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おばさま!おじさま!警部様!
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「何を憂いているのかな?お嬢さん」
「そうですね、今後どうしようかなってところですかね」
「好きにしたらいいんじゃない?」
「そうかもしれませんがね…」
「何?何かあるの?」
「逆に決めかねてしまうので」
「あ~、でも贅沢なお悩みね」
「全くですね」
「好きなものは好き、嫌いなものは嫌いで分けたら」
「そうですね、丁度嫌悪感があったものがありましたし」
「ひきつってた」
「私もまだ修行が足りない」
「まさか、お前さんが足りないなら、ね~どういうことなんでしょうか」
「やっぱり本来は起きなかったかもしれないんだなっていう、そんな可能性が見えたら、泣きそうになる」
「そう…」
「うん、でもそうなると、知り合うきっかけもないのか…」
「そこまで割りきらないの」
「いや、でもさ…そう考えてしまいたくなる」
「大丈夫、そんなことないって、良いことはあるって」
「ありますかね」
「あるさ」
「そうですか…」
「でもさ」
「はい」
「お前さんが泣いているところを、こうして俺が見てしまっているわけだと、心穏やかではない男はいるんじゃないかと思うんだよ」
「あ~」
「二人ほど」
「二人?えっ?えっ?」
「名前は詳しくは申しませんが、俺からすると、まあ、そうかなって」
「私に男心は難しいですよ」
「まあね、それは難しいよね、だからこそ言ってやりますよ」
お前本当にバカだな。
この子はこうなってしまってるから、それでも愛せるかだよ。
「その言い方で、誰なのかわかった」
「わかったでしょ」
「私からはそこは何とも」
「どういう男が好みなの?遍歴から見ると大体わかるけども」
「わかっているのならば、言葉に出さずとも」
「言葉にするのが大事じゃないのかな」
「しっかりした人」
「そうか…」
「うん、元気なときは頑張れるけども、私は体力がないから、その時に…」
「爪を立てるわけね」
「爪なんか立てませんよ」
「例えだよ、例え!」
「もう!…でもね、いきなり仕事を渡されて、まあ、大変だし、やる人がいないから手伝ったまま、ようやく一区切りつきましたけどもね…」
「本当にいきなりだったし、断っても良かったんじゃなかったのか」
「それこそ、あの時急いで準備したから間に合った、それでね、やっぱり後で調べてもらったら、私は話したはずなのに話し半分でね」
準備が出来てなかった。
「準備というのは一番いいときに備えるものなんだけども、残念だけども、そのタイミングを失ってしまいました」
「それはまた…」
「彼らは違いますが、それはまあ、救いかな、むしろ話を聞いたら、さっさと動いてくれたし、自分とは関係なくてもゴメンねって言ってましたから、まあ、ああいうところはね、上手くやっていくものですよ」
「そうか」
「夏ですね」
「ここは涼しいけどもね」
「浴衣…お祭りに行きたかったな」
「そういうの好きだったけ」
「ああ、すいません」
一緒に行きたかったのね。
「悪いが俺はそういうのは」
「知ってますよ」
「だけども、そうじゃない日なら行こうか」
「えっ?」
「何さ」
「風邪とか引きましたか?野菜食べてます?ビタミン足りてないんじゃ」
「戻ってきてからは、適当につまませてもらってるよ、あれ旨かったな、あら汁」
「そうですか、それなら良かった」
フュメ・ド・ポワソンの知識がないと、あら汁と一括り。
「料理にはあまり興味がないものでな」
「いいんじゃないですか?」
「そうか?まあ、体には気を付けなきゃとは思うし」
「ここにいる間は外注で、出向いたときに好きなものを食べるぐらいならばちゃんと食生活が守れますから、そこまで無理することはないですよ」
「そうだな」
「私も料理はこのぐらいならば楽しめるもころがあります」
「そうか、それならたまにお願いするよ、ただな、ストレス発散で料理をするのはやめてくれよ、あくまで冷蔵庫に収まる程度だからな」
「わかりました」
「冷蔵庫を新しくする、増やすは無しで」
「わかりましたよ」
「毎日やっていたことは、急にやめるもんじゃないから」
「あ~その話ですか」
「古傷か」
白い体に、痣が浮かんでは消える。
「もう忘れたいんですけどもね」
「忘れてもいいんだぞ」
「前は忘れてしまうことが怖かった、今は覚えてないことが嬉しいとは思わなかったよ」
「楽しいことを考えてなさいよ、それで十分心が守られる」
「なんか落ち込んだら、ここでのことを思い出すことにします」
「それ以外は?」
「ないのかな、いや、あることはあるけども、まず間違いなく、裏切ることもない、そんな思い出ならばここがベストだ」
「お前さんさ、やっぱり本調子じゃないんだな」
「そうですね、すいませんね、気持ち悪かったですね」
「そうじゃないよ、辛いときはしょうがないし、それでも優しさはある子だから、それは気にしてはないよ。ただな、もう少し運命も手加減してくれてもいいもは思うんだよ、そろそろ幸せにしてあげてほしい、だからいい話が来たんだなって、あの時は本当に思ったんだよ」
「私と話していて大丈夫なんですか?」
「どういうこと?」
「嫌悪感とかわかないんですか?」
「ないよ、何?誰かに言われたの?」
「忠告したというか、話をした人が信じてくれなかったみたいで、私はそんなに怪しかったかな」
「初期の熱中症対策は怪しかったからな」
「えっ?どこがです?」
「知らんドラゴンから、クリーム塗られて
粉つけられてだったから」
「あれは市販の化粧品塗ってただけなんですかね」
途中で塗られた方は、ああ、これは食われる奴!になったという。
「その後、指摘されて直しましたよ」
「あれは童話の再来だったと思う」
「でも食品の匂いではなかったと思うんだけどもな」
「いや~下味つけられちゃう!って感じたったも思う」
「そんな面白いこといってませんでしたよ、食われる!でしたよ」
「なるほど、本当に危機的な状況が迫っていたと解釈されたな」
「こちらは毛頭、そんなつもりはないんですかね」
「誤解されやすいんだからさ、気を付けなきゃダメだよ」
「そうなんですがね」
「色々あったね、お疲れ様」
「はい…」
「まさか不審者一行に間違われるとはな」
「それはさすがに予想外、まあ、前回の祭儀を見ていた人の方が少なくなっているとは思いますし、それこそ新聞なんかにも登場するから、明日以降はそこそこ知名度があるんじゃないでしょうか」
「たぶんかなり顔にこだわった写真と見た」
「でしょうね、それで売れ行きが変わるのかまではわかりませんが、かなり撮影されていたみたいでしたから」
途中でフラッシュはご遠慮ください、今から入場いたしますので、みなさまもう少しお下がりください。
「写真にも何か力が籠ったり、ご利益あったりするのかしら」
「あ~その方がいいかもしれませんね、ただ微妙に私の加護とは違いますし、夫役は基本的に破壊だから、丁度いい方はいるのでしょうか」
「そうだな、それならば俺がやろうか」
「えっ?どうしました?今日は興味がないことにもアクティブ過ぎますよ」
