浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ほどよく磨き上がったサメボディ

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いきなり危険には遭遇するものである。
エレベーターを待っていた。
(早く来ないかな)
チン!
待ちかねたエレベーターが開くと、ガラの悪い男が乗っていた。
そしてこっちを見る。
「ああん?お前、なんだ?俺の邪魔するのか?」
この人あれだ、今日はナイスショットでも狙うんですか?な奴を手に持ってるし、なんかさ、微妙にそれ曲がってない?それじゃあ、いい記録目指せないんじゃないんですか?
なんて親しい仲ならばいってたかもしれない、でもそいつは。
「その目が気に入らないんだよ」
振り上げたので、目を瞑って、頭を守った。
ボスン
なんか自分の前辺りで止まったなと思ったら。
「なんだお前?いいよ、機嫌がちょっと悪かったところだから、叩かせろよ」
「サッ」
んなわけないでしょ。
守るために受け止めるが、そのままのわけがない、サメはそのまま男を飛び付き拘束すると。
「痛てぇ、助けてくれ、サメに襲われる」
さっきまで加害者だったことを忘れたかの台詞を口にしだした。
しかしだ、そんなことサメあるある。
「サッ」
撮れてる?
「サッ」
バッチリ
ちゃんと証拠の動画は撮影しているのである。


