800 / 934
サービス券出したのは間違いではなかった
しおりを挟む
「あの袋は一体どういう仕組みなんだ?」
「持ってた袋をAとすると、Bというもう一枚の袋があってだな、そっちに食料は入れてもらって、Aと繋けて、ゴミなどもBで処理してもらっていたんだよ」
食べ物の方は、話を聞いた料理人さんが任せろと言って作ってくれました。
「クリスマスとかには小さいけども、ケーキを用意してだね、直接祝ってあげれなかったのは申し訳なかったんだけども」
その話を物陰で聞いたら、自然と涙が出てくる。
「あなたの誕生日はいつなのだろうか、今、聞いてしまって申し訳ないけども、今年から、今度からは祝おうか」
「はい、ありがとうございます」
居酒屋
わりと繁盛している店である。
「何を飲む?私はビール」
「では同じのを」
やってきた客は金髪碧眼と、ガタイはいいが顔が整っている二人の男なのである。
先にいた女性客がふと目で追っていた。
「何故に飲もうなんて言ってきたんですか?」
「あなたとはどういう形でも同僚だからですよ」
この口調は丁寧だが、裏がある。
「そういうことですか」
「私は上手くやらなければなりません」
「結構…見た目に反して、暗い人なんですね」
「何のことです」
「あなたは昔から姫…上役のことをご存じのようですが」
さすがにここで姫という言葉を口に出すのはなんなので、言い換えたようだ。
「私が言葉がおぼつかない頃からなので、長い付き合いですよ」
「ビール、お待たせしました」
「では就任おめでとうございます」
「ありがとうございます」
麦芽、カスケード、水…
何か違和感があった。
目の前の金髪碧眼の男はやはり人に見えるが、人ではないらしい。
「なんですか?」
「いえ、別に」
ただその違和感も、こちらに来て不馴れな遠国から来た人という補整に助けられているっぽい。
「お兄さん達!私たちとよろしかったら、飲みませんか?」
「すいません、今は同僚と飲みに来たので」
「え~そんな」
逆ナンパは一言断ったぐらいでは引き下がらない。
「すいません、お客様」
店員さんが来てくれて。
「こちらでは人の目もありますから、どうぞお二階へ」
といって宴会場として普段は使っている二階に案内され。
「出入り口も裏から来てください、あれはその…お客様のことをですね」
「ああ、あれは一目惚れでもしたんですかね」
「そこにお酒が入りますとね」
ここで代わりに話をしたのは、ガタイのいい狩人さんの方である。
狩人の方が、金髪碧眼の騎士に目で、何も話すな、バレるという合図を送って、話をつけてくれた。
「あなたに助けられるとは」
「あれはしょうがないでしょ」
二階、注文も内線でお届けします。よろしければこちらをお食べください、迷惑をかけたサービスです。
「これから、あなた目当てのお客さんで、居酒屋は込み合うかもしれませんよ」
「そんなまさか、でもそれならば売り上げに繋がって、いいのかな」
「何を気楽な、あなたは逃げれると思っているんでしょうが」
「逃げますよ」
「あそこまで言ったら、愛想笑いもいるんですよ、それでやんわりと断るような」
「それぐらいは~」
「できてない、不自然に、不馴れに見えますからね、しかもそれに気づいてないのだから」
「私だって学べば」
「それ、いつ物になるんです?」
「それは…」
「未定でしょ、ならおとなしく人間社会は見て学べ」
「わかりました」
「俺だってあんまりこういうのは得意じゃないんだ、そんな俺に言われるぐらいなんだよ」
「ではしばらくは仕事に専念し、プライベート、こういった人間の日常は学ぶことに徹するようにします」
「その方がいい、それで今がなんでダメなのか、わかったら、その時、自分がどうすればいいのかわかるから」
「姫のお力になってやりたかっただけなのに」
「儀式などの固い口調ならば、それでいい生真面目で、…というか、あれは訓練してなければ口にできない、言葉遣いだから、それで良いところの生まれと思われているみたいだがな」
「それはあるとは思いますね、日本語は変化しやすくて、学ぶのが大変だ」
(ほぼリアルタイムで情報更新しているのか)
「目に本性が出てる」
「これは失礼」
青い目は赤に変わっているが、暗い赤のために変化は人の目にはわかりづらい。
「あなたは人なのに、でもそのドラゴンスレイヤーとしての力を、姫のためにつかうのはいいですが、姫に使うのはやめてくださいね」
「それは誰に言っているんです」
「眷属とはいえ、まだあなたを信じてないので」
「あなたに信じてもらおうとは思ったない」
「…」
「何ですか?」
「個人的ですが、姫との思い出はあまり他の人に言わない方がいい」
「なんでですか?嫉妬が起きるから?」
「それはあなたの大事な思い出なんですよ、そこを誰かに触れさせるのはね…そりゃあ、聞いている方はその話にドキドキを覚えたり、嫉妬するのでしょうが、そういう消費に回さない方がいい」