「ダメか?」
「構いませんけど…」
「どのようにするおつもりですか?」
「それこそ家内安全という奴だが、効果が失せてくれば新聞記事の色合いが劣化してくるから、わかりやすいだろう」
「では明日またその話をしておきますから、そこからでも?」
「ああ、準備はしておく」
「しかし~」
「なんでそんなに動いてくれるんですか?」
「俺にもわからん」
「そこまで弱くは私はありませんよ」
「そういうのはな、早く悲しみから立ち直ってからいうものだ」
「忘れたいんですけどもね」
「そこまで…忘れたいってさ、無理はしてほしくはないさ、さすがに先日のことなんだから」
「いきなり終わるということは、とても悲しいものです」
「そりゃあね」
「こんなに悲しいのは…何回目だろ」
「意外と経験豊富!」
「共に生きるために頑張って、向こうがそうではなかった時の愕然とした感が凄まじいですね、今回は」
「お前さんは、気が優しいからな、でもそんなところに救われる奴もいるから、難しい…ただな、そういうのを騙す、陥れるとか、俺は本当に嫌いだからな」
思い出しの怒りもある。
「それこそさ…」
「もしかして、あれですか?」
「そうだよ、居合わせてないし、そんな話が後で知ったのがな…腹立つというかな、そん時はさ、わざわざ気を使って名前を上げてもらった立場でしょうに」
「そういうのがわからない相手なんですよ」
「もう、そこがダメ、わかってない」
「そういう人間とか多いんですよ」
「悪い…熱くなった」
「いえ、心穏やかに」
「酷いこと言われてたのは君でしょうに」
「ああいう人は思ったよりたくさんいるんですよ」
「いてほしくないね、実在はするんだろうけども、本当にそれは嫌な世の中だ」
「残念ながら我々はその中で生きるしかない」
「そうでない生き方も出来るのに、なんでしなかったのさ、それこそあの人のせいなの?」
「そう…なのでしょうか…でもあの人自体はそこら辺に積極的な人ではなかったからな、本当に私のことはどう思ってくださったのだろう」
「聞けば良かったのに」
「知るのが怖いことってありません?」
「それはそうだけどもさ」
「あの生活は終わったのだけども、まだ望んでしまう自分がいるのは…少し悲しいな」
「そのうちアイツの声を真似て、お前に声をかけてくるのが出てくる…いや、それはないか」
めっちゃフー!いうのがいます。
「こんなに忙しくなかったら、答えてしまったのかもしれません」
「そしたら捕らわれるか」
「そうですね」
「頭からか、尻尾は残されるだろうな、ペッ!って」
「確かに固いですけど、ちょっとは気にしてクリームとか塗ってるんですから」
「そんなのあるの?」
「ちょっとでもマシにしたかったんですよ」
「それって前にここに居たときはやってなかったよね」
「はい」
「だから綺麗になったのか」
「えっ?」
「肌とかも、変わったから、ちょっと久しぶりに見たときビックリした、あれ?なんかこう、スリムになってない?」
「健康的な人と一緒にいるとね、健康的になるんですよ」
「俺とは大違いだな」
「そうですけども、貴方には貴方のいいところがあるんですから」
「そんなに力説しなくていいよ、そういわれると少し切なくなる」
「あれですか?誉めてくれるのは私だけとかそんなんですか」
「そうだけどもさ…なんかこう、補正かかっているから、間に受けれないんだよね」
「これで私な絶世の美女なら」
「俺は離さないと思うし、でもお前はそうじゃないだろう」
「…すいません」
「いいんだよ、付き添い役をしてくれるだけでも十分だったしな、お前さんが向こうに行ってからは、付き合いも面倒だったから断っていたんだ」
「なんです?面白い漫画がありましたか?
」
「漫画は毎年名作が出るから、過去に出たものを振り返っている暇もなかなかないぐらいでな」
「おすすめスポーツ漫画は楽しく拝見させていただきました」
「もっと光の情操教育が必要だから、ああさせてもらった」
「いや~羨ましいですよ、チーム一丸で一つの目標に挑むとか、それを読んでいるときに、私もその学校の生徒みたいな気分になるんだから」
「わかる、きゃー~頑張ってくださいって感じにはなるよな」
「真面目に練習しているっていいですよね、確かに異論はあるでしょうが、努力ということを全く知らないまま、人生を歩くよりかは、努力とは何か、全部は上手くは行かないけども、方向転換のきっかけにはしてほしいものです」
「お前さんは学校の先生になれそうだ」
「無理ですよ、説教臭くて、話を聞いてもらえないでしょうから、私は話が合うということがとても大事だと思ってますよ、誰かと一緒にいるときに、自分で何とかしなくっちゃっていう生き方をするのは悲しいし、私はもうしたくないな」
「罪な奴」
小声で呟く。
「あの人も色々あったんですよ」
「それは知ってる」
「知ってるけども…って奴ですか」
「そう、それ、例えどんなことがあっても諦めずにやる奴はいる、確かにそれではどうもならないようなものもあるけどもね、アイツは違った、だからこそ問題になったんだ」
「なかなかないですよね、後世に残るであろう悪い見本14個も残せるなんて」
「それはもう記録だろ?」
「それがね…」
「いるの?上が」
「世の中、すごい人はいるもんですね、そっちも聞くと絶句するよ」
「わ~い」
「培って来たものならば、私欲に負けてはいけない。この一文に全てつまってしまうんでしょうが」
「誘惑はわかるよ、馬鹿馬鹿しくなったら、努力はしたくはなくなる、でもそれだけじゃダメなんだ」
「おや、この話題になると舌が滑りますね」
「そうだな、努力を全くしてないわけではないんで、してないのを見ると、歯がゆくもある」
「それはね、仕方がない」
「ここにもすんごい雑魚とか言われたけども、今では雑魚とは呼ばれることもなくなったゴンもいる」
「そういえば最近呼ばれないゴン」
「お前さんより力がある奴ら、みんな失墜したからな」
「あれなんでなんですかね」
「サボったりしたからなんじゃないかな」
儀式関係を執り行わなかったら、そこから土地が荒れまくったり。
自分は敵無しとかいってたが、昼寝の最中腹を刺されたとか。
「お腹は柔らかいから、守らなきゃ」
「それはお前さんだけだ」
「えっ?」
鱗ビッシリタイプです。
「お肉ついてますかね、う~ん」
「別にダイエットすることはないだろう」
「でもですね、痩せて綺麗になるのなら…」
「気落ちした状態が終わってから、ダイエットしなさい」
「誰に見せたかったの?」
「それはもちろん…」
そこで間をおいた後に。
「すいません」
まだ先は長いようである。
「あ~取れなかった」
「もう一回」
「そんなに取れないのでしたら、こんなのはいかがでしょうか」
置き直してもらった。それがすごく良かったのか、ぬいぐるみを取ることができた。
「お兄さん、良い人だわ!」
「本当ね」
お客様というのは双子の女の子、しかもゴスロリ、服装だけで物凄いお金持ちだってわかる。
気になっていたぬいぐるみを交代で抱っこしながら、戻る途中に、彼女たちは、見覚えのある三人を見るのである。
「おばさま?おじさま?警部様?」
「あら?あなたたちは、どうしてここに、いえ、いいのだけども」
「おばさま達にはいつぞやかはお世話になりました」
