浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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恋に翻弄されている

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「ん~」
「目が覚められましたか」
「あ~ウカリさん、今は何時かな?」
「…朝の七時ですよ」
「なんかね、昨日はいい夢を見たよ、ウカリさんが飲みにいって、それをお迎えに言って、亭主の俺らが奥さんたちがいい気分で話しているのを聞いているんだよ」
「それも夢ですから、後で主治医の方から説明があると思いますが、あなたは事故に巻き込まれ、無傷ではありました、しかし他の人の治療のためとりあえず病院の方へって」
ガバッと起きる。
「あっ、うちじゃない、病院、どういうこと?」
「ですから…」


「水芭(みずば)さん聞いてもいいですか?」
「なんでしょうか、傘目(かさめ)先生」
「一昨日事故があったの知ってます?それでうちの道場ではないですが、剣士が巻き込まれて無事だったんですけど」
「ですけど?」
「夢見の魔法をかけられて安静にされたみたいで」
「夢にはまったと」
「そう、それです、それで誰か詳しいやつはいないかって、まあ、聞いて回っているみたいなんですよ」
こうしている間に消えちゃうんだよ、嫁と息子と娘との記憶が!
「それは御愁傷様というか、なんというか」
「それほどいい夢見たのかって話だよね」
「本当に無傷、心身とも傷がない状態でかかったんですね、あれはどっちかでも傷ついていると、それこそマイナスをプラスに戻すためのものですから、マイナスがない状態でプラスに効きすぎてしまったってやつです」
「あそこまで狼狽していると、他人事じゃないというか、あの人には確かにその時間を経験したんだよね」
「何年ぐらい夢を見ていたんですか?」
「20年ぐらい分みたいな、娘さんの結婚式まで生きてやれなかったが、ありがとう長男、エスコートしてくれてみたいな話は聞いた」
「それは才能がありますね」
「才能?」
「夢を見る才能といいますか、全員が全員いい夢を見れるわけではないんですよね、それこそ元は痛みの緩和などを目的としたものですから、それらが再生魔法や医療移植によって、新しい形として利用されてて」
「うん、そういう話じゃなくて、そいつはどうにかならんの、夢が消えるのを尋常ではなく恐れているから」
「それなら専門家に解説してもらいましょうか」
「こんにちは」
「早い」
「この事務所とはそういう契約をしているもので」
白万(はくまん)が現れた。
「どうもこんにちは」
「で、夢を見た剣士さんの話ね」
「そうです、そうです、なんとかいい感じになりませんかね」
「そうね、落ち着かせるっていうだけなら、眠っている時だけ夢の続きが始まるとか、繰り返されるとかでいいと思うけどもね、現実でああいう騒ぎを起こしているなら、すぐにでもかけちゃった方がいいわよ、夢の中の登場人物を本当にそう思って接するように」
「それもなんかいってましたね、魔法をかけてくれた方を奥さんだと思ってて」
「あ~」
「それはね、いきなり魔法をかけるようになったあるあるね」
「そうなんですか」
「本当に余命少ないとかならば、どういう内容がいいか聞いたりするわけ、それこそ女の子にモテモテの人生がいいですとか、アイドルになりたかったのでって、でも今回の場合、急だったのて、それこそ事故だから使える人が呼ばれた、そして配役を適当にしてしまったんだけども」
「それが恐ろしくはまってしまったと」
「そういうことね、いい夢は忘れたくないのはわかるけども、その魔法をかけた人にもう一回、安眠の魔法という形でかけてもらえばいいわ」
その話を直接ではなく伝えたところ。
「ご予約ですか?少々お待ちください、ウカリさん、ウカリさんに魔法の依頼が入っているのですが」
事務から説明を受けると。
「それは私ではない方がいいとは思います、精神に関する魔法は緊急時ならば対応しますが、今の状態でしたら、カウンセリングをしっかり受けた方がよろしいかと、ただまあ、私から伝えましょうか」
そういって電話越しに。
「電話を代わりました」
「ウカリさん」
「まだ覚えておられるんですね、普通でしたら消えてますよ」
「もう半分以上消えてます、娘のね、名前の由来がね、どうしても思い出せなくてね」
「それは勲章からですよ、申請を忘れてて、申し込みしたときに、お腹にいることがわかったから、紺(こん)ちゃんって」
「そうそう、勲章はもしかしたら取れないかもしれないけども、そのぐらいお父さんとお母さんたちには価値があるんだからって、その勲章から紺にしようと…」
「カウンセリング受けてくださいね、お近くの病院だと」
「ウカリさん、ウカリさん、俺にチャンスをください!」
「あれは夢なので」
「夢にしては良すぎました」
「忘れてください」
「それは嫌です、俺は全然あれが夢だって思えなくて、目覚めたらあれが夢でしたは辛すぎます」
「でも消えているということは、自然なことですから」
「そういうことを無表情で淡々としているウカリさんのこと、俺は大好きで」
「それは夢ですよね」
「じゃあなんでそっちも覚えているんですか」
「それは魔法をかけたものの義務として」
「そこまで詳細に覚えているものなんですか?」
「バーカ、もうかけてくるな」
最後の方はびっくりするほど痴話喧嘩になっていた。


