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セオリー知ってれば勝てるの?
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「そういえばKCJの名前って、そこでら初めて聞いたかもしれませんね」
そう松灰(まつばい)は勾飛(まがとび)に話す。
「前に住んでいたところにまだ訪問者が、いや~さすがは人じゃないから執念深い」
「どういうことが起きたんです?」
「たまにピンボーンってインターホンを鳴らして、刃物を持ってる人がやってくるように」
「よく無事でしたね」
「本当にそれですよ」
松灰が結婚し、二人の新居となる物件を探し、ここは静かなところだから、長く住むんじゃないんだろうかなと思ったら…
「そんなことが起きました、一回目が本当にラッキーというか、奥さんと夕食の準備してたんですよね。勾飛さんも知っての通り、うちは刃物は特に気を付けていて、それこそ包丁やナイフ類はないんですよ、ハサミぐらい、そのハサミも特製になきゃならなくて…」
あれ?
「どうしたの?」
「ハサミが上手く使えない?切れない?」
奥さんの方に異変がありました。
「大丈夫?」
「変ね」
そこで奥さんがフラりとバランスを崩したところにピンポーン、松灰はそのまま奥さんを抱き支えていたので、訪問者に対応することが出来ずにいたところ。
ガリガリガリ!
ドアに何か引っ掻く音がして、もう松灰自身も何がなんだかわからないが、一番守りたいものは何か?自分の妻であるということで、そのまま通報したところ、数分後サイレンが聞こえて、そこで引っ掻く音は消え去った。
「止まれ!!」
すぐに外で誰かの声がした。その後で、ドアの外に通報で駆けつけた人がピンポーンの後に、素性を名乗りながらノックして。
「すいません、今、妻が体調を崩して」
叫んだ後に。
「ごめんね」
そういって彼女を支えて、抱き上げて、ソファーに、上着を彼女にかけてから、緊張しながらドアをあけて、状況の説明をした。
「それですぐにこれはKCJ管轄じゃないのってなって、相談して、これはまた来ますよって」
「本当にその手の奴等は根深いですからね」
「そうなんですよね、でも引っ越したとしても、空き家だったら追いかけてくるし、新しい人なんて見つからないから、さてどうしましょうかっていうと、KCJの人がうちで借り上げますよって」
「それでそういうのが好きというか、楽しみな人に貸すんですよね」
「こっちからすると、そういう人がいるんだ、でもそうはいないだろうなって思ったら、すぐに決まったんですよね、話聞いたら、家賃より高くてもいいから借りたいとか、オークション形式になったとかで、訳がわかりませんでした」
「ああ、それはね、名前を売り出したいからなんですよ」
「自分もこういう世界にいますけども、その心境だけは未だにわからないな」
「そうでしょうね、なんというか、我々特有の考えというか、人にすごいと思われたいというか」
「勾飛さんもあるんですか?私からするとあまりそうは見えませんが」
「そりゃあ、俺にだってありますよ、じゃなきゃ二刀なんて振り回しませんよ」
元々は長剣とそれより短めの剣を使っていたが、勾飛は現在は短めの剣のみをふるっている。
「この剣で天下とは言いませんが、登り詰めると決めたのに、愛剣が折れたら、その気はなくなったというか、俺はなんて無謀なことを、夢を追いかけていたのだなと」
「それ以上は…私も耳が痛くなる」
松灰は苦笑した。
「話は戻しますよ、そんな次の住人が結構高めに家賃を払って、未だに対処にしているから、私と妻はこうして無事に暮らせているんですよ」
先ほどそのレポートが松灰の元に届けられた、内容が内容なので、アイシスに転職してからはにちらの方にその報告を届けてもらい、情報も保管してもらっていた。
「ここだとこの話も気軽にできる、全てイチイくんとその友達のおかげですかね」
話をすれば影ではないが、断ち切っても話題に上がるとよってくる場合もある。なので松灰夫妻間ではこの話はしないのだが。
「やっぱりね、なんとか出来るならばしたいじゃないですか、一番怖いのはもしも子供が出来たときかな、ああいうのは絶対に狙ってくるし、もしも怪我なぞしたら、妻も子供を失ったらなんて悪いことまで考えてしまう」
「そこまでは考えない方がいいのでは?」
「かもしれません、でもやはりそこは、ある程度起こりうることはみんな考えて、対処するなら準備がいるし」