スカートの裾を持ち挨拶をする。
「そうね」
そういって姉妹の元気な方も真似て。
「おばさま達のおかげで私たちは捕らわれることはありませんでした」
「いいのよ、こんなところで、そうだ、せっかくだし、お食事でもする?」
「私たちはよろしいのですが、おばさまたちは?」
「俺たちは今日は暇なんだよ」
「今日はですか」
「しかし、相変わらずちんまいな、ちゃんと食べているか?」
「好き嫌いはこれでもない方ですのよ」
「背はなかなか伸びませんけどもね」
「まっ、今日も可愛らしくて良かったじゃないか」
(この子達がこんなにも元気になるだなんてな)
警部と呼ばれた男は会話には加わりはしなかったが、そんなことを考えていた。
「明日のために色んな所から集まる、みなさんとの食事は夜に控えているから」
そっちはお仕事なので、せめて今だけは気のおける双っ子(ふたごっこ)と久しぶりに話をしたいと思っていたのだが。
こういう地域である、セキュリティがしっかりし、また集まれる場所なんていうのは限られていて、その夜に集まる顔ぶれというのが、昼の段階でほとんど、それも飲食店で合うことになった。
「こればかりはしょうがない」
と笑っていた者もいるが。
「こんにちはおじさま」
「さすがに今日もお暑いですね」
「ああ、君たちは久しぶりだね、大きくなったんじゃないか?」
「まあ、ちょっとだけですわ」
「爪先ぐらいのちょっとですけども」
そしてさすがに双子も、この顔ぶれにただ事ではない事が、明日起きるのだろう、それがわかった。
「ちゃんと話すわ」
おばさまがため息をついた。
「こちらに来てちょうだい」
この顔ぶれで明日は罪人を裁くのだという。
「どんな大罪だったのですか?」
「そこまではね、あなたたちにはちょっと言いにくいわ」
「なるほど、そういうお話なのですね」
「そうよ、それで…あなたたちは…」
そういって明日はこの辺りには近づかないようにと言われると。
「あれ?」
「そうよね?」
「どうしたの?」
「明日も私たちはここに遊びに行こうとしてたのよ」
「このぬいぐるみを取ったところにね」
「…」
「そこには私の甥が働いていて…」
特徴から。
「ああ、あのお兄さんがおばさまの甥っ子だったのね」
「全然気づきませんでした」
「そう…顔を合わせたことはなかったのね、それなら、とりあえず明日は行かないこと、なんだったら他のところに遊びに行くといいわ」
「それなら電車に乗らないか?」
こればかりはしょうがないと、お店に来てから笑ったおじさまの方である。
「うちの地元までゆっくりと走る、おんぼろだが、他に客もいないし」
「楽しそう」
「じゃあ、そうするわ」
「私は明日は参加しないし、近隣の顔役だったってだけだからな」
そこで声のワントーン下げて。
「それに私がいればそこまで変なことは起こるまい」
「そうですか、それならばお願いします」
街からお客がまばらな鉄道で、移動というよりアトラクションを楽しむような感じで、おじさんと双子女子は電車に乗っていた。
「こういうのをレトロっていうのね」
「確かにおんぼろと言われるよりはいいがな」
元々このおじさんとは仲も悪くない、おじさんの妻も、到着を待っている。
「おばさまにまた可愛くされてしまう」
「そうね、覚悟をしなくっちゃ」
「うちのは、女の子を見るとな、あれも可愛い、これも可愛いと止まらなくなるからな」
町の化粧品屋さんとして駅前に家があるよ。
「?」
「どうした?」
「なんかね、やっぱり電車は古くて色々と大変みたいなの」
「そうか、お客さんがいないのならば、新設もできないだろうしな」
「でも新しい状態に戻せばいいじゃない?」
「そーね」
「はっはっはっ、そんなこと言っても簡単にはできるわけがないよ」
そこに終点のアナウンスが流れる。
「さて、そろそろつくぞ」
『は~い』
久しぶりに見たら、ますます可愛くなったので、今のゴスロリに似合うように、おじさんの奥さまは用意をし、先に写真を見せられたときよりも。
「ごめんください」
「お世話になります」
実際に見たときに。
「盛らねば」
その使命感にかられたという。
「あっ、ゴンゴンが来たよ」
「ゴンちゃん!久しぶり」
次の日に双子は知り合いに合う。
「いきなり連絡が来てビックリした」
「だよね」
「ごめんね」
「でも他からも双っ子を頼みますって来たので」
何ヵ所から来たよ。
「ゴンちゃんって、そういうこと多いよね」
「あんたも嫌だったら断りなさいよ」
「まあ、これぐらいだったらいいかなって」
「それは…」
「だからチョロゴンとか言われるんじゃない、まっ、そんなことを言った奴は締めておいたけども」
「それはありがとう」
「積もる話あっからさ、うちらの家の方で話そうよ」
「そうね、ちょっとここは目が多いかな」
この双っ子は影の国のお姫様。
だから、どんな影も、彼女達の家、城に繋がるのである。
亡霊メイド達が、来客のために忙しくしている。
「お茶は何飲む?」
「はい、これリスト」
「相変わらず美味しいもの揃えているわね」
「このリストはあなた好みよ」
「そうよ、一緒に考えたのよ」
「そんなことまでしてたの」
「何よ、暇だったのよ」
「ありがとう、あっ、だからか、私が飲んでたお茶や、あれは美味しかったっていう話のものがあるの、嬉しいな」
「バカね、当然じゃないの」
「素直になった方がいいよ」
「私はいつも素直なのよ」
「そうだよ、いつも優しいよ」
「!?」
「もうゴンちゃんったら」
相変わらず的確に気難しい子を狙い打つな、スナイバーさんなんだから。
「今日合うとは思わなかったけどもさ」
「そうですね、私鉄の老朽化みんな直したって聞かなかったら、急いで時間作ったりしませんね」
「それもあるの?」
「ええ」
「あのぐらい簡単よ」
古い状態を新品と言われる時間まで遡る。
「それこそ、駅舎までそれを行ったものですからね」
現在使われているものではなく、ただのボロだった旧駅舎がデーン!と存在感も増した。
「夏休みだし、あれでお客さんとか来るんじゃないの?」
「そーよね」
「それにしても今日はいっそうお髪が素敵ですね」
「そう?わかる?」
「昨日おばさまにもうしっかりと可愛くされちゃったんだもん、その分をお返ししただけよ」
「あ~嬉しかったらしょうがないですね」
「そうね、嬉しかったら、しょうがないわ」
「そうそう」
そこで話題を変える。
「ゴンゴンさ、あんたと別れた男ってどんなの?」
「あ~そこですか」
「そうよ、結構みんな知りたがってるわよ」
「なんでです?そんなに興味持つ話題でしたっけ」
「ん~そういえばなんでだろう?なんか話の種になってるって感じで」
「たぶん意外だったんじゃないかな、相手もそうだし、終ったとか、またね、あの引きこもりさんが迎えに行ったっていうのも、盛り上がっている理由ね」
「そこもなのか」
「そりゃあね、だってあの引きこもりって、他の奴に興味あったの?…ゴンゴンは違うとは言われそうだけども、あんたともさ、そこまでの関係ではないと思っていたからね」
「だから意外なことが3つは続いたら、気になっちゃうのよ」
「それは私も驚いたからな、何回も話しますけども、私は当日は知らないんですよ、けどもその日に…」
あれ?なんでいるんですか?
