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お水、美味しい!
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それは本当に偶然である。
一度戻って、そこに彼女はいたが。
「お姉さん、暇?俺らと遊んでかない?」
「すいません、お仕事なんですよ」
「え~どこで?この辺じゃ見かけないよね」
「お前ら、何してんの?」
「あっ、いや、すいません」
「じゃあ、これで」
男たちは見つかったら不味いという相手の顔を見ると退散した。
「ええっと螺殻(らがら)さんだよね、あの時覆木さんの隣にいた」
「はい、そうです!ええっとですね、その覆木さんからそちらの事務所に書類もって行く途中でして」
「あっ、そうだったんだ」
そこでごめんね、あいつらがとフォローをいれようかのときに。
『メッ』
3
彼の耳にサメの、メスザメの声が聞こえ、冷や汗がブワッと来た。
(考えろ、俺のすべきことを今すぐに)
あのサメは目の前の彼女を守るためにいる、本人は知らない、おそらく覆木さんか、水芭(みずば)さんか、それか両方が彼女につけている。
瀬旭(せきょく)さんではない、彼ならばつけたとしてもオスの方だろう。
「どうしましたか?」
「いや、この辺まで来たのならば、一旦戻る途中だから、一緒に行こう」
そうして雑談をしながら。
「ただいま戻りました」
「お疲れ」
「あっ、彼女は覆木さんのところから書類を持ってきたんだって」
「オジさん、お客さんだよ」
「はいはい、ちょっと待ってね」
(しゃべり方すごく似てる)
「すごく似てるでしょ、叔父さんと甥っ子さんで、甥っ子さんには忙しいときに手伝ってもらってるんだ」
「今回は本当にお世話になったようで、叔父さんも仕事が忙しくて困っちゃうよって笑顔でいってましたから、またお願いします」
「こら、また余計なこといって、すいませんね」
「でも叔父さん、こういうときは言える時に言った方がいいぜ、世の中どうなるかわからないから」
「それはわかるが、建前ってものがあるだろう、そういうのがないとな」
「覆木さんはそういうのがわかる方なのでちゃんと伝えておきますよ」
「そうかい?すまないね」
「ほら、叔父さん、俺がいって良かっただろう?」
その後、書類の確認をして。
「はい、全部揃っているね、しかし、わざわざ来ていただかなくてもね」
「うちの事務所って出来たらすぐに渡す方針みたいですよ、私も早くてすごいビックリしますが」
「あっ、俺が事務所まで送っていっていいですか?」
「そうだな、この辺は女性が歩くとな」
「さっきもその…」
「ナンパされてたので、それで一緒に来ました」
「…すまんが確実に送り届けてくれ」
「わかりました、判子をもらってきます」
そういって車を出してもらうことになり、また色々と話をする。
「この仕事について日が浅いって聞いてたけども、慣れた?」
「あ~よく聞かれますけども、前の仕事よりも休みが多いし、夜勤とかないんで」
前職は三交代でした。
「夜勤は辛いよね」
「はい、時間の感覚はおかしくなりますね、あっ、そういえばみなさんは、うちの事務所のbarは来たことはあるんですか?」
「今の事務所の前の、もっと前かな、お邪魔したことはあるよ、今はやっぱり気軽にいける距離じゃないし、車が必要な距離だとね」
「よろしければ久しぶりにでもみなさんで来てくださいよ」
「それもいいよね、でもさ、水芭さんって、なんでもできるよね」
「それは私も思ってました、しかも今、学生さんたちに向けて焼きそばを20キロも作っていたりするんですよ」
「水芭さんはどこに行こうとしているんだろう」
「やっぱり行けるところまでですかね」
そんなことを真面目にミツが答えるものだから。
「あっはは、ああ、ごめん、ごめん、あまりにも螺殻さんが真面目に答えるものだからね、おかしくって、なるほど、これはあの三人どころか、色んな人に気に入られるわけか」
「そこ笑うところなんですかね?」
「そうだよ、やっぱりあの事務所は知名度はそこそこあるから、新人さんをいれる、どういう人なんだろうって注目はするわけよ」
