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この吸血が好意的な理由
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「とっさに噛んだと聞きましたが、そういうときって何を考えているんです?」
「バカなことしたなってことだよ」
人の人生を変えてしまった吸血鬼は呼び出され、詳しい事情聴取を受けた時に、こんなことをいってた。
「でも同僚のお兄さんだったんでしょ?同僚さんはきっと喜んでいるでしょうよ」
「そうだね、でも死なないだけで、辛いことっていうなはたくさんあるから、それを考えると…気は思いよね」
「人間は弱いですからね」
調書を取るのは死神である。
「あまりこのように調書に協力的な方というのは珍しいんですよ」
ケットシーが人生を変えた場合は、死神が近づいたら、無言で引っ掛かかれるよ。
「他のやつらのことは知らないけどもさ、やってしまったなっていう気分の方がとても大きくてね」
「あれ?もしかして初めて人の人生変えました?」
「ええ」
「ああ、そうでしたか」
「それでも感じないやつは感じないのも知っているが、私はそうじゃなかった」
「ヴァンパイアでも、呵責の念を持つことはあるんですね」
「私をなんだと思っているのさ」
「吸血鬼、ニューバンではありませんが」
「あれと一緒にされては困る」
「まあ、少しばかりは話しましょうよ、それで気は晴れるということもあるかもしれませんし」
「そう…だね」
こりゃあ前途多難である。
「なんで人生を変えることに抵抗を持つんですか?」
「人は人のまま生きればいいじゃないか」
「今は人のままで生きるのは難しいのですよ」
「えっ?そうなの?」
「そうですよ、知りませんでした?」
「あまり関係を持たないから、それこそ同僚は我々の文化を理解しているから、人ではあるが気にはならないな」
「今はあなた方に噛まれたがっている人は多いです、若いままでいられるとか、この病気から逃げれるとかで」
「そういえば、あの兄の人も、病気を持ってる、だからこそ今回倒れたんだけど、たぶん前から過労じゃないかな」
「えっ?」
「息苦しいとかあったんじゃないかな、本来の寿命は?」
「結構長いはずでした、体力もありましたし」
「じゃあ、やっぱりそこで無理をしたか、このまま療養してほしいよ」
「そんなわけで仕事を休みますっていったら、会社をやめてほしいって言われたところに」
それならフォローしますよ。
「なんてお姉さんに言われてしまいました、どうしましょう」
「すまん、交渉するから、どこまで失いたくないかのラインを決めてくれるか、そこで契約結べるようにするからさ」
「えっ?はい」
いきなりその場で今後に関わる交渉が始まろうとしていた。
「いいの?」
「いいですよ」
「いや、君が組んだ仕事なんだろう?プロジェクトなんだろう?手放しても」
「あっ、あれは元にすぐ戻せますよ、覚えてますから」
「覚えてるから、元に戻せる?」
「はい」
「わかった、それならばそこで、交渉に必要な奴等も集まったので、決めてくる」
「すいませんね、お願いします」
そこに弟が来て。
「兄貴、元気?」
「元気ではないがまあまあだな、なんかこれから俺の処遇の交渉が始まるんだが、俺は置いてきぼりくらったっていうか」
「ああ、モカが来てたからな」
「モカ?あの人はモカさんっていうの?」
「人じゃなくて吸血鬼、兄貴を噛んだ」
「ああ、だからおかげで助かったのか」
そこで首筋を抑える。
「兄貴が倒れて、吸血鬼化したっていうのもびっくりしたけどもさ、そうじゃなかったら死んでたらしいじゃん」
「梗塞だか、不全が起きてたらしい、吸血鬼化しているから、たぶんそうだったんだろうとしか言えないらしいが」
吸血鬼に一回でも噛まれると吸血鬼化という状態が起きて、人間だと肝臓以外の臓器というのは再生しないが、吸血鬼化状態だと、再生しようとする、またはしやすいとか、そんな特徴がある。
「兄貴…死にかけてんじゃねえよ」
「そうなんだが、そこはごめん、こっちはそんな気はなかったんですが、なんかなってたわ」
「笑いながら言う必要はねえよ、良かった。良かったよ」
「おいおい、お兄ちゃんは元気だから、ぷりぷりだよ!」
「サメみたいにいってんじゃねえよ」
弟は泣いた後。
「じゃあ、兄貴、交渉はこっちで任せておけよ、何、ここで決まらなかったら、うちのボスに出陣してもらうさ」