「そういえばあの話どうなりました?」
「あの話?」
傘目に水芭が聞いてくる。
「ハッピーエンドっていうか、付き合うことになったみたいですよ」
「それは良かったんですかね、まあ、相性はその夢を見続けれるぐらいだからいいのでしょうが」
「剣士って結構儚い人生なんですよ、それこそ幸せと結び付かないような、殺伐としているというか、そいつ自分の周囲に彼女はいいぞ!ってひたすら説いてて」

「うわ~俺も俺も彼女が欲しいです」
「剣士の意地をきちんと理解してくれる、うわ~ん、うわ~ん、そんな子と出会いたい」
「よいか、みなのもの、ここで厳しい稽古を終えたあと、家に帰ったら、彼女が待っていてくれたりするのだぞ」
「ああああああ」
「心が焼かれる」
「時には見栄をはるときあるだろう、でもさ、彼女だけはわかってくれるんだ、膝枕してくれて、バカねっていって頭を撫でてくれるし」
「あああああ」
「死んでしまう」
「でも聞くのを止められない」
「俺が辛いとき、それを忘れるぐらいの幸せを彼女は用意してくれる時なんてさ」
「あああああ」
「助けて!」
「結婚しよって思ったね」
「くっ、これが夢の話混ざってなかったら、やられていたぜ」
「いや、昨日の夜、これやった」
「あああああ!」
「こいつ、こいつ、とんでもないことを」
「それで返事は?」
「断られたけどもね」
「ふぅ~」
「世の中まだ捨てたもんじゃないぜ」
「ただ外堀は一つ埋めてきた」
「なんだと…」
「夢の中で彼女を知り尽くしているからこそできる裏技だよ」
彼は笑ったが、それを彼女は知らないでいる。
クシュン
「あら?風邪?」
「いや、そうじゃないとは思うんだけども」
「あんたそういえば最近付き合い始めたんだって?」
「そうなんだけども、すぐに別れるんじゃないかなって」
「何それ、そんなんで付き合ったの?」
「なんで付き合ってみようかってわからなくて、でも、とりあえずいいかなって思ったんだよね、よくわからないけども」
「どんな人?」
「悪い人じゃないよ、剣士の矜持だっていって怪我人を救出しに向かうような人だし」
「それは悪い人じゃないわね」
「そうね、魔法を急に使うことになってしまって、上司の承認、責任は俺がとるって言われた状態で使ったから、目覚めるまでは怖かったわ」
「魔法使いは大変ね」
「あなたも旦那さん魔法使いじゃん」
「うちの旦那の魔法は、たまにとんでもなく決まっちゃうから」
「それはわかる、あれを見ると、精神方面の魔法は気をつけて使おうと思うの、強すぎると、支配になっちゃうし」
「幸せになってねって言葉が、命令になる、聞こえるんでしょ?」
「そうだから、私は使いたくなくて、下手すれば明日の朝には忘れて、君は誰?ってなるかもしれないし、まあ、そうなった方がホッとするというか」
「それなのになんで付き合っているのよ」
「本当によくわからないんだよね」

彼がいった外堀の一つというのは、その魔法使いの旦那さんのことだった。
「しかし、ずいぶんと面白いことになったというか、彼女にしては珍しい失敗じゃないかな」
「失敗ですか?」
「君にとっては幸運かもしれないけどもね」
「そうですね、愛を知ってしまいましたし」
「20年以上夫婦やってるって相当だからね」
「イチャイチャで、長男から、うちの両親は中が良くてですね。喧嘩しているの見たことないって言ってました」
「それで相談としては君としては、このまま付き合いたい、出来れば夢で見たことを実現したいだったね」
「はい」
「僕が見たところ、これ夢見魔法だけでそれを見ているわけでないんだよね、それこそ若干の予知夢、正夢もあるんじゃないかと」
「本当ですか?」
「落ち着いてよ、あくまで可能性よ、だって夢見の魔法って普通こんなにはっきりとは、話を聞くとまるで体験したかのようにすらすら話をしてくれたじゃない」
「できましたね、大分消えているとは思いましたが」
「ウカリくんが、娘さんの名前の由来を言わなかったら、本当に消えていたかもしれないが、ムムム、これはわからなくなってきたな、でも言えることは、現実でもその夢の続きを見たいのならばどんなことがあっても彼女の手を離さないことだ、君が少しでもこれは嫌だなって思ったら、かかっている魔法はコーヒーに入れるシロップのようにとける、多少甘さを残して飲み干すように消える」
「消えるの嫌だな」
「それも彼女には伝えておくといいよ、たぶんその、困った顔にウカリくんは弱い」
「ですね、それわかっててするのは心苦しいですが」
「それぐらいは悪になろうぜ」
「いいんですか?」
「剣士の君には気に入らないやり方だろうかと思うけども」
「何いっているんですか、それぐらいで愛を貫けるのならば、俺は笑顔で釘をさしますよ」
「大変な男にウカリ君も愛されたもんだな」
「じゃあ、最初から魔法なんてかけなければいい」
「フォローするわけじゃないけども、最初から悪い印象は抱いてなかったと思うよ、でなければ微睡みのような魔法はかけられないからね」
「へぇ」
「余計なことをいうとまたうちの奥さんに怒られるわ、でもまあ、なんかあったら相談ぐらいには乗るよ」
「そのときはよろしく」
「じゃーね」


「ウカリさん、次いつ会える?」
「明日の仕事終わりでよければ」
「じゃあ、それで」
「わかったわ」
少し仕事は早く終わった。
「先に待ち合わせ場所にいると思う」
「わかった」
メッセージを送りあう。
(しかし、とんでもないことになってしまったというか)
夢見の魔法をかけた相手が、その夢を消えることを拒んでしまった。
けども彼女にははっきりと彼よりその夢を覚えてしまってるので、消える夢を彼が拒んだことに少し嬉しさを感じてしまった、それは確かにあって。
(本当に私にはこの辺の魔法の才能がない)
人の心を掌中に出来てしまう怖さを知っているはずではないかと。
もし彼が忘れてしまっても、それはそれでしょうがないし、もしも緊急でこの魔法を使うことになっても要請は今後断ることになるだろう。
まるで自分が美人か何かのように、男性と楽しく過ごすなど、あれは夢、作り物の時間なのだ。
(魔法は怖い)

(とか思っているんだろうな)
こちらは彼だ。
そして夢の中とはいえ、伊達に20年以上夫婦をやっていたので、そんなネガティブをお見通しなのである。
さてとどうやって弱音を吐いてもらおうかなどと考えていると、彼女の姿が見えてきた。
「ウカリさん!」
子供のように手を降る。
「その格好ちょっと寒くない?」
そういう彼女は着込んでるので、二人の格好だけみると、今日の気温は何度だろうかわからなくなる。
「今日どこか行きたいところある?」
「あなたと一緒ならばどこでもいいわよ」
(あらやだ、ウカリさんったら)
「ちょっと遠回りしようか」
二人きりになれるところ、この辺どこだったかなと頭の中で考える。
「神社の方って、この時期行ったことある?」
「ないわね、夏とかだとお祭りあるところでしょ?」
「そうそう、今は、ライトアップされてその…デートスポットになってるんでさ、一緒に歩かないかなって」
「今日は歩くだけよ」
「もちろんですよ、お姫様」
あっ、ただまあ、いい感じのハプニングならばどんどん来てください。
むしろ、来い!来るんだ!
さぁ!さぁ!
「どうしたの?」
「神に祈りを捧げている」
「それは神社に行ってからにしたら、それとも何かお参りすることあるの?」
「そりゃあまあ、良縁とかね、知っている?今行く神社は縁結びの神で、勝利の神でもあるから、うちの流派だと何かしらの際にはお参りに行くんだよね、この間は先月の初めに行ったかな」
「あらそうなの、私はさっきもいった通り、お祭りの日かな」
「何お参りしたの?」
「こういうのって具体的に願わなければならないものでしょ」
「そうだね、○○にしてほしいから、こんな感じでお願いしますみたいな」
「それでも強い力で叶うときもあるから、私はいつもやんわりなのよ、ああでも夏の時はいつもよりお願いしますは強かったかな」

もう変なことは起きませんように。

「変なことって何さ」
「変なことは変なことよ、もう人生で苦労するのが嫌になったのよ、どうかそんなことが起きないように、それこそ上司から言われたのよね、きちんとやっておきなさいと」
「魔法使いが神頼みするぐらいだから、相当なことがあったんだね」
「そうね、ただでさえ私の人生は色々あったから」
「ああそれで、自分の人生を、努力を信じれるものがあなたでしたになるのか」
「?なんでそれを」
「ほら、君の魔法にかけられてたし、今の台詞どこで君が言ったかしってる?」
「それは、ごめんなさい」
「俺が死んで、お葬式の時、泣きながらそういった、長生きしてくれるっていったのにって、ごめん、言う気はなかったんだけども」
「本当にあなたの前では私は本音でしゃべっていたのね」
「そうだね」
「だからといって、こっちで続くとは別問題ですけども」
「いいじゃん、もう、俺で、結構いい旦那でお父さんだったでしょ」
「一緒にいるの短すぎたわ」
「ごめんね、娘ちゃんの結婚式まで生きてやれなくて、あれって、俺、無理しすぎたんでしょ」
「今はそうじゃないけども、これから先どんどん削れるわよ」
「そっか」
「ただ、今はそれ、医学とかでなんとかなるわよ」
「えっ?」
「いや、その秘伝って、私があなたのところの秘伝知っているのも不味いんだけども、魔法の関係で知った内容が秘伝だとしたら、そりゃ使い続けたら、血管がボロボロになるわってやつよ、でもね、あの夢はあくまで夢と言うか、あなたが知っている情報で組み立てられている部分があって、血管がボロボロでそのうち体がきかなくなってなのでしょうが、これ見せようと思っていたんだけども」
それは血管のダメージを回復させる新しい方法である。
(まあ、これで夢の方も消えるでしょうね、何しろ構成されている情報が消えるから、変わってしまえば存在ができなくなる)
す~と何かが抜ける感覚が体があったが。
「ふん!」
「えっ?」
「いや、俺の中から大切な思い出が消えてしまいそうでしたが、危なかった」
「今、魔法がとけそうに」
「何のこと?」
じっ
彼女が彼を見つめる。
「そういうのは、その、俺はいつでもいいですけども」
「あなた何したの?」
「この愛が愛しすぎてですね、ロマンチストに魔法をかけてって頼みましたら、いいよと」
「魔法かけたのあの人かよ」
飲み友達の旦那。
「それと筋肉があればなんとかなるよっていってたけども、本当だった」
「力業じゃん」
「こういうとき、あ~100キロ抱えてランニングする体力があって良かったですねって思っちゃう」
「体力でまさか魔法を解決されるなんて」
「筋肉も魔法みたいなもんだから、実用的な魔法ですよ」
「一緒にしないでよ」
「っていうか、心配はされてたよ」
「誰に」
「いろんな人、俺にかかっている魔法、相談しに行った人、ほとんどウカリさんのこと知っている人たちだったしね、もうそろそろ自分に優しくしてあげればいいのにねって」
「余計なお世話よ」
「そういうと思った」
「ならさ」
「君はそういって逃げるからな、自分は幸せにならない方がいいって、俺はそんなことないんじゃないかって思ってるし、君のことを相談した人たちも、たぶんそう思ってる」
「そうかしら」
「思ってなかったら、手を貸したりなんかしないでしょ、んでもって俺が悪いやつだったらさ、特にね、何もしないで見てるだけ、でもそうじゃなかったよ」
「そう…」
「俺じゃあ、君の心に届くような言葉は言えないけどもね、だからといって誰かの言葉を借りるわけにはいかないし、そこは難しい問題」
「あなたはあなたでとても素敵よ」
「もっと言って、俺のことを誉めてくれるのはウカリさんぐらいだし」
「そんなことないでしょ」
「あるんだよ、だから手を離したくないところもある、あっ、さすがにちょっと寒いかな」
「そりゃあ夜になったら冷えるわよ」
すると彼女は上着を脱いだ。
「今の気温なら中ので風を通さないし、重ね着していたから、その上着ならば着れるはずよね、サイズも確か」
「ああそうだね、ぴったりだ、じゃあ手を繋いでいい?」
「いいわよ」
そういって彼は彼女の手を繋いだが。
(なんか繋ぎなれてる)
彼女は驚くが、彼は当たり前のように躊躇いなく繋ぐ。
夢の中で夫婦をやってた20年以上の記憶がそうさせる。
「幸せだね、このまま婚姻届出しに行く?」
「そういう冗談は言うもんじゃないわよ」
「冗談じゃないのに、この手だって一度繋いだら離したくないんだよね」
「全くもう」
「諦めて、俺はこういうやつなんで」
「知ってるわよ、だからこそよ」
「どこまでそっちは覚えているの?」
「あっ」
「もっと親しくなったら教えてくれる?」
「絶対に言わない」
「へぇ~そんなこと言っちゃうんだ」
そこで耳もとで何かを囁く。
「なんでそんなこと知ってるのよ」
「夫婦でしたからね、そりゃあもうバッチリでござるよ」
「忘れてください」
「それは…どうしようかな、俺の中にあるこの気持ちがあるうちは、ちょっと無理かな、っていうか、俺のこと嫌いなの?」
「嫌いなわけないでしょ」
「へぇ」
「あっ」
「これは一度じっくりと聞く必要がありますね」
「じっくりって?」
「そりゃあもうじっくりと、逃げ場がないところで、お話したいなと」
「なんかいつもとキャラが違うと言うか」
「ウカリさんがそうさせちゃったよね」
「なんでよ」
「ウカリさん、地雷たくさんあるから、それ踏んでニコニコできるの俺しかいないんだよ」
「バカね、それを踏んで笑っていられる人なんていないし、そこは見せたくない」
「甘い痛みってあるよね」
「それはただ鈍感になっているだけよ」
「…だけならいいんだけども」
ボソッっとさっきとは違うトーンで言う。
「剣士ってさ、君が思った以上に、信頼さえあればバカなことをやらかすことができる生き物なんだぜ」
ウカリからすれば彼のこの一面は始めてみた。
「装いの言葉など意味なんてないし、それぐらいならば本音で話してくれた方がいい、泥と血の味がする?そんなもんよく舐めているさ」
彼の殺気が心地よく感じてるのならば、もはやそれは掌中なのだろう。
「愛してるよ、ウカリさん」
耳元で彼女にだけ聞こえる愛の告白は、道を踏み外せるぐらい甘美なものだ。
「いや、道は踏み外させるわけはないけど、おや、どうしたのかな?ウカリさん、顔真っ赤だよ」
「あ…」
「明日もお仕事なんだし、そろそろ帰らなきゃね」
またガラッと雰囲気が変わる。
剣士の方は恋を楽しんでいるようだが、魔法使いの方は恋に翻弄されていた。






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