「そこまでなんですか?」
「うん、ああ、ちなみに聞くけども、俺らのことは何か言ってた?」
「信用出来る相手だからって」
それが意外だったのか。
「えっ?本当?」
思わず聞き返した。
「驚かれることなんですか?」
「うん、そうか、そんなこと思ってたのか、いや、なんていうか、言わないから、そういうこと」
「でも言わないとわからないですよね」
「本当にそうだよね、そっか…」
「でもその、そういうところがあるのはわかります」
シュンとしながらいうのである。
「まだ私は許可証持ってないからかもしれないというか、お客さん扱いなのかなって」
「そっか、これから取るのか」
「はい」
「そっか、頑張ってね、あれは難しいけども、何回だって受けれるから」
「受ける前に、一度訓練するって言われてまして、それで試験を受けさせるか考えると」
「ああ、それは俺もやった、それこそ荷物背負って、山登って、下って」
「私は下山だけなんですが…」
「ん~とね、それは確か俺が受けたときと、今の試験の内容が変わってきているんだよね、俺が受けたときはそれこそ優れた個人を探していたわけ、でも今は一人が優秀でもダメで、生き残ることを目的にしているからとかで、その辺は過去問とか見た方がいいかもしれない」
「私が習っている先生、その過去問を作っている人です」
「じゃあ、その先生に聞くといいと思うな」
そんな話をしながら、事務所のそばまでくると。
「はい、わかりました、送り届けたら、すぐに戻ります」
「すぐに帰っちゃうんですか?」
「うん、そうなるね、顔を見たら、そのまま帰るよ」
そういって事務所のドアは開く。
「こんばんは」
「わざわざ送ってきてくれたの?悪いね」
「瀬旭さん、そうはいってますが、先に連絡聞いて知ってますから」
「そういうことはバラさない、俺がまるで心配しているようじゃないの?」
「してないんですか?」
「うっ…いや、してるよ、してるけどもさ」
「まあ、そうですね、一人になると、ナンパとかされますからね」
「えっ?」
「はい、すいません、ナンパされてしまいました」
「ちょっとそいつ誰なの」
「その気持ちもわかりますが、過保護もほどほどにしてくださいよ、螺殻さんは戦力じゃないてますか」
「そうは言ってもね」
「そういう話、ここに来るまでたくさん聞かせてもはいましたから」
その時、瀬旭も、覆木も、水芭でさえもピクンと動いた。
(わかりますい)
「じゃあ、俺は戻りますから」
「次はbarに遊びにくださいな」
「そうするよ、じゃーね」
パタン
「それじゃあ、私、手伝いの準備しますね」
「お願いします」
ミツがいなくなると。
「あいつ何よ、もう!」
「なんてますか、その口調」
「だった悔しいじゃないの」
「本当になんなんだよ、その言い方は」
「私でもわからないわ、そうね、こんな気持ちを忘れさせる、私にぴったりなドリンク作ってくださる?」
「わかりました」
そういって水芭は冷水をくんで出した。
「この意味は?」
「自分に酔っているならこれが一番ですよ」
ゴクゴク
「くぅ~お水、美味しい」
「しっかりと飲むんだ」
「ああ、もうわかってんだよ、言われなくても、過保護だっていうのは」
そういってトンとカウンターに空のグラスを置いた。
「どこに?」
「こういうときはストレス発散」
事務所内に併設されたゲームシューティングルームに籠るという。
「久しぶりに勝負するか?」
「いいね、コテンパンにしてやるよ」
「おいおい、そんな頭に血が上がっているやつが、簡単に俺に勝てるわけないだろう?」
「後で本気じゃないとか、勝ちを譲ったとかそんなん無しだからな」
「もちろんさ」
階段から降りてくるミツは二人がいないので気になる。
「ああ、二人とも勝負するって、今頃ちょうど夢中になるから、邪魔しない方がいいよ、代わりに後で二人の勝負の録画みせるからさ」
そういって録画したものを見ることになったが。
「やっぱり二人ともすごい人だな」
その場に同席したら、目が追い付かないだろう、スローで再生してみて、初めて、ああここを狙ってるのかな?がわかるのである。
