浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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その人間を犯人であるを証明しなければならない

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「なんかさ、期待はずれだったんだよな」
「KCJのやつ?」
「そう、ユメトキボウだったっけ、もう利用したくないね」
などと話をしている人たちが去ったあと、カフェの客席にいた客、羊皮紙を本体とする男性は。
「おやおや、あれほどまでに人間よりの考えと行動を持つものはいないというのにね…それこそお母様が存命の間は、間違いなく身を削って人のためにあるというのに」

【ここは浜薔薇の耳掃除です】

同僚がやめて、事務所を開くことになった、そして後輩もその再就職先に、その事務所に行くとなってからは特に縁はあった。
だがとある事件の担当者になり、その事件の解決協力のためにその事務所に赴くおなったときに。
(あそこにそういう人員いたっけかな?)
と思いながら、訪問をすることになった。
これはどちらかといえば、KCJが得意としている案件というやつだ。
「そういえば…紹介したことなかったっけ?そうか、それは申し訳ないな、それでたぶんわかってるかと思うが、前はKCJにいた子だよ」
つまりは管理の預かりかと、なんとなく察したが。
「悪い子ではない、そこは間違いない、優秀だし、あっ、もう概要は渡してある」
そういって事務所の、そういえばこの辺は部外者だし中まで来たことはないななんて、思っていた部屋のひとつをノックし。
「どうぞ」
返事があった。
中から聞こえたのは女性の声で。
「昨日話した」
「はいはい、こちらです」
そういって書類を三枚渡した。
「あれ?もしかして解けた」
「解いてますね」
解けた?
解いてますね?
「ああ、そんな顔するよな、ちょっと待って、ああ、この空白を三ヶ所で証明して、証拠を、確かにこれならば、言い逃れはできないだろうな」
「えっ?」
「もう解決しているって話だ、これを見ればわかる」
それはあの事件が過去になったかのような圧縮された三枚であり。
「いや、これは、でも確かに、加害者が特定される…」
「野然(のぜん)くん、ここで休憩して、なんか口にして、自室に戻って今日は出番ないと思うから」
「はい、わかりました」
「というわけで、水曇(みずみ)はこれ持って帰って報告な」
俺は呆気にとられたまま、すぐに戻ることになった。