「その言い回し、考え方みると、姫の影響受けてますね」
「そりゃあもう、そして私もそれでいいと思ってます」
「これで姫が出てほしかったイケオジキャラの外観だったら、姫は惚れていたんじゃないですかね」
「えっ?」
「今のあなたか、そのイケオジかっていうと、姫はイケオジの方がまだチャンスはあるんじゃないんですかねって話で」
「そうなのか?でもこれ人気のある、神絵師の…」
「好みはそれぞれでしょ?さっき声かけた女の趣味は、その顔でも、姫は違う。まあ、そもそも姫は本気の相手もしくは親しい相手とそれ以外じゃやっぱり違うから」
まずはそこからかなと。
グルルルルル
そこで二人は、身構えると。
「はい、お待たせ、熱々鍋二人前になります」
一柱が頼んでもないメニュー片手に、来ちゃった。
「ついでにその話を僕も混ぜてもらおうかな」
「構いませんよ」
「…」
「君の方は?」
「予想外だ」
『そういうものだよ、俺たちは』
「御柱様、こいつもわかってないで言ってますから」
「見た目と年齢が釣り合ってないから、そこはしょうがないのかなとは思ってる」
「で、この熱いのに鍋ですか」
「そうだよ、お鍋だよ」
「怒りはわかりますが、普通の人間ならば参りますが、あまり効果は俺らにはないと思います」
「それでもだよ」
「御柱様が姫を気に入っているのはわかります」
「…うん、好き」
「気持ちはお伝えになったのですか?」
「そんなことできないよ!」
「なるほどまだと」
「そうだよ、でも一緒の時間を過ごすことも多くなっているし」
仕事です。
「そのうち分かりあえたら、距離が縮まってくれたらいいのになっては思ってはいるんだけどもね」
「御柱様は今まで彼女は」
「自分から付き合ってほしいという彼女はいない、また立場上、妻にしてほしいとか、娘はどうですか?はあるよ」
「この辺りの御柱様は、気が荒いという話ですから、話に尾ヒレついたってところですかね」
「人間の姿をしていると、一致されないね」
「されないでしょうね」
視界に居れば、生きた心地がしなくなる、そんな獣が本性である。
「まず最初に恐ろしいという感情が人間には浮かんでしまうからね、うちの人間はそうでもないけども、それまではよく子供に泣かれたよ」
「だってそういう存在が、守る側になるっていうのが珍しすぎるんですよ」
「大人になったということで、自分が認めた奴等が、世帯作るんで結婚式とかに出たんだよね」
結婚式に最初に呼んだ奴は勇者となる。
「えっ?あなたがそうなんですか?」
ありがちだが、結婚式にはいろんな人が来るので、そこで交流が生まれる。
「うちにいる何人かはその時知り合いからかな、話し合うことになったのがきっかけで来てくれる」
それまでは古びれたビルにいました。
「感謝はしているよ、俺は暴れるぐらいしかできないから、支えてくれる人たちがいなかったらこうはならない」
「今だと姫パワーで光熱費も大分安くなってますからね」
「それは支払いの時に言われた、例年より安いんじゃなくて、例年よりはちょっと高いから、節約してますって感じで、それが他にばれないってさ」
「今後バレるとしたら、大規模な停電が起きたときではないかってさ」
「あ~守るために力を使うか、それとも隠すことを選ぶか」
「御柱様は?」
「俺の答えとかになるとな」
「言いがたい決断ですか」
「そうだね、でも彼女がいいと言うのならば、新天地に行くぐらいは考えちゃうよね」
「えっ?」
「それは管理人知ってるんですか?」
「知らないよ、でも察しているところはあるんじゃないかなと」
「そこは話した方がいいですよ」
「なんで?」
「なんでって、俺たちは、姫と共にあることを決めたけども、あなたはそうじゃないでしょ」
「眷属として…」
「それはちょっと」
「新しい後輩が出来るのは嬉しくない?」
「またずいぶん姫に惚れられましたな」
「うん、前の男の話を聞いたら特にね」
「あれはね」
騎士の目が鋭くなった。
「もう触れてはいけない存在になりつつあるけども、その時の毎日の話、僕は好きなんだよね」
「その時の姫が一番のツボだと」
「はい…いや、今も好きよ。でもさ、あれはあの毎日は…ずっと続いてほしいと、もちろん相手は僕で」
(これは御柱様と姫は長くかかるが、下手すると他の方が声をおかけになるのでは…)
「どうしたら姫の好感度って上がるんですかね」
「お前、真面目に何を言ってるの?」
「それは僕も知りたい」
「御柱様!」
誰かにアドバイスできるほどではない狩人、だが、ちょっと待て!そんな気分である。
「いらっしゃませ、何名様ですか?」
「二人です」
「どうぞ、こちらへ」
男女が二人、座敷に通される。
「すいません、ビールを、コップは二つで」
「はーい」
「ここにはよく来るんですか?」
