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じゃあ、仕事をやめちゃえばいいんだ。
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久しぶりに瀬旭(せきょく)さんと水芭(みずば)くんを見たら、びっくりしたな、まだ現役だったんだ。
あの人たちが今の僕を見たら、一体どう思うんだろうか?
鏡に移る自分と目があった。
何しろ最後にあいさつしたときと、ほぼ同じ姿だからな。
時間だ。
「仕事は終わったよ」
「さすがだな、次もよろしくって言われるような働きぶりだ、じゃあ、いつものように適当に戻ってきなよ」
連絡は終わる。
本当に不思議なことが我が身に起こった、いつの間にか寝なくても食べなくてもいい体になっていた。
どういうことなのかわけのわからないままさ迷っているうちに時はたったが、少しばかり前に仕事をすることになった。
引き受け手がない危険な仕事をそこそこ安く、ライバルもいないし、いなくなったら困るから色んなところでみんな協力的だ。
ふとそこで流れてきた歌があった、今のランキング上位の曲だが、この曲は何故かすきになった。
(昔は歌の良さなんてわからなかったんだけどもな)
歌わないのか?
じゃあ好きなものを食べるといい。
ふと昔を思い出した。
ポツポツ
雨が降る、まあ、でも今の自分にはあまり関係ない、冷たいとは感じるがそれぐらいである。
「あの~」
そんな変な男に話しかけてくる子がいた。
「今日はこれから雨が強くなるそうなんで、よろしければこれ使ってください、あっ、返さなくても大丈夫なので、じゃ!」
そういって彼女は傘をくれ、そのまま走り去ってしまった。
「どうしよう」
雨の中貰った傘を見た。
「あ~あどうしよう」
すごく困った。
「瀬旭さんと覆木さんと水芭くんが本気で怒るとしたらあの子のことなのに」
今、彼に傘をくれたのは螺殻ミツ。
「すごくいい子じゃないか、困ったな、このままじゃ…」
そのうち、あの三人関係の依頼は入ってくるんじゃないか、それは見えていたことだ。
そうなればあの子はとても悲しむだろう。
(あっそうか)
じゃあ、仕事をやめちゃえばいいんだ。
新しい依頼は入ってないからそうしよう、そう決めたのならば、すぐに話をした。
「はっ?」
「というわけで新しい仕事は引き受けられないから」
「ど、どうしたっていうだ、金か、金ならば交渉するし」
「お金ではないよ」
「ならさ、なんで仏心がわいたんだ?」
「うまいこというね、それだよ」
「ああ、本当にどうしちまったんだ、とりあえず休め、今までたくさん働いてもらったし、そうだ、休んでくれ」
「休んでもさ…やめたいんだけども」
「いきなりやめたいって言われても、そうはいかないの、頼むよ、仕事の付き合いもあるんだからさ」
そういわれたら弱かったので、休養という形で落ち着いたのだが、組んでいる男はおもしろくはない。
(本当にどうしちまったんだ、出掛ける前まではなんでもなかったのに、誰かに吹き込まれた?まずはそいつを確認しなくっちゃな、場合によっては消さなきゃならねえ)
この相棒にとってはこれはチャンスだった、眠ることなく食べることがなくなった男、しかも一度引き受けた話は忠実にどんな仕事でもこなすのだから、だからこそ小さいところから初めて、ここまで育てた。もちろん、ここで終わる気はない、もっと上にいく、野望は止まるわけがない。
「ミツさん、お使いを頼めるか?」
急に予約が来たために食材が足りなくなりそうなので、水芭に頼まれて近所の商店街まで買い物に行く。
この事務所は活躍は派手なのだが、こういった買い物は近所のお店を使うこともたって、地域からの好感度は高い。
店頭にザル一山いくらという売り方をしている八百屋にやってきた。
「すいません」
あいさつをし、お使いの果物などを買う。
「ちょっと重いよ」
「大丈夫です、持てます」
といってもだ、こぼれるときにはこぼれるもので。
「おおっと、大丈夫?」
「す、すいません、ありがとうございます」
「この間はどうも」
「ああ、あの時の!あの後は雨には濡れませんでしたか?」
「お陰さまで、ついでに仕事の悩みも一つ吹き飛んだよ」
「それはよかったですね」
「じゃあ、これね、そっちはお仕事がんばってね」
男は笑顔を浮かべて手を振った。
ミツは知らないだろう、知らないうちに冥府から這い出て彷徨う幽鬼が人の心を取り戻したということを。
「よし、今日も頑張って仕事をしよう」
そういって彼女は歩き出すのだった。
あの人たちが今の僕を見たら、一体どう思うんだろうか?
