浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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縛らないことが愛なのか

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最近、結婚というのをしたのだが、世間では政略結婚と呼ばれているものであった。
「おめでとう、同僚としては複雑だけれどもね」
「だろうね、でも俺も彼女じゃなかったら、返事はしなかったと思うよ」
そう答えたら、同僚は驚いてた。
政略結婚あるあるの挨拶や披露宴をした後に、新居で生活となる。
「何か冷たいもの飲みますか?」
着替え中に彼女が聞いてきた。
「お願いします」
そういうと冷たいお茶とお菓子を用意してくれた。
「ありがとう」
お礼を言うと、彼女は驚いていた。後で理由を聞いて見ると…
「そういうのはできて当たり前というか、気をきかせるもんだろうっていう感じなのが、この辺の男性なので」
「あっ、そうなんだ、でも俺はこの辺のことは知らないしな」
KCJの職員としてこの地を訪れたところ、住居そばの地元の方が熱心にお見合いを進めてくるのであった。
「特に結婚してない、彼女いないって知ったら凄かった」
「そりゃあ、働き手の年代がこの辺は少ないからしょうがないわ」
「もうそこまで人口が減ってるの?」
「山に出てくる熊にやられて減ったわけじゃないわよ」
「それだったら、KCJの支部からケットシーやサメとか引き連れて来るよ」
「引き連れたら山から熊が居なくなるんじゃないかな」
逃れられる熊っているかな?
「あのさ」
「なんでしょ?」
「俺と結婚して良かったの?」
「話を持ってこられた時はビックリしましたけどもね」
「そうだね、いきなりだった」
「あなたこそ、なんで逃げなかったんですか?あなたの腕や、KCJならば逃げれたでしょ?」
「…君と一緒に過ごす時間が楽しくてね、というか君もさ、そういう話に選ばれないように生きてきたところがあったのに、なんで俺には隠すことが少なかったの?」
「なんででしょうね、やっぱり楽しかったからかな、誰かがそばにいるということはこういうことなんだろうなと、夢を見せてもらったような気がする」
「俺は夢じゃないよ」
「そうですか?そうでしたね…」
言葉ではそういう、まだその時は信じてないような顔をしてた。


「何を見てるの?」
「この地域の伝承とか」
「やっぱり気になるの?」
「ちょっとね」
KCJの支部には、そういった郷土史の本も所蔵されている。
「でもこの辺はまだ病院が多いから、そこまで因習の類は強くはないんだけどもな」
「そう?俺の見たところ結構ひどいよ」
ケットシーが近づいて来て、大丈夫?モフる?と転がってきたので、モフりながら同僚と話す。
「この辺が得意そうな、依頼受けているところはあったりするの?」
「ん~色々あるけども、最近だとアイシスってところがオススメかな、あそこ儀礼関係に強い、この間さ、雨雲が残りやすい村ってところにいったんだよね、あそこで高齢だけども、後継ぎがいないってことで、中心的なことはそこがやってくれたんだ、無難に務めていた」
「そういうのって無難に務めるのが一番難しいよね」
「そうそう、気に入られすぎると、代わりにならないからな」
生贄を求める方の好みに合わせるものなので、気に入られすぎると、その人は自由に生活はできない、気に入られている間縛られ続ける。
「でもこれはストーカーと同じで、顔のいい悪いではないんだよな、執着だからね」
たまにそのお気に入りが困ってるところが見たいとか、嵐を巻き起こして、必死で耐え凌ぐのを娯楽にしていたりするタイプなどもいるので、その場合はお気に入りが逃げたり、KCJが第三者として介入したりするよ。
「やっぱりうちはケットシーがいるから大きいんだよな」
ケットシーは人と生活を共にし、縄張りを作るが、人にそこまで押し付けたりはしない、むしろこのような時に、人が逃げ込む先としてケットシーの縄張りはあるある。
