これでまとめようと人でも集めていたら、そこでかぎつかれて上手く行かないのだが。
「あれはあれで何を考えているのかわからないから」
と覆木(おおうき)には言われているし。
「本当に扱いに困るんですよね」
幹部からもその言われようである。
「あなたは出来すぎるんですよ、だからついてくる人はいなくて、孤独だから、まずはお友達から作ってみたらいかがでしょう」
「そういう説教臭いところもいいよね、意外とそんな態度で接してもらえなくて」
「なんです?叱られるのが好きなんですか」
「鼻の下はのびるよね」
「それでよく今まで…」
「好きな子限定だからじゃない?誰しも構わず、美人さんだ、あの子はかわいいねっていっているタイプは、やっぱり組織の上にはいれないからね」
「まあ…」
そこで秋澄は組織の有力者の顔達を思い浮かべるが、確かにそこまで遊んでいる人はいないなという感じ。
「君がKCJにいるうちはいいけども、それでも誰かを選んでしまわないか気が気じゃない人はいるのはわかってるでしょ」
回復の専門ではあるけども、話してみれば、それ以外も嗜める女性だというのはわかるはずだ。
「しかし、私が誰かをですか」
「まあ、確実に僕はそれが僕以外だった場合、そいつを恨む自信はあるよ」
「腰木(こしぎ)さんにさえ嫉妬してるんだから、そうでしょうね」
「こればかりは理屈じゃなく、自然とムッとした。自分でもビックリしたよ、えっ?そいつを選んじゃうんだって」
「いや、組むのは半分辞令ですから」
「もう半分は?」
「合わなかったら、異動願出すとかね」
「ほら!そこだよ、そこ、そういうところが僕はさ、もう!」
「すいませんね、男心とか全くわからないんで」
「あっ、大丈夫、それなら僕が教えてあげるから!」
おもしれぇ男だな。
「歴代の彼女にウザいとか言われたことありません?」
「聞いたことないな、そこも含めて愛され伽羅なんじゃないかな」
「こんな人だって実は知らない人たちの方が多いでしょうね」
「えっ?だって、そんなもの見せたら…この業界じゃ生きていけないでしょ」
「あ~本当にろくでもない世界だ」
「でも君がいると、十分釣り合いはとれてると思うんだよ。その後うちの子とも出会えたし」
伽羅磁のうちの子、シャドウスワローは秋澄にもたれ掛かる。お眠のようだ。
「まだまだ子供ね」
「俺と君の前ではそうなんだよ」
よく見ると、伽羅磁のタイピンはツバメ、そしてツバメと一緒に描かれているものから、シャドウスワローのものてあると推測される。
「次はいつ会える?俺は毎日だっていいよ」
「毎日だったら飽きますよ」
「俺は飽きないよ」
「ではまた…」
「ああ、おやすみ」
季節は変わり始める。
「でももう9月は夏だと思うんだけども」
うん、それは確かに。
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