「もうこっちもそんな感じだから、で、世間話もはずまなくて、向こうも歯切れすんごい、いつも以上に悪くて、大丈夫?かな病院行くかなって」
「そこで相手の心配をするのがゴンちゃんね」
「わかってから、ここにはもう居られない、どうしよう、でも黙っては抜けれないで、そこで困ってまずは一人、挨拶に行ったんですよ」
「その一人にまず決めた理由は?」
「たぶん話がわかるから、私がいなくなりますっていっても引き留めないだろうからかな、さすがに他の人を最初にするのは…向こうも荷が重いだろうし、下手するとね怒鳴り込みにいくかな」
「そんなことしているのが悪いじゃん」
「そうなんだけどもね、色々とあるんだよ」
「色々とね」
「でも起こさなければ私はまだいたよ」
「あんたが居られなくなった原因を作ったのはバカね」
「あれ?もしかしておばさま達って」
「いや、まさか」
「何のこと?」
「ちょっと間ってね、本当にちょっとだけだから」
双っ子がどこかにいってしまい。
「お菓子でございます」
その間に舌鼓を打ってもらう作戦はメイドたちによって、始められた。
「相変わらず良いお菓子職人がいるね」
「そうですね、自慢の職人たちでございます」
「お土産の注文はできるかしら?」
「もちろん!職人たちも喜びますわ」
あんまり双っ子は自宅ではパーティーを開催しないので、職人は腕が鈍ると口をこぼしぎみだったりする。
「職人さんたちはね、毎日働くぐらいじゃないとね」
「本当にそう!でございますね」
「今ね、熱中症予防の加護を頼んできたところがあるんだけどもね、そこにお菓子を贈りたいんで」
「それでしたら、職人たちと一度お話した方が」
「そうね、そうしようか」
なんて話していると。
「お待たせ!」
「あんたの男じゃなかったわ!」
「…」
「何をビックリとしているのよ」
「何か話に関わってたの?」
「ちょっとね」
「そっか…」
「覚悟はしてるの?」
「そりゃあね、ただもう後ろで何が起きても振り返らないつもりだよ」
「そんなこといっているわりにはさ、あんた…泣きそうじゃないの」
「それぐらいの愛情はあるんで」
「十分だよ」
「もっと話していきなさいよ、こういうときは、話した方がいいわよ」
「あんまり面白い話ではないよ、ただ出会って、それから別れただけだし」
「その分じゃ別にサヨナラって言ったわけじゃないんでしょ」
「ないよ」
「それは引きずるんじゃないの?」
「引きずるかな」
「まだ日が浅いから、しょうがないところもあるけどもさ、忘れたらんじゃないの、それともしばらく私たちと遊ぶ?」
「ダメよ、ゴンちゃん、もうお仕事してるんだから」
「仕事?」
「そうよね!」
「そうなんですよね、いきなり…落ち込んでたら頼まれて、まあ、うん、慌ただしくなって、今に至る」
「陰険眼鏡属性の匂いがするわ」
「でもゴンちゃん、俺様系あんまり好きじゃないわよ」
「そうなの?」
「そうよ、ああ見えて、甘えてくるから」
「甘える…」
「ねえ、なんで知ってるのかな?どっかで見てたのかな?」
「ロマンスの噂は思った以上に広まるものなのよ!それで今は一柱一ゴンがどうなるのかって話ね」
「えっ?ソイツ誰よ」
「黒ワンコだよ」
「あ~あいつか、頼りなさそうな」
「といっても、ちゃんと自分の領土は守っているし、身内にも優しいから、悪くはないんだけども、黒ワンコって、今、人からとってもモテるから」
「そうそう、そうなんですよ、儀式の時に顔出ししたら…元々人間の目を引く容姿でしたが、そこに他の力もドン!でキラキラしてたらね」
「人間ってあんなの好きよね」
「私たちも人の血を引いてはいるけども、感覚はこっちよりだから、わかりにくいのよね」
「好意は持たれてはいるんですが…それはわかるんですか…」
何しろ好意の寄せかたがそれこそワンコなので、尻尾をパタパタしてたりします。
「まだやっぱり失恋の傷が辛いんで、どうしても、昔から知っている、知り合いじゃないと、話してて辛くなるときはあります」
「それなら定期的に私たちと話しましょう?あなたが堕ちたら悲しいわ」
「あっ、城に招待した理由もやっぱりそこですか」
「さっきね、あなたの耳には入れなかったけども、私たちの知らない男の声を真似て、あなたに声をかけようとした奴がいたのよ、その声ってたぶん…」
「あ~やっぱり出ましたか、でしょうね、あの人の声でしょう、私がうっかり答えてくれれば、しかも今は私はお世話になっている地域から、少し離れて一匹だったから」
「誤算は私たちがいたことね」
「無礼を働いたということで、こちらで対処させてもらったわ」
「ありがとうございます」
「なんて声を真似たかわかる?」
「ちょっと!」
「今の精神状態だと、お前ら本当に最悪だなって、八つ当たりしちゃうから、大丈夫かなっては思う」
「弱い癖に無理しちゃって」
「弱いからこそ生きるために無理するんですよ」
「私はそういうことをイッテんじゃないの!…あっ、ごめん」
「知ってます、ありがとう」
「仲良くはしたいのよ、それだけはわかって」
「本当にごめんね」
「慣れているよ、心に余裕があればこれも返せる、そうでないならちょっと辛い」
「どんな時、辛くなるの?」
「一人の時だったんだけども、最近は一人にしてくれないんだ」
眠くなるまで話をされたりする、うとうとしてきたら、そのまま爆睡の繰り返し。
(やっぱりこれは…)
(あの引きこもりなかなかやると思うわ)
一部界隈であの偏屈な引きこもりの評価が上がったようです。
「そうですね、今後どうしようかなってところですかね」
「好きにしたらいいんじゃない?」
「そうかもしれませんがね…」
「何?何かあるの?」
「逆に決めかねてしまうので」
「あ~、でも贅沢なお悩みね」
「全くですね」
「好きなものは好き、嫌いなものは嫌いで分けたら」
「そうですね、丁度嫌悪感があったものがありましたし」
「ひきつってた」
「私もまだ修行が足りない」
「まさか、お前さんが足りないなら、ね~どういうことなんでしょうか」
「やっぱり本来は起きなかったかもしれないんだなっていう、そんな可能性が見えたら、泣きそうになる」
「そう…」
「うん、でもそうなると、知り合うきっかけもないのか…」
「そこまで割りきらないの」
「いや、でもさ…そう考えてしまいたくなる」
「大丈夫、そんなことないって、良いことはあるって」
「ありますかね」
「あるさ」
「そうですか…」
「でもさ」
「はい」
「お前さんが泣いているところを、こうして俺が見てしまっているわけだと、心穏やかではない男はいるんじゃないかと思うんだよ」
「あ~」
「二人ほど」
「二人?えっ?えっ?」
「名前は詳しくは申しませんが、俺からすると、まあ、そうかなって」
