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その質問だけは殺されても言えません
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「俺とみなさんが出会うことが本来はない、想定されてないので、その場合はどこかでみなさんが死に、泣いている螺殻(らがら)ミツをずっと守ることになるんですよね」
そう、泉呼(いずこ)は三人、瀬旭(せきょく)、覆木(おおうき)、水芭(みずば)に告げた。
「みなさんの亡骸を取り返すまでも、取り返すまでもずっと、みなさんは死んでるからわからないでしょうが、この曲って誰が教えたんです?」
それは泉呼が生前とでもいえばいいのだろうか、その時に流行していた歌というやつだ。
「ああ、それは最近またCMで使われていて、barが開店する前の掃除しているときとかによく聞こえてるな」
いわゆる愛するものへの別れと悲しみの曲。
「みなさんの死はいいように利用されちゃうんですよね、その時によって取り戻す順番とかは変わるとは思うんですけども、三人とも取り返した、やっと静かな場所に眠らせることができるといったその日の晩にその曲を口づさむんですよね」
聞かされる方はとても心が痛い。
「ごめん!!!」
「ミツ、俺が悪かった!!」
そこにダメージを受ける瀬旭と覆木。
「二人は一旦置いておきますが、まるで見た来たようにいいますね。まあ、俺の場合は誰に執着されるかはすごくわかりやすいですけども、この二人はどこと誰です?組合の関係者は関わってますか」
「瀬旭さんが逆賊に扱われる可能性が高いです、覆木さんはなんかこう、伏せられてて、もしかしてどこかで交渉されているのかもしれないって感じでした」
「その未来は変えれるのか?」
「この話をした段階で変わってますよ、確実に同じにはならない、ただ良い方か、悪い方かまではわかりませんが」
「それなら今のところは十分だ」
「しかし…」
「なんだ?」
「あなた方三人で会うということが、鍵になるとは思わなかった」
「お節介は焼くもんだね」
「それが少し悔しくもあります」
「どうしてさ」
「こっちは過ごした時間は圧倒的上なのに、越えられない壁がある」
「昔の泉呼さんみたいな喋りになってきましたね」
「一回死ぬと、余計なものが無くなるんだよ」
「それはまだ知りたくない心境です」
「メッセンジャーになることも嫉妬してます、勝手に動いたのは俺なんですがね」
「なんだよ、ミツにありがとうでも言ってほしかったのかよ」
「かもしれません、でもみなさんには教えられませんが、困った質問を一つしてしまいましたから、その負い目が一番大きいでしょうね」
「それこそ馬鹿げた行動の理由にそれがなったと?」
「なりました、本当に馬鹿馬鹿しいし、その質問だけは殺されても言えません」
質問の後に彼女はこう返した。
「あの時なんで泣いてしまったのだろうと、泣く暇の分、動けていたら、こんなことにならなかったのに」
「そう聞くとね、どんな失礼なことをしたのか知りたくもある」
「まてよ、瀬旭、お前はこの辺になると短気になる」
「だってさ、許せないことっていうのはあるもんじゃない、知ってて言うならなおさらだ」
「撃ちたければどうぞ」
「おっ、このヤロー」
「やめてくださいよ、それで想定より悪くなったらどうするんですか」
「それじゃあこいつは止まれないよ、お前は何に怒ってるの?」
「そりゃあ決まってるでしょ、自分にだよ」
そこで矛をおさめた。
「悪かったよ、でも、守るって決めてるんだ、それはわかれよ」
「本当にお気に入りというかなんというか」
「こういうのを溺愛という」
「なるほど」
「納得しないでくださいよ」
「それで本題ですが、みなさんはどうするんですか?」
「守るのはもちろんだ、そのために力が及ばないなら、やり方を、流儀を変えても構わないと思ってる」
「そこまで変える何かが彼女にはありましたか?」
「ありますよ」
水芭がそう答えるのは意外と言えた。
「えっ?お前、あったの」
瀬旭はびっくりする。
「おかしいでしょうか?」
「えっ、だってさ、ミツにいつも厳しいじゃん、健気にミツはついてきてくれているけどもさ」