「昔は来てましたね、最近宴会でこちらのお料理をいただきまして、前と変わらずに美味しかったものですから」
「そうなんですか」
「ビールお待たせいたしました」
瓶のビールの栓を、濡島(ぬれしま)は手慣れて抜くと。
「さっ」
彼女のグラスにビールを注いでくれた。
自分のグラスにも注ぐと。
「はい、じゃあ、乾杯と」
「乾杯」
そういって冷たいビールが潤していく。
「美味しいですね」
「ええ、本当に」
「飲ませてしまってから聞くのもなんですが、お強い方なんですか?」
「ほどほどですよ」
「ほどほどか」
酔ったらどうなるのかな、なんて考えてみると、それは意外と早く来た。
(これは目に毒でもあるというか)
彼女は酒が入ると色っぽさが増すのである。
あんまり飲まないようにしなきゃと濡島は思ったという。
さすがに酒で流されるわけにはいかない。
ただ見ていたいのは見ていたいが、う~ん、これは意外な側面。
「他の人と飲んだりなんかはするんですか?」
「いいえ」
なんでも父方の本家がある地域だと、女は酒を飲むものではないとか言われてた。こっちに戻ってきてからも、自身には飲酒の習慣もなかったものなので、濡島に誘われるまでは飲んだことはなかったという。
「いいこと聞いた」
「?」
「俺はあなたにメロメロですからね」
「もしかしてもう酔ってます?」
「酒ではなく、あなたに酔ってますよ」
こんなことを笑顔をわざわざ作りながらいうんだから。
「お上手ですね」
「そうですかね、こんなことはあまりというか、言わないんですよ」
「本当ですよ」
「それはもう誓って」
「男の人はわからないからな」
「そうですかね?でもそれは男が悪いと思うんですよ、信じるに値しないような行動をしてしまったから、信じてもらえないだけでしょ?誤解ならば尚更しっかりするべきだ」
「それはわかりますけど」
「仲良くしたいという心はありますよ、でもこちらとしては無理矢理はあり得ませんよ」
「ふ~ん」
ちょっと拗ねたところもいいな。
「濡島さんといるのは、確かに楽しいから」
「俺もですよ、だから会いたくなって困る」
そこで彼女はじっと見てきて、また視線を反らす。
「結婚とか考えたりしないんですか?」
「そりゃあ、年齢的に気になったときもありましたよ」
「そういったお話は」
「その時向こうにいましたからね」
「あちらでは出なかったんですか?」
「出ませんね、なんかこう相手にされてないというか」
「ずいぶんと節穴ばかり住んでいる地域だったのですね」
「節穴…まあ、私のことは置いておいても、あまり先を考えてないところではありました」
「窮屈なところでのお勤め、お疲れ様でした」
オーバーリアクションで頭を下げた。
「もう濡島さんったら、寄ったんですが?」
「いや、まだビール一本ですし、すいません、お代わりお願いします」
「いつもはどのぐらい飲んでいるんですか?」
「休み前だと多くなるかな、でもこっち来てからは飲んでませんでしたよ、なんかこう…酒を飲んで忘れるにはもったいないぐらいの涼しさなんで、青年の頃を思い出して、活字の本を読んでましたよ、なんとなく思い出しちゃって」
滞在している旅館というのが、ロビーに現在書店でもフェアを行っている本を置いている。
「この辺は本屋もありませんからね」
「だから本屋さんみたいでしたよ」
懐かしいなと一冊読んでみると、それがシリーズものだったので、他のものも見たくなったぐらいで。
「すいません、この本って他にはないんですか?」
とフロントで聞いてみると。
「それがあるんですよ」
ニヤリっと店主が笑った。
「何、読みます?」
「それじゃあ、ええっと1作目から」
「では…」
奥から出してきてくれて。
「他のは後でそちらの本棚に並べておきますから」
「ありがとうございます」
本好きをくすぐる旅館であった。
「それと、あなたが作ってくれるお漬物や飲み物のおかげで、充実した休暇を過ごせていますよ」
麦茶とアイスコーヒーはポットで作ってもらっていた。
「そしてここにあなたがいてくれたらな、寂しいなと感じるまでがセットですね」
「私がいたところで人生の張り合いにはなりませんよ」
「なります!これは断言できちゃうから不思議ですね、俺の人生にはあなたがいるんですよ!」
「はっはっはっ面白いな」
「俺は本気なんですよ」
「こんな私に声をかけてくれるのは、とても嬉しいですけどもね」
「それともなんですか?家に因縁の類いでもありましたか?それなら早く言ってくださいよ、バッサリ切ってもらいますから、憂いも何もなくなる」
「今、濡島さんはとんでもないことを言っているのはわかっているんですか?」
「ええ、でも私のいる世界というのはわかっているでしょ?」
「それは…」
「それでも頼りないとか、俺のことあまり好きではないとかなら…ああ、やっぱりダメだ、俺はあなたのことが好きすぎる」
じたばたした後にピタ!