「私に男心は難しいですよ」
「まあね、それは難しいよね、だからこそ言ってやりますよ」
お前本当にバカだな。
この子はこうなってしまってるから、それでも愛せるかだよ。
「その言い方で、誰なのかわかった」
「わかったでしょ」
「私からはそこは何とも」
「どういう男が好みなの?遍歴から見ると大体わかるけども」
「わかっているのならば、言葉に出さずとも」
「言葉にするのが大事じゃないのかな」
「しっかりした人」
「そうか…」
「うん、元気なときは頑張れるけども、私は体力がないから、その時に…」
「爪を立てるわけね」
「爪なんか立てませんよ」
「例えだよ、例え!」
「もう!…でもね、いきなり仕事を渡されて、まあ、大変だし、やる人がいないから手伝ったまま、ようやく一区切りつきましたけどもね…」
「本当にいきなりだったし、断っても良かったんじゃなかったのか」
「それこそ、あの時急いで準備したから間に合った、それでね、やっぱり後で調べてもらったら、私は話したはずなのに話し半分でね」
準備が出来てなかった。
「準備というのは一番いいときに備えるものなんだけども、残念だけども、そのタイミングを失ってしまいました」
「それはまた…」
「彼らは違いますが、それはまあ、救いかな、むしろ話を聞いたら、さっさと動いてくれたし、自分とは関係なくてもゴメンねって言ってましたから、まあ、ああいうところはね、上手くやっていくものですよ」
「そうか」
「夏ですね」
「ここは涼しいけどもね」
「浴衣…お祭りに行きたかったな」
「そういうの好きだったけ」
「ああ、すいません」
一緒に行きたかったのね。
「悪いが俺はそういうのは」
「知ってますよ」
「だけども、そうじゃない日なら行こうか」
「えっ?」
「何さ」
「風邪とか引きましたか?野菜食べてます?ビタミン足りてないんじゃ」
「戻ってきてからは、適当につまませてもらってるよ、あれ旨かったな、あら汁」
「そうですか、それなら良かった」
フュメ・ド・ポワソンの知識がないと、あら汁と一括り。
「料理にはあまり興味がないものでな」
「いいんじゃないですか?」
「そうか?まあ、体には気を付けなきゃとは思うし」
「ここにいる間は外注で、出向いたときに好きなものを食べるぐらいならばちゃんと食生活が守れますから、そこまで無理することはないですよ」
「そうだな」
「私も料理はこのぐらいならば楽しめるもころがあります」
「そうか、それならたまにお願いするよ、ただな、ストレス発散で料理をするのはやめてくれよ、あくまで冷蔵庫に収まる程度だからな」
「わかりました」
「冷蔵庫を新しくする、増やすは無しで」
「わかりましたよ」
「毎日やっていたことは、急にやめるもんじゃないから」
「あ~その話ですか」
「古傷か」
白い体に、痣が浮かんでは消える。
「もう忘れたいんですけどもね」
「忘れてもいいんだぞ」
「前は忘れてしまうことが怖かった、今は覚えてないことが嬉しいとは思わなかったよ」
「楽しいことを考えてなさいよ、それで十分心が守られる」
「なんか落ち込んだら、ここでのことを思い出すことにします」
「それ以外は?」
「ないのかな、いや、あることはあるけども、まず間違いなく、裏切ることもない、そんな思い出ならばここがベストだ」
「お前さんさ、やっぱり本調子じゃないんだな」
「そうですね、すいませんね、気持ち悪かったですね」
「そうじゃないよ、辛いときはしょうがないし、それでも優しさはある子だから、それは気にしてはないよ。ただな、もう少し運命も手加減してくれてもいいもは思うんだよ、そろそろ幸せにしてあげてほしい、だからいい話が来たんだなって、あの時は本当に思ったんだよ」
「私と話していて大丈夫なんですか?」
「どういうこと?」
「嫌悪感とかわかないんですか?」
「ないよ、何?誰かに言われたの?」
「忠告したというか、話をした人が信じてくれなかったみたいで、私はそんなに怪しかったかな」
「初期の熱中症対策は怪しかったからな」
「えっ?どこがです?」
「知らんドラゴンから、クリーム塗られて
粉つけられてだったから」
「あれは市販の化粧品塗ってただけなんですかね」
途中で塗られた方は、ああ、これは食われる奴!になったという。
「その後、指摘されて直しましたよ」
「あれは童話の再来だったと思う」
「でも食品の匂いではなかったと思うんだけどもな」
「いや~下味つけられちゃう!って感じたったも思う」
「そんな面白いこといってませんでしたよ、食われる!でしたよ」
「なるほど、本当に危機的な状況が迫っていたと解釈されたな」
「こちらは毛頭、そんなつもりはないんですかね」
「誤解されやすいんだからさ、気を付けなきゃダメだよ」
「そうなんですがね」
「色々あったね、お疲れ様」
「はい…」
「まさか不審者一行に間違われるとはな」
「それはさすがに予想外、まあ、前回の祭儀を見ていた人の方が少なくなっているとは思いますし、それこそ新聞なんかにも登場するから、明日以降はそこそこ知名度があるんじゃないでしょうか」
「たぶんかなり顔にこだわった写真と見た」
「でしょうね、それで売れ行きが変わるのかまではわかりませんが、かなり撮影されていたみたいでしたから」
途中でフラッシュはご遠慮ください、今から入場いたしますので、みなさまもう少しお下がりください。
「写真にも何か力が籠ったり、ご利益あったりするのかしら」
「あ~その方がいいかもしれませんね、ただ微妙に私の加護とは違いますし、夫役は基本的に破壊だから、丁度いい方はいるのでしょうか」
「そうだな、それならば俺がやろうか」
「えっ?どうしました?今日は興味がないことにもアクティブ過ぎますよ」
「ダメか?」
「構いませんけど…」
「どのようにするおつもりですか?」
「それこそ家内安全という奴だが、効果が失せてくれば新聞記事の色合いが劣化してくるから、わかりやすいだろう」
「では明日またその話をしておきますから、そこからでも?」
「ああ、準備はしておく」
「しかし~」
「なんでそんなに動いてくれるんですか?」
「俺にもわからん」
「そこまで弱くは私はありませんよ」
「そういうのはな、早く悲しみから立ち直ってからいうものだ」
「忘れたいんですけどもね」
「そこまで…忘れたいってさ、無理はしてほしくはないさ、さすがに先日のことなんだから」
「いきなり終わるということは、とても悲しいものです」
「そりゃあね」
「こんなに悲しいのは…何回目だろ」
「意外と経験豊富!」
「共に生きるために頑張って、向こうがそうではなかった時の愕然とした感が凄まじいですね、今回は」
「お前さんは、気が優しいからな、でもそんなところに救われる奴もいるから、難しい…ただな、そういうのを騙す、陥れるとか、俺は本当に嫌いだからな」