事件の証拠の中には保存が難しいものがある、それこそ時がたてば消えてしまうことばかり。犯人らしき相手はいても、その人間が犯人であるを証明しなければならない。
そのまま実際に証明できるのかを検証し、俺は忙しく、再び事務所を訪れるのは、事件が俺たちから移管された後であった。
「ん?それじゃあ、俺が付き添ってランチに行く?」
事務所に顔を出したときの世間話から、野然は外に出るときは必ず事務所の人間と一緒であり、自宅も事務所があるビルの中にあったことを知った。
ランチに行きたかったらしいが、俺が来たことで事務所の人たちは書類の確認になるため、ランチを諦めていたところ、一言口にした。
「ああ、そうだな、お前なら大丈夫か、荒風の太刀、その一門なんですよ、こいつは」
「えっ?それなのになんで現場とかじゃなくて一般職なんですか?」
「そりゃあ、デスクワークができるから、俺よりできるんだよ、俺もこいつぐらいできるなら、やめさせてもらえなかったとおもうよ」
「んなことないでしょ」
「お前な、荒風の太刀の一門の厳しさ知ってるでしょうが」
他流試合に出ると、君、強いね、うちの仕事に興味ない?と言われるぐらいには声がかけられます。
「弟子になるのも難しいし、素行が悪いとすぐにやめさせられることは有名では」
「禁止されていることはたくさんあるから、何が面白くて生きているの?って言われたりしてたもんな」
元はまだ日本は都道府県ではなく、藩とか領とか、そんな区分けをされていた時代、交易が盛んな町で一旗あげようとした男が始めた流派で、その町の商人の信頼を得て、男や教え子が商売の安全を守ったことで、今も続いている流派であった。
「でも今の警備の仕事の人たちの方が大変じゃないかな」
水曇は一度はお話をと聞かされていたりはするのだが、ちょっと俺ではそれは守れないなと思って断っている。
「流派の教えとそこまで変わらないんじゃないの?」
「いやいやいや、ちゃんとお酒とか好きなものは食べれるから、俺が話聞いたところって、お酒もな…気軽に飲みに行ける感じでもないし、人間関係も狭まると思うんだよね、そうなるとな、ストレスで長続きしないと思う」
能力的には向いてはいるんだけどもね。
「あっ、それで俺で良ければ付き添うけども」
「いいんですか?じゃあ、お願いします」
外に出てから。
「何食べるか決まってるの?」
「特には決まってなかったんですが」
「じゃあ」
そういって俺は検索して。
「ここは?」
「いいんじゃないですかね」
見つけたレストランに行くことにした。
「一緒に食事は取れるんですか?」
「取れるよ」
「警備のお仕事だと取れない人もいるので、良かった」
「そうなんだよね、そうなると、一緒に同席しても、やっぱり違うんだなって思わない?」
「でもお仕事ですから」
「それはそれ、これはこれ、そういう決まりを守ってくれることはありがたいさ、でも気持ちは実際は一緒にいるのだからっていうのは、伝えた方がいいとは思うよ」
「今度からはそうします」
なんだ、この子はいい子じゃないか。
「そういえばさ」
トントン
音はたてないが、指でテーブルを叩く真似をした。
すると彼女は気づいたようで。
「そうですね」
鞄から何かを探して、未開封ののど飴を、テーブルに9つ並べた。
「このぐらいあれば全部わかるかな」
「えっ?」
聞いたのは、この間の事件の書類の最後にまだ事件は起きると締め括られていた。まあ、これは本気にされてはいないようであったが、気になる一文だったので、これから事件はどのぐらい起きそうなの?の指音文字の質問に彼女はそう答えたのだ。
次の質問に移ろうとしたときに。
ガチャン!
ガラスが割れる音がした。
どこから?厨房の奥、何が起きた?
「店員さん、通報した方がいいと思う」
水曇がそういうが。
「えっ、あっ、はい」
店員さんはパニックを起こしている。
「私がします」
野然は通報の準備をすると。
「やめてくれ!」
叫びが聞こえて、店内にいた人たちは外に急いで出ていく。
「俺が見に行きます、俺の身分はこれです」
店員さんにちゃんとしたしかるべきの所属ですよを見せたあとに。
「これお借りします」
防犯用のサスマタがあったので、これを片手に、厨房の奥に消えていき。
「もしもしどうしましたか」
「実は…すいません、このお店の住所がわかるものは」
野然が聞くと、店員は指をさしたので、そのチラシから、店の正確な住所と、今あった出来事を話す。
「立てますか?」
電話は繋げたまま、へたりこんだ店員さんに聞くと、無理と首を振ったので、すいませんと断りをいれたあとに、体を支えて立たせて、店の外へ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
「助けて!!!」
店の奥からはそんな声が聞こえたあと。
「あれ?もうみんな逃げたかな」
ひょっこり、店の外に水曇が顔を出した。
