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生きてて良かった
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ああ、これは…と思う。
過労である。
ただそうなっているときの自分はそれを感じることはできない。
思い返せば疲れが溜まっていた。
いつもできることがスムーズではない。
こういうときは何をしても無駄である。
へそくりを出す。
中に入っている額は浜薔薇で使うものと決めており、事あるごとに溜め込んでいた。
確かに浜薔薇まで行けば、KCJが炊き出しなどをやってくれているが、家からの距離と、他に食べなければなりらい理由があるので、いつもお世話になれないのである。
本当はベストフレンドの湯に行ってから浜薔薇なのだが、今の感じだとお湯に浸かるよりは先に蘆根さんに任せた方がいいだろうという気分。
「いらっしゃいませ」
長らく浜薔薇に通っているお客さんなのだが、来店するときはいつも目が半目、眠そう か嫌なことがあったのかなという表情をしている。
先にお金を渡してくる。
前に疲れたときに聞くと、目覚めなかったら困るし、覚えてないのも不味いからだそうだ。
中には前に髪を切り、シェービングしたばかりの写真と、前回何をしたのかのメニューがのっていた。
椅子に座ってもらい、カットクロスを首もとで結ぶ。
このお客さんは気を付けているつもりなのだが、年に何回か自力で疲れが取れなくなるという。
この眠そうな顔も、するっと寝付けないので、ずっとこのままになってしまっていたそうだ。
髪は指示通りに切る。
写真も後のことを考えて撮影した。
シェービング、油断しているので剃り残しあり、瞼などの部分は際までしっかり。
耳掃除、硬い垢が溜まっている。
汗はしっかりかいていたからこそ、この硬さ、これからは蒸れる時期であった。
パリ
薄いものから。
カリ
厚みがあるものまで。
プチ
ピンと張っている産毛が剃られた。
しばらくぶりの耳掃除だったのだろう、白い紙の上には耳の中から取り除かれた垢がよく目立っている。
そしてシャンプーとなるが、これもまたお任せでいいので、それならばと『イツ毛』を使わせてもらうとしよう。
あなたにもケットシーのような艶、『イツ毛』は浜薔薇の王子こと、イツモを見たあのメーカーの研究員が、次の限定商品の会議のためにつけたメモにあった言葉から名付けられた。
「ただこれも、疲れていたんだと思います、メモをつけたときの記憶が…ないんで」
もしかしたら、ただそのまま『イツモ』という名前だったかもしれない。
「覚えているのは、王子の名前の由来ですね」
海藻みたいな毛並みから、あの海藻名前何て言ったかな…「イツ藻」だったら、「イツモ」で良いのではないか?だから「イツモ」で、何故に彼の名字は蘆根ではなく、浜薔薇かというと。
「KCJのケットシー戸籍っていうのがあって、それで名前がずっと残るっていう話だったから、それなら店の名前残したほうがいいんじゃないかって思ったんだけども」
タモツはお前な、そんなんしなくてもとその話を聞かされたときはそういってたんだが。
「余計なことしたかなってずっと思ってたんですけども、町内会の集まりで」
この間ね、タモツさんが久しぶりに飲んだんだけどもね、その時ね、俺はいい弟子に恵まれたんだ、店は閉めるつもりだったんだがな、名前がな、残るように、イツモの名字がな、浜薔薇になったんだよ。
「あ~生きてて良かったって、ただこれタモツさんにはいわないほうがいいから」
「わかりました」
と近所の人から言われた。
そんなことをシャンプーしてたら思い出した。
湯でたっぷりと洗ってから、イツ毛をまんべんなく塗布して、洗う。
海藻の成分が非常に細かく、それがしっかりとした髪を作り上げてくれる。
ハッ!
お客さんがこの辺りで覚醒した。
「お疲れ様でした」
「ああ、ああ~やっぱり疲れてたか、なんかふらふら浜薔薇にいかなきゃ、たどり着いたはあったけども、疲れがとれなきゃ、寝ぼけていたのと変わらないよね」
「今回も大分お疲れだったようで」
「疲れ溜め込まないようにしててもこれだよ」
「食事の制限も続けてるんですか?」
「続けてる、浜薔薇に毎日来れるお客さんたちが羨ましいよ」
そのままストレッチマッサージをして。
「今日はそのまま寝てくださいよ」
「そのつもり、またお願いするわ」
髪を切ってすぐの写真を受け取り、お客さんは帰っていった。
浜薔薇に毎日来ているお客さんはそれ以前と比べてどうですか?アンケート、感想は頻繁にとっているのだが。シャンバーの人たちは、疲れ方が違うと答えているものが多かった。
「マッサージは毎日してもらいたいですが、費用面ではむずかしいんですけども、浜薔薇はシャンプーラッシュがあるから朝夕通えるんですよ」
リーダーも仕事で画面を見ることが多いので。
「肩こりと疲れ目が減る減る軽い軽い」
それに気づいた時にはもう浜薔薇から離れられない!