思い出しの怒りもある。
「それこそさ…」
「もしかして、あれですか?」
「そうだよ、居合わせてないし、そんな話が後で知ったのがな…腹立つというかな、そん時はさ、わざわざ気を使って名前を上げてもらった立場でしょうに」
「そういうのがわからない相手なんですよ」
「もう、そこがダメ、わかってない」
「そういう人間とか多いんですよ」
「悪い…熱くなった」
「いえ、心穏やかに」
「酷いこと言われてたのは君でしょうに」
「ああいう人は思ったよりたくさんいるんですよ」
「いてほしくないね、実在はするんだろうけども、本当にそれは嫌な世の中だ」
「残念ながら我々はその中で生きるしかない」
「そうでない生き方も出来るのに、なんでしなかったのさ、それこそあの人のせいなの?」
「そう…なのでしょうか…でもあの人自体はそこら辺に積極的な人ではなかったからな、本当に私のことはどう思ってくださったのだろう」
「聞けば良かったのに」
「知るのが怖いことってありません?」
「それはそうだけどもさ」
「あの生活は終わったのだけども、まだ望んでしまう自分がいるのは…少し悲しいな」
「そのうちアイツの声を真似て、お前に声をかけてくるのが出てくる…いや、それはないか」
めっちゃフー!いうのがいます。
「こんなに忙しくなかったら、答えてしまったのかもしれません」
「そしたら捕らわれるか」
「そうですね」
「頭からか、尻尾は残されるだろうな、ペッ!って」
「確かに固いですけど、ちょっとは気にしてクリームとか塗ってるんですから」
「そんなのあるの?」
「ちょっとでもマシにしたかったんですよ」
「それって前にここに居たときはやってなかったよね」
「はい」
「だから綺麗になったのか」
「えっ?」
「肌とかも、変わったから、ちょっと久しぶりに見たときビックリした、あれ?なんかこう、スリムになってない?」
「健康的な人と一緒にいるとね、健康的になるんですよ」
「俺とは大違いだな」
「そうですけども、貴方には貴方のいいところがあるんですから」
「そんなに力説しなくていいよ、そういわれると少し切なくなる」
「あれですか?誉めてくれるのは私だけとかそんなんですか」
「そうだけどもさ…なんかこう、補正かかっているから、間に受けれないんだよね」
「これで私な絶世の美女なら」
「俺は離さないと思うし、でもお前はそうじゃないだろう」
「…すいません」
「いいんだよ、付き添い役をしてくれるだけでも十分だったしな、お前さんが向こうに行ってからは、付き合いも面倒だったから断っていたんだ」
「なんです?面白い漫画がありましたか?
」
「漫画は毎年名作が出るから、過去に出たものを振り返っている暇もなかなかないぐらいでな」
「おすすめスポーツ漫画は楽しく拝見させていただきました」
「もっと光の情操教育が必要だから、ああさせてもらった」
「いや~羨ましいですよ、チーム一丸で一つの目標に挑むとか、それを読んでいるときに、私もその学校の生徒みたいな気分になるんだから」
「わかる、きゃー~頑張ってくださいって感じにはなるよな」
「真面目に練習しているっていいですよね、確かに異論はあるでしょうが、努力ということを全く知らないまま、人生を歩くよりかは、努力とは何か、全部は上手くは行かないけども、方向転換のきっかけにはしてほしいものです」
「お前さんは学校の先生になれそうだ」
「無理ですよ、説教臭くて、話を聞いてもらえないでしょうから、私は話が合うということがとても大事だと思ってますよ、誰かと一緒にいるときに、自分で何とかしなくっちゃっていう生き方をするのは悲しいし、私はもうしたくないな」
「罪な奴」
小声で呟く。
「あの人も色々あったんですよ」
「それは知ってる」
「知ってるけども…って奴ですか」
「そう、それ、例えどんなことがあっても諦めずにやる奴はいる、確かにそれではどうもならないようなものもあるけどもね、アイツは違った、だからこそ問題になったんだ」
「なかなかないですよね、後世に残るであろう悪い見本14個も残せるなんて」
「それはもう記録だろ?」
「それがね…」
「いるの?上が」
「世の中、すごい人はいるもんですね、そっちも聞くと絶句するよ」
「わ~い」
「培って来たものならば、私欲に負けてはいけない。この一文に全てつまってしまうんでしょうが」
「誘惑はわかるよ、馬鹿馬鹿しくなったら、努力はしたくはなくなる、でもそれだけじゃダメなんだ」
「おや、この話題になると舌が滑りますね」
「そうだな、努力を全くしてないわけではないんで、してないのを見ると、歯がゆくもある」
「それはね、仕方がない」
「ここにもすんごい雑魚とか言われたけども、今では雑魚とは呼ばれることもなくなったゴンもいる」
「そういえば最近呼ばれないゴン」
「お前さんより力がある奴ら、みんな失墜したからな」
「あれなんでなんですかね」
「サボったりしたからなんじゃないかな」
儀式関係を執り行わなかったら、そこから土地が荒れまくったり。
自分は敵無しとかいってたが、昼寝の最中腹を刺されたとか。
「お腹は柔らかいから、守らなきゃ」
「それはお前さんだけだ」
「えっ?」
鱗ビッシリタイプです。
「お肉ついてますかね、う~ん」
「別にダイエットすることはないだろう」
「でもですね、痩せて綺麗になるのなら…」
「気落ちした状態が終わってから、ダイエットしなさい」
「誰に見せたかったの?」
「それはもちろん…」
そこで間をおいた後に。
「すいません」
まだ先は長いようである。
「あ~取れなかった」
「もう一回」
「そんなに取れないのでしたら、こんなのはいかがでしょうか」
置き直してもらった。それがすごく良かったのか、ぬいぐるみを取ることができた。
「お兄さん、良い人だわ!」
「本当ね」
お客様というのは双子の女の子、しかもゴスロリ、服装だけで物凄いお金持ちだってわかる。
気になっていたぬいぐるみを交代で抱っこしながら、戻る途中に、彼女たちは、見覚えのある三人を見るのである。
「おばさま?おじさま?警部様?」
「あら?あなたたちは、どうしてここに、いえ、いいのだけども」
「おばさま達にはいつぞやかはお世話になりました」
スカートの裾を持ち挨拶をする。
「そうね」
そういって姉妹の元気な方も真似て。
「おばさま達のおかげで私たちは捕らわれることはありませんでした」
「いいのよ、こんなところで、そうだ、せっかくだし、お食事でもする?」
「私たちはよろしいのですが、おばさまたちは?」
「俺たちは今日は暇なんだよ」
「今日はですか」
「しかし、相変わらずちんまいな、ちゃんと食べているか?」
「好き嫌いはこれでもない方ですのよ」
「背はなかなか伸びませんけどもね」
