浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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シー毛の里

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「なんか変な魔法使いがウロウロしてるらしいぜ」
自分達のパーティーの活動範囲内にそういった注意案内があったのならば、リーダーとしては確認しないわけにはいかない。
「うちだと出会ったから、確実に二人は潰されそう」
「私と」
「私だねぇ!」
魔法を使える彼と、魔法は使わない彼女がおそらく何日か不快な状態になると思われた。
「どういうことだ?」
「魔法の詠唱を聞くだけで、気分が悪くなるような対策されているから、聞いてから判断しちゃダメ、いけると思ってもダメ」
「私だと、とりあえず距離を取るかしらね」
魔法を使える彼女は自分ならばこうするといい。
「リーダーは?どうして大丈夫なんだ?」
「空気の振動が受け止めれないなって見えるから、そこで避ける」
「そんなのリーダーしかできないぜ」
時間の進み方の調整でそれはわかるらしい。
「研修で一度そういうのは喰らったことがあるんだよ、だからそれ以上の揺れがある場合はさっさと逃げるよ」
「野性動物並みの危機管理だな」
「そりゃあどうも」
「うちのパーティーは、すぐに撤退するから無理だけども、ドラゴンの角とかはちょっとほしい」
「なんだ?家に飾るのか?」
「そう!あれ知らない?あれって飾ると、山の獣は近づかないんだよ」
なので一番欲しがるのは国である、城にでも置けばその分人の生存域は広がる。
「ドラゴンの威を借る王様か」
「そういえばそういう話が子供の頃あったわね」
どうもこちらでは馴染みのある話らしい。
「リーダーからもらった美味しい鹿肉も、冬まで保存とかしたいんだろうけどもさ、早いうちに食べちゃうんだよ」
それは鹿肉は山の獣に狙われやすいからである。
「弱っている鹿には近づくなって言われるものな」
「そういうのは獣が狙いをつけているからさ、下手に狩ったら、獣が獲物奪ったってことでこっちに向かってくるからさ」
「特にリーダーが選んだ鹿は旨い」
「あれ、なんで旨いんだ?」
「それはね、畑で育った美味しいものを食べているからなんだよ、鹿は食べたものの味がするんだけども、春夏は新芽とか清涼な水とか、あちこちにファンがいる美味しい野菜を狙って食べたりするからあの味」
「舌が肥えているんだな」
「そう、だから畑の持ち主にもよるけども、鹿は絶対許さないんだ」
「旨い旨いといっているうちに無くなってしまった」
「そりゃあ良かったね、あ~そういえばドラゴンじゃなくても獣避けに使われているのあったな、ほら、ケットシー」
「ケットシーは人を選ぶからな」
オスの三毛猫が漁師に大事にされるように、山や町だとケットシーがいると喜ばれたりする。
「毛織物があるんだよ、ケットシーの毛を、換毛期になると抜け落ちるから、あれを織ってさ」
元々は今まで集落を守っていたケットシーが亡くなってしまい、それを惜しんでいたのだが、不思議と今まで通り獣から集落が守られていたために、ケットシーの毛には獣避けの効果があると経験則でわかっていた。
「刺繍、布に、ケットシーの毛を糸にしたものを縫っていく感じだったらしいんだけどもね」
KCJの職員に聞けば確実にわかるだろうということで、後日KCJの職員に問い合わせてみると。
「今はシー毛の里がありまして」
日本にあるそうです。
「そこが100%シー毛のタペストリーを作ってますね」
「へぇ」
「うちが出しているカレンダー知ってます?」
「ケットシーの写真のついてる」
「はい、今年の3月のケットシーであるイツモ様が、その業界を変えてしまいました」
それまではケットシーの織物は、運任せで製作されていた、それこそいつ抜け落ちるからわからない毛を拾い集め、柄も抜け落ちた毛を見ながら織り込まれていたが。
「換毛期のスピードがとんでもなく早いんですよ、それで黒と白の二色が確保できるので、そうなりますとデザインが、ええっと伝統柄ではなく、それこそお客さまの家紋とか紋章、オーダーが可能になったんですね」
そこと需要の問題であった。
「山菜採りのお仕事をしたくても熊が出るから入山しないでくださいっていう場所がとても多くなりました、けどもこれがケットシーの毛織物、タペストリーを持っている場合は、今まで通り山に行けるんですよ」
「あ~それは、たぶん今の価格よりこれからもっと高くなるね」
「そうなるでしょうね、ただそれでもドラゴンの角なんかよりは現実的に買えるわけですから」
リーダーはそこまで聞くとう~んと言うしかなかった。
必ずなんとかする目的ではなく、達成できたら達成する目標の辺りに入れておくしかなかった。


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