浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ヒレを合わせる仕草

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パイナップルの匂いがサメたちの鼻に届くと、会話は自然とパイナップルの話になった。
「サッ」
デザートで頼めるのかな?
「サッ」
パイナップル好きなの?
「サッ」
あれは美味しいからな。
「サッ」
確かに旨いな
「サッ」
お前らさ、パイナップルの芯って食べたことある?
「サッ」
芯とは?
「サッ」
人間が食べているところって柔らかいところで、実は真ん中は固いんだって、人間でも食べれなくはないが、固いからそこは食べないそうたんだ。
「サッ」
へぇ、そうなんだ。
「サッ」
その話は弟弟子から聞いたんだけども、弟弟子が世話になっている人たちがいて…


パイナップルの芯は実は人間も食べれると知った水芭(みずば)は、試してみたいと思っていた。それで調べた結果、ドライフルーツにするということで落ち着いた。
ただ何度もいうが固いので、刻んでから、干し、ドライフルーツにし、トッピングとして使うという形にしていた。
ちょうどその頃、事務所の協力者である真中(ただなか)がお酒の失敗で、気づいたらサメを連れ帰っていたこともあって、もう酒で間違いを起こさないということを誓い、いきなり生活を変えても続かないから、今までよく食べていた水芭の調理したものを持ち帰り、連れ帰り、生活を共にするようになったサメくんと食べていたが、サメはよく食べるものである。
いや、食べなくても、それこそ衣食住を川で賄えるぐらい、省エネで生きていけるが、人間の、日本人の食べ物は非常に魅了的。
それ故に最初は葛藤していた。

これは自分が食べていいものか?

まさかそうなるとは思わなかったので、真中は水芭に相談すると。
「元々そんなに高いものではないんだよね」
と答える。
「そうなんですか?」
「それこそ良く食べるからね、美味しくて量もあって、それでいて材料費もそんなにかからなくてで作っているよ」
「えっ?」
「いや、そうだよ、確かに手の込んだものも作れなくはないし、たまに作りたくはなるけども、それより毎日難なくそういうものを用意した出来た方がいいじゃないか」
この人は顔も心も良いのか!
と真中は感じたが、それは知ってたじゃないかということで目を覚ます。
ただ真中くんに言っておくよ、それを受け止めれる人間はなかなか少ないのだ。
というわけで水芭からその話を聞かされた後、サメくんに電話で、この料理は君が気にしなくてもいいぐらいお安い値段で作られているという話を聞くと、サメくんはそこから感謝して(ヒレを合わせる仕草をする)食べるようになったという。
そしてパイナップルの芯の話になったのだが、これもよくサメくんの料理には登場する、消化にも良い酵素が含まれているので、サメの健胃のためにも食べてもらっているが、健胃とか関係なく、今ではくり貫いたパイナップル芯を一口に水芭がカットしたものや、もっと細かくしてもらって、お風呂上がりに製氷した氷の上に乗せて、それをいい音を立てて食べている時もある。

そしてまたKCJの食堂に戻る。
サメの言葉がわかる食堂の人が、パイナップルの芯は美味しいという話をしているのを聞いて、それこそちょうどくり貫いていたパイナップルの芯を食べやすい大きさに切って、そこに加糖のヨーグルトをかけて。
「はい、これサービスだから」
そういってサメたちのテーブルに置いていった。
「…」
皿を見て、そして仲間のサメの目があって、一匹が皿をチョンチョンと触った。あの勇敢なサメたちが、未知との遭遇を前にこんな姿を見せるだなんて、これは…いいですね、いいですよ、なかなか見れる姿じゃありませんね、そう思いませんか?
パク
そんな話を熱く語っている間に一匹が食べた。
カッ!
目が大きくなる。
その反応を見て、旨いのかと他のサメたちは思った。サメは次々と手ではなくヒレを伸ばし、ヨーグルト掛けを食べていく。
一口目の反応は、びっくりしている、ショックを受けているもの、蕩けているもの、それぞれだが好評には違いない。
その様子を食堂の人は軽くメモをしておき、その日の業務報告に廃棄されるパイナップルの芯の活用についてのお願いが書かれることになる。
そこからパイナップルの芯がある場合は、サメ用に提供され、その日余ったものは加工用に回されると話になったが、サメはよく食べる。
だから余る日がとても珍しかった。

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