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料理人というのは偏屈なところがある
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シリアス注意
あっ、人間だ。
急な用件のために、河川ザメの住処を横切ることになったところ。
「サッ」
兄ちゃん、なかなか強そうだな。
「サッ」
遊ぼうぜ!と絡まれてしまった。
サッサッ
行く手をサメ達に塞がれる。
「サッ」
どうも相手をしなければ先を通してはくれないようである。
相手をするサメがこちらに近づいてきた。己の間合いになると、すぐにヒレを振りだすが、サメに見込まれるような人間である、しっかりと腕に覚えがあるので。
何度も何度も打ち込まれては、防いで、防いで、防ぎきって、そこにカウンターを入れて距離をとる。
「じゃーなー」
そのまま囲みまで突破されたが。
ソワソワ
サメのこの動き、観客にじゃんけんで負けてしまったことを悔しく思っているという意味だ。自分が戦いたくなるような相手だったらしい。
「こっちに来るまでということがあったんですよ」
「そいつは大変だったな、腰木くん」
お久しぶりのメヅルのパパ、ツルパパである。
「急いでこっちに来たと思ったら、すぐに帰るのかい?」
「他にも用があるので」
「帰りは住処を通らないか、もしも次に通るってわかったら、定番だけどもジャガイモ買っていくといいよ」
サメの住処、人間とはあまり交流のないサメだと、ジャガイモに反応するらしい。
「持ってるとなんか美味しい匂いがするって、鼻を動かしたら、確実に効果あるから」
投げている間に走り抜けるといいそうだ。
そして腰木は別件をこなし、他の職員に送ってもらうことになったが。
「ああ、これは私が相手しますか」
身の丈に合わない大きな得物を持った少女がが現れた。
「最近出るって話なので、駅まで送れないのが申し訳ありませんが」
「二次元だと可愛いげがあるが、やっぱり目の前にいると痛々しいものだな」
使用者の体に負担がかかるような大きさである、長期的な戦いを想定していないようだ。
「でもあれがマジックアイテムなら」
「その手がありましたね」
二人はニッと笑うと、腰木は別れて走り出した。
大きな得物を持つ少女は、ただ振り回すだけ、狙った相手が素人ではないとわかると、真っ正面で戦うのは分が悪いと、逃げようと体の向きを変えたところを読んだ。
ビシィ
斬撃は悔し紛れと判断したが、それは伸びて体に当たる。
相手が崩れて倒れたところを制圧した。
(私の斬撃は長く飛ばすのに時間がかかるから、実践じゃ使いにくいが、逃げている相手ならば十分使えるんだよね)
最近はこのようにKCJの職員はよく物騒な目にあっている。
こんな世の中だから、勤めているレストランの貸し切りというのはあるのかな?と思うし。
「すまないが、本日のゲストは…」
なんでも他から料理人を呼ぶらしい、自分も料理の道を志してここにいるのだから、あまり面白い話ではないが。
「その代わりといってはなんだけども」
ボーナスといっていい額を払うという。
そうなると話は別だし、逆にそのお客というのも気になる話ではないか。こんな世の中だ、金払いのいいお客とは仲良くなりたいもとである。
「申し訳ありません、ハドゥ様」
「仕方があるまい」
いたずらっ子を微笑みで許す、彼は起きたら何も覚えてはいないだろう。
「しかし、またこちらの世界もずいぶんと変わったものだね」
「それは我々も慣れませんよ」
「住んでいる人間でもか?それはおかしな話だ」
「はい、本当に、本日お越しになられるということでしたのて、私の後任になるものを紹介しようと思いました」
「その子は口は固いのかね?」
「もちろん」
「思い出すね、君がまだ店を出す前だったかな」
「そうですね、先代に紹介されました」
「景気が良かった時代だ、他にもいい仕事はあったはずだが、本当に料理人というのは偏屈なところがある」
「こだわりがあると言ってください」
「寂しくなるよ…」
「そういってもらえるだけで」
「病というのは私たちから友人を奪ってくれるから、好きではないよ」
「風の噂で聞きましたが、なんでも癌の予防薬にまとまったお金を入れてくれた吸血鬼の方がいるとか」
「明るい話はいくらあってもいいし、開発競争が起きれば市場は活発になるものさ」
「それだけで十分救われますよ」
「君が今まで手掛けてくれた仕事は、記録係にまとめさせてあるんだよ」
「ほう、それは見てみたいものですな」
「そうかい!それならばすぐに贈ろう。ああそうだ、私がこちらに来たのはね、近々集会を行うつもりなんだ」
「前のように勇士のみなさんをお招きに?」
「今回は勇士も幾人か招待するんだが、お嬢さんがメインだから!私はね、人間のお嬢さんともなると、好みがさっぱりわからなくてね、料理の仕切りを頼むことになると思うんだが!」
「それは楽しみですな、おおっと、お喋りはこの辺で」
焦げと甘い匂いがしてきた。
「匂いだけでわかるよ、素晴らしいね、我々は人と同じものは食べるが、味の好みは違うから、集会の料理の楽しみはここなんだよ。我々も人も楽しめる料理がどう現れるか」
吸血鬼の集会というのは色々あるが、ハドゥと呼ばれる吸血鬼が幹事を務める会というのは、人間側にもわりかし有名である。
