浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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時間を味方にさせてもらったよ

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蘆根だけが浜薔薇にいた最初の頃というのは、暇な店だったので、この時期になるとタモツは庭仕事、主に草むしりなどをしていた。
「いらっしゃいませ」
今は朝からお客さんがやって来る。
そう、シャンプーラッシュの始まりだ。
そこを黙ってみているタモツではない。
「混んでいるからこっちでごめんね」
(はっ、レジェンド)
「そんなことありません」
(光栄であります)
レジェンドが来てくれることで、お客さんの方が恐縮してしまう。
「それでシャンプーはどうするんだい?」
日替わり、期間限定の課長風月、育毛のためのGO毛シリーズも取り入れております。
「じゃあ、GO毛でお願いします」
勢いよく育つ髪にGO毛!のキャッチフレーズでお馴染みであるが、このシャンプーは定価が他のと比べるとちょっとお高いが、浜薔薇ではオプション料金無しでこちらを選べた。
「たくさんのお客さんが来てくれるので、この価格でも出せるんですよ」
傑頑張った。
そうなると、人というのは欲が深いもので、じゃあ、この機会だし、GO毛でいいよね!今日は贅沢しちゃうよねと、心理が働き、登場して以来今までの一位を抜き、No.1に君臨した。
タモツは座ってもらった状態で、髪を泡立てる、そこから前屈みになってもらい、洗っていたのだが、蘆根と病院への出張訪問の仕事をした辺りに、洗い流し方を後ろの椅子を倒して洗うというスタイルに変えた。
そしてここからがタモツにしかできないことが始まる。
このシャンプーをどのぐらい放置してから洗い流す、それこそ何秒単位の設定を見抜くことができるのだ。
標準時間を一分だとすると。
(この髪なら、10秒早くだろうな)
とか。
(今日は暑いし、40秒追加だな)
この微調整でかなり仕上がりの違いが出た。
メーカーの人も驚いていて。
「ここまでうちのシャンプーで変わるんですか?」
「タキみたいに腕がないもんだからよ、時間を味方にさせてもらったよ」
とタモツは答えると、あのシャンプーメーカーの人たちは、蘆根のネーミングセンスを聞いたときお同じ顔していた。
「このお客さんには-10秒、こっちのお客さんには前回と違って+40秒とか、メモとかつけて記録に残しているのですが、今の僕には乾燥肌かオイリー肌とかしかわからないです、先輩はわかりますか?」
「天気を肌感覚で掴んでいるのはわかる」
気温と湿度も関係はしているらしい。
浜薔薇の駐車場はそれこそKCJの出張所になっていたり、炊き出しを行っていたりするので、その邪魔をしてはいけないとタモツは思っているのか。
「最近はこういうすごいのがいたな」
他店の動画を見ているらしい。
動画を見ているときのお決まりは、膝の上にケットシーで、そのケットシーはイツモの時もあれば、ニヤリ、ビタン、たまにその他の時がある。
その他ケットシーが留守の時用の木彫りのケットシー、健康器具でもある、背中を撫でるとツボを刺激する。
「蘆根、お前、この店知ってるか?」
そういって気に入った動画を見せてくれる。
「若いのになかなか筋がいいんだ」
その話の途中で、来客がある。
「いらっしゃいませ」
「すいません、動画を見たんですけども、耳掃除って今できますか?」
「ああ、出来るよ、今準備するよ」
前はカスターニャのオーナーみたいに、そのうち引退すると言ってたが、最近はその話はでなくなった。
(最後まで店に立つ、それも大事なことだな)
体力は失われていく、思い通りにならないこともあるが、試行錯誤をすると決めたらしい。
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