「あなたは今、俺のことどう思っているんですか?」
「いきなり出会ってしまったって感じですかね」
「何度も言いますが、話としてはあなたのことを知ってましたからね」
「それは…」
「心配になった、老若男女、どういう人かわからないけども、心配になってしまった」
休暇でしたら、ほら、前に濡島さんが気になされていたお話があったじゃないですか、あの人が案内を務めてくれたりするから、わりとのんびりできると思いますよ。
「そう言ってくれたんですよ」
「私としてはお仕事ですからね」
「仕事以上の世話を焼いてくれていると思いますが?」
そこはきちんと見ていた。
彼女はビジネスライクではない部分があって、そこがまたグッと来た。
「世話を焼いてくれるっていう良さって、俺は知らなかったからな、そりゃあね、俺の好感度は上がっていっちゃう」
ままごとのようかもしれないが、独身男である自分からすると、たまらなかったのだ。
「世の中にはこういう素敵な女性がいるもんなんだなって」
「私は結構ずぼらですよ」
「そこもまたいいじゃないですか」
ごめんなさい、お漬物、ちょっと漬けが甘かったから。
なんていった後に、まだキュウリがキュウリキュウリしているものを、パクッと濡島は食べて。
「旨い」
といってそのまま戻っていったこともあった。
「昔は注意されたものなんですがね、もしも前に住んでいたところに、あなたのような人がいたら」
「好きになってくれてもいいんですよ、ほは、今からでもおかしくはない」
「濡島さん!」
「はい!なんでしょうか!」
ピシッ!
「私は濡島さんという方がわかりません」
「そうですか」
「でもわかりたいと思ってます」
「それって」
「濡島さんはその待てが利かなさそうだから」
「無理ですね」
「じゃあ、言いません」
「えっ、それは、それはちょっとひどくありません?」
「待って!と言ったら止まれますか?」
「それは無理ですね」
「じゃあ、言いませんよ」
笑顔で返される。
確かに頭の中ではもう告白、記念日にプロポーズ、両家の挨拶、結婚などのシナリオは書いてはいたし、自分的にはもうOkを出している。
「私も若くはありませんからね、濡島さんはもっと若いかたがいいんじゃありませんか?」
「なんでそんな残酷なことを言うんですか、おっさんは好きな人が出来てはいけないとでもいうのですか?」
「それはないですよ、好意は嬉しいですよ」
「じゃあなんで?」
「距離の詰め方、いきなり強引になるんですもん」
「それは…その、そこを言われますとね、こちらとしてはごめんなさいというしかないです」
「出来ればそこは優しく、ね?」
「あっ、はい、わかりました、善処いたします」
「よろしい」
クゥーン。
「あなたならばしっかりと家庭は守ってくれそうな気がする」
「あら?別にそれは男女どちらもやるべきではないですかね?一緒に生活するのならばそういうことでは?」
「そうですね。そういえば私、引っ越しすることにしたんですよ」
「あっ、なんか言ってましたが」
「はい、更新もありましたからね。今のままでも良いのですが、今回は全面的に向こうが悪いとかでお金までくれるんで、それならばちょっと広めのところを探そうかなって」
「あ~いいんじゃないんですか?」
「二人でも暮らせるような」
「まだそれは早いですね、というか家事はちゃんとできるんですか?」
「男の独り暮らしをなめないでください、集合住宅ですと、掃除のできる時間というのが限られているし、休暇前に大掃除、それこそ害虫駆除の燻煙もちゃんとやりましたからね、完璧ですよ」
「それなら一人で生きていけますね」
「それはやめてください、俺にはあなたがいるんですから」
「あら、そうなんですか?」
「そうなんてわすよ、毎日このような会話を糧にして生きていたい、いやもう糧なんですよ、あなたとのやり取りはね」
「あらあらどうしましょう」
「もうそんなこと言わないで、からかって…はいませんね、本当に困っているというか」
「心を読まないでくださいます」
「いや~いい、あなたのそういう顔もとてもいい」
「濡島さんってお酒が入ると陽気になるというか、誉め上手になるんですか?」
「そうですかね、俺は真実を、事実を口にしているだけだから」
「もうやっぱりちょっと酔ってる」
「あっ、ちょっとトイレ行ってきますね」
濡島がそういって席を離れると、店員さんが。
「よろしければこれをどうぞ」
とサービスで色々と一皿に持ってくれた。
「ありがとうございます」
とお礼を述べる。
ザ~
トイレから出て、客席に戻る途中に、居酒屋の料理人の人と目があった。
「ここの料理は美味しいですね」
「そうかい、ありがとうよ。兄ちゃんの方も頑張りなよ」
「うっす、ありがとうございます」
さすがにあそこまで口説いていたりすると、他の客や店員までにも聞こえていたりする。
「ああ、濡島さんお帰りなさい、お店の人がこの料理をサービスしてくれたの」
「それは良かったですね」