鏡に移る自分と目があった。
何しろ最後にあいさつしたときと、ほぼ同じ姿だからな。
時間だ。
「仕事は終わったよ」
「さすがだな、次もよろしくって言われるような働きぶりだ、じゃあ、いつものように適当に戻ってきなよ」
連絡は終わる。
本当に不思議なことが我が身に起こった、いつの間にか寝なくても食べなくてもいい体になっていた。
どういうことなのかわけのわからないままさ迷っているうちに時はたったが、少しばかり前に仕事をすることになった。
引き受け手がない危険な仕事をそこそこ安く、ライバルもいないし、いなくなったら困るから色んなところでみんな協力的だ。
ふとそこで流れてきた歌があった、今のランキング上位の曲だが、この曲は何故かすきになった。
(昔は歌の良さなんてわからなかったんだけどもな)
歌わないのか?
じゃあ好きなものを食べるといい。
ふと昔を思い出した。
ポツポツ
雨が降る、まあ、でも今の自分にはあまり関係ない、冷たいとは感じるがそれぐらいである。
「あの~」
そんな変な男に話しかけてくる子がいた。
「今日はこれから雨が強くなるそうなんで、よろしければこれ使ってください、あっ、返さなくても大丈夫なので、じゃ!」
そういって彼女は傘をくれ、そのまま走り去ってしまった。
「どうしよう」
雨の中貰った傘を見た。
「あ~あどうしよう」
すごく困った。
「瀬旭さんと覆木さんと水芭くんが本気で怒るとしたらあの子のことなのに」
今、彼に傘をくれたのは螺殻ミツ。
「すごくいい子じゃないか、困ったな、このままじゃ…」
そのうち、あの三人関係の依頼は入ってくるんじゃないか、それは見えていたことだ。
そうなればあの子はとても悲しむだろう。
(あっそうか)
じゃあ、仕事をやめちゃえばいいんだ。
新しい依頼は入ってないからそうしよう、そう決めたのならば、すぐに話をした。
「はっ?」
「というわけで新しい仕事は引き受けられないから」
「ど、どうしたっていうだ、金か、金ならば交渉するし」
「お金ではないよ」
「ならさ、なんで仏心がわいたんだ?」
「うまいこというね、それだよ」
「ああ、本当にどうしちまったんだ、とりあえず休め、今までたくさん働いてもらったし、そうだ、休んでくれ」
「休んでもさ…やめたいんだけども」
「いきなりやめたいって言われても、そうはいかないの、頼むよ、仕事の付き合いもあるんだからさ」
そういわれたら弱かったので、休養という形で落ち着いたのだが、組んでいる男はおもしろくはない。
(本当にどうしちまったんだ、出掛ける前まではなんでもなかったのに、誰かに吹き込まれた?まずはそいつを確認しなくっちゃな、場合によっては消さなきゃならねえ)
この相棒にとってはこれはチャンスだった、眠ることなく食べることがなくなった男、しかも一度引き受けた話は忠実にどんな仕事でもこなすのだから、だからこそ小さいところから初めて、ここまで育てた。もちろん、ここで終わる気はない、もっと上にいく、野望は止まるわけがない。
「ミツさん、お使いを頼めるか?」
急に予約が来たために食材が足りなくなりそうなので、水芭に頼まれて近所の商店街まで買い物に行く。
この事務所は活躍は派手なのだが、こういった買い物は近所のお店を使うこともたって、地域からの好感度は高い。
店頭にザル一山いくらという売り方をしている八百屋にやってきた。
「すいません」
あいさつをし、お使いの果物などを買う。
「ちょっと重いよ」
「大丈夫です、持てます」
といってもだ、こぼれるときにはこぼれるもので。
「おおっと、大丈夫?」
「す、すいません、ありがとうございます」
「この間はどうも」
「ああ、あの時の!あの後は雨には濡れませんでしたか?」
「お陰さまで、ついでに仕事の悩みも一つ吹き飛んだよ」
「それはよかったですね」
「じゃあ、これね、そっちはお仕事がんばってね」
男は笑顔を浮かべて手を振った。
ミツは知らないだろう、知らないうちに冥府から這い出て彷徨う幽鬼が人の心を取り戻したということを。
「よし、今日も頑張って仕事をしよう」
そういって彼女は歩き出すのだった。
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