「そういうところがいいんでしょうね」
「お前な、そう思っているならそう言葉にしなさいよ、一緒に誉める!」
「それは大事なことですか?」
「大事なことでしょうよ、そんなんじゃただ厳しいだけのお兄さんで終わるよ」
「それは…」
「水芭くんの意外な一面を見ました」
「本人が一番気づいてないんだぜ」
「今まで好かれようとしなくても、どうにかなって来たから…おめでとう、それが大人になったということだ」
「やめてくださいよ、もう!」
「ああ、そうそう彼女からこれが必要だろうからと渡しておいてくれと」
今回密会のセッティングをしてくれた、事務所の協力者でもある魔法使いのことである、三人に会うときにこれもついでに渡してくれと、頼まれた。
世界のマイナー魔法、魔術特集、初版。
「ありがとう、これ資料室にあったんだが、読みそびれてな、どこかで手に入れようとおもったんだが」
「なんかこれ、ちょっと前から競り落としている人がいるみたいなんですよ」
「えっ?」
「そういうとき金の匂いがするから、手持ちを売り出すかどうかっていう話が、コレクターの間で流れまして、でも閲覧するのは容易ぐらいの貴重さだからおかしいなってことで」
ちょっと調べたやつがいる。
「それでこれが欲しいやつがこの辺のやつじゃないかって、ええっと最初に在庫がなくなった店というのが…」
名前をあげるがその書店に心当たりはない。
「半年前にオープンした古書店みたいですね」
「そこの店頭在庫から無くなるのが買われ始めたスタートらしいので」
「なるほど、それは怪しいね」
「そこから検索して買えるものがみんな売り切れならば、関連付けれますか」
「だな、でお前はどうするの?」
「どうするのって」
「うちの事務所に来ないかって話もしてたんだけども」
「何いってるんですか、行けるわけないでしょうよ」
「積もる話もあるでしょうよ」
「今の俺はそんな…」
「はいはい、そういうのはいいから、何さ、出入りしているのがわかるのが怖いの」
「はい」
「なら彼女に頼んで倉庫から入れるようにしてやるさ」
「後、その螺殻ミツさんに今の状態で会うのはちょっと」
「なら休みの日に呼びますよ、それだったら?」
「…お願いします」
「じゃあ決まりだな、っていうかさ、お前が死んだらしいって聞いたとき、信じられなかったんだ、けども、たぶんこれは生きてないだろうなって遺留品が見つかったとき、集まったやつらで、偲んだんだぜ」
「それはありがとうございます…かな」
「生きてるとか死んでいるとかどうだっていいさ、帰ってきたんだからな」
「ダメですよ、泉呼さん、瀬旭さんの乱暴な考え方、勢いでいってるんですから、今、ジーンと来てるの後で黒歴史になりますよ」
「それはひどくないか?」
「ノリと勢いでいつも何とかしようとして、それが上手くいかなかったとき、もっと大変になったことは何回あります」
「いっぱいあるよね?」
「お前までそういう、確かにあるけども、そこまでたくさんじゃない」
「あれあれ、そんなこと言っちゃうんだ、へ~ふ~ん」
「なんだよ、ミツにでも言いつけるのかよ」
「いや、言いつけない、代わりにお前が面倒くさいと思ってる車両の整備点検は俺が全部やる」
「それはありがたいからいいけどもさ、そこに何の得があるんだよ」
「そして代車のリクエストは全部俺好みにして、ミツを助手席に乗せて、ドライブを楽しみたいと思う」
「なんだそれは羨ましすぎるだろうが」
「ちょっと待ってください、それだと代車のお金が」
「あっ、大丈夫、それは話をつけてるから、いや~前に頼んでいた整備工房の親父さんが、工房閉めるって話が、若い子達がレジェンド、レジェンドって呼んで、KCJの整備に復帰させちゃってね、うちじゃ維持できない名車も覆木にならば代車で出してもいいだろうって話で」
チャリ
その代車のキーとキーホルダーを見せるが、キーホルダーはウサギと、KCJに引き取られるまでどこで走っていたのか示す国旗の二つがついている。
「あっ、こいつ元々話ついていたの、どっかでねじ込むだったな、許さん!」
「この二人、前はもっと大人だった気がするんだけども、何かあったの?」
「男は大人になると童心に戻るんですよ」