この人たちに追い付きたいし、認められたい、螺殻ミツはドキドキと憧れるのであった。
一度戻って、そこに彼女はいたが。
「お姉さん、暇?俺らと遊んでかない?」
「すいません、お仕事なんですよ」
「え~どこで?この辺じゃ見かけないよね」
「お前ら、何してんの?」
「あっ、いや、すいません」
「じゃあ、これで」
男たちは見つかったら不味いという相手の顔を見ると退散した。
「ええっと螺殻(らがら)さんだよね、あの時覆木さんの隣にいた」
「はい、そうです!ええっとですね、その覆木さんからそちらの事務所に書類もって行く途中でして」
「あっ、そうだったんだ」
そこでごめんね、あいつらがとフォローをいれようかのときに。
『メッ』
3
彼の耳にサメの、メスザメの声が聞こえ、冷や汗がブワッと来た。
(考えろ、俺のすべきことを今すぐに)
あのサメは目の前の彼女を守るためにいる、本人は知らない、おそらく覆木さんか、水芭(みずば)さんか、それか両方が彼女につけている。
瀬旭(せきょく)さんではない、彼ならばつけたとしてもオスの方だろう。
「どうしましたか?」
「いや、この辺まで来たのならば、一旦戻る途中だから、一緒に行こう」
そうして雑談をしながら。
「ただいま戻りました」
「お疲れ」
「あっ、彼女は覆木さんのところから書類を持ってきたんだって」
「オジさん、お客さんだよ」
「はいはい、ちょっと待ってね」
(しゃべり方すごく似てる)
「すごく似てるでしょ、叔父さんと甥っ子さんで、甥っ子さんには忙しいときに手伝ってもらってるんだ」
「今回は本当にお世話になったようで、叔父さんも仕事が忙しくて困っちゃうよって笑顔でいってましたから、またお願いします」
「こら、また余計なこといって、すいませんね」
「でも叔父さん、こういうときは言える時に言った方がいいぜ、世の中どうなるかわからないから」
「それはわかるが、建前ってものがあるだろう、そういうのがないとな」
「覆木さんはそういうのがわかる方なのでちゃんと伝えておきますよ」
「そうかい?すまないね」
「ほら、叔父さん、俺がいって良かっただろう?」
その後、書類の確認をして。
「はい、全部揃っているね、しかし、わざわざ来ていただかなくてもね」
「うちの事務所って出来たらすぐに渡す方針みたいですよ、私も早くてすごいビックリしますが」
「あっ、俺が事務所まで送っていっていいですか?」
「そうだな、この辺は女性が歩くとな」
「さっきもその…」
「ナンパされてたので、それで一緒に来ました」
「…すまんが確実に送り届けてくれ」
「わかりました、判子をもらってきます」
そういって車を出してもらうことになり、また色々と話をする。
「この仕事について日が浅いって聞いてたけども、慣れた?」
「あ~よく聞かれますけども、前の仕事よりも休みが多いし、夜勤とかないんで」
前職は三交代でした。
「夜勤は辛いよね」
「はい、時間の感覚はおかしくなりますね、あっ、そういえばみなさんは、うちの事務所のbarは来たことはあるんですか?」
「今の事務所の前の、もっと前かな、お邪魔したことはあるよ、今はやっぱり気軽にいける距離じゃないし、車が必要な距離だとね」
「よろしければ久しぶりにでもみなさんで来てくださいよ」
「それもいいよね、でもさ、水芭さんって、なんでもできるよね」
「それは私も思ってました、しかも今、学生さんたちに向けて焼きそばを20キロも作っていたりするんですよ」
「水芭さんはどこに行こうとしているんだろう」
「やっぱり行けるところまでですかね」
そんなことを真面目にミツが答えるものだから。
「あっはは、ああ、ごめん、ごめん、あまりにも螺殻さんが真面目に答えるものだからね、おかしくって、なるほど、これはあの三人どころか、色んな人に気に入られるわけか」
「そこ笑うところなんですかね?」
「そうだよ、やっぱりあの事務所は知名度はそこそこあるから、新人さんをいれる、どういう人なんだろうって注目はするわけよ」
「そこまでなんですか?」
「うん、ああ、ちなみに聞くけども、俺らのことは何か言ってた?」
