浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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哲学者の顔

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浜薔薇の人気メニューはたくさんあるが、目に見えて特をするのはスタイルコーディネートではないだろうか。
「でも始めたばかりの頃事件があったんですよ」
手が回らないので、余裕があったときに、スタイルコーディネートを行うという形にしたところ、今は浜薔薇には来ていないお客さんが。
「そんなんで仕事になると思うの!」
説教をしたというやつで。
「あれは…ないわと思いました」
スタイルコーディネートのファンである波里はそういった。
「しかしですね、その時颯爽とリーダーが現れてでせね」
傑さん、こちらで美味しいものを食べてきてください。
けっこうな額のお食事券を傑に渡し、傑はそれで家族と食事にいった。
仕事の話は今までしてこなかった父に愚痴をこぼせたという。
「なんでそんな男前なことをさらっとやるんですか」
「いや、そこでやんないと、傑さんスタイルコーディネートどころか、浜薔薇やめたくなるかもしれませんから、言葉でそんなことないですよって否定するだけじゃたぶん弱いでしょ」
「この話のすごいところは、リーダーあの時税金払ったばっかりで余裕がないのに、傑さんに送ったところですかね」
「それは我慢すればいいんです」
そうはいっても見てられなかった何人かは。
「リーダー、実家から乾麺送ってきたから、これあげるわ」
もいたし。
「相談したいことがあるっていって、飲食費こっちで持つからって、気を使ってそういうことしてくれた人たちがいました」
「浜薔薇のファンクラブはいい人ばかりなんですか」
波里から不思議な目で見られたが。
「変わっているとは思いますが、いい人か、悪い人かはわかりませんね」
変わっているとは思いますが!
「そういえば先日初めてスタイルコーディネートを頼んだ人がいたんですけども、炊き出しのおかげで使えるお金が若干あるからっていう人の話聞きました?」
たまたまそんな時があって、浜薔薇の炊き出しで食事をとっていたら、スタイルコーディネートを頼んだばかりの人が、これは良かったんだ、おすすめという話をしていたので。