「まっ、今日も可愛らしくて良かったじゃないか」
(この子達がこんなにも元気になるだなんてな)
警部と呼ばれた男は会話には加わりはしなかったが、そんなことを考えていた。
「明日のために色んな所から集まる、みなさんとの食事は夜に控えているから」
そっちはお仕事なので、せめて今だけは気のおける双っ子(ふたごっこ)と久しぶりに話をしたいと思っていたのだが。
こういう地域である、セキュリティがしっかりし、また集まれる場所なんていうのは限られていて、その夜に集まる顔ぶれというのが、昼の段階でほとんど、それも飲食店で合うことになった。
「こればかりはしょうがない」
と笑っていた者もいるが。
「こんにちはおじさま」
「さすがに今日もお暑いですね」
「ああ、君たちは久しぶりだね、大きくなったんじゃないか?」
「まあ、ちょっとだけですわ」
「爪先ぐらいのちょっとですけども」
そしてさすがに双子も、この顔ぶれにただ事ではない事が、明日起きるのだろう、それがわかった。
「ちゃんと話すわ」
おばさまがため息をついた。
「こちらに来てちょうだい」
この顔ぶれで明日は罪人を裁くのだという。
「どんな大罪だったのですか?」
「そこまではね、あなたたちにはちょっと言いにくいわ」
「なるほど、そういうお話なのですね」
「そうよ、それで…あなたたちは…」
そういって明日はこの辺りには近づかないようにと言われると。
「あれ?」
「そうよね?」
「どうしたの?」
「明日も私たちはここに遊びに行こうとしてたのよ」
「このぬいぐるみを取ったところにね」
「…」
「そこには私の甥が働いていて…」
特徴から。
「ああ、あのお兄さんがおばさまの甥っ子だったのね」
「全然気づきませんでした」
「そう…顔を合わせたことはなかったのね、それなら、とりあえず明日は行かないこと、なんだったら他のところに遊びに行くといいわ」
「それなら電車に乗らないか?」
こればかりはしょうがないと、お店に来てから笑ったおじさまの方である。
「うちの地元までゆっくりと走る、おんぼろだが、他に客もいないし」
「楽しそう」
「じゃあ、そうするわ」
「私は明日は参加しないし、近隣の顔役だったってだけだからな」
そこで声のワントーン下げて。
「それに私がいればそこまで変なことは起こるまい」
「そうですか、それならばお願いします」
街からお客がまばらな鉄道で、移動というよりアトラクションを楽しむような感じで、おじさんと双子女子は電車に乗っていた。
「こういうのをレトロっていうのね」
「確かにおんぼろと言われるよりはいいがな」
元々このおじさんとは仲も悪くない、おじさんの妻も、到着を待っている。
「おばさまにまた可愛くされてしまう」
「そうね、覚悟をしなくっちゃ」
「うちのは、女の子を見るとな、あれも可愛い、これも可愛いと止まらなくなるからな」
町の化粧品屋さんとして駅前に家があるよ。
「?」
「どうした?」
「なんかね、やっぱり電車は古くて色々と大変みたいなの」
「そうか、お客さんがいないのならば、新設もできないだろうしな」
「でも新しい状態に戻せばいいじゃない?」
「そーね」
「はっはっはっ、そんなこと言っても簡単にはできるわけがないよ」
そこに終点のアナウンスが流れる。
「さて、そろそろつくぞ」
『は~い』
久しぶりに見たら、ますます可愛くなったので、今のゴスロリに似合うように、おじさんの奥さまは用意をし、先に写真を見せられたときよりも。
「ごめんください」
「お世話になります」
実際に見たときに。
「盛らねば」
その使命感にかられたという。
「あっ、ゴンゴンが来たよ」
「ゴンちゃん!久しぶり」
次の日に双子は知り合いに合う。
「いきなり連絡が来てビックリした」
「だよね」
「ごめんね」
「でも他からも双っ子を頼みますって来たので」
何ヵ所から来たよ。
「ゴンちゃんって、そういうこと多いよね」
「あんたも嫌だったら断りなさいよ」
「まあ、これぐらいだったらいいかなって」
「それは…」
「だからチョロゴンとか言われるんじゃない、まっ、そんなことを言った奴は締めておいたけども」
「それはありがとう」
「積もる話あっからさ、うちらの家の方で話そうよ」
「そうね、ちょっとここは目が多いかな」
この双っ子は影の国のお姫様。
だから、どんな影も、彼女達の家、城に繋がるのである。
亡霊メイド達が、来客のために忙しくしている。
「お茶は何飲む?」
「はい、これリスト」
「相変わらず美味しいもの揃えているわね」
「このリストはあなた好みよ」
「そうよ、一緒に考えたのよ」
「そんなことまでしてたの」
「何よ、暇だったのよ」
「ありがとう、あっ、だからか、私が飲んでたお茶や、あれは美味しかったっていう話のものがあるの、嬉しいな」
「バカね、当然じゃないの」
「素直になった方がいいよ」
「私はいつも素直なのよ」
「そうだよ、いつも優しいよ」
「!?」
「もうゴンちゃんったら」
相変わらず的確に気難しい子を狙い打つな、スナイバーさんなんだから。
「今日合うとは思わなかったけどもさ」
「そうですね、私鉄の老朽化みんな直したって聞かなかったら、急いで時間作ったりしませんね」
「それもあるの?」
「ええ」
「あのぐらい簡単よ」
古い状態を新品と言われる時間まで遡る。
「それこそ、駅舎までそれを行ったものですからね」
現在使われているものではなく、ただのボロだった旧駅舎がデーン!と存在感も増した。
「夏休みだし、あれでお客さんとか来るんじゃないの?」
「そーよね」
「それにしても今日はいっそうお髪が素敵ですね」
「そう?わかる?」
「昨日おばさまにもうしっかりと可愛くされちゃったんだもん、その分をお返ししただけよ」
「あ~嬉しかったらしょうがないですね」
「そうね、嬉しかったら、しょうがないわ」
「そうそう」
そこで話題を変える。
「ゴンゴンさ、あんたと別れた男ってどんなの?」
「あ~そこですか」
「そうよ、結構みんな知りたがってるわよ」
「なんでです?そんなに興味持つ話題でしたっけ」
「ん~そういえばなんでだろう?なんか話の種になってるって感じで」
「たぶん意外だったんじゃないかな、相手もそうだし、終ったとか、またね、あの引きこもりさんが迎えに行ったっていうのも、盛り上がっている理由ね」
「そこもなのか」
「そりゃあね、だってあの引きこもりって、他の奴に興味あったの?…ゴンゴンは違うとは言われそうだけども、あんたともさ、そこまでの関係ではないと思っていたからね」
「だから意外なことが3つは続いたら、気になっちゃうのよ」
「それは私も驚いたからな、何回も話しますけども、私は当日は知らないんですよ、けどもその日に…」
あれ?なんでいるんですか?
