浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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私の参考にならない異世界転移の話。

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(ちょっと来るのが早かったかな…) 
待ち合わせの時間まで少しあるので、あまりためにならないかもしれないけども、私の異世界転移の話をしたいと思う。
こういうケースもある、そのぐらいの感覚で聞いてもらいたい。
私の趣味、嗜好として、美術館や博物館がすきなのだが、私の周囲にはそれらに理解などなく、それをネタに笑われたりするので、あまり目立たないように生きてきた。
それでも趣味を捨てられない、忘れられないのも、私はどこかおかしいのだと思うが、そこにいきなり異世界転移が起きた、転んだ、イタズラでもされて落とされたなのかと思ったが、違ったらしい。
そこは現代地球に近い、地方に住んでいるわたしからすると都会といってもいい都市部、私の転移先はそんなところであった。
そんなところであったものだから…
「日本のかたですか?」
確認されて。
「ではこちらで手続きをお願いします」
日本語で話しかけられたぐらいだ。
「この度はお気の毒さまです、しかし、希望を捨てることはありません、お迎えが来るまではこちらの世界で滞在という形になりますが…」
「えっ?帰れるんですか?」
「もちろん、帰れますよ」
協定が結ばれているとか、サンタがクリスマス意外にもやってくるとか、そして…
「ただみなさんの場合は人数が多いので」
私以外の、それこそ私の同級生たちまでも転移していることを知った。
手続きの際に、どういうことができるのか、持ち物に価値があった場合、こちらで換金してもらって、より良い生活のためのも使えますなどと言われた。
「持ち物?」
それで考えた、好みそうなもの、そして、「あっ」と気づく。
「こういうのですか?」
そういって鞄の中から趣味のペーパーアイテムを見せたところ。
「そちらの世界は大分科学が発展していると聞きましたが、ここまでですか?」
私がケース越しに見せたのは、もう廃業している印刷会社の技術が使われている装飾ポストカードである。
やはり目が肥えているのか、良さがわかったようだ。
「ああ、どうも、お嬢さんですね、異世界からお越しにこられたというのは」
こちらが行政の人が呼んでくれた鑑定担当の方である。
「いいですね 」
「わかりますか」
「この持ち歩いているケースからも愛が伝わりますね、作品の保護を第一に考えている」
「同郷の人間も一緒にこちらに来てるという話なので、その同級生たちはこういうのの価値がわかってませんから」
どうしてもというもの以外はここで譲り渡した方がいいだろう、大事にされるとはわかってるし。
「何層にも、これ一回で全部色も、この凹凸も印刷されているわけではなく、一枚で六回に分けて組み合わせて、この作品を作っているんです」
「お嬢さんはこれを趣味というが、あなたはもう美の世界にはなかった足を踏み込んでいられる」
「そういっていただけるとありがたいです」
ここからちょっとだけいい待遇、暮らしになるのだが、同級生なら妬まれることとなる。
「なんでお前だけ」
コレクションが売れた以外にも、色々と話をしたからなんだけどもね、日本にはね、こういうのが大都市圏で巡回展という形で、私は行けないんだけども、この作家のこの絵は見てほしいよなど熱く語った。
「お時間です」
次の予定に鑑定士さんを警備の人が呼びに来た。
「時間か、それで先生、次はいつ来てくださるんですか?」
そんなことをいったものだから、呼びに来た警備の人は笑う、いや、吹き出していた。そんなにおもしろかったんだろうか。
「そりゃあ、おもしろかったよ、愉快な人ではあったけども、あそこまで言うような人じゃないからね」
これがその警備の人だ。
「初めて会ったときから、楽しいエピソードがたくさんなのに、そっか帰還の日、決まったんだ」
色々あった生活も終わる、黙ってれば長かったのかもしれないが、鑑定士さんに少しでも話を残すべく、書くものを用意してもらい、日本語で申し訳ないが、今は日本ではこういうのが人気だとか、この神社仏閣は有名なところで、その帰りはこのお土産が定番でなど、書いていったらあっという間であった。
こちらの世界では食事は麦がメインなのだが、私は野菜と麦の、白スープは特に好き、二杯はいけると思ってる。が、その食事についてま同級生たちは文句をつけたとかも教えてもらった。
