浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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夢ちゃんとでもお呼びください

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「君のことはなんて呼べばいいんだい?」
「そうですね…夢ちゃんとでもお呼びください」
覆木(おおうき)の運転する車は走り出した。
「それで夢ちゃんはなんであんなところにいたの?」
「なんででしょうね」
「わからないの?」
「この世はわからないことばかりですよ」
「それは確かに違いない、けどもそこが面白いことがある」
「あなたは変わった人ですね」
「よく言われるけども、結構ショックだね、ほら、自分ではそんなことないと思っていきているからさ」
「それはあると思いますよ、人はどうしても、人と共に生きなければならないけども、合わせることが大事になってしまって、自分を省みることはないものですから」
「悲しい話だよね、だんだんとそれで自分を忘れてしまうんだから」
「でもね、夢はあるんですよ」
「夢かい?良かったら聞かせてくれる?」
「とっても素敵な人が現れてね、私をここから連れ出してくれるんです」
「今みたいに」
「ああ…そうでした、今みたいに」
そういって助手席にいた女は消えた。


「ただいま、あれ?みんなは?」
「ミツさんさお使いに行ってもらってます、瀬旭(せきょく)さんはその辺のどこかにいると思いますよ」
「にゃんこじゃないんだから」
水芭(みずば)と話ながら上着を脱ぐ。
「今、夢女ちゃんに会ったよ」
「最近多いって聞きますもんね」
「うん、少しばかり話をしたんだけども」
おそらくこの辺に夢女が生れた理由があるのではないかという話をして。
「場合によっては干渉する」
「本当にお節介てすね、慣れましたが」
「うちの事務所はお節介が多くて申し訳ないね」
「いいえ、それで俺も助けられましたから」
「そういってくれるとありがたいよ、ほら、自己満足だけだとね、たまに何やっているんだろうなって躊躇うことも出てくるし」
「少なくとも俺もミツさんも感謝はしているとは思いますよ」
「だといいね、これでもたまに嫌味は言われててね」
「組合ですか?」
「そう、僕には絶対にできませんねって」
(あいつか)
「人に優しくすることは、そこまで難しくないと思うんだけどもって答えたんだけども」
それは覆木さんだからですよ、私にはとてもとても。
「彼の立場的に甘い顔ができないというのもあるだろうけどもね」
「いや、あの人はそういうことが出来ない人間でしょ」
「水芭は辛辣だな」
「少しはそういう見方もしてくださいよ」
「そこは俺にはないから助かっている」
覆木は生まれが海外に赴任するような父を持つ家庭だったので、いいところのお坊ちゃんといっていい。銃を持つ理由はクレー射撃やそれこそ海外に家族で赴任した場合も考えてのことだ。
実際に覆木父が赴任した地域では射撃が盛んな場所であり、もしも実際に幼少期にそちらですごしたのならば、コンテストで有名になってたかもしれない。
「世の中にはいろんな人がいるんです」
「でも…」
「人を信じるのもいいんですが、信じた先でそいつらはあなたを馬鹿にしてますよ」
「それは悲しいことだね」
怒りよりも悲しみが来る場合は、人間関係において最悪が起きうる。
「そんなときは、瀬旭さんにオウオウオウ!どういうことだ、説明してもらおうか?えっ?わかってんだろうな?とか言ってもらえばいいですよ」
「お前、俺のことどう思っているの?」
「散歩どうだった?」
「花粉さえなければもっといたい」
「花粉症じゃないじゃないですか」
「花粉症じゃないからこそ、花粉症で苦しんでいる人を見ていると辛くなるじゃないか、この事務所に連れてきたいぐらいだよ」
事務所は身内がいる時とお客さんがいるときでは内装を魔法で変更しており、花粉は持ち込み禁止の設定にしてもらっている。
「白万(はくまん)はこういうのは本当に得意だからな」
専念させてもらえば、どこでもこの事務所ぐらいの陣地の作成ができる。
「ただできるからこそ、できる話ができないんですよ」
こんなことが出来るというと狙われるからである。
「そういえば白万はどこで知り合ったの?」
知り合ったのは覆木の方からです。
「その時、白万のスゴさを気づいている人がいなくて、必死に自分にやらせてください、お願いしますって仕事を頼んでいる最中で、俺にもそういってきたんだよ」
これには自信があります、どうか一度でいいんで。
「ちょうどこれならば試しに頼んでもいいなって思って」
そしたら、今まで高額で発注していた魔法よりも腕がいい使い方をするので。
「名前、なんていうの?俺は覆木っていうんだけども」
「それってナンパと間違えられません?」
「そんなつもりはなかったが、間違えられてたな、白万ちょっと怯んでたし」
しかもそれに気づくのが遅れて。
「本日はお呼びだてしていただきありがとうございます」
他の人たちもいるのがわかるとほっとした、何回か呼んでいるうちに。
「向こうから言われた、最初は何をされるのかと」
「こんな紳士に?」
「紳士の見た目には、軽口で女を口説くのは似合いませんよ」
そこら辺から自分の言葉で話してくれるようになった。
「うちで仕事したら、それこそ定期的にお願いしているから、経済的に安定して、彼女は聡明だから、それも全部魔法研究に使ったら、まっ、とんでもない成果が出ちゃったから」
それはこの事務所の三人しか知らない話である。
「初めて聞いたとき、耳を疑いましたよ?」
「遠くない耳が遠くなったかと思ったよね」
彼女の応用魔法がバレないこと、それ以外ならば協力を惜しまないということになった。
「バレると、採算性とか考えないで、一攫千金目当てのやつらが来ちゃうからしょうがないけども、それで俺らは得させてもらってるからな」
シュシュ
魔法が縮小する音がした、どうもお客が来るらしい。
「すいません」
来訪の客の声と同時に事務所はbarから応接室へと姿を変えた。
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