弟のボスはかなりやり手らしい。
前に挨拶したときは、爽やかなオヤジであったが、くえない人間なんだろうなっていうのはちょっと見えてた。
(何しろ吸血鬼が部下にいるってだけですごいって)
どっからスタッフ揃えたの?コネクションないと縁なんて存在しないよっていうタイプの抜擢である。
夕方には交渉はまとまり。
「かなり安くこちらとしては済んだから、まあまあでしょう」
この言葉がよくわからなかったが、渡された待遇を見たら、びっくりした。
「これは何?」
「これから10年は好きなことが好きなようにできますよ」
「はっはっ」
遊び呆けても金が残るような、いや、そんなことはしない、そんなことはしないぞ!でもたまに遊ぶぐらいならば楽しめると言うか、とんでもない額なんですけどもと震える。
「まっ、これぐらいはフツーだな」
弟が書面見てそういった。
「これでフツーなの?」
「感覚がマヒしているは、俺も認めるけども、起きたことから考えればこのぐらいはね、出るだろうし、これうちからも見舞金は出てるから、この値段」
「えっ?なんで?いやくれるならばもらうんだけども」
「ああ、ちょっとモカの方がな、人間の人生を変えてしまったってことで、落ち込んでいてな」
「ああ、別に気にしないのにな」
「吸血鬼化は黙っていれば人間に戻るけども、兄貴の場合は体調を見ながら延長もあるかもしれないから」
「延長の場合はどうなるの?」
「吸血鬼にもう一回噛まれる」
「痛いのかな?ほら、モカさん噛まれた時は、記憶ないから、倒れたら、そのまま目が覚めたら病院だったし」
「その辺はまだ…この一回でどうにかなっちゃう場合もあるからさ、それなら二回目誰が噛むか問題は起きないし、あんまりそういうこと考えるなって、悪化したら困るし」
「そうだな」
しかし、人間に戻るにつれて、体の苦しさが出てきてしまい。
「もう一回噛まれる必要はありますが、吸血鬼の方にも断る権利と言いますか」
「その場合は」
「言いにくいのですが…」
そのまま入院して治療になるらしい。
そうか…俺の人生ここで…なのか。
そう思っていると、室内に風が吹き込んだ。
窓なんて開けたつもりは…
「モカさん」
そこには吸血鬼のモカがいた。
俺の有無を言わせることなく、首筋に唇が触れた。
(モカさんは今日は来ないのかな)
そこから毎日モカが来てくれないか、楽しみになっている。
「えっ?噛んでくれたの?」
弟にその話をしたら驚いてた。
「あいつは気まぐれなところあるし、いや噛んでくれて嬉しいけどもさ」
弟と吸血鬼の同僚と言う立場で揺れている。
「この辺は揉めることはあるんだ、上手く行かないことは俺も見てきたし、覚悟は俺はできてたはずなんだが、兄貴、良かったよ。このままダメになるのかと思ってた」
「そうかラッキーだったか、悪いがモカさんにさ、ありがとう助かったっていってくれるかな」
「ああ、もちろん言う。絶対に言うから、兄貴はきちんと治療してくれよ」
「わかったるさ、せっかく拾った命だから大事にする」
そういいながらも、心の中では別のこと、モカのことを考えていた。
一般的な常識では、吸血鬼が人間を噛むのは食事や求愛である。
何回かに分ける吸血行為は求愛に分類されるらしい。
ただ諸説はあります。
彼女はしばらくいなかったこともあるが、今回起きた、この吸血が好意的な理由であってほしかった。
病室としてはちょっと豪華な一人部屋、指の動きとか確かめるために、何かリハビリします?と聞かれたら、楽器とかは前は演奏を、ギターはやってましたね。なんていったら、あっ、あの部屋は防音だから、良ければギターの練習でもくださいと言われた。
吸血鬼化がとけたら、危ない状態だからこそ、そうやって優しいのかもしれないが、甘えることにした。
弟に…
「モカさんとはどっかに飲みに行ったりするの?」
「行くよ、カラオケとかもうちのチームで行くよ」
「へぇ、モカさんって何歌うの?」
「モカは結構音楽好きだな、いい曲ばっかりしているんだ、そういやこういう曲を再生してたから、その曲いいじゃんって俺も聞いている曲があって」
リストを共有させてもらった。
「へぇ、こういう曲好きなんだ」
そういってその日から練習ですよ。
来たら、聞いてほしいなって思っちゃって、我ながら学生時代みたいなことをしいるな。
少し笑ってしまいながら、ギターをじゃかじゃか鳴らして、サビを勢いで歌う。
「あら?その曲は?あなたもその曲が好きなの?」
モカが顔をだした。