ここには早くくっつけよ派と、あのやきもきさせるのがいいんだ派がいるので、特に第三者からの介入はないが、店は盛り上がるので。
「こちら次回にお使いください」
かなりお得なサービス券まで会計時にいただいた。
「また来たいと思いますが?いかがいたしましょうか?」
「濡島さんが誘ってくれるならね」
「明日は暇ですか」
「早いです!」
「じゃあ、そのうちということで」
うんうん、これが、このやり取りがうちは見たいんだよ。
やはりサービス券出したのは間違いではなかったのだ。
「持ってた袋をAとすると、Bというもう一枚の袋があってだな、そっちに食料は入れてもらって、Aと繋けて、ゴミなどもBで処理してもらっていたんだよ」
食べ物の方は、話を聞いた料理人さんが任せろと言って作ってくれました。
「クリスマスとかには小さいけども、ケーキを用意してだね、直接祝ってあげれなかったのは申し訳なかったんだけども」
その話を物陰で聞いたら、自然と涙が出てくる。
「あなたの誕生日はいつなのだろうか、今、聞いてしまって申し訳ないけども、今年から、今度からは祝おうか」
「はい、ありがとうございます」
居酒屋
わりと繁盛している店である。
「何を飲む?私はビール」
「では同じのを」
やってきた客は金髪碧眼と、ガタイはいいが顔が整っている二人の男なのである。
先にいた女性客がふと目で追っていた。
「何故に飲もうなんて言ってきたんですか?」
「あなたとはどういう形でも同僚だからですよ」
この口調は丁寧だが、裏がある。
「そういうことですか」
「私は上手くやらなければなりません」
「結構…見た目に反して、暗い人なんですね」
「何のことです」
「あなたは昔から姫…上役のことをご存じのようですが」
さすがにここで姫という言葉を口に出すのはなんなので、言い換えたようだ。
「私が言葉がおぼつかない頃からなので、長い付き合いですよ」
「ビール、お待たせしました」
「では就任おめでとうございます」
「ありがとうございます」
麦芽、カスケード、水…
何か違和感があった。
目の前の金髪碧眼の男はやはり人に見えるが、人ではないらしい。
「なんですか?」
「いえ、別に」
ただその違和感も、こちらに来て不馴れな遠国から来た人という補整に助けられているっぽい。
「お兄さん達!私たちとよろしかったら、飲みませんか?」
「すいません、今は同僚と飲みに来たので」
「え~そんな」
逆ナンパは一言断ったぐらいでは引き下がらない。
「すいません、お客様」
店員さんが来てくれて。
「こちらでは人の目もありますから、どうぞお二階へ」
といって宴会場として普段は使っている二階に案内され。
「出入り口も裏から来てください、あれはその…お客様のことをですね」
「ああ、あれは一目惚れでもしたんですかね」
「そこにお酒が入りますとね」
ここで代わりに話をしたのは、ガタイのいい狩人さんの方である。
狩人の方が、金髪碧眼の騎士に目で、何も話すな、バレるという合図を送って、話をつけてくれた。
「あなたに助けられるとは」
「あれはしょうがないでしょ」
二階、注文も内線でお届けします。よろしければこちらをお食べください、迷惑をかけたサービスです。
「これから、あなた目当てのお客さんで、居酒屋は込み合うかもしれませんよ」
「そんなまさか、でもそれならば売り上げに繋がって、いいのかな」
「何を気楽な、あなたは逃げれると思っているんでしょうが」
「逃げますよ」
「あそこまで言ったら、愛想笑いもいるんですよ、それでやんわりと断るような」
「それぐらいは~」
「できてない、不自然に、不馴れに見えますからね、しかもそれに気づいてないのだから」
「私だって学べば」
「それ、いつ物になるんです?」
「それは…」
「未定でしょ、ならおとなしく人間社会は見て学べ」
「わかりました」
「俺だってあんまりこういうのは得意じゃないんだ、そんな俺に言われるぐらいなんだよ」
「ではしばらくは仕事に専念し、プライベート、こういった人間の日常は学ぶことに徹するようにします」
「その方がいい、それで今がなんでダメなのか、わかったら、その時、自分がどうすればいいのかわかるから」
「姫のお力になってやりたかっただけなのに」
「儀式などの固い口調ならば、それでいい生真面目で、…というか、あれは訓練してなければ口にできない、言葉遣いだから、それで良いところの生まれと思われているみたいだがな」
「それはあるとは思いますね、日本語は変化しやすくて、学ぶのが大変だ」
(ほぼリアルタイムで情報更新しているのか)
「目に本性が出てる」
「これは失礼」
青い目は赤に変わっているが、暗い赤のために変化は人の目にはわかりづらい。
「あなたは人なのに、でもそのドラゴンスレイヤーとしての力を、姫のためにつかうのはいいですが、姫に使うのはやめてくださいね」
「それは誰に言っているんです」
「眷属とはいえ、まだあなたを信じてないので」
「あなたに信じてもらおうとは思ったない」
「…」
「何ですか?」
