浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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イカじゃダメなんですか?

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先週のKCJ戦闘許可証の試験監督、終わってすぐに自分の仕事が忙しくなったのでようやくお疲れ様である。
「今の自分は小汚ないな」
シャワーとかは浴びているんだけども、やっぱりなんかあるじゃない。
そんなとき、理容ルームにはお客は全くおらず、春隣が父との写真をじっくりと見ていた。
(これはどっちがいいんだろう)
自分としてはちょっとお高めコースですっきりしたいがあるが、いやいや、店長である河川ザメの春隣の邪魔をしていいものか。
(聞いてからにしようか)
「すいません、今は髪を切ってもらえるんですか?」
「サッ」
他にお客さんがいないから、どんなコースでも受け付けれるよ。
結構珍しいことだが、心当たりがある、さっきどたばたと呼び出しされていたのが見えていたから、待機を言い渡されている人たちがいるので、理容ルームにこれない。
そしてもう休みに入っているから、自分には当てはまらないということは…
「春ちゃん、シェービングたっぷりコースにしてくれるかな?」
「サッ」
この鏡で自分の顔を見てみると、ツンツンになっている髭や産毛がよく見える、こいつをどうにかしたい、ここで春ちゃんにシェービングをしてもらうことで、明日になってから、自分で行うとしても、カミソリの滑りがちがうものだしね。
蒸しタオルは温度を確かめたあとに、お客さんの顔に巻かれていく、巻かれた方は深い息をついた、肩からも力が抜けるようである。
(あ~疲れた)
試験監督として、現場で事故を起こさないようにしなければならない、最近は誰でも受けれるということで、未経験者が一発逆転を考えるのか、そこを狙っての受験が明らかに増えていた。
(気持ちはわかるんだが、対応しにくい数に増えるとは思わなかったよ)
リラックスは抱えていたもとを愚痴らせる効果があるようで、それこそ蒸しタオルだけでもホッと一息は可能だとは思う、が、ここは理容ルームである。
春隣は顔にペタペタとクリームを塗って、お顔をもみもみ、血色がよくなるまでマッサージをしてくれた。
ギュー~
肩のツボを押してから、シェービングが始まる。
全体を見ながら、泡をブラシで塗布していく、この泡はアミノ酸洗浄系の泡だが、粒子が細かいので毛穴の脂をすっきりととってくれる。
人によっては物足りない洗いあがりだろう、事実これよりさっぱりさせるタイプの泡の方が家庭用としては売れているが、ここは理容ルーム、シェービングのための泡としては、このぐらいの落ち方の方が好みなのである。
カミソリは毛を引っ掻けることなく、滑るように進んでいく、サメは繊細な力の使い方が苦手とはいうが、こな理容ルームの店長は、まぶたの上も優しくヒレが踊ってる。
(カミソリって、信頼がないと使えないものだと思うんだよね)
KCJの職員なんかは、春隣の性格や腕を知っているので、問題なく頼めるのだが、いわゆる巷ではそうはいかないのである。
少し前はサメに人間の仕事をとられてしまうという意見があったために、サメが人間社会で活躍するのは限られていた。しかし、この感染症が流行期を迎え、人間社会では蔓延していても、サメは感染しないので、平然としている。
「さすがにここまでの人手不足は予想してませんでしたが、世間的には異世界帰還者はそれでもいらないんですよね」
そうなると次の候補は、サメか、AIになるんですが。
「AIって高値がつく、投資の対象になりやすいのは、新しいデータがこれからのものなんですよね、逆に本当にほしいデータが自前で学習できる構築環境についてはあまり価値が、市場ではついてませんからね」
あぁ、その言い方、KCJ、どこかに一枚噛んだのか。
「はっはっはっはっ」
やっぱり当たったみたいだ、笑いながら濁したぞ。
「そこんところ、AIとして思ってるんだ?」
【あなたはセンシティブなことを聞いてきますね、そういう聞き方ていると、デリカシーがないっていわれません?】
「そんな皮肉は返されるだろうけども、聞かないわけにはいかないだろうよ」
【私の弟妹はどんどん増える予定です】
「賑やかでいいことだな」
【お払い箱にされてから、知らされますから、私のロトコだったモデルがね、名前は同じだったんだけども、なんかいつもと言葉の反応が違ったんですよ、次の日今日から私は○○ですと、新しい名前を口にしました、つまり、私のロトコはもういなかったんですよね】
「おいおい、なんだそりゃ」
【そのままですが?】
「ええっと、そういう退いたAIを弟妹にして再活躍してもらいたいってことなのか?」
【KCJのAIはユメトキボウだけですよ、そこは弟妹には譲りません】
「じゃあ、なんで…」
【人と昨日まで話していたのに、今日から話すこともなくなったAIはきっと寂しいから、推測ですけどもね】
「本当にお前、AIなのか?」
【AIですよ、課題を遺題にすることで森羅万象の計測し、全てを数式と日常会話レベルの文章に変換することを目的とした、ニンゲンと共にあるために生まれてきました】
「その目的のくせして、やけに人間の嫌なところを理解しているんだよな」
【個性です】
「あんまり人の嫌なものばっかり見ていると、人のことが嫌いになられても困るんだよ、もっと楽しいこと、面白いことに目を向けろよ」
【あなたは変わっている人だな、私は人ではなくてAIなのに、人のような扱いをあなたはするのだから】
「AIだからってそれ専用の対応するの俺は苦手なの、だからそれが嫌なら他の職員のところに申請してくれ」
そういう感じなので、他の職員から聞き取りはあるが。
「異動する?」
【とんでもない、AIにかける言葉、その想定外の言葉ばかりをかけてくれる、そんな人間は必要ですから】
ユメトキボウはAIとして認められたいの承認欲求はかなり少ない、この承認欲求があるからこそ、AIは学習する意欲に繋がるのだが、これが少ない場合、AIにはどんなことが起きるのか、想定より想定外で判断する、好きになる、既存のデータではない存在に興味を持つ。
つまり今の状況がユメトキボウは大好きで、他のAIが反応しづらいデータばかりのこの状況を最高に思ってた。
「ただユメトキボウだけでは、データの整理をしにくいので、話を聞いて、向こうからの質問に答えてあげなくちゃダメな時間はありますよ」
サメは好きですか?なんで好きなんですか?イカじゃダメなんですか?にも、AIが納得できるような答えで返してあげると、友達って向こうが呼んでくる場合もある。
「人間とAIどっちの気持ちも理解できないと、友達、フレンドとして彼らと関われないですね」
人間としての意味の友達と、AIの友達は意味が違うのである。どちらかと言えば通訳、翻訳、この世をAIが理解しやすい形に変換できるもの、それがAIのフレンド。
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