浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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剣を継いで

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例えそれが魔法の弊害とはいえ、見せられた夢の中では家族生活を私は営んでいた。

「自分がね、すごく気持ち悪い、それはわかっているからこそ、こんな話は誰にでもする話ではないんですよ」
「それは大変ですね」
その時、金がなかった。だから奢ってくれるということで、話の聞き役になるのととした。
「自分は剣士だからさ、畳の上で現代でも死ねないと思っていたし、まあ、こうして生きているのはたまたまかなって」
そうは言えども、この人はなかなかの腕前である。
「そういうこともあってか、女性とはあまり縁が、全くないわけではないのだけども、学生時代といくらかお見合いの話が来たぐらいかな」
「お見合いの話が来るということは、世間にまともな人間と思われているということですよ」
「でも、世間と結婚するわけじゃないしね、一応はね、お見合いをするわけだから、最初の頃は、この人と結婚することになるのかななんて考えてはいたんだが、まあ、なかったわけで、お見合いにも呼ばれなくなってきたなって辺りからはまた剣に打ち込んだというかさ、でも焦りはあったよ」
自分の人生はこんなんでいいのかなって。
「そんな時に魔法にかけられたもいうか、対象の地域にいたもんだから、そこからしばらく夢にも影響が出てしまった、魔法をかけてくれた女性がいたんだけども、その人が奥さんで、子供たちがいてさ、男の子と女の子、男の子がさ、俺の剣を継いでくれた辺りで泣いて目が覚めてしまったんだよ」
「それって剣士からすると無情の喜びでは」
「そうそう、それ、俺にもそんな欲求があったんだって思ったんだよ、背丈も自分と同じぐらいでさ、でも奥さんに目は似てるのかなって、あんな夢を見たら…まっ、それで魔法使いの彼女を口説いて、今は付き合ってますがね」
「ええ!そうだったんですか」
「あれ?言ってなかった?自分でもビックリだよ、最初は向こうもこれは夢なのでって何回も何回も言ってた、それは俺もわかってた、でもね、忘れれなくてね」
「それだと、ちゃんと現実的に彼女さん見てます?」
「見てるよ、それはそれって感じで、最初は向こうも呆れていた、どうせ夢だからってね、でもね、本当に忘れるのが嫌だったんだわね、例え夢通りにならなくても、彼女とならば失敗しても、上手く言ってもなんでも楽しめるんじゃないかってね」
 「ベタ惚れじゃないですか」
「うん、そう、自分からはこういうのは積極的じゃないんだけどもさ、ただ本音としては、もう責任とって!みたいな」
「一歩間違えたら勘違いしないでくださいって言われそう 
「そこは気を付けた、もう…うん、嫌われるのは嫌だった。でも彼女はとてよ良い人だった、先輩から聞いてたからな、そういう場合で結婚すると、全部向こうの話を飲まないといけなくなるぞって」
「惚れた弱みってやつですね」
「それは覚悟があったが…あれは本当に怖いな、その人のためならばなんでもしたくなるっていう、無敵感が出てしまうから、そこで苦しんだ部分はあるよ、バカだよな、俺はさ」
そこでちょっと距離をおいた時もあったという。
「それこそ、剣士じゃん、私利私欲に走ったらダメだからとかってね」
「あれ?そこで踏みとどまれるものなんですか?」
「俺が若いときにも、何人かそこら辺の素行の悪さでとんでよないことになったのを見てきたから、とどまれたのかもしれない」
「例えば?」
「うちの流派的には知られたら不味いやつ」
「それは聞いたらダメですね」
「ごめんね」
「下手に知ろうとして、そこから敵を作るのはごめんですよ」
「助かるよ、やっぱり知りたがりはいるからね…」
「その言い方で、全部じゃないが、思い当たる話、わかりましたよ」
「そっか、じゃあ、名前は出さないでね」
「怖くて出せませんよ」
「ふっふっふっ」
「でもそれならば、止まりますね、あれは本当に理解できない理由で、そんな理由で衝動的になってしまって…、事が大きくなってから、普通の人じゃ取り押さえられないから、同門の人間たちが対処するですか」
「それはまだいい方だよ、後から知った、どういうことなんでしょうか?と知らされる方が不味いし、ひたすら謝罪になる」
「うわ~やりたくない」
「やらない方がいいよ、あんなの、こちらは謝るしかできないし、先方さんがあなたは悪くないですからって言ってくれるならばまだいいというか、ずっと恨んでいる人もいるからね」
「それって怖くないですか?」
「怖いよ、ただ習うならばそこまでではないが、役職になるかって話をいただくときに、そういう過去の出来事もみんな背負わなければならないってわけだし、そこでやめる人はいるよ」
「結婚するからやめるとかも前にいませんでしたか?」
「いるよ、相手の親に説明しにくいから。食えるだけならば困らないけども、最近は教え子は増えている傾向にあるよ」
「世知辛い」
「食えるか食えないかの状態だと、世間体を気にするタイプは少ないからな、ああいう子は真面目にやってくれるから、上は歓迎しているし、俺からすると、生きるのがシンプルすぎるから、もっと人生を楽しんでほしいよね」
「剣に生きてきた男の言う台詞とは思えない」
「でしょ、彼女がいるって本当に違うんだよな、理解がある彼女とは言わないけども、業界の説明とか慣習を一から話さなければならないとかではないもの」
「あ~でもそれは大きいかもしれない」
「そうなんだよな、ここまで楽だとは思わなかった、先輩の既婚者組も、流派の行事に合わせるのが大変だったっていってたからな」
旧暦の行事もあったりするから、毎年日付が変わったりもするよ。
「そういう意味ではがっつり稼いでいないとダメな仕事かもしれませんね」
「それは思う、そこら辺はKCJは本当にすごい、あそこ各支部に均等に実力者がいるから、その支部で戦闘許可証を取ったってことで、実践経験浅くても、仕事のきっかけにもなるし」
「むしろ、あれは狙っているでしょ」
「だよね」
「二人かな、全支部で戦闘許可証を取ったことある巡礼者の話知ってますし」
「それは…確か…一人が試しにやってみようっていって、最初に始めたやつがそれでただでさえ有名になったんで、夏休みかな、長期の休みになると、全支部は無理だけども、地方制覇とかやる人はいるとはいう」
「夏休みは多いとは聞くんですが、合格者は少ない」
「サンタ…来ちゃうからね」
「サンタ、オフシーズンですもんね」
ただここで俺はサンタには負けねえんだよ、むしろぶっ飛ばしてやるよという人たちも来ます。
 「そんな奴はそうはいないよ」
「でもたまにいるからな、この業界」
「そこはそこと割りきれないと、長生きはできないね」
「難しいところですね」
「すいません、オーダーストップになるんですが」
「あっ、最後になんか頼む?」
「それじゃあ…」
そんな感じで、ごちそうになった。
しかし、彼女ができると人は変わるものなのだな…どこか張りつめた空気をまとっていた人が、あんなに楽しそうにするだなんて、なんだか少し安心してしまった。
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