浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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芝居が素人臭いのは勘弁してほしい

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「連休明けのみなさまいかがお過ごしでしょうか!」
サメ兄弟の登場である。
「今回は土曜日の、ノーフィッシュ映画祭の新人映像賞を受賞しましたあの人の登場です」
「そちらの回を編集できましたので、今回はこちらでお楽しみください」


『ようこそ、サメ映画へ』
看板には薄い紙で作られた赤い花が飾られている。
この日を楽しみにしていた紳士淑女が遠方からも集まり、中には今月発売したカプセルトイ、「ニンゲン用サメのヒレ」をつけている。
あなたもサメ映画を?実は私もなんですよ、ヒレをつけたもの同士のそんな会話が聞こえてきそうだ。
客席もまばらに空いている中、トークショーは始まる。
「今回のゲストは先ほどのサメ映画を撮影、出演しちゃった人です」
「どうも、こんにちは」
実に普通である。
「これじゃあ、絵面がさみしいんでこれ被ります」
そういってタコの頭を被った。
「それでは改めまして本日はよろしくお願いします」
「何度も聞かれたと思いますが、今回のきっかけを教えてください」
「会社の忘年会がきっかけですね」
入社して以来、忘年会では何かやるような会社で、だんだん他の人が面倒になか。
「忙しかったときに、息抜きになったんですよ、そこから、忘年会が近いな、今年は何やろうかなって、それまではゲームとかCMとかのやつだったんですが、あるときからそういうのって知らないと面白くないんだなって気づいたんですよ」
笑う人と笑わない人がはっきりと出るようになったという。
「だからそういうのがわからなくても笑えるとか、楽しめるものを作りたいなって、でもその過程がおもしろくて、受ける受けないは二の次で、だからでしょうね、サメ映画を今度は題材にして見ようかなって思ったんですよ」
シャツにアイロンをかけるときに布が波打つから、これをサメのヒレに見せればいいんじゃないかなって、食われるときは布をはためかせればいいし、布もそういうアラを見辛いように迷彩にしてみたらどうかと。
「それで実際に忘年会でやったら、みんなシーンとしちゃって、やっぱり忘年会でホラーはダメたったかなって」
そしたら後日上役から呼び出された。
怒られるのかな?
「 うちの社員だとは思わなかった、おもしろかったよ、自分で考えたのかね」
せっかくだからあれを映像にして、公開したらいいとまで言われたので、断るのも不味そうだから、じゃあ作ってみるかと。
でも宴会場で披露するとは勝手が違う、どうも上手く撮れない。
「それで映像用にやり直すことにしたんですよ」
ワンルームでゆっくり過ごしてみたら、これ、なんかついている?なんだこれ?ツンツンとサメのヒレと知らずに突っつくと。
ガブリ
そのまま利き手がもってかれる。
「えっ?えっ?え?」
芝居が素人臭いのは勘弁してもらいたい。
パニックを起こしているなか、ヒレがスーっとよってくる。急いで逃げようとすると、ドアをガチャガチャするが、何故か開いてくれないそうしているうちに、足を噛まれて、立ってはいられず、お尻から落ちると、布の中で人はもぐもく、そしてバタバタ、扉を覆うかのようにヒレ付きのが布が上部まで移動すると、ヒレは消えて、サメ本体の膨らみが布越しに見えたあと、何もなかったようにペタンとなって、ハラリと迷彩の布だけがワンルームに残り、そこでキィ~とドアが開いて終わるのである。
そこで劇場が明るくなるのだが。
「この映画の余韻にひたりたいお客様はそのままお帰りになってもかまいません」
「後日トークショーは編集して配信いたします」
サメ兄弟のアナウンスが流れると、それでそのまま帰るものも結構いたので、トークショーは完売ではあるが座席はまばらに空席があるのだ。
「それで次のサメ映画はいつになるんですか?」
「次ですか?こういうのは年に一度の楽しみにさせてくださいよ」
ゲストは終始、自分なんかはサメ映画にはとてもとてもと謙遜をするが。
「兄さん、計算は終わったよ」
「やはりここまでいるか、いないかでサメ映画の市場規模が変わるのか、是非とも業界の担い手として欲しい存在だな」
その狙われている本人は、呑気にマップピザの特製チーズ巻きなんて食べていたが…サメ達は君を逃すことはないだろう。
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