「は…いえ、あの…この曲が好きだって聞いたから」
「えっ?それで弾いてたの?」
「はい」
「なんでかしらね、まあ、いい曲なのはわかるけども」
「また会えて嬉しいです」
「私はただ顔を見に来ただけよ」
「それで嬉しいのです」
「そう、お兄さんは不思議な人ね、まっ、弟さんが吸血鬼とも上手くやれる人だから、お兄さんもそうなのかもしれないけども」
「今日はお仕事終わりですか?」
「そうじゃないんだけどもね、顔色も大分よくなったわね」
「あなたのおかげで、命が助かりました、ありがとうございます」
「気にしないで」
「しかも、お見舞金まで」
「ああ、それは受け取って、やっぱり人生を変えるということは、私には重くてね、こうでもしなければ罪悪感に押し潰されそうで」
「そうなんですか?」
「あなたがなんで隔離されているかわかるでしょ?あなただけが吸血鬼化で助かってる、が、自分はそうではないから、いつ死が迎えに来てもおかしくないって人たちがいるわけ、そういう人たちは怖いのよ」
「そこまでは頭が回りませんでした」
「弟さんがいるからそこまではならないから、身内が吸血鬼と同僚だったら、あなたも噛んでもらえますよっていう気持ちで、寛大に接してあげなさい、本気でちょっかいかけるやつはたぶんでないとは思うけどもね」
その場合は吸血鬼と敵対することになるでしょ。
「吸血鬼と敵対的な交渉は間違ってもするもんじゃないって学びましたよ」
「そうしてくれる?そうじゃないと、本当に最後まで行くのよね」
「無知って怖いね」
「そうよ、やってられないわ」
「あれ、もしかして、何かありましたか?」
「まあね、ここにちゃんとできる人間もいるのに…」
ここで無意識のうちか、モカは自分の眷属になりかけの男に触れてくる。
「まっ、統計的にはできないやつの方がずっと多いけどもね」
「そうなんですか」
「そうだよ…だから気にしないで、あなたのそれは…もう少しで吸血鬼のいらない時代が来るからさ」
「それは寂しいですよ」
「そうかな、じゃあね」
「えっ?これで終わり、ちょっと待ってくださいよ」
ああ、俺の好きな子が行ってしまう。
吸血鬼は夫婦になる場合、人間から吸血鬼になった側の初めての吸血相手が配偶者になる地域もあるらしい。
俺も噛みたい、あなたの首筋を噛み合う関係になりたい。
この人生いつもそうだ。願いが見つかったときにはもう遅いのである。
「バカなことしたなってことだよ」
人の人生を変えてしまった吸血鬼は呼び出され、詳しい事情聴取を受けた時に、こんなことをいってた。
「でも同僚のお兄さんだったんでしょ?同僚さんはきっと喜んでいるでしょうよ」
「そうだね、でも死なないだけで、辛いことっていうなはたくさんあるから、それを考えると…気は思いよね」
「人間は弱いですからね」
調書を取るのは死神である。
「あまりこのように調書に協力的な方というのは珍しいんですよ」
ケットシーが人生を変えた場合は、死神が近づいたら、無言で引っ掛かかれるよ。
「他のやつらのことは知らないけどもさ、やってしまったなっていう気分の方がとても大きくてね」
「あれ?もしかして初めて人の人生変えました?」
「ええ」
「ああ、そうでしたか」
「それでも感じないやつは感じないのも知っているが、私はそうじゃなかった」
「ヴァンパイアでも、呵責の念を持つことはあるんですね」
「私をなんだと思っているのさ」
「吸血鬼、ニューバンではありませんが」
「あれと一緒にされては困る」
「まあ、少しばかりは話しましょうよ、それで気は晴れるということもあるかもしれませんし」
「そう…だね」
こりゃあ前途多難である。
「なんで人生を変えることに抵抗を持つんですか?」
「人は人のまま生きればいいじゃないか」
「今は人のままで生きるのは難しいのですよ」
「えっ?そうなの?」
「そうですよ、知りませんでした?」
「あまり関係を持たないから、それこそ同僚は我々の文化を理解しているから、人ではあるが気にはならないな」
「今はあなた方に噛まれたがっている人は多いです、若いままでいられるとか、この病気から逃げれるとかで」
「そういえば、あの兄の人も、病気を持ってる、だからこそ今回倒れたんだけど、たぶん前から過労じゃないかな」
「えっ?」
「息苦しいとかあったんじゃないかな、本来の寿命は?」
「結構長いはずでした、体力もありましたし」
「じゃあ、やっぱりそこで無理をしたか、このまま療養してほしいよ」
