浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ホテル ニ デル サメ

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「当ホテルにようこそ、しかし、お客様が宿泊する前にとても大事なことを伝えなければなりません。…このホテルはサメが出ます」
「サメだって寝ぼけているのか?それにもしもサメが出たら、俺が殴り返してやるよ!」
「そうですか、私はマネージャーとして説明はいたしましたので、こちらにサインを」
そういって説明を受けました、同意の上で宿泊いたしますに署名をした。
「こちらがお部屋のキーでございます、どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ」
休みはどっかに行こうと思ったが、ホテルが見つからなかった、それなら現地に行って飛び込みでならばなんとかなるだろうと思って、掛け合ってみたがダメだったのだが、このホテルならばおそらく…と紹介されたのがここであった。
古くて汚いのかと思ったが、そうではない、ロビーで他の客がワイワイ言ってるのをみると、そう悪くはないだろう。
ガチャ
部屋も綺麗だし、これはラッキーと、あぁ、そうだ、コンビニで何か買ってこなきゃな。
「ギャァァァァァ!」
そこでホテルの廊下から叫び声が聞こえる。
「えっ?なんだ?」
どういうことか、イマイチ飲み込めない。
酔っ払った客でも出たんだろうか?それは嫌だな、そんなのに絡まれたら、楽しい気分は台無しである。
最近はそういうクレーマーみたいなのが多いから、あ~やめた、やめた、朝になるまで外出るのやめておくか、なんだよ、せっかくいい気分だったのに。
そういって風呂の準備をする、部屋がその影響で湿度上がっても嫌だなと換気扇を回しまくる。
ゆっくりと風呂にするか!
そう思って、時間を気にせずに風呂の時間にする。
浴室にいたせいで、室内にいれば聞こえたであろう、廊下からの。
「もうこんなところに泊まれるか!」
とか。
「なんだ、この臭いは!」
という騒ぎも、シャワーの音で聞き逃した。
生臭い臭いもやけに性能がいい換気扇と、廊下に置かれた空気清浄機のおかげで短時間で綺麗になってたせいで、そちらもこの部屋にいる客は知らないのである。
ルルルル
そこにフロントからの電話。
その時はドライヤーで髪を乾かしていたし、履歴が出ないタイプの電話なので、電話が来たことさえも知らないだろう。
「あ~いいお風呂だった」
運がいいのか悪いのか、このお客さんは翌日まで無事に違和感なく生き延びた。
「おはようございます、お客様、お元気で何よりです」
そう昨日のマネージャーがチェックアウトの時に声をかけたが、ずいぶんと変わった挨拶だなぐらいだったし、やっぱり昨日の叫び声は酔っぱらいが何かしらしたのだろうか、清掃の人たちが何人かで業務用洗剤片手に、ゴシゴシと洗っている。
「えっ?お前、あそこ泊まったのかよ」
この間の休み、どこか行った?と聞かれたので行き当たりばったりの旅をした、そこで変なホテル、サメが出るホテルに泊まったという話をしたら、驚かれた。
「サメって、ただのホテル名じゃないの?」
ホテルの名前は「ホテル ニ デル サメ」である。
「いや、あそこは出るって話だよ」
「本当?俺は何もでなかったけどもさ」
「そもそもそう簡単にあそこは泊まれないんだけどもさ、予約サイト?」
「いや、行き当たりばったりって行っただろう?だから向こうでホテル探したら、他のホテルからうちは一杯だからここならばどうですか?って紹介されたら泊まったの」
「それで泊まれるのかよ、でホテルとしてはどうなの?」
「安いからどうなのかなって思ったんだけども、古いけども綺麗だったって感じだな、空調とかもきちんとメンテナンスしているのか快適だったし、でも安いからじゃない?変な客、どうも俺が止まったときに酔っぱらいがなんかしたらしくてさ、次の日に清掃会社が来てて大掃除してたもん」
「やっぱり安くていいって難しいんだな」


映画 ホテル ニ デル サメの公開が終わると、サメ兄弟のトラジとタカミのトークタイムが始まりました。
「これは原作者の方がある地方に行った際の実話をヒントにしたお話だと、文通でお聞きしました」
「お返事によると、そこは人口減で、特に名産もなく、観光地でもないところなんですが、全国のニュースで取り上げられる事件が起きたら、宿泊施設が予約がとれないほどになったと、そして定期的に悲惨な時間を、それこそ話題になるような事件を起こせば、町おこしになるんじゃないのと考え、定期的に被害者が出るようになったというところから、現実はグロいから、代わりにサメを出せばいいんじゃないかなで執筆を始めたそうです」
えっ?何?ただのサメ映画かと思ったら、むしろそっちの元になった実話の方が気になるのだが。
サメ兄弟も気になったので、作者にもう一度質問をしても、その質問だけは申し訳ありません、どこの地域かは教えることはできませんが、今もそこでは起こしてますよとだけは教えてもらった。
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