「そんなにいうなら、自分で作ればいいのにな」
コンロなどもちゃんとあるし、アウトドア、キャンプ趣味か、農家の家の方ならば、もっとたくましいアイディアを出すかもしれない。
「君の同級生たちは元の世界でもっといいものを食べてきたんだろうね」
「えっ…」
そういわれたら、ショックを受ける。
なんでだろうか、同級生には悪いが、気にくわないと何をするのかわからないタイプ、そして家はワケアリだったと思う。
(ワケアリだったらもっと努力を…それも無理なのかな)
なんだろう、私の中の敗北したのだろう。
「最初にこちらが補償された食事の見本ですって案内されたけども、美味しかったけどもね」
「それはそれで珍しいよ、こっちに住んでいる人から見ても健康的というか」
「でも運動とか、出歩くとかがなかなか出来ない中で、カロリー、栄養が高いもの食べると、体重に出るからな」
あの人たちは自分の地元で好き勝手したかのような振る舞うのか。
「ちょっとトイレね」
そう言われて、テーブル席で一人になると、ネガティブな事が思い付くので、これはダメだなと思った。
こちらの世界にはなんでも魔法も数式になっていて、心理もそれで表せるという、そこまで詳しくはないし、よくわからない場合は他のもので埋めてしまえばいい、私の心は今どうなっているのだろうと、メモの端に書き記し始めた。
「お待たせ」
その声で終わる。
「どうしたの?」
「なんでもないわ」
途中から私はこの人のことを考えてた。
「俺と一緒にいるときは、仕事を控えてよ」
「そうするわ」
その後は穏やかに過ごせた。
強制転移されているということもあり、帰還の送還にはまた手続きがある。
が…
「あれ?」
同級生たちがいない、聞いてた日付と違うとか?
キョヨキョロとしているが。
「間違ってはいませんよ」
「そうでしたか」
「あなたに間違った日付を教えた人たちにはそれ相応の処分を、少なくともあなたと同じ日取りでは帰すことはできませんよ、はぁ~」
どうもいろいろとあったらしい。
初日に手続きを対応してくれた行政の人である。
「あの浅知恵でなんとかなると思うとは、なめられたものです、話は変わりますが、滞在期間中はどうでしたか?」
「忙しかったですね」
「あなたが協力してくれたおかげで、日本ブームがこちらに来そうなんですよね」
日本にいって、このコースで、おすすめのお土産を買いたいんだ、日本に行ったことあるやつから聞いたら、あれは旨いっていってたから、本当に旨いんだろうさ。
「それではあの鑑定士さんも呼んでますから、持ち物を換金したい場合はそちらでお願いします」
私は元々持ってきたものは全部鑑定士さんに渡すことにした、この人ならば任せられると思ったからだ。元の世界に戻ったらまたあの日々が戻るだろうし、でもせっかくだから書きつけるために用意していただいた、まだ未記入の手帳は持っていこうと思ったので、パラパラと確認したら、ヒラリとメモが落ちる。
はて、これはなんだっただろうか?
鑑定士さんが拾い上げ、裏から透けて見えるものから数式だとわなった。
「おやおや、これは…」
それで鑑定士さんが。
「君、これはなんだかわかるかね?」
そういって警備のあの人に渡すと。
「ああ、これは一緒にいるしかないですね」
えっ?
魔法の数式は恋心から始まったとされる。


「お待たせ」
「あれ?まだ早いよ」
「いいの、いいのデートなんだから早く行けって」
というわけで私は両方の世界を橋渡しをする職について、あの警備の人と正式に付き合うことになりましてですね。
「でもですね」
「なんでしょうか?」
「あの時の数式の話はいつ聞いても納得しませんよ」
実はあれは鑑定士さんもこの人も完全に証明ができたわけではなかったようだ、古典に出てくる片思いの数式に似ていたから、試してみたら、私が引っ掛かったというわけだ。
そしてこの数式も問題だったらしく、これがきちんと応用されたら魔法業界が変わる可能性がある、たまたま落書きしたあの数式を教材にするための予算がおりたとかいう話をされた。
はっはっ、もうどうにでもなれ…
というわけで私の参考にならない異世界転移の話はこんなところだろうか。
「はい、今日は指輪買んだからさ」
いや~恋人には指輪をの話をしたら、是非とも私もあなたに買いたいと言われましてですの、はい、がんばってキラキラ宝飾店巡りを今日は頑張りたいと思います。

異世界転移には色々な話があるという、それこそ人間の醜いところばかりのものもあるが、こういう話もたまにはあるし、むしろこういう話をうちでは拾っていきたい。

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