「なるほど」
水芭は表情を崩さずに、さも本当かのように話術で乗りきった。
この辺が、瀬旭と覆木のそばで長年仕事をして来た影響がとても出ているのであった。
そう、泉呼(いずこ)は三人、瀬旭(せきょく)、覆木(おおうき)、水芭(みずば)に告げた。
「みなさんの亡骸を取り返すまでも、取り返すまでもずっと、みなさんは死んでるからわからないでしょうが、この曲って誰が教えたんです?」
それは泉呼が生前とでもいえばいいのだろうか、その時に流行していた歌というやつだ。
「ああ、それは最近またCMで使われていて、barが開店する前の掃除しているときとかによく聞こえてるな」
いわゆる愛するものへの別れと悲しみの曲。
「みなさんの死はいいように利用されちゃうんですよね、その時によって取り戻す順番とかは変わるとは思うんですけども、三人とも取り返した、やっと静かな場所に眠らせることができるといったその日の晩にその曲を口づさむんですよね」
聞かされる方はとても心が痛い。
「ごめん!!!」
「ミツ、俺が悪かった!!」
そこにダメージを受ける瀬旭と覆木。
「二人は一旦置いておきますが、まるで見た来たようにいいますね。まあ、俺の場合は誰に執着されるかはすごくわかりやすいですけども、この二人はどこと誰です?組合の関係者は関わってますか」
「瀬旭さんが逆賊に扱われる可能性が高いです、覆木さんはなんかこう、伏せられてて、もしかしてどこかで交渉されているのかもしれないって感じでした」
「その未来は変えれるのか?」
「この話をした段階で変わってますよ、確実に同じにはならない、ただ良い方か、悪い方かまではわかりませんが」
「それなら今のところは十分だ」
「しかし…」
「なんだ?」
「あなた方三人で会うということが、鍵になるとは思わなかった」
「お節介は焼くもんだね」
「それが少し悔しくもあります」
「どうしてさ」
「こっちは過ごした時間は圧倒的上なのに、越えられない壁がある」
「昔の泉呼さんみたいな喋りになってきましたね」
「一回死ぬと、余計なものが無くなるんだよ」
「それはまだ知りたくない心境です」
「メッセンジャーになることも嫉妬してます、勝手に動いたのは俺なんですがね」
「なんだよ、ミツにありがとうでも言ってほしかったのかよ」
「かもしれません、でもみなさんには教えられませんが、困った質問を一つしてしまいましたから、その負い目が一番大きいでしょうね」
「それこそ馬鹿げた行動の理由にそれがなったと?」
「なりました、本当に馬鹿馬鹿しいし、その質問だけは殺されても言えません」
質問の後に彼女はこう返した。
「あの時なんで泣いてしまったのだろうと、泣く暇の分、動けていたら、こんなことにならなかったのに」
「そう聞くとね、どんな失礼なことをしたのか知りたくもある」
「まてよ、瀬旭、お前はこの辺になると短気になる」
「だってさ、許せないことっていうのはあるもんじゃない、知ってて言うならなおさらだ」
「撃ちたければどうぞ」
「おっ、このヤロー」
「やめてくださいよ、それで想定より悪くなったらどうするんですか」
「それじゃあこいつは止まれないよ、お前は何に怒ってるの?」
「そりゃあ決まってるでしょ、自分にだよ」
そこで矛をおさめた。
「悪かったよ、でも、守るって決めてるんだ、それはわかれよ」
「本当にお気に入りというかなんというか」
「こういうのを溺愛という」
「なるほど」
「納得しないでくださいよ」
「それで本題ですが、みなさんはどうするんですか?」
「守るのはもちろんだ、そのために力が及ばないなら、やり方を、流儀を変えても構わないと思ってる」
「そこまで変える何かが彼女にはありましたか?」
「ありますよ」
水芭がそう答えるのは意外と言えた。
「えっ?お前、あったの」
瀬旭はびっくりする。
「おかしいでしょうか?」
「えっ、だってさ、ミツにいつも厳しいじゃん、健気にミツはついてきてくれているけどもさ」
「そういうところがいいんでしょうね」
「お前な、そう思っているならそう言葉にしなさいよ、一緒に誉める!」
「それは大事なことですか?」
「大事なことでしょうよ、そんなんじゃただ厳しいだけのお兄さんで終わるよ」
「それは…」