「信用出来る相手だからって」
それが意外だったのか。
「えっ?本当?」
思わず聞き返した。
「驚かれることなんですか?」
「うん、そうか、そんなこと思ってたのか、いや、なんていうか、言わないから、そういうこと」
「でも言わないとわからないですよね」
「本当にそうだよね、そっか…」
「でもその、そういうところがあるのはわかります」
シュンとしながらいうのである。
「まだ私は許可証持ってないからかもしれないというか、お客さん扱いなのかなって」
「そっか、これから取るのか」
「はい」
「そっか、頑張ってね、あれは難しいけども、何回だって受けれるから」
「受ける前に、一度訓練するって言われてまして、それで試験を受けさせるか考えると」
「ああ、それは俺もやった、それこそ荷物背負って、山登って、下って」
「私は下山だけなんですが…」
「ん~とね、それは確か俺が受けたときと、今の試験の内容が変わってきているんだよね、俺が受けたときはそれこそ優れた個人を探していたわけ、でも今は一人が優秀でもダメで、生き残ることを目的にしているからとかで、その辺は過去問とか見た方がいいかもしれない」
「私が習っている先生、その過去問を作っている人です」
「じゃあ、その先生に聞くといいと思うな」
そんな話をしながら、事務所のそばまでくると。
「はい、わかりました、送り届けたら、すぐに戻ります」
「すぐに帰っちゃうんですか?」
「うん、そうなるね、顔を見たら、そのまま帰るよ」
そういって事務所のドアは開く。
「こんばんは」
「わざわざ送ってきてくれたの?悪いね」
「瀬旭さん、そうはいってますが、先に連絡聞いて知ってますから」
「そういうことはバラさない、俺がまるで心配しているようじゃないの?」
「してないんですか?」
「うっ…いや、してるよ、してるけどもさ」
「まあ、そうですね、一人になると、ナンパとかされますからね」
「えっ?」
「はい、すいません、ナンパされてしまいました」
「ちょっとそいつ誰なの」
「その気持ちもわかりますが、過保護もほどほどにしてくださいよ、螺殻さんは戦力じゃないてますか」
「そうは言ってもね」
「そういう話、ここに来るまでたくさん聞かせてもはいましたから」
その時、瀬旭も、覆木も、水芭でさえもピクンと動いた。
(わかりますい)
「じゃあ、俺は戻りますから」
「次はbarに遊びにくださいな」
「そうするよ、じゃーね」
パタン
「それじゃあ、私、手伝いの準備しますね」
「お願いします」
ミツがいなくなると。
「あいつ何よ、もう!」
「なんてますか、その口調」
「だった悔しいじゃないの」
「本当になんなんだよ、その言い方は」
「私でもわからないわ、そうね、こんな気持ちを忘れさせる、私にぴったりなドリンク作ってくださる?」
「わかりました」
そういって水芭は冷水をくんで出した。
「この意味は?」
「自分に酔っているならこれが一番ですよ」
ゴクゴク
「くぅ~お水、美味しい」
「しっかりと飲むんだ」
「ああ、もうわかってんだよ、言われなくても、過保護だっていうのは」
そういってトンとカウンターに空のグラスを置いた。
「どこに?」
「こういうときはストレス発散」
事務所内に併設されたゲームシューティングルームに籠るという。
「久しぶりに勝負するか?」
「いいね、コテンパンにしてやるよ」
「おいおい、そんな頭に血が上がっているやつが、簡単に俺に勝てるわけないだろう?」
「後で本気じゃないとか、勝ちを譲ったとかそんなん無しだからな」
「もちろんさ」
階段から降りてくるミツは二人がいないので気になる。
「ああ、二人とも勝負するって、今頃ちょうど夢中になるから、邪魔しない方がいいよ、代わりに後で二人の勝負の録画みせるからさ」
そういって録画したものを見ることになったが。
「やっぱり二人ともすごい人だな」
その場に同席したら、目が追い付かないだろう、スローで再生してみて、初めて、ああここを狙ってるのかな?がわかるのである。
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