浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ニャーニャーニャーシー

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「ニャー、ニャー、ニャーシー。ニャー、シー、ニャーだったな」
「俺の時はシー、ニャー、シー、シー、ニャニャ、シーでしたね」
何の話かというと、猫とケットシーを見分ける試験の話。この試験はKCJの資格や承認試験などに出ることが多い。
「聞いてください、僕の時は伝説の回ですから」
すいません、ケットシーのみなさんがその…こっちに来てくれなくて。
「ケル(ベロスと)オロ(トロス)でした」
「そいつは伝説だな」
ケルケルオロケルオロケルケル…ワン?
最後は自信なく、ワンと答えたが。
「はい、結構です、必要事項を記入した上でカウンターに提出してください」
ワンがあっていたようだ。
「みんな仲良しさんなんで特別参加ですが、引っかけ問題だと思っちゃうようで」
他は地獄から来ましたの中に、一匹だけ庭先にいてもおかしくないので、迷うという。

『オホッホッ!ミルク!』

「どうも、ストレス発散系料理チャンネルマントラゴラクッキングの時間がやって来ました」
こちらは一般人は見れないが、人気の料理動画である。
「はい、まずは質問が来てますね、なんで食べるお兄さんと、食べられるマントラゴラは仲良しなんですか?それはですね」
お兄さんの両親が放置系毒親で、お腹が空いて起きる気力もない時に。
「マントラゴラの方から口に飛び込んできました」
ホップステップジャンプでやってきましたが。
「クソまずい、みなさんはマントラゴラ食べたことあります?そのままだとすんごい不味いので、一度その状態で食べてほしいですね
。生だとマントラゴラは咀嚼して飲み込むと、二日ぐらいは食事をとる必要はないとされてます、ただそのクソまずいに勝てたらの話なんですが、僕はこんなにクソまずいものが食べ物のはずがないって思ってましたから」
そして目を覚ますと、無理やり食べさせようとしたが全部食べてくれなかった、欠けた状態のマントラゴラが、窓辺に佇み、日光に根を、まるで手をかざしているかのように、日光浴していた。
クルッ
こっちが見ていることに気がついた。
残りを食べてもらおうとダッシュしてきた、しかしこっちはマントラゴラをちょっとだけ食べて体力が全快しているので。
「絶対に食わねえぞぉぉぉぉ」
攻防は長く続いた。
「マントラゴラとの攻防は今朝も行なわれましたが、おかげで僕は健康的に大人になった上で、こうしてマントラゴラクッキングのお仕事をさせてもらってます、人生ってわけがわかりませんね」
両親はどうなったかというと、彼に食事をとらせてないことが発覚したために、処罰されることになりました。
「基本のマントラゴラの食べ方、日本だと最近は刻んで生姜醤油に和えたりしますが、マヨももいけます、マヨ派の人は是非お試しください」
ガシッっとマントラゴラをつかむと、ギャーギャーギャーと鳴き出す。
この悲鳴がストレス発散系料理と言われる由縁である、実際にマントラゴラの悲鳴はストレスに効果的とわかってはいたが、近年きちんと実験をし、一番ストレスが解消されるのはマントラゴラの悲鳴を故意にあげさせようとした場合とわかった。
なんて残酷なというかもしれないが、マントラゴラの方もノッている側面がある。
「逃げましたね、追いかけましょう」
包丁を握ったままマントラゴラを追いかける、それはホラー映画の一面にも見える。
まるで人間のように恐怖の仕草なんかしちゃったりする。
が。
(それでやめるかっていうと、怒るんだよな)
ピョンピョン跳ねて、怒りを顕する。もしくは、ずっとこっちを物陰から覗いて、食べないの?と訴えかけてくる。
(同じぐらい怒るのは、他のマントラゴラ食べてあっちの方が美味しいですねなんていう時なんだよな)
ただそれは他のマントラゴラだけではなく、フライドポテトを食べ続けていたりすると、私よりもそっちの芋の方が魅力的なのか!私も油の海に飛び込んでやる!とごねる。
だからだ、ただ食べられるだけではない、エンターテイメントを目指してますがこの動画の路線だった。
「食べたら無くなると思うでしょう?ネギみたいに土に植えておくと、そっから使ったところ再生するんですよね」
荒れた土地でも育ちます。
「このマントラゴラと出会ってから、後半月で12年目とかなんです…」
マントラゴラとの関係が貴重なのと、どこまでマントラゴラはこの状態で生き続けるのかのデータのために、彼に協力が持ちかけられ、料理動画は最近始めたのだが、まだまだ関係は長く続きそうである。


『んほっ!ミルク!』

これは夢だ、人々が忘れ去った後も、星が抱き続けている思い出といっていい。
『曲芸』と呼ばれる男がいた、荒っぽいし、正当な剣術とは言えないような勝ち方をした、だから『曲芸』。
不思議と彼には人徳があり、はみ出しもの達をまとめあげて、それなりにワーワー賑やかにやっていたが。
「兄!大変だ」
「どうした」
「兄の兄さんが!」
曲芸には唯一頭が上がらないのは兄である、その兄が窮地に立たされようとしていた。
「なんで兄貴に兵を出すのか、……悪いお前ら、今日で俺は抜ける、後は誰かが好きにやれ」
というと。
「ついていきますぜ」
「どうせ帰ってこないつもりでしょ」
「バレたか、ここで迷惑かけた分華々しく散って返そうと思ってな」
「考えが浅い」
「お前に言われたくはない」
みんなで笑って死地に向かった。
「なんっすか、これ」
「なんで逃げている人たち後ろから切るんですか」
「知らねえよ、ただあいつらはクズで、兄上はここで死ぬべきじゃねえよ、よーしお前ら、ここまでついてきたんだ、もし生き残っても、ここで生きてくれ、んで嫁さん世話してもらってさ、暮らしてくれ」
「頭はどうするんです?」
「そりゃあ、大将首狙うよ、バカなことするやつに、バカを当てるのが正しいしな」
「兄!」
「どうした」
「兄の兄さんが!」
「おい、お前どういうことだ」
「久しぶりっす」
「久しぶりじゃない、答えろ、何をしようとしている」
「そんなの決まっているじゃないですか、大将首狙って、格好いいところ見せにきました」
「俺はそんなもん望まない」
「最悪弟の首があれば、この地は守れるんだから、んな顔するな」
「ダメだ」
「今しか、恩は返せないし、兄上、策はあるんですか?」
「…」
「では兄上、極楽浄土には縁がない弟めの最後の意地をご覧ください」
そういって飛び込むために別れ。
「いいんですか?」
「いいんだよ、兄上ぐらい清廉潔白な人物でなければこの地は治められない、不出来な弟はここで退場しよう」
天地之 神毛助与 草枕 羈行君之 至家左右
共に駆け抜けた男には、頭がつぶやいた言葉はそれがどんな意味かわからなかった。

この地は守られたというが。

「イホ デ ニコラスどうしたのかね?」
マスクドシャンプー来店、その帰り。
「これは何かと?ふむ、この地、九良は非常に攻めにくい土地だったが、それでも戦はあったのだ、これは戦の犠牲になったものへの碑、刻まれているのは思いを綴った言葉だ」

古典の言葉をこの地を治めた兄が残したもの。

待てといふに散らでしとまる物ならばなにを桜に思ひまさまし

美しく思える言葉に、どんな感情を込めたのか、星はその先まで宿である春隣には教えてくれはしなかった。





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