「個人的ですが、姫との思い出はあまり他の人に言わない方がいい」
「なんでですか?嫉妬が起きるから?」
「それはあなたの大事な思い出なんですよ、そこを誰かに触れさせるのはね…そりゃあ、聞いている方はその話にドキドキを覚えたり、嫉妬するのでしょうが、そういう消費に回さない方がいい」
「その言い回し、考え方みると、姫の影響受けてますね」
「そりゃあもう、そして私もそれでいいと思ってます」
「これで姫が出てほしかったイケオジキャラの外観だったら、姫は惚れていたんじゃないですかね」
「えっ?」
「今のあなたか、そのイケオジかっていうと、姫はイケオジの方がまだチャンスはあるんじゃないんですかねって話で」
「そうなのか?でもこれ人気のある、神絵師の…」
「好みはそれぞれでしょ?さっき声かけた女の趣味は、その顔でも、姫は違う。まあ、そもそも姫は本気の相手もしくは親しい相手とそれ以外じゃやっぱり違うから」
まずはそこからかなと。
グルルルルル
そこで二人は、身構えると。
「はい、お待たせ、熱々鍋二人前になります」
一柱が頼んでもないメニュー片手に、来ちゃった。
「ついでにその話を僕も混ぜてもらおうかな」
「構いませんよ」
「…」
「君の方は?」
「予想外だ」
『そういうものだよ、俺たちは』
「御柱様、こいつもわかってないで言ってますから」
「見た目と年齢が釣り合ってないから、そこはしょうがないのかなとは思ってる」
「で、この熱いのに鍋ですか」
「そうだよ、お鍋だよ」
「怒りはわかりますが、普通の人間ならば参りますが、あまり効果は俺らにはないと思います」
「それでもだよ」
「御柱様が姫を気に入っているのはわかります」
「…うん、好き」
「気持ちはお伝えになったのですか?」
「そんなことできないよ!」
「なるほどまだと」
「そうだよ、でも一緒の時間を過ごすことも多くなっているし」
仕事です。
「そのうち分かりあえたら、距離が縮まってくれたらいいのになっては思ってはいるんだけどもね」
「御柱様は今まで彼女は」
「自分から付き合ってほしいという彼女はいない、また立場上、妻にしてほしいとか、娘はどうですか?はあるよ」
「この辺りの御柱様は、気が荒いという話ですから、話に尾ヒレついたってところですかね」
「人間の姿をしていると、一致されないね」
「されないでしょうね」
視界に居れば、生きた心地がしなくなる、そんな獣が本性である。
「まず最初に恐ろしいという感情が人間には浮かんでしまうからね、うちの人間はそうでもないけども、それまではよく子供に泣かれたよ」
「だってそういう存在が、守る側になるっていうのが珍しすぎるんですよ」
「大人になったということで、自分が認めた奴等が、世帯作るんで結婚式とかに出たんだよね」
結婚式に最初に呼んだ奴は勇者となる。
「えっ?あなたがそうなんですか?」
ありがちだが、結婚式にはいろんな人が来るので、そこで交流が生まれる。
「うちにいる何人かはその時知り合いからかな、話し合うことになったのがきっかけで来てくれる」
それまでは古びれたビルにいました。
「感謝はしているよ、俺は暴れるぐらいしかできないから、支えてくれる人たちがいなかったらこうはならない」
「今だと姫パワーで光熱費も大分安くなってますからね」
「それは支払いの時に言われた、例年より安いんじゃなくて、例年よりはちょっと高いから、節約してますって感じで、それが他にばれないってさ」
「今後バレるとしたら、大規模な停電が起きたときではないかってさ」
「あ~守るために力を使うか、それとも隠すことを選ぶか」
「御柱様は?」
「俺の答えとかになるとな」
「言いがたい決断ですか」
「そうだね、でも彼女がいいと言うのならば、新天地に行くぐらいは考えちゃうよね」
「えっ?」
「それは管理人知ってるんですか?」
「知らないよ、でも察しているところはあるんじゃないかなと」
「そこは話した方がいいですよ」
「なんで?」
「なんでって、俺たちは、姫と共にあることを決めたけども、あなたはそうじゃないでしょ」
「眷属として…」
「それはちょっと」
「新しい後輩が出来るのは嬉しくない?」
「またずいぶん姫に惚れられましたな」
「うん、前の男の話を聞いたら特にね」
「あれはね」
騎士の目が鋭くなった。
「もう触れてはいけない存在になりつつあるけども、その時の毎日の話、僕は好きなんだよね」
「その時の姫が一番のツボだと」
「はい…いや、今も好きよ。でもさ、あれはあの毎日は…ずっと続いてほしいと、もちろん相手は僕で」
(これは御柱様と姫は長くかかるが、下手すると他の方が声をおかけになるのでは…)
「どうしたら姫の好感度って上がるんですかね」
「お前、真面目に何を言ってるの?」
「それは僕も知りたい」
「御柱様!」
誰かにアドバイスできるほどではない狩人、だが、ちょっと待て!そんな気分である。
「いらっしゃませ、何名様ですか?」
「二人です」
「どうぞ、こちらへ」
男女が二人、座敷に通される。