一昔前ならば、緊張感が漂う関係性が続くが、今現在KCJという形になってしまえば、人間が駆け込んだ場合はほぼ逃げ込めると言える。
ケットシーも単体ではなく、複数いるし、他の上位種族としてはサメや吸血鬼なんかとも一部付き合いがあった、そうなると敵対するとしたら、かなり分が悪い。
サメなら武力、吸血鬼ならば経済力辺りの影響も出てくるだろう。
「でも一番怖いのはその協力者を作るケットシーの政治力、外交力かな」
どうか、力を貸してほしいのって言われて、ネコちゃんのためならばと返事をしてくれたところも多いらしい。
「そういうところケットシーの親族の猫なんかが生まれたときに、新しい家族として選ばれたりするから」
そんな付き合いもしていたりします。


「だからパワハラしているだけだと、どうしても先細りするんだよね」
「実際しているから何も言えない」
「そんなに先がないの?」
「ないわよ、このまま私も一人で…って思っていたし」
「見る目ないね」
「?」
そこで彼女の隣に座ってくる。
「何か好きなものってあるんですか?」
「好きなものね」
「そう、好きなもの、そういうのあんまり聞かなかったから」
「あなたはそんな相手と結婚したの?」
「聞きたい気持ちはずっとあったよ」
優しい眼差しになる。
「私も年貢のおさめ時かしらね」
「逃がさない」
「以外とヤンデレ?」
「かもしれないね、そういうタイプではなかったと思ったんだけども」
「あら?どういう恋を今までしてきたの?」
「恋という恋ではないよ、今から思うと、可愛いからとか、中身を見ていない、表面的な憧れみたいなもので、現実味はね、ないね」
「でもそんなもんじゃない?」
「そうかな?」
「そんなもんよ」
「君は恋をしたことあるの?」
「まあ、そこそこ」
「へぇ」
声色が少し変わった。
「子供の頃よ、あのときはまだ家族も生きていたから、その因習とかわからなかったし」
「なんか家族がいないと結婚できないみたいな感じだったね」
「そうなのよ、まともだといるから、みたいなそんな感じなんだけども、そのために結婚するタイプもいるわ」
「それってどうなの?幸せなの?」
「幸せ…ではない、んじゃないかなとは思う、そういう目的で結婚しているから」
「まあ、そうだよね、一緒にいたい、過ごしたい、新しい家族を迎えれたらとか、そんなのがないと続かないというか」
「私もそう思うんだけどもね」
「そういえば家事とかきちんとできるけども、出来ないように思われてたね」
「下手にできるとそれ要員にされるから」
「あ~」
「それは嫌だな」
「そうだね」
「掃除機は古くてもう新しいのにした方がいいというのに、汚くなるのはお前のせいだ、掃除が出来ないのが悪いとかいうような人はちょっと」
「それって実話」
「実話よ、今って、家事のグッズ便利なのよね」
「そういえば初めて話したときそういう話からだったね」
都会の人はこういう掃除道具を使っているんですか?
「えっ?って思った、俺も転属する前はたまに河川ザメのハウスキーピングは頼んでいたけども、元々は自分でやってた。でもあの時君が持ってきたのは使ったことがないやつで」
今って黒かび防ぐ洗剤とかあるの?これで洗うだけでいいの?便利じゃん。
「素直に驚いたから」
政略結婚の話が出てから、とりあえずデートなどをしなければならないときにも、こういう記事があって、ファミレスに行きませんか?になったりした。
白ワイン一杯と野菜の煮込みで幸せな気分に彼女はなってしまい。
それを見ているのもいいなと思ったし。
「インスパイアして作ってみた」
ワインに合う野菜煮込みが夕食に出てきたこともあった。
一緒にいるのか楽しくて、楽しくて、時間はあっという間に過ぎていった中で、彼の方が他の支部に二週間、自身の戦闘許可証の更新も兼ねて出張に行くことになりました。
「あの時、帰ってきてから、プロポーズしようと思ったんだよな」
理由としては会えないってこんなに辛いとは思わなかったから。
「帰る2日前ぐらいから限界を迎えちゃったけども」
寂しいよ、寂しいよ、電話で話をしているけども、終わったらもっと寂しくなるんだけども、これはなんでしょうか?