招待客は歓迎されているかは出てくる食事でよくわかると言われるが、その通りである。
あっ、人間だ。
急な用件のために、河川ザメの住処を横切ることになったところ。
「サッ」
兄ちゃん、なかなか強そうだな。
「サッ」
遊ぼうぜ!と絡まれてしまった。
サッサッ
行く手をサメ達に塞がれる。
「サッ」
どうも相手をしなければ先を通してはくれないようである。
相手をするサメがこちらに近づいてきた。己の間合いになると、すぐにヒレを振りだすが、サメに見込まれるような人間である、しっかりと腕に覚えがあるので。
何度も何度も打ち込まれては、防いで、防いで、防ぎきって、そこにカウンターを入れて距離をとる。
「じゃーなー」
そのまま囲みまで突破されたが。
ソワソワ
サメのこの動き、観客にじゃんけんで負けてしまったことを悔しく思っているという意味だ。自分が戦いたくなるような相手だったらしい。
「こっちに来るまでということがあったんですよ」
「そいつは大変だったな、腰木くん」
お久しぶりのメヅルのパパ、ツルパパである。
「急いでこっちに来たと思ったら、すぐに帰るのかい?」
「他にも用があるので」
「帰りは住処を通らないか、もしも次に通るってわかったら、定番だけどもジャガイモ買っていくといいよ」
サメの住処、人間とはあまり交流のないサメだと、ジャガイモに反応するらしい。
「持ってるとなんか美味しい匂いがするって、鼻を動かしたら、確実に効果あるから」
投げている間に走り抜けるといいそうだ。
そして腰木は別件をこなし、他の職員に送ってもらうことになったが。
「ああ、これは私が相手しますか」
身の丈に合わない大きな得物を持った少女がが現れた。
「最近出るって話なので、駅まで送れないのが申し訳ありませんが」
「二次元だと可愛いげがあるが、やっぱり目の前にいると痛々しいものだな」
使用者の体に負担がかかるような大きさである、長期的な戦いを想定していないようだ。
「でもあれがマジックアイテムなら」
「その手がありましたね」
二人はニッと笑うと、腰木は別れて走り出した。
大きな得物を持つ少女は、ただ振り回すだけ、狙った相手が素人ではないとわかると、真っ正面で戦うのは分が悪いと、逃げようと体の向きを変えたところを読んだ。
ビシィ
斬撃は悔し紛れと判断したが、それは伸びて体に当たる。
相手が崩れて倒れたところを制圧した。
(私の斬撃は長く飛ばすのに時間がかかるから、実践じゃ使いにくいが、逃げている相手ならば十分使えるんだよね)
最近はこのようにKCJの職員はよく物騒な目にあっている。
こんな世の中だから、勤めているレストランの貸し切りというのはあるのかな?と思うし。
「すまないが、本日のゲストは…」
なんでも他から料理人を呼ぶらしい、自分も料理の道を志してここにいるのだから、あまり面白い話ではないが。
「その代わりといってはなんだけども」
ボーナスといっていい額を払うという。
そうなると話は別だし、逆にそのお客というのも気になる話ではないか。こんな世の中だ、金払いのいいお客とは仲良くなりたいもとである。
「申し訳ありません、ハドゥ様」
「仕方があるまい」
いたずらっ子を微笑みで許す、彼は起きたら何も覚えてはいないだろう。
「しかし、またこちらの世界もずいぶんと変わったものだね」
「それは我々も慣れませんよ」
「住んでいる人間でもか?それはおかしな話だ」
「はい、本当に、本日お越しになられるということでしたのて、私の後任になるものを紹介しようと思いました」
「その子は口は固いのかね?」
「もちろん」
「思い出すね、君がまだ店を出す前だったかな」
「そうですね、先代に紹介されました」
「景気が良かった時代だ、他にもいい仕事はあったはずだが、本当に料理人というのは偏屈なところがある」
「こだわりがあると言ってください」
「寂しくなるよ…」
「そういってもらえるだけで」
「病というのは私たちから友人を奪ってくれるから、好きではないよ」
「風の噂で聞きましたが、なんでも癌の予防薬にまとまったお金を入れてくれた吸血鬼の方がいるとか」
「明るい話はいくらあってもいいし、開発競争が起きれば市場は活発になるものさ」
「それだけで十分救われますよ」
「君が今まで手掛けてくれた仕事は、記録係にまとめさせてあるんだよ」
「ほう、それは見てみたいものですな」
「そうかい!それならばすぐに贈ろう。ああそうだ、私がこちらに来たのはね、近々集会を行うつもりなんだ」
「前のように勇士のみなさんをお招きに?」
「今回は勇士も幾人か招待するんだが、お嬢さんがメインだから!私はね、人間のお嬢さんともなると、好みがさっぱりわからなくてね、料理の仕切りを頼むことになると思うんだが!」
「それは楽しみですな、おおっと、お喋りはこの辺で」
焦げと甘い匂いがしてきた。
「匂いだけでわかるよ、素晴らしいね、我々は人と同じものは食べるが、味の好みは違うから、集会の料理の楽しみはここなんだよ。我々も人も楽しめる料理がどう現れるか」
吸血鬼の集会というのは色々あるが、ハドゥと呼ばれる吸血鬼が幹事を務める会というのは、人間側にもわりかし有名である。
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