「もうこっちもそんな感じだから、で、世間話もはずまなくて、向こうも歯切れすんごい、いつも以上に悪くて、大丈夫?かな病院行くかなって」
「そこで相手の心配をするのがゴンちゃんね」
「わかってから、ここにはもう居られない、どうしよう、でも黙っては抜けれないで、そこで困ってまずは一人、挨拶に行ったんですよ」
「その一人にまず決めた理由は?」
「たぶん話がわかるから、私がいなくなりますっていっても引き留めないだろうからかな、さすがに他の人を最初にするのは…向こうも荷が重いだろうし、下手するとね怒鳴り込みにいくかな」
「そんなことしているのが悪いじゃん」
「そうなんだけどもね、色々とあるんだよ」
「色々とね」
「でも起こさなければ私はまだいたよ」
「あんたが居られなくなった原因を作ったのはバカね」
「あれ?もしかしておばさま達って」
「いや、まさか」
「何のこと?」
「ちょっと間ってね、本当にちょっとだけだから」
双っ子がどこかにいってしまい。
「お菓子でございます」
その間に舌鼓を打ってもらう作戦はメイドたちによって、始められた。
「相変わらず良いお菓子職人がいるね」
「そうですね、自慢の職人たちでございます」
「お土産の注文はできるかしら?」
「もちろん!職人たちも喜びますわ」
あんまり双っ子は自宅ではパーティーを開催しないので、職人は腕が鈍ると口をこぼしぎみだったりする。
「職人さんたちはね、毎日働くぐらいじゃないとね」
「本当にそう!でございますね」
「今ね、熱中症予防の加護を頼んできたところがあるんだけどもね、そこにお菓子を贈りたいんで」
「それでしたら、職人たちと一度お話した方が」
「そうね、そうしようか」
なんて話していると。
「お待たせ!」
「あんたの男じゃなかったわ!」
「…」
「何をビックリとしているのよ」
「何か話に関わってたの?」
「ちょっとね」
「そっか…」
「覚悟はしてるの?」
「そりゃあね、ただもう後ろで何が起きても振り返らないつもりだよ」
「そんなこといっているわりにはさ、あんた…泣きそうじゃないの」
「それぐらいの愛情はあるんで」
「十分だよ」
「もっと話していきなさいよ、こういうときは、話した方がいいわよ」
「あんまり面白い話ではないよ、ただ出会って、それから別れただけだし」
「その分じゃ別にサヨナラって言ったわけじゃないんでしょ」
「ないよ」
「それは引きずるんじゃないの?」
「引きずるかな」
「まだ日が浅いから、しょうがないところもあるけどもさ、忘れたらんじゃないの、それともしばらく私たちと遊ぶ?」
「ダメよ、ゴンちゃん、もうお仕事してるんだから」
「仕事?」
「そうよね!」
「そうなんですよね、いきなり…落ち込んでたら頼まれて、まあ、うん、慌ただしくなって、今に至る」
「陰険眼鏡属性の匂いがするわ」
「でもゴンちゃん、俺様系あんまり好きじゃないわよ」
「そうなの?」
「そうよ、ああ見えて、甘えてくるから」
「甘える…」
「ねえ、なんで知ってるのかな?どっかで見てたのかな?」
「ロマンスの噂は思った以上に広まるものなのよ!それで今は一柱一ゴンがどうなるのかって話ね」
「えっ?ソイツ誰よ」
「黒ワンコだよ」
「あ~あいつか、頼りなさそうな」
「といっても、ちゃんと自分の領土は守っているし、身内にも優しいから、悪くはないんだけども、黒ワンコって、今、人からとってもモテるから」
「そうそう、そうなんですよ、儀式の時に顔出ししたら…元々人間の目を引く容姿でしたが、そこに他の力もドン!でキラキラしてたらね」
「人間ってあんなの好きよね」
「私たちも人の血を引いてはいるけども、感覚はこっちよりだから、わかりにくいのよね」
「好意は持たれてはいるんですが…それはわかるんですか…」
何しろ好意の寄せかたがそれこそワンコなので、尻尾をパタパタしてたりします。
「まだやっぱり失恋の傷が辛いんで、どうしても、昔から知っている、知り合いじゃないと、話してて辛くなるときはあります」
「それなら定期的に私たちと話しましょう?あなたが堕ちたら悲しいわ」
「あっ、城に招待した理由もやっぱりそこですか」
「さっきね、あなたの耳には入れなかったけども、私たちの知らない男の声を真似て、あなたに声をかけようとした奴がいたのよ、その声ってたぶん…」
「あ~やっぱり出ましたか、でしょうね、あの人の声でしょう、私がうっかり答えてくれれば、しかも今は私はお世話になっている地域から、少し離れて一匹だったから」
「誤算は私たちがいたことね」
「無礼を働いたということで、こちらで対処させてもらったわ」
「ありがとうございます」
「なんて声を真似たかわかる?」
「ちょっと!」
「今の精神状態だと、お前ら本当に最悪だなって、八つ当たりしちゃうから、大丈夫かなっては思う」
「弱い癖に無理しちゃって」
「弱いからこそ生きるために無理するんですよ」
「私はそういうことをイッテんじゃないの!…あっ、ごめん」
「知ってます、ありがとう」
「仲良くはしたいのよ、それだけはわかって」
「本当にごめんね」
「慣れているよ、心に余裕があればこれも返せる、そうでないならちょっと辛い」
「どんな時、辛くなるの?」
「一人の時だったんだけども、最近は一人にしてくれないんだ」
眠くなるまで話をされたりする、うとうとしてきたら、そのまま爆睡の繰り返し。
(やっぱりこれは…)
(あの引きこもりなかなかやると思うわ)
一部界隈であの偏屈な引きこもりの評価が上がったようです。
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