「すいません、ビールを、コップは二つで」
「はーい」
「ここにはよく来るんですか?」
「昔は来てましたね、最近宴会でこちらのお料理をいただきまして、前と変わらずに美味しかったものですから」
「そうなんですか」
「ビールお待たせいたしました」
瓶のビールの栓を、濡島(ぬれしま)は手慣れて抜くと。
「さっ」
彼女のグラスにビールを注いでくれた。
自分のグラスにも注ぐと。
「はい、じゃあ、乾杯と」
「乾杯」
そういって冷たいビールが潤していく。
「美味しいですね」
「ええ、本当に」
「飲ませてしまってから聞くのもなんですが、お強い方なんですか?」
「ほどほどですよ」
「ほどほどか」
酔ったらどうなるのかな、なんて考えてみると、それは意外と早く来た。
(これは目に毒でもあるというか)
彼女は酒が入ると色っぽさが増すのである。
あんまり飲まないようにしなきゃと濡島は思ったという。
さすがに酒で流されるわけにはいかない。
ただ見ていたいのは見ていたいが、う~ん、これは意外な側面。
「他の人と飲んだりなんかはするんですか?」
「いいえ」
なんでも父方の本家がある地域だと、女は酒を飲むものではないとか言われてた。こっちに戻ってきてからも、自身には飲酒の習慣もなかったものなので、濡島に誘われるまでは飲んだことはなかったという。
「いいこと聞いた」
「?」
「俺はあなたにメロメロですからね」
「もしかしてもう酔ってます?」
「酒ではなく、あなたに酔ってますよ」
こんなことを笑顔をわざわざ作りながらいうんだから。
「お上手ですね」
「そうですかね、こんなことはあまりというか、言わないんですよ」
「本当ですよ」
「それはもう誓って」
「男の人はわからないからな」
「そうですかね?でもそれは男が悪いと思うんですよ、信じるに値しないような行動をしてしまったから、信じてもらえないだけでしょ?誤解ならば尚更しっかりするべきだ」
「それはわかりますけど」
「仲良くしたいという心はありますよ、でもこちらとしては無理矢理はあり得ませんよ」
「ふ~ん」
ちょっと拗ねたところもいいな。
「濡島さんといるのは、確かに楽しいから」
「俺もですよ、だから会いたくなって困る」
そこで彼女はじっと見てきて、また視線を反らす。
「結婚とか考えたりしないんですか?」
「そりゃあ、年齢的に気になったときもありましたよ」
「そういったお話は」
「その時向こうにいましたからね」
「あちらでは出なかったんですか?」
「出ませんね、なんかこう相手にされてないというか」
「ずいぶんと節穴ばかり住んでいる地域だったのですね」
「節穴…まあ、私のことは置いておいても、あまり先を考えてないところではありました」
「窮屈なところでのお勤め、お疲れ様でした」
オーバーリアクションで頭を下げた。
「もう濡島さんったら、寄ったんですが?」
「いや、まだビール一本ですし、すいません、お代わりお願いします」
「いつもはどのぐらい飲んでいるんですか?」
「休み前だと多くなるかな、でもこっち来てからは飲んでませんでしたよ、なんかこう…酒を飲んで忘れるにはもったいないぐらいの涼しさなんで、青年の頃を思い出して、活字の本を読んでましたよ、なんとなく思い出しちゃって」
滞在している旅館というのが、ロビーに現在書店でもフェアを行っている本を置いている。
「この辺は本屋もありませんからね」
「だから本屋さんみたいでしたよ」
懐かしいなと一冊読んでみると、それがシリーズものだったので、他のものも見たくなったぐらいで。
「すいません、この本って他にはないんですか?」
とフロントで聞いてみると。
「それがあるんですよ」
ニヤリっと店主が笑った。
「何、読みます?」
「それじゃあ、ええっと1作目から」
「では…」
奥から出してきてくれて。
「他のは後でそちらの本棚に並べておきますから」
「ありがとうございます」
本好きをくすぐる旅館であった。
「それと、あなたが作ってくれるお漬物や飲み物のおかげで、充実した休暇を過ごせていますよ」
麦茶とアイスコーヒーはポットで作ってもらっていた。
「そしてここにあなたがいてくれたらな、寂しいなと感じるまでがセットですね」
「私がいたところで人生の張り合いにはなりませんよ」
「なります!これは断言できちゃうから不思議ですね、俺の人生にはあなたがいるんですよ!」
「はっはっはっ面白いな」
「俺は本気なんですよ」
「こんな私に声をかけてくれるのは、とても嬉しいですけどもね」
「それともなんですか?家に因縁の類いでもありましたか?それなら早く言ってくださいよ、バッサリ切ってもらいますから、憂いも何もなくなる」
「今、濡島さんはとんでもないことを言っているのはわかっているんですか?」
「ええ、でも私のいる世界というのはわかっているでしょ?」
「それは…」
「それでも頼りないとか、俺のことあまり好きではないとかなら…ああ、やっぱりダメだ、俺はあなたのことが好きすぎる」
じたばたした後にピタ!
