浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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そこは注意な

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「君の旦那さんってどういう人なの?」
松灰(まつばい)が現姓松灰さんに聞いてみたところ。
「会ったことありません?とっても素敵な人なんですよ」
なんて、笑顔で言われてしまったら。
目を逸らしながら、カップの麦茶をゆっくりと口に飲んでいる。
そんな松灰を松灰さんが見る。
「そちらから聞いてきたんじゃありませんか」
「そうなんだけどもさ」
「まっ、でもすごい人だとは思いますけどもね、これから色々な事が起きるんだろうなって不安なときでしたから」
「そんなに、おかしかったかな」
「おかしいとは…でも、まさかあそこで助けてもらえるとは思いませんでしたし」
「そりゃあ、助けるさ」
出会ってその日にエレベーターから脱出することになった。
「けど、話を聞けば聞くほど、そういうときは置いていってしまう、自分だけ逃げてしまう人がいると」
「いるね…」
そこについては、松灰もたくさん見てきた。
「我が身の可愛さ故か、この機会を待っていたかは知らないけどね、もちろん、そうなると、後が大変になるんだよ」
なんで生きているんだ。ああ、俺は心配してたぞ。
「極限状態になるとどういう人なのかよくわかる」
「あなたはそういう時、いつも苦しそうな顔をしますから、最初にそれを見たときは何が起きたのかと」
「あの時か、ごめんね、急に会いたい、なんてわがまま言った」
「いきなり言い出すから何なのだろうと思いました」
「やだぁ、甘えもらえて良かった、そうじゃなかったら、俺、勘違いで嫌われていたかもしれない」
「でも迷いはしましたよ」
「えっ?」
「これは気持ちハッキリとさせないで返事したら、確実に間違われるなと」
「はい、たぶん間違ってました」
「でも松灰さんはモテる人ですからね」
「付き合ってる人がいなかったですよ」
「それでも良いと思われている女性は多かったと、そちらの方が良かったんじゃありません?」
「ご冗談を、Ms松灰」
「でもバレンタインデーの時に…」
「あれは義理だと思います」
「そういうのも大事にした方が」
「そっちこそ、どうなんですか?結構期待していた男性陣はいたような気がしますが」
「そうなんですか?」
「気を使ったり、落ち込んでいたら励ましてくれたりするのはですね、男は弱いものなんですよ。それなのに、それなのに…これは俺だけなのか、そうではないのか…迷いました」
「疑いは晴れまして?」
「ええ、でももう少し二人でいるときに、愛を口にしてくれたらと思います」
「本当に言われると、今みたいに照れますよね」
「そうですね、そうなんですが、言われたんですよね」
「それは悪い癖かもしれません」
「学生時代ほぼ訓練で来ちゃってて、あんまり遊んできてないから、免疫とかないんですよ」
「その割にはグイグイ来たような」
「勢いで行けるのならば、いや、このまま行けるのではないのかって思いました」
「結婚してくださいっていうのが、早かったですからね」
「善は急げともいいます」
「もっとよく知ってからでも良かったのではと、まあ、今更ですがね」
「結婚生活に後悔はありませんかね?もう少し早く帰ってきてほしいところは、転職して改善はされたと思いますが」
「お仕事ですからね、早くよりも、無事に帰ってきてほしいの方が上でしょうか」
(くっ…これだから、ここが本当に良いのに、もう少しで他のやつに気づかれるところだった)
「どうしましたか?」
「あの事件がなかったら、誰かいい人はいないのか紹介してもらうところだった話を思い出したんですよ」
「そういえばそんなこと前に言いましたね」
そして松灰はそれを断った。
「なんであんなこと聞いたんです?」
「えっ?松灰さんの目から見て、間違いない人ならば、いいのかなって」
「はっはっはっ、断って良かった」
「そこは酷いですよ」
「酷くなんかありません、伝えてはいませんが、その時には気持ちはありましたからね」
「やっぱり恋愛慣れしてません?」
「ご冗談を」
「本当に運命というのはわからないものね、あの時は生きるのに必死だった、それが終わっても、続きが始まるのではないか、追ってくるのではないか、まあ、実際追おうとしてるようですけども」
「討ち取って名前を上げたい人間を、
こういうときは上手く使うものですよ」
「普通の尺度では考えられませんけどもね、危険があるというのに、名を売りたいのは」
「そういうどうしようもなさがある世界だし、それによって救われたのもまた事実でしょう」
「なのですが、なのですけども」
「あなたは幸せになるといいんです、まっ、まだ全部解決したわけではありませんが、人の一生分の時間は稼げたのならば、逃げ切れるでしょうし、あいつらはサメの恨みもかったからな」
旧みふり病院周囲をクンカクンカしていたサメ、何とかして本体を探し出そうとしてるところに、探させまいと邪魔をしてくる三振りの刀。
幻体とのを作って、それを持った人に襲わせたりするんで、そこで人間大好きサメちゃん達がキレたわけですよ。
「サッ」
ほう…我々がニンゲン大好きと知って、そういうことしちゃんだ。
刀の幻体を、間違って握ったとしても罪にはなります。
「どうもね、幻体を他のダンジョンに置きにいっている奴がいるんだ」
そう松灰は現在の同僚である勾飛(まがとび)から聞かされた。
「こんなところに置いておくにはもったいないし、何かあったら、予備の武器にすればいいしって感じで、その時に知らずに握って傀儡になったケースがあってね」
その中でも運よく、握らずにダンジョンから上手く脱出して、これはいくらぐらいするんだろうなと思い鑑定に出すと。
「よく無事だったね」
といわれるし、これは買い取れないと言われる。
「あ~ハズレか」
「いやいや、大当たりだよ、これどこにあったか、情報提供求められているから、それで十分オマケが出るよ」
そこで、みふりの幻体が、あちこちにばら蒔かれていたことがわかった。
「傀儡にするのは、自分より弱いやつだから、よく調べたら、そんなの無効に出来るからってそのまま愛用品にしている奴もいたし」
久しぶりに名前出すが、ナリタツさんとかそうだね。
「だって、実体がある奴だと、折れたらそこで使い物にならないんだもん」
幻体なので、実体に縛られない軽さや切れ味の維持が期待できる。
「ただまあ、油断するとすぐに乗っ取ってくるから、そこは注意な!」
「たまにカタカタ言って、こっちに近づいてくる時があるんですが」
大麓(たいれい)ならば行けそうと思っているらしい。
「そういうときは叩けばいいの、叩けば」
そういいながら、ナリタツは幻体刀をバシバシしている。
どっちが上か、わかっているんだろうな?あっ?という、理屈で従わせるが。
普通はそんなことはできないので、怪しいものを見つけたら、そのダンジョンの管理窓口までお願いします!
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