「そんなわけで仕事を休みますっていったら、会社をやめてほしいって言われたところに」
それならフォローしますよ。
「なんてお姉さんに言われてしまいました、どうしましょう」
「すまん、交渉するから、どこまで失いたくないかのラインを決めてくれるか、そこで契約結べるようにするからさ」
「えっ?はい」
いきなりその場で今後に関わる交渉が始まろうとしていた。
「いいの?」
「いいですよ」
「いや、君が組んだ仕事なんだろう?プロジェクトなんだろう?手放しても」
「あっ、あれは元にすぐ戻せますよ、覚えてますから」
「覚えてるから、元に戻せる?」
「はい」
「わかった、それならばそこで、交渉に必要な奴等も集まったので、決めてくる」
「すいませんね、お願いします」
そこに弟が来て。
「兄貴、元気?」
「元気ではないがまあまあだな、なんかこれから俺の処遇の交渉が始まるんだが、俺は置いてきぼりくらったっていうか」
「ああ、モカが来てたからな」
「モカ?あの人はモカさんっていうの?」
「人じゃなくて吸血鬼、兄貴を噛んだ」
「ああ、だからおかげで助かったのか」
そこで首筋を抑える。
「兄貴が倒れて、吸血鬼化したっていうのもびっくりしたけどもさ、そうじゃなかったら死んでたらしいじゃん」
「梗塞だか、不全が起きてたらしい、吸血鬼化しているから、たぶんそうだったんだろうとしか言えないらしいが」
吸血鬼に一回でも噛まれると吸血鬼化という状態が起きて、人間だと肝臓以外の臓器というのは再生しないが、吸血鬼化状態だと、再生しようとする、またはしやすいとか、そんな特徴がある。
「兄貴…死にかけてんじゃねえよ」
「そうなんだが、そこはごめん、こっちはそんな気はなかったんですが、なんかなってたわ」
「笑いながら言う必要はねえよ、良かった。良かったよ」
「おいおい、お兄ちゃんは元気だから、ぷりぷりだよ!」
「サメみたいにいってんじゃねえよ」
弟は泣いた後。
「じゃあ、兄貴、交渉はこっちで任せておけよ、何、ここで決まらなかったら、うちのボスに出陣してもらうさ」
弟のボスはかなりやり手らしい。
前に挨拶したときは、爽やかなオヤジであったが、くえない人間なんだろうなっていうのはちょっと見えてた。
(何しろ吸血鬼が部下にいるってだけですごいって)
どっからスタッフ揃えたの?コネクションないと縁なんて存在しないよっていうタイプの抜擢である。
夕方には交渉はまとまり。
「かなり安くこちらとしては済んだから、まあまあでしょう」
この言葉がよくわからなかったが、渡された待遇を見たら、びっくりした。
「これは何?」
「これから10年は好きなことが好きなようにできますよ」
「はっはっ」
遊び呆けても金が残るような、いや、そんなことはしない、そんなことはしないぞ!でもたまに遊ぶぐらいならば楽しめると言うか、とんでもない額なんですけどもと震える。
「まっ、これぐらいはフツーだな」
弟が書面見てそういった。
「これでフツーなの?」
「感覚がマヒしているは、俺も認めるけども、起きたことから考えればこのぐらいはね、出るだろうし、これうちからも見舞金は出てるから、この値段」
「えっ?なんで?いやくれるならばもらうんだけども」
「ああ、ちょっとモカの方がな、人間の人生を変えてしまったってことで、落ち込んでいてな」
「ああ、別に気にしないのにな」
「吸血鬼化は黙っていれば人間に戻るけども、兄貴の場合は体調を見ながら延長もあるかもしれないから」
「延長の場合はどうなるの?」
「吸血鬼にもう一回噛まれる」
「痛いのかな?ほら、モカさん噛まれた時は、記憶ないから、倒れたら、そのまま目が覚めたら病院だったし」
「その辺はまだ…この一回でどうにかなっちゃう場合もあるからさ、それなら二回目誰が噛むか問題は起きないし、あんまりそういうこと考えるなって、悪化したら困るし」
「そうだな」
しかし、人間に戻るにつれて、体の苦しさが出てきてしまい。
「もう一回噛まれる必要はありますが、吸血鬼の方にも断る権利と言いますか」
「その場合は」
「言いにくいのですが…」
そのまま入院して治療になるらしい。
そうか…俺の人生ここで…なのか。
そう思っていると、室内に風が吹き込んだ。
窓なんて開けたつもりは…
「モカさん」
そこには吸血鬼のモカがいた。
俺の有無を言わせることなく、首筋に唇が触れた。
(モカさんは今日は来ないのかな)
そこから毎日モカが来てくれないか、楽しみになっている。
「えっ?噛んでくれたの?」
弟にその話をしたら驚いてた。
