浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ペンギン飼育員用のボディソープ

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日陰で汗を拭いていると。
「隣、座っていい?」
「どうぞ」
そういって男が座ってくる。
男は冷たい飲み物の蓋を開けて飲み始め、隣の女はそのまま手を止めずに汗を拭いて…日焼け止めを塗り直しているようだ。
「肌、白いね」
「そうだね、前はあんまり気にしてなかったんだけども、こうも暑いとね」
「まさか、日向に今日は出るなとか、お知らせが出るとは思わなかったよ」
「そうそう、どうなっちゃうんだろうね」
「どうやったら汗とかかかないの?」
「いえ、かいてるわよ」
額を前髪を上げて見せてくれる。
「でも一人だけ涼しいみたいなさ」
「あ~そういうことか、体力とかないから、科学の力に頼ってるのさ」
「何それ」
「そういうのがあってさ、こういうのだよ」
猛暑対策用のボディソープというのをスマホの画面を見せてくれる。
「私が使っているのはこれ」
「こんなんあるんだ、でもその隣のペンギン飼育員用ボディソープって何?」
「ここは面白いもの作っているわよね」
そう、みなさんお馴染みのあの会社です。

「ペンギンは可愛い、でもあの臭いがダメ、けど可愛いという気持ちで研究しました」
【臭いの物質の軽減に付き合わされました】
「ユトボくんにはまだまだ頑張ってもらうから」
ここで開発の協力のために、KCJからユメトキボウの力を借りてます。ユメトキボウはサメ外観の1号2号3号までいるが、どれが来てもいいからと、頭文字で「ユトボ」と読んでいるようです。
【ドアホよりはいいですが】
「その話は毎回聞いても、センスがないね」
ユメトキボウ、ドリームアンドホープなのでドアホと初期の頃は呼ばれていた。
【データが揃っていないAIに対して、本当にひどいことをいう】
そう、AIは必要なデータが揃ってないと生成ができないため、データが揃ってない時に、お前はアホだなっていう意味で呼ばれていたようだ。
「様々なAIがこの世には誕生はしているが、ユトボは面白い育ちかたをしたと思う」
【マザー上のお力によるもの】
「いや、それだけじゃないだろう、人、一人が言葉を教えるというのは、AIにとっては大したことがないんだよ。数多くの言葉がなければ、こうはならない」
【それならば浜薔薇のお客さんのみなさんや、KCJの忍耐の賜物なんでしょうよ】
「かもね、でもペンギン飼育員用のボディソープは、これからその仕組みによって生活を変えるものが生まれるかもしれないね、現在主流の消臭剤も飼育員とのエピソードがあるから」
シュルシュル
【ああ、その話ですか】
「そうそう、ペンギンに関しては様々な臭いが絡み合って、あの臭いを作り上げているからね」
【魚、脂、餌などですか】
「どれか一つでも減らせたらいいんじゃないかと思ったら、びっくりするほど上手くいった、本当、うちの会社が毎回毎回変なものを作っても許されるって感じで良かったよ」
【でも売り上げはそこまででもないですよね】
「…猛暑用のボディソープが売れてるから



「あれ?これからシャワーに行くの?」
「さすがに暑いから」
「じゃあ、さっき言ってたの貸してあげるから、今使ってみなよ」
「…いいの?」
「ちゃんと返してね」
そういってシャワーに行くときルンルンだったわけですよ。気になる子といい感じなわけですし、でもね。
「えっ?このボディソープ、スゴくないか」
あれ?なんか、暑さが軽減されているのがよくわかるというか。
ふとシャワーの温度を見る。
(いつもならばこの時期は冷たいシャワーを浴びるだけだというのに、なんでお湯温度なんだろう)
えっ?自分の感覚がバグったの?とも思うのだが、このボディソープの仕組みというのが、本来人間が備わっている熱の伝導率を変えるもの。だからこれは売れないだろうとお蔵入りになっていた、あの会社の独自の成分が配合されている。
「間違って冬にでも使ったら大変だし」
風邪引いちゃうしな、なんて当時の責任者は笑っていたが、今のジャパンはこの暑さである。
「元々試験販売で、うちのお得意様に出していたんですよ」
それこそ浜薔薇や、河川ザメの春隣(はるどなり)の理容ルームで限定品で出していたら。
「えっ?あれないの?」
「すまないな、あれはテスト期間中の品物だった」
タ…アンセルモさんが何度もお客さんに謝罪をした話をメーカーにも伝えられたが。
「ただ一番はサンタさん達が買ってくれましたね、真夏でもあの格好を維持しなきゃならないわけですから、このボディソープで洗うと、サンタでいられるとかで」
つまり激しい大捕物があったとしても涼しい顔ができるということで、そちら方面の人たちが思いっきり買ってくれたこともあり。
「みなさんにこうして値下げして、といったも量販店で販売されているものの中ではまだ高く感じられるんですがね」


「あのさ!」
「あれ?何?」
「あっ、これさっきはありがとう、すんげぇ涼しい、これ、どこで売ってるの?」
「この辺だと~」
名前をあげると。
「そこは男、一人では買いにくいです」
「そう?じゃあ、一緒に行く?」
「えっ?」
少し間があったあとに。
「行きます、行きます、荷物持ちでもなんでもします、俺、力あるんで」
「大袈裟だな~」
彼女の方は気にしてないかもしれないが、こんなこともう起きないかもしれないのだ。
「あっ、でも彼女さんいるんじゃないの?」
「?」
「いえ、いつも身なりは整えているし、最近おしゃれになったから、彼女でも出来たんじゃないかって他の人たちが言ってたのよ」
「そんなの…いませんよ」
なんだ、その噂は、始めて聞いたぞ。
「あっ、そうなんだ、いてもおかしくないのにね」
「それは高評価しすぎでしょうよ」
「えっ?でも女の子でいつも見に来ている子がいたりもするけど」
「そんなの知らない」
「かなり可愛い子だったわよ」
「…そういうそっちこそ、どうなのさ、彼氏とかいないの?」
「好きな人はいたけども、それっきりだったしな」
「誰だよ、そいつは」
「同級生で…」
「向こうは好きだって知ってたの?」
「知らないんじゃない?彼女できたときに、あっ、脈ないのかって諦めることにしたし」
「踏ん切りよすぎでしょ」
「えっ?でも、彼女いるんだよ、いくら好きでも、好きだといったら困らせるだけじゃないの?まっ、でもそれは前の話だよ、今は研修とか物にしなくちゃね」
「将来何になりたいの?」
「出来ればお嫁に行きたかったけども、たぶん行かないから仕事に生きるのよ」
彼女は笑ってた。
帰宅して、その夜ずっと彼女と仲良くなるにはどうしたらいいのかという現実のことよりも、彼女に優しくされてる風景のことを考えていた。
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