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今の人生は二週目です
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「おっちゃん、暇や、なんか話してくれ」
病棟のお手伝いに来ていたおっちゃんに、もう読むものがないんだといい年になり始めたちびっ子はいいました。
いい年になり始めたっていうのがポイントやな、こういう年頃はどういう話が好きなのか…
そんなおっちゃんは、読み終わった本のタイトルを見て。
じゃあ、こんなのはどうや?
『今の人生は二週目です』
「えっ?何それ」
これはおっちゃんのよく行く場所、向こうも食いしん坊さんなんやろな、ラーメンならここ、ハンバーグならあそこ、今日は寒いからなんかラムのスープ食べたいなっていうと会うような相手から聞いた話なんや。
「その人何者なの?」
今、魔王やってる人の奥さん。
「はっ?」
わかるわ、その反応!旦那さん一回だけ一緒にいる時に見たことあるけども、うちの浄水センターで課長とかやってそうな人やったから、あれは何気なくおはようさんって部署に入ってきても、おはようございます課長って言ってしまいそうなほど課長フェイスやな。
「何それ」
でも話聞くと激動よ。今の魔王さんの話は守秘義務とかあるから無理だとしても、一周目の話は聞かしてもらったことあるし。
現在、魔王の立場にあるお一人は、一周目では自力で魔王候補にまで上がった。
候補時の年齢から考えれば、とんでもなく早い。
大卒が出世コースの中で、高卒が幹部になるぐらい目立ったそうや。
だがそのせいで激務。
本人も生活態度とかきっちりしている人ではなかったから、若いうちにお亡くなりになって後継者はなし。
系譜としても直接はいなかったけども、その後混乱を終結に導き、微妙な平和を取り戻すために魔王になったものがいた。
それが現在の魔王の奥さんやな。
魔王っていうのは魔王候補、その前にも眷属とか立ち位置によって呼び名があるんやけども、彼女さんはそっから魔王になったのと呼ばれるぐらい後ろから来た。
「それって他の人面白くないんじゃないの?」
かもしれんが、他に人材がいないまでになっていたから、わりとすんなりなったそうや。たぶんあれはさらっと言っとるけども、かなり苦労をした口だな。
「そのままババアになるまできっちり務めて、さて後進に譲るかの段階になったら、後進達が今まで煩く言ってたのがいなくなったということで、周囲に喧嘩を売ってたのがわかったので、そしたら馬鹿馬鹿しくなったわ」
今まで守ってきたもの、みな更地にした。
「それやってから寝たら、夢にあの人が出てきたんだよね、上手く行かないかもしれないけども、戻るかってことで戻ったのよ」
二週目を始めた。
「好きだけども、結婚するとか出来るとか思っちゃいなかったし、相手の意思もあるでしょ」
こんな感じなのは前の週で、血筋を残せと婚姻関係の話で苦しんだから。
「悪い話ではなかったけども、子供できたら、子供が苦労するなとは思ったわね」
できる子であっても、そうでなくても親としては大事にしたいのだが、環境は厳しく、そうは見てくれはしないだろう。
「それ考えるとうちの人ぐらいよ、それ考えた時に心配ないわねで終わったの」
お子さんは娘さんが四人いて、それぞれが魔女と呼ばれていた。
もうお孫さんもおったで、おっちゃんよりも大きいし、牙も鋭い感じで。
「牙がするどって、何さ!その話もしてほしいわ」
今日はこれでおしまいや、自分は元気って思っても、まだまだ病人なんやから、ここまで話しただけでも疲れているやろ。
「寝るのは嫌だな、もう起きん気がする」
そないなことないない、おっちゃんまた休みの日にこんにちわ!って来るから、それまで頑張ってな。
「うん、わかった、じゃあ寝る」
そこでゆっくりと眠りについた。
おっちゃんはその顔を覗きこんでから、病室から出ていくと、その子のお母さんとすれ違い、どちらもなにも言うことなく一礼した。
病棟のお手伝いに来ていたおっちゃんに、もう読むものがないんだといい年になり始めたちびっ子はいいました。
いい年になり始めたっていうのがポイントやな、こういう年頃はどういう話が好きなのか…
そんなおっちゃんは、読み終わった本のタイトルを見て。
じゃあ、こんなのはどうや?