「水芭くんの意外な一面を見ました」
「本人が一番気づいてないんだぜ」
「今まで好かれようとしなくても、どうにかなって来たから…おめでとう、それが大人になったということだ」
「やめてくださいよ、もう!」
「ああ、そうそう彼女からこれが必要だろうからと渡しておいてくれと」
今回密会のセッティングをしてくれた、事務所の協力者でもある魔法使いのことである、三人に会うときにこれもついでに渡してくれと、頼まれた。
世界のマイナー魔法、魔術特集、初版。
「ありがとう、これ資料室にあったんだが、読みそびれてな、どこかで手に入れようとおもったんだが」
「なんかこれ、ちょっと前から競り落としている人がいるみたいなんですよ」
「えっ?」
「そういうとき金の匂いがするから、手持ちを売り出すかどうかっていう話が、コレクターの間で流れまして、でも閲覧するのは容易ぐらいの貴重さだからおかしいなってことで」
ちょっと調べたやつがいる。
「それでこれが欲しいやつがこの辺のやつじゃないかって、ええっと最初に在庫がなくなった店というのが…」
名前をあげるがその書店に心当たりはない。
「半年前にオープンした古書店みたいですね」
「そこの店頭在庫から無くなるのが買われ始めたスタートらしいので」
「なるほど、それは怪しいね」
「そこから検索して買えるものがみんな売り切れならば、関連付けれますか」
「だな、でお前はどうするの?」
「どうするのって」
「うちの事務所に来ないかって話もしてたんだけども」
「何いってるんですか、行けるわけないでしょうよ」
「積もる話もあるでしょうよ」
「今の俺はそんな…」
「はいはい、そういうのはいいから、何さ、出入りしているのがわかるのが怖いの」
「はい」
「なら彼女に頼んで倉庫から入れるようにしてやるさ」
「後、その螺殻ミツさんに今の状態で会うのはちょっと」
「なら休みの日に呼びますよ、それだったら?」
「…お願いします」
「じゃあ決まりだな、っていうかさ、お前が死んだらしいって聞いたとき、信じられなかったんだ、けども、たぶんこれは生きてないだろうなって遺留品が見つかったとき、集まったやつらで、偲んだんだぜ」
「それはありがとうございます…かな」
「生きてるとか死んでいるとかどうだっていいさ、帰ってきたんだからな」
「ダメですよ、泉呼さん、瀬旭さんの乱暴な考え方、勢いでいってるんですから、今、ジーンと来てるの後で黒歴史になりますよ」
「それはひどくないか?」
「ノリと勢いでいつも何とかしようとして、それが上手くいかなかったとき、もっと大変になったことは何回あります」
「いっぱいあるよね?」
「お前までそういう、確かにあるけども、そこまでたくさんじゃない」
「あれあれ、そんなこと言っちゃうんだ、へ~ふ~ん」
「なんだよ、ミツにでも言いつけるのかよ」
「いや、言いつけない、代わりにお前が面倒くさいと思ってる車両の整備点検は俺が全部やる」
「それはありがたいからいいけどもさ、そこに何の得があるんだよ」
「そして代車のリクエストは全部俺好みにして、ミツを助手席に乗せて、ドライブを楽しみたいと思う」
「なんだそれは羨ましすぎるだろうが」
「ちょっと待ってください、それだと代車のお金が」
「あっ、大丈夫、それは話をつけてるから、いや~前に頼んでいた整備工房の親父さんが、工房閉めるって話が、若い子達がレジェンド、レジェンドって呼んで、KCJの整備に復帰させちゃってね、うちじゃ維持できない名車も覆木にならば代車で出してもいいだろうって話で」
チャリ
その代車のキーとキーホルダーを見せるが、キーホルダーはウサギと、KCJに引き取られるまでどこで走っていたのか示す国旗の二つがついている。
「あっ、こいつ元々話ついていたの、どっかでねじ込むだったな、許さん!」
「この二人、前はもっと大人だった気がするんだけども、何かあったの?」
「男は大人になると童心に戻るんですよ」
「なるほど」
水芭は表情を崩さずに、さも本当かのように話術で乗りきった。
この辺が、瀬旭と覆木のそばで長年仕事をして来た影響がとても出ているのであった。
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