(そんなにおすすめならば試してみたいな)
スタイルコーディネートは○○円と決まってはあるが、出来るだけ安く枠や品物があれば枠など融通が結構できるのである。
ただこれは運が絡むし、その値段で来ないこともあるので、諦めちゃうやキャンセルの人もいるなか。
「リーダーはそこら辺運がおかしいから、あっ話は脱線しましたね」
続けましょう。
その初めてスタイルコーディネートした会員は、興味本位だったために、傑からじゃあ、お安くておもしろい靴下なんかはどうでしょうか?と言われた。
靴下ならば、無駄にはなるまいと了承し、早速次の日の朝、履いてみたところ。。
はて?靴下はこんなに伸びて、吸い付くようにフィットして、疲れにくいものなのか?
靴下とは?何か。
その問題を考えるために、哲学者の顔になったという。
「それ聞いたら、それも欲しくなるんですけども」
「高い靴下には間違いないですがね、ランナー用とかには編み込みで疲労を軽減させる靴下とかもありますし、あれ高いんですよ」
一足千円以上はします。
「三束パックでこのぐらいの値段ならお得だなっていう理由で買っているなら、たぶん相当びっくりすると思いますよ」
「クッション性能とか磨耗とか、機能面が付属すれば付属するほどお高くはなります」
「とりあえず、傑さんにその靴下あるか聞きませんか?」
「それもそうですね」
聞いたところ。
「あれですか、後四足」
ここには三人のファンクラブとKCJの職員がいます。
「争わずに分けあえるっていいですね」
「えっ、それでこの値段でクルー丈ですか」
「フットカバーでもこの機能のはかなり高いよ」
「たまたまなんですよ、季節の変わり目は色んな品物が行き来しますから、見に行ったらあるだけいれて、ああ、これタモツ先生にも履いていただいてますが」
これ、ずいぶんといい靴下じゃねえか?高いんじゃないか?
「ずいぶんお気に召されたようなので、一揃い先生ようにしましたからね」
「とりあえず、これ明日みんな合わせて履いてみましょう」
そんな話になった。
「傑さん、スタイルコーディネートを初めて結構時間が経過しましたが慣れましたか?」
「慣れましたね、元々は自分の、前の店でブログのネタにしてたんですが」
それはそのまま持ち越せずに消去になっている。
「普通に買うとああいうこは高いじゃないですか」
「高いですよ、浜薔薇出張所に来て、楽しみの一つですもん」
「こういうのは他の人もできますから」
「ちゃんと出せる金額で好み覚えてくれるし、提案してくれるところ、傑さん以外にもいるのならば教えてくださいよ」
「…う~ん」
「ほら、いないでしょ」
「あ~出来そうではあるけども、この額でならば引き受けない人が多いかな」
「お客さんが出すことを考えちゃう、迷う金額でなんでも用意するものではありませんよ」
「そうなんですけどもね、あ~そういえば、スタイルコーディネートを始めたばかりの頃、先に金額から決めたんですよ」
だいたいこの辺のお客さんなら、このぐらいの額だと悩まずに買ってくれるだろうと。
「そこから色んなものを探したんですけども、お説教はされました、私はそういう安い仕事はしませんって」
「ええ、そんなことが」
「まあ、それはそれでそういうもの、そういう仕事の方針だと思えばいいので、うちとは違う、違うんだからって言い聞かせながら、品物とか探してましたね」
そんな感じで色んなところに顔を出して、良いものはないだろうかと、現在のような形になるまで本当に歩き回ったという。
「それこそ、今の時期、傘かな、女性用の傘をたまたまたくさん見たときに、ひたすら袋から出しては、開いて見てとかやってたりしましたからね」
その時選んだ傘が、浜薔薇のご婦人にかなり受けたのである。
「あれで浜薔薇来てことがない人の分まで注文が来て、その時までは、予算とクオリティ、僕の好みをどこまで反映させるべきかのバランスに悩んだんですよ」
「何か踏ん切りがつくことがあったんですか?」
「先輩は好きなようにやれと、たぶんみなさんが思うようなことを言いましたが、僕の道はそうじゃないなと、この予算とのバランスをきちんと取るということも魅力なので」
こういうときここにいるファンクラブとKCJの職員は、傑のお父さんを思い出すのである。
たまに炊き出し、カレーの日によく見かけたりする傑の父、一代で大きく店を広げたこともあってか、やり手で、抜け目なさがある。
実は傑の父もキッチンカーではないが、オーナーとして出店するのだが、何屋かというと焼きいも屋なのであった。
「うちの会社の資金は、サラリーマン時代焼きいもの副業で貯めたんですよ、だから焼きいもにはかなり自信がありますよ」
そういって手軽な値段で焼きいもを売るのだが。
(美味い)
皮がパリパリでネットリとした焼きいもを、傑の父は上手に作るのである。
「スーパーとかでも売ってる値段なんだけども、これ、同じ値段ならば傑パパの焼きいも買うわ」
そのぐらい美味しいのである。
「でも傑パパ、今は焼きいも屋さんやらなくてもいいんじゃないの?」
と思っていたら。
「あれはですね、うちの父が浜薔薇のことを気にしていまして」
浜薔薇さんに来たことがない人でも、あのさつまいもちょうだいって人を集めることに繋がるということが、商売には大事なんですよ。
「おじさん、焼きいも3本ほしいんだけども」
「はい、ちよっと待ってね」
まさかこの焼きいも屋さんの正体が、地方にある大きな会社のえらい人だとは思うまい。
うちの焼きいもは、皮はパリッと、中はねっとり系で美味しいよ。なんていいながら、常連客を作りまくっていた。
「これがおしゃれ番頭パパですよ」
「あんな人が日本にたくさんいたら日本経済回復するのではないですかね」
「ああいう形で回復するなら、おしゃれ番頭一族とか後100人ほしいんですが」
「夢と希望しかないじゃん!」
そして次の日、夢と希望は足元からも伝わった。
「こ、これが靴下だというのか」
「今まで履いていたものはなんだったのか」
「戻れない、これは戻りたくない」
人の心を魅了する浜薔薇のスタイルコーディネートは、予約受け付け中ですが、品物によっては入荷予定が未定のものもありますので、お問い合わせは大歓迎です。


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