浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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心技体猫

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「許可証の表示をお願い致します」
KCJ支部食堂。
提示を求められたらすぐに応じなければならない、これが戦闘許可証所持者の義務のひとつである。
『心技体猫』の刺繍がしてある、KCJの精神を現す四文字熟語で飾られた公式のケースを開いて見せた。
「ありがとうございます」
「シーチクうどんで」
「畏まりました」
「すいません、KCJ広報のものですが、戦闘許可証の保持者に少々アンケートをとっているんですが、ご協力願いませんでしょうか?」
「いいっすよ」
「ありがとうございます、それでは、KCJ発行の国内における許可証については、どちらでお知りになりましたか?」
「これって、考えながらでもいいの?」
「はい、かまいません」
「シーチクうどんのお客様」
「あれ、取りに行ってもいいですか?」
「はい、構いませんよ」
シーチクうどん、蕎麦もある。
名前の由来は、我々は社畜ではなくシー蓄だからということで、食堂でもっともお得なメニューであり、こればかり毎回頼むものも多いため、麺は食塩ゼロのものを使っていた。

伸びてしまうのでまずはお食べになっていただいてから…
「あっ、それで戦闘職許可証ですよね」
「はい、そうです」
「学生時代に取りに行った奴が同級生でいたんですよ、それで名前だけは知ってました」

あれ、もう帰るの?
これから検定試験なんで、迎え待ってる。
頑張れよ。

「大人になってから、それこそ勤めていたところがあんまり良くなかったから、やめて、バイトをしてて、何本目かのバイトがKCJの戦闘職関係のバイトだったんですよね」
俺は戦うしかないんで、雑用頼むわ。
「まさか自分がファンタジー世界に行くとは、そっからファンタジー読めなくなりましたけどもね」
あるあるとか、現実がそうなので見てられなくなった。
「自分が戦闘許可証取得するとは思いませんでした」
「何か流派は学んでおられたんですか?」
「いや、全然、でもそれならなおのこと、戦闘許可証とった方がいいよって言われたんですよ」
俺は詳しくないから、悔しいやつ知ってるからそいつに聞いて!
「アクアドロップさん知ってます?」
「存じてますよ」
浜薔薇の蘆根の同級生、有為(うい)のことである。
「有為さんから、KCJの戦闘許可書無しで、単独で危険物所持α~Ω申請しようとすると本当に大変だからねって言われました」
身体装着系で取り外し不可能なもの以外は、それこそ必要な書類一枚に二ヶ月ぐらいかかるという。
「そんでもって人によって求められる書類が違うんで、さっきもいった流派ならばその流派の先に保持している人からの推薦状がいるとか、何年かは地域に何かあったとき手伝いますって行った方がいいよとか言われましたね」
有為は魔法使いで危険物所持を申請したのだが、戦闘経験が全くなかったために難航。
「KCJの研修に参加したりして大変だったわ、三年ぐらい表の職業もやってたから、それこそエリクサー飲んで頑張った」
この時を知っている同じく、学友のカムイは。
「大変だったんだぞ、荒れて、嫌なことはあったのはわかるが、私のエリクサーがの飲めないのか!!!!って絡んでたから」
被害者は研修がよく被っていた男で、カムイが見たときは、無理矢理飲まされて「古傷が古傷が治っちゃううううううう」と叫んでいた。
ここでいうエリクサーは神話に出てくるような純正ではなく、模したもので、飲み過ぎなければ体の負担がなく、10代の元気さが維持できるものである。
もちろん安いものではないのだが、早めに資格を取ってもらいたいと思っている講師陣が、揃えておくようにと手を回してくれた。
「最初っから魔法使いのやつらは、もう序列決まっているようなものだから、一般家庭に生れて、そういった序列をぶっ壊してくれそうな才能があれば、それとなく支援は揃うものなんだよ」
そういった意味ではスターカバーといい、水を操る術を持つものは近年豊作といえた。
「歩く危険物じゃなくて、生きてる危険物扱いされるか、ただの危険人物になるかの違いでしかないけども、能力がきちんとコントロールできること、ちゃんと話ができることができるのならば、仕事は困らないわよ」
その半年後に無事に許可書をとりました。
「しかし、この許可書便利ですよね」
「おお、どんなところが便利ですかね?これからどういうのも増やしてほしいのか是非聞かせてください」
「金額としてはそれこそ一ヶ月ぐらいで受験料の元は取れてしまうし、色んな外食チェーン店が安くなるんで、手放せないですね、他に増やしてほしいものか…」
「もしもすぐに思い付かないようでしたら、こちらの方からご意見送っていただければと思います、本日はお食事中ありがとうございました」
そこでさりげなく新商品の食券を、どうぞこれ使ってくださいと出すので、またアンケートに協力してもいいかなという気分になるから不思議である。

『ここは浜薔薇の耳掃除です』

KCJ発行国内戦闘許可書保持者のうち、KCJの職員は三割程度となっている
つまり浜薔薇支部の波里と東司は役職はついてなくても、職員として平均以上の立場にある。
「東司さん、ずいぶん可愛いものもってますね」
戦闘許可書のケースだとは知らずに、『心技体猫』の文だけでそう問われた。
「しんぎったいにゃー、そう読むのですが、これはKCJの精神ですね、本当はケットシーのシーにしたかったのですが、 シーだと通じないだろうから猫にしたという話を昔説明されました」
何気ないことを、すごい真面目に答えられて逆に困ってしまったなんてことはありませんか?
(今がその時のようです)
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