浜薔薇というお店を知らない人が、朝、その前を通りすぎると、店に入りきらない人たちが、シャンプークロスを身につけ、ずらっと座ってるので、二度見もしくは目を背けたひするそうだ。
過労である。
ただそうなっているときの自分はそれを感じることはできない。
思い返せば疲れが溜まっていた。
いつもできることがスムーズではない。
こういうときは何をしても無駄である。
へそくりを出す。
中に入っている額は浜薔薇で使うものと決めており、事あるごとに溜め込んでいた。
確かに浜薔薇まで行けば、KCJが炊き出しなどをやってくれているが、家からの距離と、他に食べなければなりらい理由があるので、いつもお世話になれないのである。
本当はベストフレンドの湯に行ってから浜薔薇なのだが、今の感じだとお湯に浸かるよりは先に蘆根さんに任せた方がいいだろうという気分。
「いらっしゃいませ」
長らく浜薔薇に通っているお客さんなのだが、来店するときはいつも目が半目、眠そう か嫌なことがあったのかなという表情をしている。
先にお金を渡してくる。
前に疲れたときに聞くと、目覚めなかったら困るし、覚えてないのも不味いからだそうだ。
中には前に髪を切り、シェービングしたばかりの写真と、前回何をしたのかのメニューがのっていた。
椅子に座ってもらい、カットクロスを首もとで結ぶ。
このお客さんは気を付けているつもりなのだが、年に何回か自力で疲れが取れなくなるという。
この眠そうな顔も、するっと寝付けないので、ずっとこのままになってしまっていたそうだ。
髪は指示通りに切る。
写真も後のことを考えて撮影した。
シェービング、油断しているので剃り残しあり、瞼などの部分は際までしっかり。
耳掃除、硬い垢が溜まっている。
汗はしっかりかいていたからこそ、この硬さ、これからは蒸れる時期であった。
パリ
薄いものから。
カリ
厚みがあるものまで。
プチ
ピンと張っている産毛が剃られた。
しばらくぶりの耳掃除だったのだろう、白い紙の上には耳の中から取り除かれた垢がよく目立っている。
そしてシャンプーとなるが、これもまたお任せでいいので、それならばと『イツ毛』を使わせてもらうとしよう。
あなたにもケットシーのような艶、『イツ毛』は浜薔薇の王子こと、イツモを見たあのメーカーの研究員が、次の限定商品の会議のためにつけたメモにあった言葉から名付けられた。
「ただこれも、疲れていたんだと思います、メモをつけたときの記憶が…ないんで」
もしかしたら、ただそのまま『イツモ』という名前だったかもしれない。
「覚えているのは、王子の名前の由来ですね」
海藻みたいな毛並みから、あの海藻名前何て言ったかな…「イツ藻」だったら、「イツモ」で良いのではないか?だから「イツモ」で、何故に彼の名字は蘆根ではなく、浜薔薇かというと。
「KCJのケットシー戸籍っていうのがあって、それで名前がずっと残るっていう話だったから、それなら店の名前残したほうがいいんじゃないかって思ったんだけども」
タモツはお前な、そんなんしなくてもとその話を聞かされたときはそういってたんだが。
「余計なことしたかなってずっと思ってたんですけども、町内会の集まりで」
この間ね、タモツさんが久しぶりに飲んだんだけどもね、その時ね、俺はいい弟子に恵まれたんだ、店は閉めるつもりだったんだがな、名前がな、残るように、イツモの名字がな、浜薔薇になったんだよ。
「あ~生きてて良かったって、ただこれタモツさんにはいわないほうがいいから」
「わかりました」
と近所の人から言われた。
そんなことをシャンプーしてたら思い出した。
湯でたっぷりと洗ってから、イツ毛をまんべんなく塗布して、洗う。
海藻の成分が非常に細かく、それがしっかりとした髪を作り上げてくれる。
ハッ!
お客さんがこの辺りで覚醒した。
「お疲れ様でした」
「ああ、ああ~やっぱり疲れてたか、なんかふらふら浜薔薇にいかなきゃ、たどり着いたはあったけども、疲れがとれなきゃ、寝ぼけていたのと変わらないよね」
「今回も大分お疲れだったようで」
「疲れ溜め込まないようにしててもこれだよ」
「食事の制限も続けてるんですか?」
「続けてる、浜薔薇に毎日来れるお客さんたちが羨ましいよ」
そのままストレッチマッサージをして。
「今日はそのまま寝てくださいよ」
「そのつもり、またお願いするわ」
髪を切ってすぐの写真を受け取り、お客さんは帰っていった。
浜薔薇に毎日来ているお客さんはそれ以前と比べてどうですか?アンケート、感想は頻繁にとっているのだが。シャンバーの人たちは、疲れ方が違うと答えているものが多かった。
「マッサージは毎日してもらいたいですが、費用面ではむずかしいんですけども、浜薔薇はシャンプーラッシュがあるから朝夕通えるんですよ」
リーダーも仕事で画面を見ることが多いので。
「肩こりと疲れ目が減る減る軽い軽い」
それに気づいた時にはもう浜薔薇から離れられない!
浜薔薇というお店を知らない人が、朝、その前を通りすぎると、店に入りきらない人たちが、シャンプークロスを身につけ、ずらっと座ってるので、二度見もしくは目を背けたひするそうだ。
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