「本当はお土産とかちゃんと買って帰るつもりだったのに」
さすがに彼女の方はあれ?早かったねというしかなかった。
「ちょうどこっちの支部に向かう知り合いがいたので、車に乗せてもらった」
出てくる言葉もたどたどしく。
「あのまま彼女だけじゃなくて、ご親戚いたら、言質とられて、契約してたところだった」
さすがに彼女が危ういと思って、疲れているのでも休ませ、会わせなかった。
そして元気になったときに、改めて結婚してくださいというと。
「あの親戚の得にならないようにしてくれるのならば、お受けします」
社交辞令的な返事をした。
「なんで?」
「金払うとかになると、搾られるから、それはダメ、そこは上手いことやってほしい」
「わかった、でもそうなるとまた結婚が先になるんだけども」
「じゃあ、それが不安にならないように、そっちのやり方で私を縛る?」
結婚関係の契約は、いろんな方法があるので、そういうのもある。
「縛ることが愛なのか、縛らないことが愛なのか」
「哲学になってるわよ」
「うれしいけどもね、それで契約してもらったら、それはそれで後悔しそう、気持ちよりも先に、契約だからっていう理由が来そうで」
「もしも逆なら」
「サインする場所どこですか?」
「変な女に騙されないように」
「騙されてもいい相手に会える幸せってありますよね」
「はいはい」
「冷たいな」
なんていった後に、彼女の方から仮契約のサインはもらえた。仮でも契約は契約、約束は破ると罰則はその身にふりかかる。
「それを書いてもらった後にわかったのは、俺は契約で彼女を縛りたいんじゃなくて、気持ちで縛りたいんだなって、後、彼女をサゲるような発言をする、ご親戚みんな嫌いになりましたので、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
政略結婚のガワを被ったまま、二人は小さな幸せを得ることができた。
「後は問題が何か起きればと思ったら、早速起きたからな」
熊が出てきた、出てる間は農作業も難しい。
「そしたら向こうから熊を何とかしてくれ、代わりに家事係として彼女を渡すからとか言ってきたんですよね」
この時彼女とアイコンタクトをして。
「わかりました、がんばります、でも熊はいつ仕留めれるかわからないので、先払いではありませんが」
「それでかまわない」
それを聞いた彼女は、自分は熊一匹分の価値かと思ったという。
「一匹駆除したら、その傷の療養で病院ある地域のそばに住むね!ってことで、新居も決めたしね」
怪我としては大したことはないが。
「あの熊、被害だしすぎ、後さ、地域の人たちに熊の駆除する伝統文化が途切れていたね、熊は昔からいたはずなのに、あれかな?駆除していた人たちを気に入らないって追い出したせいかな?」
「そういえば昔はいたわね、なんでいないのかしら」
「それにね、熊は一匹なわけがないんだ、ファミリーが引っ越してきたらどんどん増えるから、さて、この後どうなるか」
「KCJとしては?」
「これからは正式な依頼ならば受けるでしょ」
「身内価格じゃなくなってるわね」
「そりゃあね、俺が怪我しても、そうか…で済ませてしまったところは、無理でしょ」
職員はケットシーからすると自分の縄張りにいる人間なので、もうそうなると、あそこは行かなくてもいいから、頭を下げるのは向こうからだからってことで、こちらからは出向かない。
「けども君もこっちに引っ越して来て良かったの?」
「家族が生きていた頃はこっちに住んでたから」
「そうなのか」
「うん、まだ知ってるところも残ってた」
「じゃあ、今度案内してよ」
「もちろん、でもあなたは都会の人だから、お口に合うかしら?」
「そこは初心者向けでお願い」
「わかったわ」
この時に彼女が他の地域の出身者でも楽しめる地域名産、グルメを編纂してくれたことが、KCJで話題になる。
「この食材は当たり前に食べられてますが、都会だと料亭で登場します」
そういって管理部が案内してくれと何回も来ることになったという。

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