「しかしですね、守るためにあえて受けるのはわかりますが、サメはあの程度じゃ痛くないとはいいますが、見てるだけでこっちが痛い」
「色々と考えたんだけどもね、弟子達はあれが一番やりやすいんだって」
だってKCJの戦闘許可証ぐらいもっているならばともかく、そうでないなら、いい音はするけども、何をやってるの?ぐらいの感じ。
「庇うというあの動きは、自分達の群れの子供を守る動作なんだよ」
忍ジャメは、河川ザメというサメなのだが、頭・首、そこから背中にかけてが特に丈夫な作りになってる。
人間が使う刃物だとツルっと滑るし、また今回のような鈍器だと、一点の衝撃を体全体から受け止め流すデザインになってる。
「山だと熊か、海だと濡れたらシャチとかに噛まれそうになっても、ゴムみたいな、とらえれない構造になってるし、我々とは違う作りなんだよ」
そんな生き物にこの老紳士は忍術を教えました。
そう、この人は忍ジャメの棟梁だよ!
「確かに人である我々からせると、申し訳なさが一杯ではあるが、件のエレベーターの男のことはどうするんだ?あれはたまたま忍ジャメが干渉したが、そうでなければ…」
「怪我だけでは済まなかったでしょうね」
「だろうな、日頃から気に入らないことがあれば暴力という選択肢を選んでしまう人間だしな」
「ままならないですね」
「それは人生、いやこの世というもののしょうがないところだよ。そして忍ジャメがあのまま山にいるよりはここにいた方がいい」
「頭領?」
何かあったがその言葉はでない。
「本来私には仕える主人があり、そのご子息は私には息子というか、孫というか、大事な存在ではある」
「大変なことがそちらであったのはこの間お聞きしましたが、何故に忍ジャメをそのままお仕えという形にしなかったのでしょ?」
「それは異端だからな、引き際はやはりあそこであったよ、たまにやはり忍ジャメにいてもらった方が良かったと言われることはあるが、それでもあそこは引いて、ただそのままにすると、それはそれでまたいらぬ噂を立てられるからな、こちらの地で、治安を守るために働くことになるとは思わなかったが」
「これは誰が言い出したんです?」
「本来は忍ジャメ達がやることではなかったのだ、治安のための嘱託契約は誰かに引き受けてもらう必要があったが、決まらなかったんだよ」
「どうしてです?」
「忍ジャメ達が今まで確保した事件や事故を見よ、あれを人の力で防ぐとしたら?」
「無理ですね、いきなりエレベーターを待ってたら、鈍器持った男現れて、絡まれたら向こうの気が済むまで暴力をふるわれてるでしょうよ」
「そうだろうな、私もそう思う、KCJの戦闘許可証制度が民間の資格ではあるが、広く名前が知られる前は、個人が名前を高めるために色々やるしかなかったのだ、あちらの業界が人助けをするのはそのためだ、そこから名前が広がれば、仕事が向こうからやって来るからね」
「それって上手く行くんですか?」
「意外とね、でも実力と見合うかは別問題、私としては資格がその悪習を断ち切ってくれたことには感謝すらするよ、この地域のそういった組合も古いから、おそらくまだ項目としてはあるんじゃないかな、人助け、人身救助に関しての努力義務という奴だ」
「名前を売らなくてもいいのならば、それをこなしている人は…覆木(おおうき)さん達ぐらいかな」
「覆木くんたちはそうだろうな」
「お知り合いですか?」
「そこまでは…昔、挨拶をしたことがあるぐらいだな、飲み仲間の一人が覆木くんをすごい誉めててな、それで何度かみたいな、縁とは不思議なものだよ、忍ジャメを育ててなかったら、またこうして名前を聞くとは思わなかっただろうし」
「忍ジャメをあの時育ててなかったら、嘱託契約できる状態じゃなかったでしょうからね」
この頭領の話し相手になってるのは、先日仕事がない、食べるものないで救われた青年で、現在忍ジャメの嘱託契約地域中心の仕事をしており、今日は里からやってきた頭領から街を案内してほしいと、それであちこち物見遊山というやつだ。
「面白いことを言うな、何故に忍ジャメでなかったら、嘱託契約はできないと?」
「他のサメ、KCJに出入りするときに見たりしますが、あのサメ達だと気まますぎるから、同じサメでも大分違うんだなと」
「そうだな、忍ジャメはきちんと修行しているから、河川ザメの欠点というあの気ままさが薄いんだよ」
「忍ジャメが犬系っていうんですかね、警察犬とかみたいなああいう感じかな、それに比べると他の河川ザメは猫っぽいから、KCJの人たちとも上手くやれるんじゃないんですかね」
「そうかもな、そうか、そんなに違うか…」
「ええ、だからすんごい仕事しやすいですよ、拾ってもらって良かったなって思います」
「そんな…いや、他にもいい仕事が…」
「ないですよ、頭領は世間知らずなんだから、普通の人はね、電気代1ヶ月2000円しない生活はできないの」
「そこは忍びに徹していたからできるのであってな」
「この世の大変さを全部忍者だからなんとかできますとかしないで、そうじゃない人たちはどうすればいいのってなるから」
「…すまん」
「たぶんこれからもっと人の世は荒れますし、この世、この街もただじゃ済まないのかなって」
「そうならないと思うと言ってやれたらいいんだがな」
「ああやっぱりそうなんですか」
「それは薄々みんな感じてるでしょ、でそこからどうするかって考えているところだ、それは人間以外の種族もね、ただまあ、河川ザメは変わらないかな、世界がもう終わりますでも呑気だろうし」
そしたらこの星はサメの星になるが、サメとしては人間が、日本人がいなくなったら…

「サッ」
「どうしたの?サメ君」
なんか不安そうな顔をしていたので。
「はい、この椅子に座ってください」
そういって椅子を出して座らせた後に。
「お客さん、今日、どうします?ピカピカにします?」
サメホッと製サメ磨きクロスざらざらを真中(ただなか)は出して、サメ君に聞いてくる。
「サッサッ」
「うちの磨きはいいよ、艶がでないように渋く仕上げるよ」
忍ジャメになる前は輝くぐらい磨いていたが、それだと任務に支障が出るので、今は磨きかたを変えている。
「これでヨシと」
ほどよく磨き上がったサメボディ。
サメくんの方も鏡を見てご機嫌になっている。
あの日、酔っぱらってどこから連れてきたのか未だにわからないサメであったが、もう真中にとってはかけが得ない家族なのであった。

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