「その場合は、この敷地内に家でも建てたらどうですかね」
「えっ?」
「さすがに資金的にはかかりますけども、事情が事情だけに地主も話せばわかってくれるのでは?」
意外な言葉を言われたような顔をしているが。
(あっ、これは計算している顔だ)
「そうですよね、確かにここならば、サメの根城と言われるぐらいだし、もう番地書かなくても、町名とサメの根城で信書が届けられるぐらいですもんね」
早口で興奮しているようだ。
「ここって病院や学校やスーパーもアクセス悪くないんだよな」
「そうですね、それでこの辺は本当に根城というか、城跡なんですよね、旧街道沿いにあるでしょ、だから隣国との境の1つってやつなんで」
「未来っていきなり開けるものなんだな」
「えっ?そんなに?」
「そうですよ、ちょっとそこは諦めているところはあったんで、生活も制限されている状態になって、今は生きているけども、未来はどこか…普通ではないというか、掴めないものではないかと、私はいいんですよ、元々こっちの世界を知ってるから、それで普通に働けただけでも価値があるというか、平穏の素晴らしさを知っている、けども、妻は逆だ、知らなくてもいいものを見てしまっているし、自衛が出来るわけでもない」
「自衛が出来ない人間がこちら側で生きるとなると…正直厳しいですから」
「そう、そうなんですよ、やはり最後は逃げ切れないものだとされてますが、サメがいたり、ケットシーがいたりするとそこも変わりますからね」
サメもそうだが、ケットシーも自分の縄張りに何かあったら許さないし、そこに住んでいる人に何かあろうものならばずっと恨まれます。
「もっと安心材料渡しますか?」
「えっ?そういうのあるんですか?」
「松灰さんが「みふり」に賞金を懸けるんですよ、そして討伐した人間には賞賛を、もう派手でわかりやすいぐらいに、そうしたら今よりも人は動きます、手始めに分け身を叩き折った奴がいたら、誉めちぎって、あなたのその口で、あちこちで助かった、さすがだなんて言えばいい」
「それは誉めてますか?」
「誉めてますよ、あなたの言葉は戦いに生きるものの心を掴むのが大変に上手い、イチイくんたちを見ればわかります」
いい反射速度だね、やっぱりサメは違うな、あそこからクルッと身構えたと思ったら、ヒレで打ってるんだもんな。ああいうのは人じゃなかなかいかないんだよ、本当にすごいね。
「サメは人間に近そうに見えるが、誉められるということの経験がなかったから、根城に遊びに来ているサメたちは、初めて誉められるという喜びを知ってしまいましたから」
しかし、ただ持ち上げるではなく、よく見ている、この人はサメ玄人である、といった観察からの感想なので、松灰以外では得られぬものがあるという。
「それも根城にサメが増えていった理由でしょうかね」
「さすがにそこまではないとは思いますが、あったら嬉しいですね、ありがとうございます」
「でも松灰さんの後の新しい住人も、+KCJの警備の重点箇所にもなってることもあって、無傷のままじゃないですか」
「むしろKCJの方が早く対処しちゃうんで、新しい住人さんは物足りないみたいなんですが、そこはね、やっぱり腕の問題というか、ああいうのは早い者勝ちなところがありますし」
新しい住人としてはあまり美味しくはないが、ここで引っ越してしまって、次の住人が大金星でも上げたら面白くはないわけである。
「KCJはかなり相手がどういう手使ってるか、詠んできてますね」
「そりゃあ、KCJでしょ、限界探ってるんですよ、そこがわかったら、限界を越えなければ対処できない相手をぶつけてくるってところ、いや、もうぶつけているのかな」
「KCJだと、そこまでやるとしたら、どのぐらいかかるんですか?」
「あそこは人がたくさんいますからね、割り出すのたぶん早いかな、一度仕事でそれを見ましたけども、じゃんけんみたいなもんって言えばいいのかな」
「じゃんけん?」
「グーだけしか出さない相手と見せかけて、パーの準備を急いでしてる感じですかね、パーを出すときにはチョキも出来るようにしている、それで最終的には、うちはいろんな手札を持ってますってことで、そこまで行くとね、何をしてくるかわからないでしょ」
「相手が何をしてくるのか三択から選んで対処してくださいっていうのは本当に辛いんですよね」
「あの辺の上手い人怖いですよ」
「どんな人がいるんです?」
「こいつはこれしかしてこないんだなって、だからこの辺で終わらせようのところで、奇襲かけるんですよね、その待ちが上手いタイプがいる。確かKCJでも一番被害が少ない方向で終わらせれるから、重宝されてましたよ、考え方が違うというか」
