浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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こっちにもくれよ!!!!

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今日は晴天ではないと天気予報で見たので、過ごしやすいかと思ったら、びっくりするほど湿度が高く。
「もうね、浜薔薇行くのぉ、これ終わったら浜薔薇行くのぉっていい聞かせて帰ってきました」
蘆根は真顔である。
(…怒らせた)
どんどんやらかしてしまったのかという、自戒の念で心が重くなるが。
「よく来たな!」
「はい、すいません」
「今日は時間は」
「あります」
こういうときは、蘆根に任せた方が上手く行くっていうのは知ってる。
足温の準備が始まり、バタバタと蘆根は忙しそうだ。
浜薔薇の足湯は、メインはベストフレンドの素を使ってはいるのだが、急なときは裏の、KCJ衛生班のお湯を使っていた。
あそこは地中から冷泉、温泉のような成分はあるが、温度が低いものを浴場では使っており、加温加水はするが水道水では出せない魅力がある。
「もう普通の風呂には戻れん」
貸し切りをよくしてくれる常連の建設業の方にも好評価を得ていた。
湯気が立ち上るフットバスに足をいれる。
「しばらくそちらに浸かっててください」
「は~い」
マッサージベットのシーツをセッティング。
爪ヤスリと、今日はどのクリームにしようかと選んでいた。
最近はシャワーばかりだったせいもあって、足湯中になんか疲れたなとだるくなってきた。
(眠い)
人は疲れているときに、お湯に浸かると勝てない、むしろ勝とうとするな。
(ああ、なんか眠いな)
ここで寝てしまえる人間ならば、疲れをそこまで溜め込むことはないだろう。
そういう意味では浜薔薇に来る人間というのは、自分でオンとオフを切り替えるのが上手ではないものが来るといえる。
実際にシャンパーになってから、肩こりも軽くなったし、疲れの残り方が違うという。
「前までは疲れてから浜薔薇にいってたんですよ、でも今は疲れる前に浜薔薇行ってるし、そこがね、違う」
おそらく一番マメに通っている人なんかは、浜薔薇のコストパフォーマンスの良さを知っているから、通っていると思われる。
「お疲れ」
「…あの人すごいな、なんでこんだけ残業やったあとで、遊びに行きますとかできるの?超人なの?」
そう同僚に思われているが。
「食事をKCJの炊き出し+テイクアウトを頼んで、自宅では野菜と豆足して食べてる。仕事の前には疲れないように栄養補給して
週に何日かは蘆根さんのマッサージか、シャンプーラッシュに合わせてる」
ここまでやれる人間は希ではあるが、そこそこ浜薔薇を利用するで人生が変わるのは間違いないのではと思う。
(なんだろう、急にシャンプーしたくなったな…ああ、明日も朝から浜薔薇来ようかな)
蒸れた髪を触りながら思った。
シャンプーラッシュはシャンプー応援隊と呼ばれる、専門のスタッフを用意して対応しているので、レギュラーのメニューより通いやすい値段でシャンプーをしてもらえる。
「ランチをいいところで食べるか、それとも朝シャンプーするかっていう選択が存在するほどの値段なんですよ」
シャンパーのリーダーは、他のシャンパーからの生の声を聞いて、その結論に達したという。
「これはすごいことですから、食事と並べるほどシャンプーが魅力的なんですもん」
浜薔薇のシャンプーを体験してみたい方、初めての方は是非ともシャンプーラッシュにお越しください。
「シャンプーしてくれよぉぉぉぉぉ」
「私はレモンちゃんでお願いするよぉぉぉ」
個性的なお客様もシャンプーラッシュの名物になりつつあります。
スッ
足湯から出てすぐの皮膚は柔らかくなっている、そして蘆根は足の指、その間に指を入れて、確認をした。
カリカリ
何を確認したかというと、足の爪の長さである。
ここが引っ掛かるとマッサージしにくいため、爪をヤスリでかける。
もちろんかけないということも出来るが、このお客さんはいつものアレ、浜薔薇にならば何をされても構いませんに○をつけているお客さんなので。
カリカリ
マッサージしやすい、蘆根の指に当たらないように爪を丸く、深くかけられている。
こういうとき、深爪くん足の指用などがあればいいのかもしれないが、足指は手とは違う伸び方をするので、便利グッズが未だに存在しないのであった。
しかし深爪くん足用などがもし販売されれば、マッサージの料金が値下がりすることだろう。
発明家のみなさん、よろしくお願い致します。
(全く、こんなに疲れるまで頑張りやがって)
それはマッサージされるものにとって、声に出して聞きたい蘆根さんのお言葉である。
乱暴に見えるが、愛情が困っている、おお!なんて素晴らしい店なのだろうか。
すいません、水曜日予約できますか?
とここで予約を入れてしまいたくなる、良店である。
なんで近所にないんだよ、歩いていける距離に作れよ、細胞分裂してうちの隣に引っ越してこいよ!
そう言いたい。
足の裏と蘆根の手の平がぴったりと一度合わせられてから、クリームが塗られる。
汗をかいてしまったせいで乾燥している、パサパサとしたこの感じはあまり良くない、一度塗ると1日潤いをキープするものでありながらも、湿度に強いさっぱりタイプという、日本の無茶な気候に合わせたクリームであった。
この辺の過酷な環境で効果を発揮するというのは、メーカーとしては化粧品会社が強い。
汗などで崩れないというノウハウが、クリーム一つにギュッとつまっている。
こういう努力を感じるものが蘆根は好きなのであった。
そしてそれをお客さんにも、アレ良かったですよといって、そうだろ!と話を弾ませると、この仕事について良かったなと、心からそう思える。
(ああ、眠い…)
お客さんはまだ落ちない、疲れすぎて、疲れが体から抜けていくのを抵抗している、これはあまり良くない。
キュ
その時胃のツボを押すと。
(フォ!)
口が3になる。
痛みはないが衝撃から、びくっとなり、そこから体をゆっくりと元に戻す。
キュ
副腎臓。
(フォ!)
またびっくりする。
そこから膀胱を押し。
「疲れてますね」
「そうですね」
疲れを自覚してもらう。
(早くスッキリしたい)
本音がやっと出た。
(ああ、なんでこんなに忙しいんだ、忙しいのに仕事増やすなよ)
心の中で本音を呟いてもらう。
(遊びに行きたいな…)
その時カクンとお客さんは落ちた。
疲れを手離すことを決めたら、そこからは早い。
蘆根はそれを見てから、手を足から離した。
グーパーグーパー
そこから指を回した。
これは…蘆根は本気である、指に気合いを入れると、俺の前に疲労は許さんと言わんばかりに、揉み始めた。

もうあの後目が覚めるまで何があったかわからないんですが、疲れは取れたからいっか!
これだから○をつけたお客は困る、疲れが取れるならそれでいいやですって!なんて羨ましいんだ、こっちにもくれよ!!!!
疲れてるのいっぱいいんぞ!
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