浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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兄さんは軽い

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「体の調子は?」
「さすがにあんまり良くないよ」
「そうか」
一瞬心配そうな顔した後をし、その不安を見せないように表情を戻した。
「ここに座るよ」
「どうぞ」


兄が見舞いに来た。

「で、どうよ、結婚生活は」
「私が結婚するとは思わなかったわ」
「だけどあいつはいい奴だろ?」
「さすが兄さんの友達なだけはある」
「それってどういうことだよ」
「兄さんは偏屈だもの」
「お前だってそこは似てるじゃん」
「まあ、そうなんだけどもさ…でもさ、自分が生きたいと思うとはね」
「今まで思わなかったのか?ちょっとその素振りはあったなと、母さんには言えなかったけどもさ」
「さすがにお母さんには言えないわ、絶対に泣くよ」
「泣いちゃうな」
「うん、それは嫌だな」
「でもなんで俺には、わかった、兄ならいいかって、お前は酷い奴だな」
笑いながら言われたが。
「兄さんにも言うつもりはなかった、たださすがにあの時は心が折れた、もう自分はダメなんだなって、ゴメンね、嫌な思いをさせてしまった」
「いいさ…それがお前の素直な気持ちなんだろ」
「そうなんだけども、やっぱり人に嫌な気持ちをさせたら、ダメなんだと思うよ」
「こんなときでも労れるから、お前はすごいわ」
「そっちは?」
「相変わらず」
「喧嘩したらダメよ」
「そうなりそうな時は俺が黙って聞いている、それが夫婦円満の秘訣だ」
妹はそうは言っても、きちんとしていることは知ってた。
「兄さんは忙しいんじゃ?」
「妹を見舞う時間ぐらいは作るさ、っていうか、あいつも少し休む時間を作らないとな、いくら元気だって言ってもそのうち倒れちゃうよ」
「毎日顔を見せなくてもいいと言っているんだけどもね」
そこにメッセージが来る。
「どこがで見ているのかしら」
「かもしれないね、昔からあいつはそんなところがある」
「兄さんと同級生だった時って、あの人からも話を聞いたことはないから、よく知らないのよ」
「時間に正確な奴だよ、優等生ってやつさ、俺と違って。でもまさか、その時は義弟になるとは思わなかったな」
その話が出たとき、えっ?というのが当時のみなさんの反応。
「あいつの妹って」
「兄さんがクラスでどう思われていたのか怖い」
「本当に会話らしい、会話もなかったからな、ただの同級生で間違いないよ、そっちはどうなの?俺の妹だってわかった時の反応は?」
「どこでだったかしらね、あっ、仕事の話になったときに、そこは良く知っていますって言われたのよね」
「どういうこと」
「そこは前に取引したことがあるから、担当者の人となりは…だと思っていたら、この人は同級生なんですよ、仕事は手堅くするのは知ってますって、それでビックリしたんですよ」

「はぁ、それはありがとうございます」
「?」
「兄ですから」
「えっ?お兄さん」
「はい、私は妹ですよ」

「すごいビックリしてたわね、まあ、学校も違っていたから、兄さんの同級生は顔を知らない人多いだろうし、その頃は病気のせいだと知らないで、体調不良もおきかけていたからね」
「今、思えばか」
「最初は疲れたのかな、体力ないなだったんだよ、それが病気が発覚してからよ、私って体力あったから、この程度だったのかと」
「俺と喧嘩したら、俺は椅子ごと、部屋から出されたことはある」
「兄さんは軽い、実習で救命や介護を行うと、体力つくし」
「なんでその仕事を選ぼうとしたの?」
「これも言ってなかった?人工呼吸の訓練モデルの人形があってさ、その時救助できなくて、そこがショックだったんだよね、最初はただ研修で身に付けようと、ただ人生紆余曲折だよ」
「全部経験が生きている人生はいいとは思うよ」
「そうかな、じゃあ、この病気も何かの役に立つのかしら?」
「たつでしょ、活かそうとしているのを知っているし」
「あっ、知ってたの」
「あいつから聞いている、さすがに病気している時間が惜しいからって、でもなんで自分の病気を中心に協力しないの?」
「それがね、そこに行くまでにはとてもハードルが高いことがわかったのよ、こういう治療法の確率にはどうしても安全な方法を見つけなければなりません、そうなると、0%ではなく、応用が利きそうで、先に安全を確保できそうな分野からの方がいいわけ」
「それでも10年か」
「苦しい10年よ、たぶんそのぐらいには色々変わるんだけどもね。この間みたいに、さすがに症状が出ちゃうとね、やっぱり私は病から逃れられないんだと愕然とするのね、兄さんはこういう話を聞いても平気なの?」
「平気じゃないよ、でも知りたいよ、お前はあまりこういう話をしてくれないし、兄として聞きますよ、そっちの夫婦円満のためには協力もしなくちゃ」 
「兄さんもあの人も背負いすぎよ」
「そうかな」
「全く、たまに見てられなくなる」
「そうはいうけども、意外と助けてくれる人はいないもんだよ、お前は助けてくれるが、止めに入ってくれるのはうれしいが、実際に止めれるのはやっぱり別だからな」
「いや、だってあれは仕事増やしすぎでしょ」
「そういう意味では人と上手くやるのは俺は難しいのかもしれない」
「そういう人こそ、人付き合いを覚えるといいわよ」
「無茶をいう」
「そうかしら」
「それはそれで俺の人間関係にお前とあいつが入ってくれることで、クッションにはなってくれているんだよな、そういう意味では昔よりもあいつと話しているし」
「そういえばこっちが義姉さんの晩酌に付き合っているときも、男同士でなんか話していたわね」
「ただの世間話だよ、今では昔話が出来る相手も少なくなったから、でもあいつはやっぱり陽キャっていうのかな、青春時代が絵に書いたような生き方なんだよな」