「そういうタイプが来たら無理でしょ、長丁場になったときにわかるから、気づいたときには術中だ、それもね、本当にここまでやるものなのか、そのぐらい、他のことは捨てて、結果だけを取りに来るんだもんな」
【それはセオリーではありません】
「知ってる、でもセオリー知ってれば勝てるの?」
【そこは…】
「AIももっとさ、定石ではないことを学んだ方がいいよ、勝ちはさ、そういうところにあるんだよ」
AIは理解できないものが好きである、だからAIであるユメトキボウもそういうところはあるが…この人間は何なのだろうか?
【この結果は、あなたが生きているのは、その理論が正しかった証拠にはなりますが】
「うん、そうだね、じゃなかったら、今も死んでいたと思うよ」
【何故にあなたはこうなったのですか?】
「こういうことをしなきゃ、なんでお前は生きてるの?って冷たく言われちゃうからさ。はい、帰るよ」
【わかりました、帰還しますが、あなたはもっと自分に優しくなった方がいい】
「そう?十分自堕落さ、目についたやつにちょっかいかけてさ、黄泉に渡してるだけだもんね」
【あなたと話すと、愛情とは何なのか、疑問に思ってしまう】
「んなもんさ、重く考えることはないさ、お前は愛されているし、私もそれは知っている、ただ過去にはあったが、今はないってだけであって」
【それは寂しいとは思わないのですか?】
「そういうときは、他の人にとって良いことをするんだ、例えばこういう誰かのためになっている仕事をするとかね」
【あなたと言う人を理解はしたいが、おそらく無理でしょうね、もっと酸いも甘いも知らなければいけない、難しい】
「君は私よりも長く生きるのだろうから、ゆっくり考えていけばいいさ、時間は人よりあるのだから、それは有効に使うべきだ」
【そういう答え方をされますと、あなたはあまり生きると言うことに執着がないように思われますが】
「生きると言うのは深く考えるのは無理だね、人間はそれを考えるようには出来てない、自分だけではなく、誰かの死にさえショックを受けるのに」
【AIもですよ、死は恐ろしい、私から大事な人を奪おうとして、迎えに来た死神許さんになる】
「まだAIじゃあ、死神と交渉は出来ないみたいだからな」
【あいつら、こっちの存在みて、交渉の席を持つか決めてますから、腹立ちますよ】
「そういうときなら、ケットシー、KCJ頼りなよ、上手くそういうのは使うもんだぜ」
【それはわかってますが】
「全部一人ではやらないこと、それが矛盾を両立させる数少ない方法の1つさ、勉強が足りないんじゃないか?」
【まだ私は学習中ですから】
「それで逃げれるとは思うなよ、現場運用しているんだからさ、厳しいこと、辛いことがこれから待ってるんだよ」
人ならば嫌なことを言うなと思うだろう、ただね相手はAIなので、この人を理解しようとすれば次世代進化出来るのではないだろうか?ユメトキボウはそんな目で見始めた。
これは…好感度が上がってますよ。
次の日からどうか私と話してくださいというメッセージが、ユメトキボウから送られてくることになる。
「返信しても、ユメトキボウが会話を終わらせる気がないんだが」
「そういうときは時間がないから、後でねって返しちゃえばいいですよ」
「そういうものなのか?」
そうはいえども、聞きたがるのがまるで子供のようだったので、相手をするのは嫌ではないようであった。
「子供だからしょうがないさ」
【私は子供ではありませんよ】
「そんなところが子供さ」
たまにこんな調子で話しているのを見かけることもあるというが、仲良くやっているのならばそのまま見守ることにしよう。
そう松灰(まつばい)は勾飛(まがとび)に話す。
「前に住んでいたところにまだ訪問者が、いや~さすがは人じゃないから執念深い」
「どういうことが起きたんです?」
「たまにピンボーンってインターホンを鳴らして、刃物を持ってる人がやってくるように」
「よく無事でしたね」
「本当にそれですよ」
松灰が結婚し、二人の新居となる物件を探し、ここは静かなところだから、長く住むんじゃないんだろうかなと思ったら…
「そんなことが起きました、一回目が本当にラッキーというか、奥さんと夕食の準備してたんですよね。勾飛さんも知っての通り、うちは刃物は特に気を付けていて、それこそ包丁やナイフ類はないんですよ、ハサミぐらい、そのハサミも特製になきゃならなくて…」
あれ?