「強盗二人は縛ったんで、救急車も呼んでください、オーナーさんが怪我してます、お願いします、俺は見張ってるんで、あっ、野然さん、ごめんね、食事途中になって、事務所に連絡して、迎えに来てもらって」
必要なことを伝えてから、水曇は店内に戻った。
「大丈夫か!」
所長が話を聞いて飛んできた。
「まだ水曇は店内か」
そこにサイレンが聞こえてきた。
店内にいたお客の中にはこの場にいないものもいて、事情は聴取され、野然は通報者としての義務は果たして先に戻ることになった。
水曇は怪我はたぶんないが、何かあったら連絡するようにと言われた後、自由になったのは夜である。
強盗は素人ではあったが、それでも刃物を持つ相手、手加減はできなかった。
昼間ならば忙しいし、手薄だろうからという理由で、事を起こしたらしい、考えもなしに起こしたものだったそう。
ああ、癒しが欲しい、殺伐となったときは癒しである。
今の自分を癒してくれるのはなんだろうか?猫か、サメか、AIか、いや、こういうときはよく理解者じゃないだろうか。友達が欲しい、彼女も欲しい、ぬくもりのある家庭を築きたい!
そこまで思考が回ると。
そういうのは幻想なんですよ、あるわけないんですよ、はっはっ、笑えてきた。
コンビニよって、何か買って、今正確には何時だっけ?時間を確認すると、元同僚からメッセージが来てた。
「良かったら、うちで食べるか?」
「そういうの奥さんに相談してからいうもんだよ、喧嘩になるよ」
「自宅じゃなくて、事務所の方で用意しているんだけども」
「ああ、それならいいな、ご家族にはいった?」
「昼にああいうことがあったからの話しはしている」
「理解がある奥さんでいいんじゃないの?」
「お前こそ、結婚しないのかよ」
「忙しくて、すぐに愛想つかされると思うんだよね、じゃあ、これから事務所に行くよ」
事務所に行くと、野然もいた。
「いたの?」
「いましたよ、ああ、所長と二人の方がいいなら、私は戻りますが」
「いてくれるならばいてほしい、正直いないと思ってたから」
「あんなことが起きて、じゃあ、さよならは少し嫌かな」
「でもその方がいいんだよね、おっ、いい匂い」
「所長はこういうところ気を使うんですよね」
「いいじゃない、そういう職場は大事だよ」
「じゃあ、お前もうち来るか?」
「いや、こうして関わっているぐらいがたぶんちょうどいいんじゃないか?」
「そうか?でも無理するなよ」
「そこまではしてないよ」
「そう?」
こう言うとき、あたたかいものを食べるというのは、やはり大事なことだ。それだけで癒える。
「なんで落ち込んでいるんですか?」
「そう見えるの?」
「そうじゃなかったら、ごめんなさい」
「当たりだね、落ち込んでいるよ、すごく、すごく、落ち込んでいるよ、なんていうの、俺は切り替えが下手なんだよね、一度得物を持つとね、なかなか戻らないタイプでさ、だからこんな感じで食卓囲んでくれるとうれしいよ」
「そうですか」
「うん、こう言うときにまるで俺が何もなかったように扱われるのは実は嫌なんだよね、さっきすんごいこと起きたわけだから」
「サメでも撫でますか?」
「素手で撫でると痛くない?」
「そうなんですか?」
「ナツはんは野然くんを子供だと思っているから、痛くないんだよ」
「サメってそういうもんなんですか?」
「野然さんってサメっ子ですか?」
サメが親代わりになってくれた人間の子供、昔そういうドラマがあった。
「サメっ子ですね、じゃなきゃ生きてませんよ」
ああ、この子はやはりKCJの管理の子だったか。
「なんでまたこの事務所に?」
「やりたいことがあって」
「いいね、それは」
「そうですかね」
少し寂しそうだった。
「ナツさんだっけ、その顔とか見に行ったら?」
「河川ザメだからな、たぶんやりたくなきゃやらなきゃいいのよって言われるとは思うけども、それじゃあ、ダメなんですよ」
「そういうときはあるよ、頑張ってね、俺はそういうの好き」
「ええ、頑張りますよ」
そんな話をしながら、俺は元同僚のツテで近所のビジネスホテルを用意してもらって寝た。

このぐらいあれば全部わかるかな。

ああ、そういえばこれから起きるという、事件の話をきちんと聞くの忘れてた。

でもさすがに今日は限界…


その忠告は本人である野然以外はあまり本気にしてなかったようである。
ここで止めていればさすがに何も起きなかった。
ただその場合は、この人は何をいっているのだろうか?と周囲を不安にさせ、立場があるのならば失脚、競争相手は蹴落としにかかるだろう。
だから出来ない。
おそらくたぶんそれは起こるが、事が起きてからでなければ、人も組織も動くことはない。
例え、それがその時あなたの大事な人が犠牲になったとしても…、今はまだ何も…





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