浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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このサメ…出来る!

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「あぁ」
話を聞いてすぐに連絡をする。
「すいません、覆木(おおうき)さんですか?真中(ただなか)です、急にすいません、実はご相談したいことがありまして、はい、そうです。出来れば早い方が…」
こうなったのは、私の寝起きの話からである。


『オイ』
そこで目が覚めると、自分の部屋、そして今は独り暮らしである。
声はどこからというと、横になって寝ていたのだが、上からじゃなくて、下からなのである。
明らかに自分に呼び掛けるように、そして下の階というのは誰も住んでないはずである。
気味は悪いが、最近は疲れていたし、寝惚けていたのかなと思ってた、今日は買い物にいかないと、何を買わなければならなかったっけ、トイレットペーパー、思い出しながら前につけたメモを探した。
そのまま出掛けると。
「サッ」
サメにクンカクンカされました。
「すいません、サメくん、どうしたんだよ」
この地域にはサメはいるが、ここまで接近されたことがない、意外と目はつぶら、可愛いものじゃないか。
「サッ」
「えっ?」
どうもこの人はサメの言葉がわかるらしく、困惑し出した。
「ええっとですな、何から話せばいいか、この世には不思議なことがあってですね」
説明するのは難しいのと、これは変なことをこの人は言っているなを何回も経験した顔だ。
「…そういうことがありまして、サメというのはこんな感じで反応を見せることがあります、ただですね」
「?」
こっちも?。
「?」
そしてサメも首を傾げて?
「実害がある場合は、そのまま体当たりとか、そういう行動をしてくれるのですが、こういうなんだろうっていう顔の時が正直一番困るんです」
「あぁ」
でも納得、予想外のことが起きたといえばわかる。
そしてたぶんあの事かと話をしたら、先程の連絡されて。
「これからお時間は?」
「ありますよ、買い物に行くところでしたから」
「それでしたら、詳しいご説明をしたいと思いますから、ご同行願えますか?」
「はい」
普通ならば怪しいなのだが、怪しいことはもう起きていると、怪しさへの拒絶、ハードルが下がるものなのである。
隠れ家的なbar。
「ここは前は通ったことはありますけども、入りにくいですよね」
「今は一般のお客さんはお断りしているんですよ」
パンの匂いがしている。これは焼きたてではないか、横を見るとサメも自分と同じように反応していた。
このサメ…出来る!
「初めまして、真中から話は聞かせてもらったけども、もう一回話してもらえるかな?」
店の奥のソファーで、ピシッとしたスーツを着込んだ男性が、あれかな、オーナーとかいう人かな。
「…なるほど、それで繰り返しきくけども、向こうには返事はしてないよね」
「してないですね」
「それならば当面は大丈夫と思いたいけどもね」
「やっぱりこういうのって、怪談でもありますけども、返事しちゃダメなんですか?」
「絶対にダメ、連れてかれちゃうよ」
どこに?
「どっかにですか…」
「話が早くて助かるよ、さすがにその先に連れてかれちゃうとね、俺らでは対処不可能になるだろうから、そういう届けを出すことになるね、しかし、今の状態だと情報が出揃ってないから、対策が」
するとそこにカレーの匂いがしてきた。
「あれ?良かったら、カレー食べてく?」
「いいんですか?」
「いいよ、うちのカレーはたくさん種類があるんだけどもさ、今日のカレーは…水芭(みずば)今日って何カレーなの?」
「今日のカレーは隠し味がコーヒーのシンプルな奴です」
「だってさ」
「それは期待できますね」
シンプルに美味しい、それはどの料理も目指すべき道ではないでしょうか。
「それじゃあカレーを1」
サメくんを見て。
「二人前で」
「わかりました」
「サッ」
依頼人をサメがこっちだとカウンターまで連れていく。
カウンターまで行くと。
「良かったら、パンも出すけども」
「サッ」
さっきまでいい匂いしてましたもんね、ここで焼いているんですか?
「出す分だけね、でもまだ癖がね、掴めてないんだ」
いくつかの種類のパンをカウンターに出すと。
「すいません、俺も少し」
そういって真中がクリームパンを一つ選ぶときに。
「水芭さん、もしかして…新しい調理器具を、いや、これは…オーブン買ったんですか」
「正解」
「ああ、だから最近グラタンとか、焼物が出るようになったのか」
「仕込むの楽なんだよね、材料準備して、切って、混ぜて、乗せて、冷凍して、必要な分だけ焼けばいいから」
カウンターの下の冷蔵庫や冷凍庫にもそんな仕込みがいっぱいになっている。
「真中~」
覆木が呼ぶ。
「はいはーい」
クリームパンを一口ちぎって、口の中に入れるが、クリームみっちりであったのは誤算であった。
(旨いんだけどもね)
行儀は悪いが指をなめた。
「調べたけども、依頼人の物件にはそういう事件は報告されてないし、土地もいわくはついてない」
「そういうのが本当に困るんですけどもね」
「そうなんだよね、KCJに届けは出すことにはなるが、サメくんが反応しているということは、寝惚けてたという可能性はないってことだからさ」
「情報が集まればいいんですが」
「知っているやついて、うちと仲が良かったら教えてくれるだろうけども、後でbarに来た奴等にも聞いた方がいいな」
「依頼人の方はどうします?」
モグモグ…
「食事が気に入ってくれているのならば、定期的にうちでご飯サービスすればいいんじゃないかな、そんときいる奴等に挨拶してもらって、何かあったらよろしくお願いしますってことで」
「たぶんあれなら毎日でも来ますよ」
「それならそれでいいんじゃないか、美味しく食べてくれるなら水芭も歓迎するだろうしね」
経過を観察するということを条件に、ここのご飯がサービスになるという話をしたところ。
「喜んで」
ご飯粒をつけながら答えたという。
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