『今の人生は二週目です』
「えっ?何それ」
これはおっちゃんのよく行く場所、向こうも食いしん坊さんなんやろな、ラーメンならここ、ハンバーグならあそこ、今日は寒いからなんかラムのスープ食べたいなっていうと会うような相手から聞いた話なんや。
「その人何者なの?」
今、魔王やってる人の奥さん。
「はっ?」
わかるわ、その反応!旦那さん一回だけ一緒にいる時に見たことあるけども、うちの浄水センターで課長とかやってそうな人やったから、あれは何気なくおはようさんって部署に入ってきても、おはようございます課長って言ってしまいそうなほど課長フェイスやな。
「何それ」
でも話聞くと激動よ。今の魔王さんの話は守秘義務とかあるから無理だとしても、一周目の話は聞かしてもらったことあるし。
現在、魔王の立場にあるお一人は、一周目では自力で魔王候補にまで上がった。
候補時の年齢から考えれば、とんでもなく早い。
大卒が出世コースの中で、高卒が幹部になるぐらい目立ったそうや。
だがそのせいで激務。
本人も生活態度とかきっちりしている人ではなかったから、若いうちにお亡くなりになって後継者はなし。
系譜としても直接はいなかったけども、その後混乱を終結に導き、微妙な平和を取り戻すために魔王になったものがいた。
それが現在の魔王の奥さんやな。
魔王っていうのは魔王候補、その前にも眷属とか立ち位置によって呼び名があるんやけども、彼女さんはそっから魔王になったのと呼ばれるぐらい後ろから来た。
「それって他の人面白くないんじゃないの?」
かもしれんが、他に人材がいないまでになっていたから、わりとすんなりなったそうや。たぶんあれはさらっと言っとるけども、かなり苦労をした口だな。
「そのままババアになるまできっちり務めて、さて後進に譲るかの段階になったら、後進達が今まで煩く言ってたのがいなくなったということで、周囲に喧嘩を売ってたのがわかったので、そしたら馬鹿馬鹿しくなったわ」
今まで守ってきたもの、みな更地にした。
「それやってから寝たら、夢にあの人が出てきたんだよね、上手く行かないかもしれないけども、戻るかってことで戻ったのよ」
二週目を始めた。
「好きだけども、結婚するとか出来るとか思っちゃいなかったし、相手の意思もあるでしょ」
こんな感じなのは前の週で、血筋を残せと婚姻関係の話で苦しんだから。
「悪い話ではなかったけども、子供できたら、子供が苦労するなとは思ったわね」
できる子であっても、そうでなくても親としては大事にしたいのだが、環境は厳しく、そうは見てくれはしないだろう。
「それ考えるとうちの人ぐらいよ、それ考えた時に心配ないわねで終わったの」
お子さんは娘さんが四人いて、それぞれが魔女と呼ばれていた。
もうお孫さんもおったで、おっちゃんよりも大きいし、牙も鋭い感じで。
「牙がするどって、何さ!その話もしてほしいわ」
今日はこれでおしまいや、自分は元気って思っても、まだまだ病人なんやから、ここまで話しただけでも疲れているやろ。
「寝るのは嫌だな、もう起きん気がする」
そないなことないない、おっちゃんまた休みの日にこんにちわ!って来るから、それまで頑張ってな。
「うん、わかった、じゃあ寝る」
そこでゆっくりと眠りについた。
おっちゃんはその顔を覗きこんでから、病室から出ていくと、その子のお母さんとすれ違い、どちらもなにも言うことなく一礼した。
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