浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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人の心はなんてブラック

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「好きな人とかいないの?」
「あ~」

出張先の同期くんに、今度そっちに私も用事ができたんだけども、ご飯とか美味しいところ教えてくれる?なんて言ったら、良かったら案内するよと返事が来たので。
「よろしくお願いします」
と言った。
同期くんは、その返事を見て、叫びたくなったのを抑えたという。

そして遠方の地ということもあり、大胆にも上記の質問をした。
「好きな人ができたり、好きじゃなくなったりを繰り返している人生ですよ」
「えっ?」
意外というか。
「いやいや、私だって人間ですよ、恋の1つや、というか人を好きになったりするんですからね」
「…どういう人が好きなの?」
「う~ん、でも私の目は節穴だから」
「それでもちょっと聞きたい」
「聞いててあまり気持ちのいいものでもありませんよ」
「それでも聞いてみたい」
「同期くんは変わってるな」
「それは今更でしょ」
「黙っていれば、それなりにモテるのに」
「勝手なイメージを持たれて、すかれても困るんだよ」
「モテる人の悩みだよ、それ」
「自分が好きだと思ってない人から、好かれたことはあるの?」
「あるよ」
「あるか」
「それはもうストーカーでしたが…」
「…そいつ、まだいるの?」
「さすがにもういませんよ。ただね、追いかけられる恐怖は味わったんで、それはもう嫌」
「なんかあったら言えよ」
「そうしますね。まずは通報でしょうが」
「そういうのが傷?」
「いえ」
「じゃあ、何?」
「たぶん人には理解されにくいと思いますが、その人のためにと思ったら、その人の長年の悩み解決しちゃったんですよ」
最適化しました。
「そしたらね…」
君はスゴいな、俺がずっと悩んでいたことがまさかね…こんな形で解決できるだなんて。
「それ聞いたらね、ああ良かったなと思いましたが、その…プライドが傷ついたみたいで」
俺って本当にダメなやつなんだな。
「そこから雲行きがおかしくなっていきました」
なんで俺じゃなかったんだろう。
「それはどういう意味なんですか?」
だって本当は俺が何とかしたかったから、俺にはその能力はなかった。
「あなたには私が持ってない力はあるじゃないか」
でもそれってさ、望んでたものじゃない。言いたいことはわかるけどもさ。


「まっ、そういうことです」
「それは拗ねているというか、心が狭すぎないか」
「そう言っちゃうとさ」
「自分ができることなんて大したことはなく、誰かと協力して事は当たるべきだし、その男のことは知らないが、なんかこう…心の中に渦巻いているものがすごそうだ」
「すごいんじゃないですかね。そういった話をすると、よくわかるというか、わかったきっかけは解決してからなんですけども、コンプレックスがすごいのかと」
「あ~でも、自分で解決したかった。それはわからないではないさ、子供っぽい考えだと君は笑うかい?」
「それはないですよ。因縁あることならば尚更だと思います、自分の手で終止符を討ちたかった、まあ、私も討ってほしかったですから」
「ああ、つまり本来の実力より、強烈な補助魔法とかかけてラスボス倒しちゃったものだから、これは自分の力じゃないって思ったのか」
「その例えはわかりやすいですね」
「じゃあ、力借りずに自力で行けよ」
「まあ、そうなんですが、時間も迫ってきてましたし、もしもここでやらなければ、次はいつになるか、実際そうでしたから」
「人生なんてそんなもんだ」
「そこまで行くのには、あなたはまだ早いですよ」
「そうか?こっちに出張しているのだって要はそれだしな、積みたくもない人生経験を体験させていただいてます」
「大分荒れてますね、クラゲとか見るといいですよ、フワフワしてて」
「クラゲ好きなの?」
「結構」
「今度水族館とか行く?」
「いいですね、まっ、でも一人の方がいいかもしれません。あなたと行くのならば気を使わせてしまいますから、そうじゃないところにしましょうよ」
「それならやっぱり水族館だ」
「何がやっぱりかは知りませんが」
「ストレス解消は必要だ」
「本当にそれはありますよ、最初はね、そういうのに頼るのはどうかと思ってたんですけど」
精神的負荷が著しい状況下、しかもそれがいつ終わるかわからない状態になったときに、初めてその大事さがわかったという。
「趣味を持たない人から離脱していった」
「趣味大事、人間関係も、家族とかパートナーも大事なんでしょうが、本当に危ういときはね、そっちを頼るものではないですよ、傷つけてしまう恐れがある」
「そう言われると弱い」
「まっ、世間話ぐらいでなんとかなるならばいいんですよ」
「俺はそれが楽しいよ」
「私もね」
「…誰かと付き合うとか考えたことはないの?」
「それも悪くはないんだけども」
「頼りにならない男がダメだとか?」
「泣きたいときに、気を使わなきゃならないのはちょっとね」
おい、そいつ、そんなことさせたんかい。
ちょっと名前教えてくれる?
「酷い奴もいたもんだ」
「いたね~でも、そのうち声も思い出せなくなるんだろうな」
「そこまで行くと可哀想だ」
「そう?」
「君に忘れられるってさ、最悪じゃないか」
「そういうものかな」
「大変なときに支えてくれるような人間だから、俺は嫌だよ、君からもう助けてなんてあげないよって言われるの」
「他の人の手を借りればいいんだよ、そんなときってさ」
「それってどういう想定?」
「わからないけども、私の手を借りたくないならばそれでいいさ」
「上手く行くとは限らないが」
「そこも、含めて、選択だよ。自分の好きなようにやって、望む結果を得れるわけがない」
「自分の好きなようにやるならばそれが全てか」
「でしょ?それともさ…」
「いや、言いたいことはわかった。それを考えると、人生は本当に些細な決断で、がらりと変わってしまうものだし。君は怖い女でもある」
「あら?何故?」
「選択を自由にさせてくれるから、まあ、選んだらどうなるか、それを質問すれば教えてはくれるが、たぶんそんな質問をするやつはいないし、話をしても、ピンと来ないんじゃないか」
「そこまでわかるんだ」
「同業だしな、この辺でずいぶんと助けられている方からすると、なるべくしてなった、かな…」
「私はそれでも上手くはやってほしかったよ、ただそんな気持ちは届かないだけだし」
「うわ…切ねえ」
「人のこういう話ばっかり聞いて楽しいのはわかりますけどもね、そっちはどうなんです?」
「恋する気持ちはわかるさ、こう…今何やってるんだろうな、会いたいなとか、目の前の修羅場を現実逃避する感覚で思うな」
「それはまずは修羅場を何とかしましょう」
正論で返された。
ストレスへの適性が高いかたのご応募はいつでもお待ちしております。
待遇はブラックではないが、人の心はなんてブラックなんだろうなと、いつも感じれる人間味溢れた職場です。
よろしくね!
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