浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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今から浜薔薇行っちゃう?

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(あっ)
浜薔薇の王子こと、ケットシーのイツモが何故かこんなところにいて、毛繕い、毛繕い、毛繕いからのこっちに気づいて、ジッと見てくる。
しばらく目を合わせていた後に。
「王子…めちゃくちゃ今日は疲れたよ」
なんて泣き言をこぼすと、イツモの方からよってくるのである。
スリスリ
(ぐはっ、これはなんですか、足元にスリスリってどんなサービスなんですか、最近全然浜薔薇に行けてないから、お客さんとも言えなくなっているのに)
スリスリ
(あぁ、王子…)
心の固さが緩んでいくのがわかったところに。
コロン!
寝転がられる。
(これは、これはどうすればいいんですか)
ここでモフるという選択肢が見つからぬ若人よ、安心しなさい。
ヒョイ
イツモは飛んできた。
さすがにいきなりのことで、咄嗟に抱き止める。
「王子、危ないですよ」
顔としてはスマンスマンを見せているが、こいつ…わかってますよね?
そのまま自然と撫でてしまう。
(そういえば王子を撫でるのってこれが初めてぐらいかな)
いつもは猫おるな?見てるだけでええわな~な感じなので、自分から触ることもなかった。
(猫、いや、ケットシーって顔小さいんだな)
そしてあたたかさを感じる、命のあたたかさという奴だ。
(この仕事一区切りついたら、浜薔薇行きたいな、前髪も伸びてきたし、今の時間だと髭もちょっと気になるからさ)
蒸らしたタオルで、顔を包んでもらって、むふ~って気持ちになった後に、ブラシでカシャカシャ泡立てた白いホイップを顔に乗せてもらって、指が優しく肌の上に乗った後、職人の技でショリショリとカミソリで剃られたい。まぶたの上や首の辺りをおっかなビックリ、だけどもばっちり安全な、そんなシェービングを受けたいです。
「にゃ~」
王子の一鳴きで夢から覚める。
(いっそのこと、今から浜薔薇行っちゃう?)
時間も今なら行けるし、予算も大丈夫!よし、じゃあ行くか!
浜薔薇までイツモを抱っこしながら向かう、途中でイツモもむずがるかなって思ったが、とてもおとなしい。
(ケットシーってこんなにおとなしいものなのかな?)
そして可愛い、本当に可愛い、そしてケットシーは季節に応じて、いや王子に限ってはコロコロ毛色が変わる。
「こんなに頻繁に毛色が変わるのか、被毛が抜け落ちるサイクルが他のケットシーよりも早いのはなにか理由があるんですか?とご家族の方は心配されましたが、これはこの行為を楽しんで、つまりオシャレですね」
と言われるようなケットシーがイツモであった
「お店の中には行かないようにはしているんだよな」
そのため店の前で下ろすと、じっとそのままこちらを見てくる。
「ありがとうね、きちんと髪を切ったりしてさっぱりして、気分転換してくるよ」
そういってお客さんは店へのドアを開けたのである。
そして今のお客さんが出てくるまで、イツモはそこで待ち続け、すっきりさっぱりした顔になったお客さんは外に出たら驚いた。そしてそれを見ると名残惜しそうに、また来るからと声をかけてから、家路についた。
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