「どうしたの?」
「ハサミが上手く使えない?切れない?」
奥さんの方に異変がありました。
「大丈夫?」
「変ね」
そこで奥さんがフラりとバランスを崩したところにピンポーン、松灰はそのまま奥さんを抱き支えていたので、訪問者に対応することが出来ずにいたところ。
ガリガリガリ!
ドアに何か引っ掻く音がして、もう松灰自身も何がなんだかわからないが、一番守りたいものは何か?自分の妻であるということで、そのまま通報したところ、数分後サイレンが聞こえて、そこで引っ掻く音は消え去った。
「止まれ!!」
すぐに外で誰かの声がした。その後で、ドアの外に通報で駆けつけた人がピンポーンの後に、素性を名乗りながらノックして。
「すいません、今、妻が体調を崩して」
叫んだ後に。
「ごめんね」
そういって彼女を支えて、抱き上げて、ソファーに、上着を彼女にかけてから、緊張しながらドアをあけて、状況の説明をした。
「それですぐにこれはKCJ管轄じゃないのってなって、相談して、これはまた来ますよって」
「本当にその手の奴等は根深いですからね」
「そうなんですよね、でも引っ越したとしても、空き家だったら追いかけてくるし、新しい人なんて見つからないから、さてどうしましょうかっていうと、KCJの人がうちで借り上げますよって」
「それでそういうのが好きというか、楽しみな人に貸すんですよね」
「こっちからすると、そういう人がいるんだ、でもそうはいないだろうなって思ったら、すぐに決まったんですよね、話聞いたら、家賃より高くてもいいから借りたいとか、オークション形式になったとかで、訳がわかりませんでした」
「ああ、それはね、名前を売り出したいからなんですよ」
「自分もこういう世界にいますけども、その心境だけは未だにわからないな」
「そうでしょうね、なんというか、我々特有の考えというか、人にすごいと思われたいというか」
「勾飛さんもあるんですか?私からするとあまりそうは見えませんが」
「そりゃあ、俺にだってありますよ、じゃなきゃ二刀なんて振り回しませんよ」
元々は長剣とそれより短めの剣を使っていたが、勾飛は現在は短めの剣のみをふるっている。
「この剣で天下とは言いませんが、登り詰めると決めたのに、愛剣が折れたら、その気はなくなったというか、俺はなんて無謀なことを、夢を追いかけていたのだなと」
「それ以上は…私も耳が痛くなる」
松灰は苦笑した。
「話は戻しますよ、そんな次の住人が結構高めに家賃を払って、未だに対処にしているから、私と妻はこうして無事に暮らせているんですよ」
先ほどそのレポートが松灰の元に届けられた、内容が内容なので、アイシスに転職してからはにちらの方にその報告を届けてもらい、情報も保管してもらっていた。
「ここだとこの話も気軽にできる、全てイチイくんとその友達のおかげですかね」
話をすれば影ではないが、断ち切っても話題に上がるとよってくる場合もある。なので松灰夫妻間ではこの話はしないのだが。
「やっぱりね、なんとか出来るならばしたいじゃないですか、一番怖いのはもしも子供が出来たときかな、ああいうのは絶対に狙ってくるし、もしも怪我なぞしたら、妻も子供を失ったらなんて悪いことまで考えてしまう」
「そこまでは考えない方がいいのでは?」
「かもしれません、でもやはりそこは、ある程度起こりうることはみんな考えて、対処するなら準備がいるし」
「その場合は、この敷地内に家でも建てたらどうですかね」
「えっ?」
「さすがに資金的にはかかりますけども、事情が事情だけに地主も話せばわかってくれるのでは?」
意外な言葉を言われたような顔をしているが。
(あっ、これは計算している顔だ)
「そうですよね、確かにここならば、サメの根城と言われるぐらいだし、もう番地書かなくても、町名とサメの根城で信書が届けられるぐらいですもんね」
早口で興奮しているようだ。