同級生で義兄弟二人だとこんな会話をしてたりします。
「元気?」
「元気ですよ」
「…」
「すごい、会話が終わっちゃった」
笑いながら義弟は言う。
「でも今更話すことなんて無くない?」
「それはそうなんだけどもね、義兄さん」
「そう呼ぶなよ…」
「でも実際そうですし」
「あいつとは上手くやってるの?」
「ええ、毎日が幸せです」
「よろしく頼むよ、あいつはもう少し幸せになってもいいんだし」
「もう少しですか…」
「遠慮したりしない?」
「ああ、それは、あるかな」
「昔、その時の同級生に言われたみたいなんだよね、うちがズルいというか、うちの家庭環境では当たり前のことを、ズルいって、そこから素直に喜ばなくなったところがあって、最初は俺もなんでかなって思ってた」
「ズルいですか」
「嫉妬だろうな、うちは父親は企業勤めの技師だったから、まあ、そうじゃなきゃ生活の安定なんて難しいんだけどもね」
「そういうのが見えてない人はいるよ」
「だから資格とかかなり固いのも取得していたりするし、人があまり引き受けない担当も進んでやるようになったんだよ、そうすれば誰にも言われないしっていう理由だったとき、俺は寒気がした」
「その話は知らなかった」
「えっ?言ってなかったの?まずいな、後で叱られる」
「そこで怒ったりはしないでしょ、おそらく、たぶん、そうでは…でもそうなったら、そのフォローお願い」
「いいけどもさ、ずいぶん惚れているんだな」
「惚れましたね、ビックリしました」
「えっ?そうなの?でも妹は最初付き合うことも断ったんでしょ」
「二回断られました」
「二回も、それは知らない」
「細かいのも入れるともっとかな、主には自分の病気でしたが」
「色々と調べていたからな、俺も調べていた時だったから、あれ?この本がなんでうちにあるんだ、借りようとしたら、同じことを調べていた」
「やっぱり兄妹だからそこは似ちゃうんじゃない」
「そうかも、それでまとめを読ませてもらったけども、俺が目をつけるポイントがかぶってて、あっ、これならさ、どっちかが先に読んだら、それを読んでから専門用語で書かれている分厚い書籍読んだ方が良くないかって思った」
「二人とも本を読むのが早い気がする」
「俺の方が早いよ」
「そこは自慢なんだ」
「ただ妹は感想がおもしろいんだ」
「へぇ」
「うちの親父は俺に似たなっていってた、たぶんあれは男だったら同じ職業を目指してほしかったんじゃないかなって感じはした、俺は継がなかったからな」
「でも結局は認めてもらったじゃん」
「だといいよね」
「義父さんとは話せるうちに話した方がいいよ」
「そっちは?」
「義娘に喜んで」
「上手くやってるのか」
「そりゃあ気に入ってるでしょうよ」
「そういえばあいつの指輪どうしたの?金魚のになっているけども」
ガラスの金魚のものになっています。
「金属だとさすがにこの時期辛いと」
「ああ、なるほど」
「だったら他に…って言ったらさ、その日買い物行ったときに、代わりのものを買おうということになって」
「デートだ」
「デートって何回してもいいですね」
「本当に妹に惚れてるね」
「おかげさまで」


「でも私としては病気があるから、独身でいいやっては思ってました」
「そういう感じだと思っていたから、結婚する話を聞いたときに、えっ?って思っ
た」
「さすがに病気だったら諦めるだろうと思ったんですよね」
「諦めなかったか」
「兄妹の楽しいお話中に失礼します」
「お帰りなさい」
彼女は微笑んむと。
「ただいま」
笑顔で返す。
「お邪魔してます、そろそろ俺は帰るわ」
さすがに兄は居づらくなったという。
「いや、まだ居てくれても」
「そうよ」
「馬鹿言うなよ、隣でそのやり取りされてみろよ、今の挨拶、一回だけで俺が邪魔だとわかるわ」
「そう、じゃあ、気をつけて、さすがに暑いからさ」
「わかった。悪い、妹のことは頼むわ」
「もちろん、喜んで」

その後夫婦だけになった部屋では、賑やかな笑い話が始まった。
しはらくしてから、途中で話の声が途切れたなと思っていたら、夫は席を立ち、トイレにでも行ったのだろうか。
部屋を出てからの夫は、さっきとは違い顔つきは神妙で悲しみの色を浮かべていた。
トレイから出て、手を洗い、鏡を見たときに、心配な顔を妻にはさせるまいと思ったのか、先程の不安を隠すような顔を作って部屋に戻っていった。



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