「あいつは気まぐれなところあるし、いや噛んでくれて嬉しいけどもさ」
弟と吸血鬼の同僚と言う立場で揺れている。
「この辺は揉めることはあるんだ、上手く行かないことは俺も見てきたし、覚悟は俺はできてたはずなんだが、兄貴、良かったよ。このままダメになるのかと思ってた」
「そうかラッキーだったか、悪いがモカさんにさ、ありがとう助かったっていってくれるかな」
「ああ、もちろん言う。絶対に言うから、兄貴はきちんと治療してくれよ」
「わかったるさ、せっかく拾った命だから大事にする」
そういいながらも、心の中では別のこと、モカのことを考えていた。
一般的な常識では、吸血鬼が人間を噛むのは食事や求愛である。
何回かに分ける吸血行為は求愛に分類されるらしい。
ただ諸説はあります。
彼女はしばらくいなかったこともあるが、今回起きた、この吸血が好意的な理由であってほしかった。
病室としてはちょっと豪華な一人部屋、指の動きとか確かめるために、何かリハビリします?と聞かれたら、楽器とかは前は演奏を、ギターはやってましたね。なんていったら、あっ、あの部屋は防音だから、良ければギターの練習でもくださいと言われた。
吸血鬼化がとけたら、危ない状態だからこそ、そうやって優しいのかもしれないが、甘えることにした。
弟に…
「モカさんとはどっかに飲みに行ったりするの?」
「行くよ、カラオケとかもうちのチームで行くよ」
「へぇ、モカさんって何歌うの?」
「モカは結構音楽好きだな、いい曲ばっかりしているんだ、そういやこういう曲を再生してたから、その曲いいじゃんって俺も聞いている曲があって」
リストを共有させてもらった。
「へぇ、こういう曲好きなんだ」
そういってその日から練習ですよ。
来たら、聞いてほしいなって思っちゃって、我ながら学生時代みたいなことをしいるな。
少し笑ってしまいながら、ギターをじゃかじゃか鳴らして、サビを勢いで歌う。
「あら?その曲は?あなたもその曲が好きなの?」
モカが顔をだした。
「は…いえ、あの…この曲が好きだって聞いたから」
「えっ?それで弾いてたの?」
「はい」
「なんでかしらね、まあ、いい曲なのはわかるけども」
「また会えて嬉しいです」
「私はただ顔を見に来ただけよ」
「それで嬉しいのです」
「そう、お兄さんは不思議な人ね、まっ、弟さんが吸血鬼とも上手くやれる人だから、お兄さんもそうなのかもしれないけども」
「今日はお仕事終わりですか?」
「そうじゃないんだけどもね、顔色も大分よくなったわね」
「あなたのおかげで、命が助かりました、ありがとうございます」
「気にしないで」
「しかも、お見舞金まで」
「ああ、それは受け取って、やっぱり人生を変えるということは、私には重くてね、こうでもしなければ罪悪感に押し潰されそうで」
「そうなんですか?」
「あなたがなんで隔離されているかわかるでしょ?あなただけが吸血鬼化で助かってる、が、自分はそうではないから、いつ死が迎えに来てもおかしくないって人たちがいるわけ、そういう人たちは怖いのよ」
「そこまでは頭が回りませんでした」
「弟さんがいるからそこまではならないから、身内が吸血鬼と同僚だったら、あなたも噛んでもらえますよっていう気持ちで、寛大に接してあげなさい、本気でちょっかいかけるやつはたぶんでないとは思うけどもね」
その場合は吸血鬼と敵対することになるでしょ。
「吸血鬼と敵対的な交渉は間違ってもするもんじゃないって学びましたよ」
「そうしてくれる?そうじゃないと、本当に最後まで行くのよね」
「無知って怖いね」
「そうよ、やってられないわ」
「あれ、もしかして、何かありましたか?」
「まあね、ここにちゃんとできる人間もいるのに…」
ここで無意識のうちか、モカは自分の眷属になりかけの男に触れてくる。
「まっ、統計的にはできないやつの方がずっと多いけどもね」
「そうなんですか」
「そうだよ…だから気にしないで、あなたのそれは…もう少しで吸血鬼のいらない時代が来るからさ」
「それは寂しいですよ」
「そうかな、じゃあね」
「えっ?これで終わり、ちょっと待ってくださいよ」
ああ、俺の好きな子が行ってしまう。
吸血鬼は夫婦になる場合、人間から吸血鬼になった側の初めての吸血相手が配偶者になる地域もあるらしい。
俺も噛みたい、あなたの首筋を噛み合う関係になりたい。
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