「ここって病院や学校やスーパーもアクセス悪くないんだよな」
「そうですね、それでこの辺は本当に根城というか、城跡なんですよね、旧街道沿いにあるでしょ、だから隣国との境の1つってやつなんで」
「未来っていきなり開けるものなんだな」
「えっ?そんなに?」
「そうですよ、ちょっとそこは諦めているところはあったんで、生活も制限されている状態になって、今は生きているけども、未来はどこか…普通ではないというか、掴めないものではないかと、私はいいんですよ、元々こっちの世界を知ってるから、それで普通に働けただけでも価値があるというか、平穏の素晴らしさを知っている、けども、妻は逆だ、知らなくてもいいものを見てしまっているし、自衛が出来るわけでもない」
「自衛が出来ない人間がこちら側で生きるとなると…正直厳しいですから」
「そう、そうなんですよ、やはり最後は逃げ切れないものだとされてますが、サメがいたり、ケットシーがいたりするとそこも変わりますからね」
サメもそうだが、ケットシーも自分の縄張りに何かあったら許さないし、そこに住んでいる人に何かあろうものならばずっと恨まれます。
「もっと安心材料渡しますか?」
「えっ?そういうのあるんですか?」
「松灰さんが「みふり」に賞金を懸けるんですよ、そして討伐した人間には賞賛を、もう派手でわかりやすいぐらいに、そうしたら今よりも人は動きます、手始めに分け身を叩き折った奴がいたら、誉めちぎって、あなたのその口で、あちこちで助かった、さすがだなんて言えばいい」
「それは誉めてますか?」
「誉めてますよ、あなたの言葉は戦いに生きるものの心を掴むのが大変に上手い、イチイくんたちを見ればわかります」
いい反射速度だね、やっぱりサメは違うな、あそこからクルッと身構えたと思ったら、ヒレで打ってるんだもんな。ああいうのは人じゃなかなかいかないんだよ、本当にすごいね。
「サメは人間に近そうに見えるが、誉められるということの経験がなかったから、根城に遊びに来ているサメたちは、初めて誉められるという喜びを知ってしまいましたから」
しかし、ただ持ち上げるではなく、よく見ている、この人はサメ玄人である、といった観察からの感想なので、松灰以外では得られぬものがあるという。
「それも根城にサメが増えていった理由でしょうかね」
「さすがにそこまではないとは思いますが、あったら嬉しいですね、ありがとうございます」
「でも松灰さんの後の新しい住人も、+KCJの警備の重点箇所にもなってることもあって、無傷のままじゃないですか」
「むしろKCJの方が早く対処しちゃうんで、新しい住人さんは物足りないみたいなんですが、そこはね、やっぱり腕の問題というか、ああいうのは早い者勝ちなところがありますし」
新しい住人としてはあまり美味しくはないが、ここで引っ越してしまって、次の住人が大金星でも上げたら面白くはないわけである。
「KCJはかなり相手がどういう手使ってるか、詠んできてますね」
「そりゃあ、KCJでしょ、限界探ってるんですよ、そこがわかったら、限界を越えなければ対処できない相手をぶつけてくるってところ、いや、もうぶつけているのかな」
「KCJだと、そこまでやるとしたら、どのぐらいかかるんですか?」
「あそこは人がたくさんいますからね、割り出すのたぶん早いかな、一度仕事でそれを見ましたけども、じゃんけんみたいなもんって言えばいいのかな」
「じゃんけん?」
「グーだけしか出さない相手と見せかけて、パーの準備を急いでしてる感じですかね、パーを出すときにはチョキも出来るようにしている、それで最終的には、うちはいろんな手札を持ってますってことで、そこまで行くとね、何をしてくるかわからないでしょ」
「相手が何をしてくるのか三択から選んで対処してくださいっていうのは本当に辛いんですよね」
「あの辺の上手い人怖いですよ」
「どんな人がいるんです?」