「あなたは今、俺のことどう思っているんですか?」
「いきなり出会ってしまったって感じですかね」
「何度も言いますが、話としてはあなたのことを知ってましたからね」
「それは…」
「心配になった、老若男女、どういう人かわからないけども、心配になってしまった」
休暇でしたら、ほら、前に濡島さんが気になされていたお話があったじゃないですか、あの人が案内を務めてくれたりするから、わりとのんびりできると思いますよ。
「そう言ってくれたんですよ」
「私としてはお仕事ですからね」
「仕事以上の世話を焼いてくれていると思いますが?」
そこはきちんと見ていた。
彼女はビジネスライクではない部分があって、そこがまたグッと来た。
「世話を焼いてくれるっていう良さって、俺は知らなかったからな、そりゃあね、俺の好感度は上がっていっちゃう」
ままごとのようかもしれないが、独身男である自分からすると、たまらなかったのだ。
「世の中にはこういう素敵な女性がいるもんなんだなって」
「私は結構ずぼらですよ」
「そこもまたいいじゃないですか」
ごめんなさい、お漬物、ちょっと漬けが甘かったから。
なんていった後に、まだキュウリがキュウリキュウリしているものを、パクッと濡島は食べて。
「旨い」
といってそのまま戻っていったこともあった。
「昔は注意されたものなんですがね、もしも前に住んでいたところに、あなたのような人がいたら」
「好きになってくれてもいいんですよ、ほは、今からでもおかしくはない」
「濡島さん!」
「はい!なんでしょうか!」
ピシッ!
「私は濡島さんという方がわかりません」
「そうですか」
「でもわかりたいと思ってます」
「それって」
「濡島さんはその待てが利かなさそうだから」
「無理ですね」
「じゃあ、言いません」
「えっ、それは、それはちょっとひどくありません?」
「待って!と言ったら止まれますか?」
「それは無理ですね」
「じゃあ、言いませんよ」
笑顔で返される。
確かに頭の中ではもう告白、記念日にプロポーズ、両家の挨拶、結婚などのシナリオは書いてはいたし、自分的にはもうOkを出している。
「私も若くはありませんからね、濡島さんはもっと若いかたがいいんじゃありませんか?」
「なんでそんな残酷なことを言うんですか、おっさんは好きな人が出来てはいけないとでもいうのですか?」
「それはないですよ、好意は嬉しいですよ」
「じゃあなんで?」
「距離の詰め方、いきなり強引になるんですもん」
「それは…その、そこを言われますとね、こちらとしてはごめんなさいというしかないです」
「出来ればそこは優しく、ね?」
「あっ、はい、わかりました、善処いたします」
「よろしい」
クゥーン。
「あなたならばしっかりと家庭は守ってくれそうな気がする」
「あら?別にそれは男女どちらもやるべきではないですかね?一緒に生活するのならばそういうことでは?」
「そうですね。そういえば私、引っ越しすることにしたんですよ」
「あっ、なんか言ってましたが」
「はい、更新もありましたからね。今のままでも良いのですが、今回は全面的に向こうが悪いとかでお金までくれるんで、それならばちょっと広めのところを探そうかなって」
「あ~いいんじゃないんですか?」
「二人でも暮らせるような」
「まだそれは早いですね、というか家事はちゃんとできるんですか?」
「男の独り暮らしをなめないでください、集合住宅ですと、掃除のできる時間というのが限られているし、休暇前に大掃除、それこそ害虫駆除の燻煙もちゃんとやりましたからね、完璧ですよ」
「それなら一人で生きていけますね」
「それはやめてください、俺にはあなたがいるんですから」
「あら、そうなんですか?」
「そうなんてわすよ、毎日このような会話を糧にして生きていたい、いやもう糧なんですよ、あなたとのやり取りはね」
「あらあらどうしましょう」
「もうそんなこと言わないで、からかって…はいませんね、本当に困っているというか」
「心を読まないでくださいます」
「いや~いい、あなたのそういう顔もとてもいい」
「濡島さんってお酒が入ると陽気になるというか、誉め上手になるんですか?」
「そうですかね、俺は真実を、事実を口にしているだけだから」
「もうやっぱりちょっと酔ってる」
「あっ、ちょっとトイレ行ってきますね」
濡島がそういって席を離れると、店員さんが。
「よろしければこれをどうぞ」
とサービスで色々と一皿に持ってくれた。
「ありがとうございます」
とお礼を述べる。
ザ~
トイレから出て、客席に戻る途中に、居酒屋の料理人の人と目があった。
「ここの料理は美味しいですね」
「そうかい、ありがとうよ。兄ちゃんの方も頑張りなよ」
「うっす、ありがとうございます」
さすがにあそこまで口説いていたりすると、他の客や店員までにも聞こえていたりする。
「ああ、濡島さんお帰りなさい、お店の人がこの料理をサービスしてくれたの」
「それは良かったですね」
ここには早くくっつけよ派と、あのやきもきさせるのがいいんだ派がいるので、特に第三者からの介入はないが、店は盛り上がるので。
「こちら次回にお使いください」
かなりお得なサービス券まで会計時にいただいた。
「また来たいと思いますが?いかがいたしましょうか?」
「濡島さんが誘ってくれるならね」
「明日は暇ですか」
「早いです!」
「じゃあ、そのうちということで」
うんうん、これが、このやり取りがうちは見たいんだよ。
やはりサービス券出したのは間違いではなかったのだ。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる