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頑張りすぎた結果が今なんですよね
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「サボってないか、連絡して良かった」
「なんですか?また新しい車ですか?水芭(みずば)さんに怒られますよ」
「これは代車だよ、最後に食事をしたのはいつ?」
「昨日の夜八時半ですよ」
「じゃあ、行こうか」
彼女はそうして覆木(おおうき)が運転する車に載った。
「事務所に新しい人来たって聞いたんですが」
「うん、そう、瀬旭(せきょく)がつれてきた」
「水芭さんみたいですね」
「だから長く続くと思うよ」
「本当に覆木さんたちはお節介だな」
「それが俺らの生き方だって知らないの?」
「知ってますよ、だからやっかいだ」
「その格好寒くない?毛布はグローブボックスに入っているから」
「仕事するときはこの方がいいんですよ、肌が冷たい方が彼らは憐れむ」
「そうか、君は俺がいうのはおかしいかもしれないが、損な生き方をしている」
「棺桶に片足をつっこんでるほうが生きやすいですからね」
「その割にはタイムリミットには無頓着だ」
「私の話を信じてるんですか?実は嘘かもしれないのに」
「嘘で、彼らを救わないと自分は破滅する運命ですなんて君はいうのかい?」
「時と場合によってはいうのでは?」
「もう少し上手い嘘を考えてくれ」
覆木を怒らせたようだ。
「あそこだ」
「わかりました、もし戻ってこなかったら、通報お願いします」
そういって彼女は民家に向かうのだが、人が住まないようになってからしばらく経過し、建築様式からも50年ほど前のものか。
ドアには鍵がかかってはおらず、中を開けるとすぐに暗闇は、侵入者を手荒く歓迎しようとするが。
スッ
何かを感じ取ったのか、その手を引いた。
「お邪魔します」
靴のまま廊下を歩いていった。
「待つのも歯痒いものだな」
一時間ほどか、彼女は自分の上着で何かを包んで家から出てきた。
「KCJの人は来てます?」
「ああ、あそこに」
視線を送ると、KCJの職員が車から降りてきた。
「すいませんが、この子をよろしくお願いします」
「わかりました、確かに」
上着から少し包まれているものが見えた、人形のクルンとした巻き毛が見えた。
「お待たせしました、あっ、毛布使っていいですか?」
「ああ」
助手席の前、グローブボックスに覆木が手を伸ばすと、毛布が見えたので、それを受けとる。
「どのぐらい時間は伸びた?」
「三週間ぐらいですかね、その話も中でしてきましたが、呆れられました」
「そりゃあ、そうでしょうよ、それで何が食べたい」
「最近、食に関して執着もなくなってきたので、携帯食でも」
「よーし水芭に作ってもらおうか」
「それ、お説教しながら食べることになるじゃないですか?」
「そうだね」
「怒りを通り越すとその笑顔になるのやめてくださいよ」
「君が怒らせるのが悪いんだ」
「それはそうなんですが、そこは返す言葉もないです」
「素直じゃないね」
「ないですね、それに素直だとたぶんこれ受け止めれないと思うんですよね、あなたはこういう似たような、あなたと違って生きれなかったものを見つけて救いなさい、でなければ死が迫るって」
「そのルールを決めたのはずいぶん性格悪いよね」
「悪いですね、最初は信じられなかった、でもやっぱりそうらしかった、そんな感じで自分流というか、なんとかこなしていったら、本職の人たちに会ったみたいなもんですから」
「そういうのは正直、多くなったと思う」
「あれですか、伝統が引き継がれなかったとかそういう」
「それは大きいと思う」
「まあ、だからKCJもデータの解析しているんですもんね、でも採用されなかったAIにああいう未練の思いとチャットされて、何が効果的か割り出すって、これ考えた人、すんごい変な人ですよね」
「でも人が対応するには死者とは時間や体力が違いすぎるから」
365日24時間AIが死者のケアに務めます。
「そしてAIの名前が夢と希望なんですよね、ブラックジョークですよ、まっ、気持ちはわかりますよ、それが足りないからそう名付けたのかなって、私にはそんなものがないから、任せられるのならばお願いしますって感じですがね」
「君は俺よりずいぶんと年下だけども、君が死ぬととても悲しいよ」
「あなたぐらいですよ、本気でそういうのは」
「そんなことはないとは思うよ」
「瀬旭さんはわからない、でも水芭さんはバカだなって目をすると思う」
「しそう」
「でしょ、でもね、これでも頑張りすぎた結果が今なんですよね」
ポンポン
覆木は頭を撫でた。
「あっ、子供扱いして」
「俺からしたら、君は子供みたいなもんだよ」
「腹立つな」
「言葉使いを直したら、レディとして対応してあげる」
「守られると、自分が不要な扱いをされてると感じて不安になる」
「それは問題だ」
「ええ、でも、私のこれは、あなたにも出来ないことをしていると思うと優越感にも浸れますから」
「俺なら恨んでもいいよ」
「あなたを恨むぐらいなら、私はどうにかしているんですよ、こんなに世話を焼いている人に噛みついて、それこそ馬鹿みたいじゃないか」
「根は悪い子じゃないんだがな」
「それで何人女落としたんですか?」
「えっ?星の数ほど」
「シャレにもならいんだよな、これが」
「俺はそこまで熱心に口説いているわけじゃないんだよな」
「挨拶に勘違いするのが問題では」
「その通りなんだけどもさ」
「そういえば新人さんもそうですけども、男性の新人さん、協力者さんは増えないんですね」
「特に選んでいるわけではないんだけどもね」
「選んでいたら問題ですよ」
「世の中が変わっていったのも原因なんだけどもね、水芭の下ぐらいから、うちみたいなやり方が古くなったってやつ」
「でもそれって契約書が変わったってやつでしょ、今まで通りを更新するか、新規で書類を作るか」
「新規の方が初期負担少ないからみんなそっちにいったんだけども、長く見ると前の方がお金の残り方が違うんだ、だからうちはそっちで契約し続けて、最近かな、それが正解だったんだなって、じゃなきゃ失敗しても取り返せなかったし、なんといっても余計なこと出来ないし」
「依頼じゃなくても危機的な状況下陥っていた場合は、介入し救助し、または駆除を行うか」
「それが君の子供の時に間に合っていれば良かったと思うかい?」
「今となっては難しいね」
「どうして?」
「今日助けたあの子は、今日助けることが出来なかっただろうから、その一点だけでも、私はこの道を選んで良かったと思うよ」
「答えとしては実に俺好みだね」
「…」
「どうした?」
「思った以上に覆木さんの影響が出ていて驚いてますよ」
「いや~きちんと育ったもんだね」
「なんだろ、すごく悔しい」
「そこは素直になりなさいよね」
「負けたような気がするんで」
「でもこのまま行くと俺の勝ちだ」
「ああん?」
上等だ、しばらくは手を借りずにきちんとタイムリミット守って、やれるならば全部それ終わらせてくれるわ!
「じゃあ寝る」
「おやすみ、ついたら起こすから」
終わったらまず何しようか…そうだな覆木さんに終わったよってまず言おう。
あぁ、それでいいや。
「なんですか?また新しい車ですか?水芭(みずば)さんに怒られますよ」
「これは代車だよ、最後に食事をしたのはいつ?」
「昨日の夜八時半ですよ」
「じゃあ、行こうか」
彼女はそうして覆木(おおうき)が運転する車に載った。
「事務所に新しい人来たって聞いたんですが」
「うん、そう、瀬旭(せきょく)がつれてきた」
「水芭さんみたいですね」
「だから長く続くと思うよ」
「本当に覆木さんたちはお節介だな」
「それが俺らの生き方だって知らないの?」
「知ってますよ、だからやっかいだ」
「その格好寒くない?毛布はグローブボックスに入っているから」
「仕事するときはこの方がいいんですよ、肌が冷たい方が彼らは憐れむ」
「そうか、君は俺がいうのはおかしいかもしれないが、損な生き方をしている」
「棺桶に片足をつっこんでるほうが生きやすいですからね」
「その割にはタイムリミットには無頓着だ」
「私の話を信じてるんですか?実は嘘かもしれないのに」
「嘘で、彼らを救わないと自分は破滅する運命ですなんて君はいうのかい?」
「時と場合によってはいうのでは?」
「もう少し上手い嘘を考えてくれ」
覆木を怒らせたようだ。
「あそこだ」
「わかりました、もし戻ってこなかったら、通報お願いします」
そういって彼女は民家に向かうのだが、人が住まないようになってからしばらく経過し、建築様式からも50年ほど前のものか。
ドアには鍵がかかってはおらず、中を開けるとすぐに暗闇は、侵入者を手荒く歓迎しようとするが。
スッ
何かを感じ取ったのか、その手を引いた。
「お邪魔します」
靴のまま廊下を歩いていった。
「待つのも歯痒いものだな」
一時間ほどか、彼女は自分の上着で何かを包んで家から出てきた。
「KCJの人は来てます?」
「ああ、あそこに」
視線を送ると、KCJの職員が車から降りてきた。
「すいませんが、この子をよろしくお願いします」
「わかりました、確かに」
上着から少し包まれているものが見えた、人形のクルンとした巻き毛が見えた。
「お待たせしました、あっ、毛布使っていいですか?」
「ああ」
助手席の前、グローブボックスに覆木が手を伸ばすと、毛布が見えたので、それを受けとる。
「どのぐらい時間は伸びた?」
「三週間ぐらいですかね、その話も中でしてきましたが、呆れられました」
「そりゃあ、そうでしょうよ、それで何が食べたい」
「最近、食に関して執着もなくなってきたので、携帯食でも」
「よーし水芭に作ってもらおうか」
「それ、お説教しながら食べることになるじゃないですか?」
「そうだね」
「怒りを通り越すとその笑顔になるのやめてくださいよ」
「君が怒らせるのが悪いんだ」
「それはそうなんですが、そこは返す言葉もないです」
「素直じゃないね」
「ないですね、それに素直だとたぶんこれ受け止めれないと思うんですよね、あなたはこういう似たような、あなたと違って生きれなかったものを見つけて救いなさい、でなければ死が迫るって」
「そのルールを決めたのはずいぶん性格悪いよね」
「悪いですね、最初は信じられなかった、でもやっぱりそうらしかった、そんな感じで自分流というか、なんとかこなしていったら、本職の人たちに会ったみたいなもんですから」
「そういうのは正直、多くなったと思う」
「あれですか、伝統が引き継がれなかったとかそういう」
「それは大きいと思う」
「まあ、だからKCJもデータの解析しているんですもんね、でも採用されなかったAIにああいう未練の思いとチャットされて、何が効果的か割り出すって、これ考えた人、すんごい変な人ですよね」
「でも人が対応するには死者とは時間や体力が違いすぎるから」
365日24時間AIが死者のケアに務めます。
「そしてAIの名前が夢と希望なんですよね、ブラックジョークですよ、まっ、気持ちはわかりますよ、それが足りないからそう名付けたのかなって、私にはそんなものがないから、任せられるのならばお願いしますって感じですがね」
「君は俺よりずいぶんと年下だけども、君が死ぬととても悲しいよ」
「あなたぐらいですよ、本気でそういうのは」
「そんなことはないとは思うよ」
「瀬旭さんはわからない、でも水芭さんはバカだなって目をすると思う」
「しそう」
「でしょ、でもね、これでも頑張りすぎた結果が今なんですよね」
ポンポン
覆木は頭を撫でた。
「あっ、子供扱いして」
「俺からしたら、君は子供みたいなもんだよ」
「腹立つな」
「言葉使いを直したら、レディとして対応してあげる」
「守られると、自分が不要な扱いをされてると感じて不安になる」
「それは問題だ」
「ええ、でも、私のこれは、あなたにも出来ないことをしていると思うと優越感にも浸れますから」
「俺なら恨んでもいいよ」
「あなたを恨むぐらいなら、私はどうにかしているんですよ、こんなに世話を焼いている人に噛みついて、それこそ馬鹿みたいじゃないか」
「根は悪い子じゃないんだがな」
「それで何人女落としたんですか?」
「えっ?星の数ほど」
「シャレにもならいんだよな、これが」
「俺はそこまで熱心に口説いているわけじゃないんだよな」
「挨拶に勘違いするのが問題では」
「その通りなんだけどもさ」
「そういえば新人さんもそうですけども、男性の新人さん、協力者さんは増えないんですね」
「特に選んでいるわけではないんだけどもね」
「選んでいたら問題ですよ」
「世の中が変わっていったのも原因なんだけどもね、水芭の下ぐらいから、うちみたいなやり方が古くなったってやつ」
「でもそれって契約書が変わったってやつでしょ、今まで通りを更新するか、新規で書類を作るか」
「新規の方が初期負担少ないからみんなそっちにいったんだけども、長く見ると前の方がお金の残り方が違うんだ、だからうちはそっちで契約し続けて、最近かな、それが正解だったんだなって、じゃなきゃ失敗しても取り返せなかったし、なんといっても余計なこと出来ないし」
「依頼じゃなくても危機的な状況下陥っていた場合は、介入し救助し、または駆除を行うか」
「それが君の子供の時に間に合っていれば良かったと思うかい?」
「今となっては難しいね」
「どうして?」
「今日助けたあの子は、今日助けることが出来なかっただろうから、その一点だけでも、私はこの道を選んで良かったと思うよ」
「答えとしては実に俺好みだね」
「…」
「どうした?」
「思った以上に覆木さんの影響が出ていて驚いてますよ」
「いや~きちんと育ったもんだね」
「なんだろ、すごく悔しい」
「そこは素直になりなさいよね」
「負けたような気がするんで」
「でもこのまま行くと俺の勝ちだ」
「ああん?」
上等だ、しばらくは手を借りずにきちんとタイムリミット守って、やれるならば全部それ終わらせてくれるわ!
「じゃあ寝る」
「おやすみ、ついたら起こすから」
終わったらまず何しようか…そうだな覆木さんに終わったよってまず言おう。
あぁ、それでいいや。
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