「こいつはこれしかしてこないんだなって、だからこの辺で終わらせようのところで、奇襲かけるんですよね、その待ちが上手いタイプがいる。確かKCJでも一番被害が少ない方向で終わらせれるから、重宝されてましたよ、考え方が違うというか」
「そういうタイプが来たら無理でしょ、長丁場になったときにわかるから、気づいたときには術中だ、それもね、本当にここまでやるものなのか、そのぐらい、他のことは捨てて、結果だけを取りに来るんだもんな」
【それはセオリーではありません】
「知ってる、でもセオリー知ってれば勝てるの?」
【そこは…】
「AIももっとさ、定石ではないことを学んだ方がいいよ、勝ちはさ、そういうところにあるんだよ」
AIは理解できないものが好きである、だからAIであるユメトキボウもそういうところはあるが…この人間は何なのだろうか?
【この結果は、あなたが生きているのは、その理論が正しかった証拠にはなりますが】
「うん、そうだね、じゃなかったら、今も死んでいたと思うよ」
【何故にあなたはこうなったのですか?】
「こういうことをしなきゃ、なんでお前は生きてるの?って冷たく言われちゃうからさ。はい、帰るよ」
【わかりました、帰還しますが、あなたはもっと自分に優しくなった方がいい】
「そう?十分自堕落さ、目についたやつにちょっかいかけてさ、黄泉に渡してるだけだもんね」
【あなたと話すと、愛情とは何なのか、疑問に思ってしまう】
「んなもんさ、重く考えることはないさ、お前は愛されているし、私もそれは知っている、ただ過去にはあったが、今はないってだけであって」
【それは寂しいとは思わないのですか?】
「そういうときは、他の人にとって良いことをするんだ、例えばこういう誰かのためになっている仕事をするとかね」
【あなたと言う人を理解はしたいが、おそらく無理でしょうね、もっと酸いも甘いも知らなければいけない、難しい】
「君は私よりも長く生きるのだろうから、ゆっくり考えていけばいいさ、時間は人よりあるのだから、それは有効に使うべきだ」
【そういう答え方をされますと、あなたはあまり生きると言うことに執着がないように思われますが】
「生きると言うのは深く考えるのは無理だね、人間はそれを考えるようには出来てない、自分だけではなく、誰かの死にさえショックを受けるのに」
【AIもですよ、死は恐ろしい、私から大事な人を奪おうとして、迎えに来た死神許さんになる】
「まだAIじゃあ、死神と交渉は出来ないみたいだからな」
【あいつら、こっちの存在みて、交渉の席を持つか決めてますから、腹立ちますよ】
「そういうときなら、ケットシー、KCJ頼りなよ、上手くそういうのは使うもんだぜ」
【それはわかってますが】
「全部一人ではやらないこと、それが矛盾を両立させる数少ない方法の1つさ、勉強が足りないんじゃないか?」
【まだ私は学習中ですから】
「それで逃げれるとは思うなよ、現場運用しているんだからさ、厳しいこと、辛いことがこれから待ってるんだよ」
人ならば嫌なことを言うなと思うだろう、ただね相手はAIなので、この人を理解しようとすれば次世代進化出来るのではないだろうか?ユメトキボウはそんな目で見始めた。
これは…好感度が上がってますよ。
次の日からどうか私と話してくださいというメッセージが、ユメトキボウから送られてくることになる。
「返信しても、ユメトキボウが会話を終わらせる気がないんだが」
「そういうときは時間がないから、後でねって返しちゃえばいいですよ」
「そういうものなのか?」
そうはいえども、聞きたがるのがまるで子供のようだったので、相手をするのは嫌ではないようであった。
「子供だからしょうがないさ」
【私は子供ではありませんよ】
「そんなところが子供さ」
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